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2011年6月20日

東電福島原子力発電所の事故以来、各種の意見が入り混じり、科学的な、正確な知識を得ることが喫緊の問題となっている今、原子核工学の権威である功刀資彰氏に原子力エネルギーについて語っていただきました。
功刀氏は原子核工学の中でも核融合反応の研究分野を専門としており、原子力について正しい基礎知識を理解し、正しい判断をしてほしいと切り出して、原子核の構造、核分裂反応の原理等、原子力エネルギー全般について、分かりやすく講演いただきました。

【講演要旨】
現在稼働している原子力発電所をすべて停止した場合、電力事情は非常に逼迫します。大停電を避けるためには8%の余裕を持って電力を供給する必要があります。関西では昨年3,200万kwhの電力を消費しましたが、一部の原子力発電所が定期点検のため一時停止しており、これが稼働しないと2,938万kwhしか供給できず、200万kwhの電力が不足します。そのため関西電力は15%の節電を消費者に要請し、さらに石炭、LNG、石油による火力発電量を引き上げようとしていますが、燃料確保と輸送に問題があり、産出国の政治、社会情勢によっては燃料費が高騰して、電気料金に大きく跳ね返る恐れがあります。

未来エネルギーは資源量が豊富なこと。特定地域に偏らないこと。環境破壊が少なく、廃棄物が少ないこと。エネルギー価格が合理的範囲であること。充分なエネルギー量が安定して供給できること。安全かつ安心であることが必要ですが、それぞれのシステムに弱点があり、特徴を生かした使い方を考える必要があります。

自然エネルギーでは、水力発電は開発の余地が少なくなっており、ダムによる環境破壊の側面があります。太陽光、風力発電は天候に左右されるため、供給量に問題があります。地熱発電はクリーンで安定していますが、建設適地に限りがあります。
最終的には、革新的な技術を必要としており、太陽を支えている核融合反応を地上で実現できれば、燃料は豊富で偏在せず、安全性が高く、放射性廃棄物が少なく、温室効果ガスを排出しませんが、実用化のめどは立っていません。

東電福島第一原発事故の収束と事故原因の調査は喫緊で必須の課題です。当面は、原子力・火力発電の活用と再生可能エネルギーの利用促進で、電力エネルギーのベストミックスを促進する必要がありますが、核融合炉を含む未来エネルギー源の開発を促進し、限りある資源を後の世代に引き継いでいくことが大切です。

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講演中の功刀教授
講演中の功刀教授

在学生代表からお礼の花束が贈られました
在学生代表からお礼の花束が贈られました

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