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2010年12月7日

「野生のエルザ」に憧れ南アでチーターと暮らす


 “Buhle”南アフリカ共和国の公用語の一つであるコサ語で「美しい」の意。“ブシュレ”と発音する。ブシュレとは家原裕子さんが南アでいっしょに暮らすチーターの名前。そのブシュレは彼女が帰国する2日前に無事出産を終え、4匹の子どものお母さんになった。ちゃんと元気にしてるか、早く戻ってまた会いたい、そんな気持ちの高まりのなか、母校に立ち寄っていただき、自然に帰すために保護しているチーターとの生活などについて話していただきました。
 家原裕子さんは1987年にドイツ語学科を卒業し、外資系の銀行に就職。東京で10年、イギリスのボーンマスで10年、計20年間同銀行に勤務し、働くことに少々疲れを感じていたこともあり、2007年に1年間休職して、ボランティアとして南アフリカ共和国にあるModgaji(モジャジ)野生動物保護プログラムに参加。その時生後3カ月のブシュレと出会ったのだそうです。
これよりさき、2000年に休暇でタンザニアへ旅行した折に、野生のチーターと出会ったことがきっかけだった。ずっと小さい頃から憧れていた夢に向かって人生は大きく転回し始めることになった。「野生のエルザ」への夢が目を覚ましたのである。「野生のエルザ」とは、親を亡くしケニアの草原に生まれた野生のライオンの赤ちゃんエルザをわが子同然に育て、野生に返した東アフリカの狩猟監視官アダムソン夫妻の心温まる交流のノンフィクション文学を1966年にイギリスが「Born Free」として映画化したもの。家原さんにとっては小さい頃に観たこの映画こそ現在の自分の原点だというわけです。
 そして、休職1年後の2008年に退職し、家原さんは南アフリカ共和国東ケープ地方の野生動物保護地区に戻り、スタッフの一員としてチーターなどの野生動物を自然に帰すための保護と飼育の仕事にかかわっていくことになります。ポートエリザベスから内陸へ車で約2時間半に位置する自然保護区は広大で、4700㎞2で甲子園の約120倍はあるといわれています。この想像もつかない広い土地で、チーターを中心に絶滅が危惧される野生動物を専門に、彼らを自然に帰すためのリハビリテーションをおこなっているのです。
 家原さんの朝はブシュレや他のチーターとの散歩で始まります。散歩といってもこの広大な草原、まる一日、二日にわたる時も。散歩はチーターのハンティング訓練を兼ねていると説明されれば納得もできます。ブシュレは遊び心旺盛で、かくれんぼやレスリングが大好きです。心と心が通じ合っているからできるのだと彼女は言います。ものすごいスピードで獲物を追いかけていると思えば、毒蛇を見つけてハーっと警告し危険を知らせてくれるブシュレは、モジャジのスタッフを信頼し仲間と思っているのだそうです。ブシュレは嬉しいと喉をごろごろ鳴らす。幸せの合図だという。ブシュレのごろごろを聞くのが家原さんの至福の時。いつかは自然に帰さなければならない。それまではアフリカにいようと、家原さんは完結しない夢を追い求めます。
 学生時代の家原さん。「授業には休まず出席した。よく頑張ったと思う。苦しかったけど面白かった。厳しかったけどたくさん学んだ」。休みには旅行をするためにアルバイトばかりしていたという。トルコにユーゴスラビア、ヨーロッパ各地にそしてアメリカ・・・。なかでもトルコには相当惹かれた。おかげで日本を客観的に見れるようになったそうですが、反面、就職の面接試験では海外のことばかり話すものだから、自分の会社に染まりにくいと判断されたのか、日本の会社には全部断られたといいます。それでも、家原さんは自分の信念を曲げなかったのです。
 家原さんの所属するModgaji(モジャジ)プロジェクトでは、キリン、ダチョウ、クドウ、ニャラ、スプリングボックなど数多くの野生動物を観察することもできますが、フェンス、道路、動物たちの水のみ場などの修復、開発作業がたくさんあり、世界各国からのボランティアスタッフを募集しているという。参加期間は2週間から受け付けているという。コミュニケーションは英語だが、家原さんも常駐しているので英語に自信がなくても大丈夫とのことです。
 「野生のエルザ」への夢の続きでアフリカまで飛んだ家原さん。「自然環境を元に戻すということは、お金を出してまでもボランティアするほど価値ある大きな仕事だと思っています。いまは最低限のものしかなくても生きていけます。今までは本当にムダが多かった。価値観が変わりましたね」など、代償も大きかったはずなのに、家原さんの底知れないやさしさが印象に残りました。語学力、行動力、持続力、体力に加え、夢を持つこと、強い意思、広い視野、社交性、笑顔など、彼女はきっと、逞しくなればなるほどやさしさを深めていったのだと思われます。
 最後に家原裕子さんからのメッセージ。
「もっと数多くの日本人の方にモジャジボランティアプログラムにぜひ参加していただき、自然保護と野生動物の素晴らしさを体験していただきたいです」
ボランティアプログラムのホームページ:http://www.modgaji.co.za
日本語でのお問い合わせはe-mail: staff@modgaji.co.za

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家原さんに甘えるブシュレ
家原さんに甘えるブシュレ

ブシュレの子どもたち
ブシュレの子どもたち

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