タマニケ考古学プロジェクトは、考古学調査とコーヒーと文化財を活用した観光開発を中心に、エルサルバドル文化省考古課がラ・リベルタ県タマニケ市サン・イシドロ共同体の地域課題の解決を目指して実施しています。京都外国語大学国際文化資料館は、2019年よりプロジェクトに参加しています。タマニケでは、山の尾根上で複数の遺跡が確認されており、方形や円形の建造物跡や土器などの遺物が発見されています。

タマニケ地図
ドローンを用いた遺跡の空中写真撮影と地形測量と、遺跡の踏査を行いました。この調査では、以前の調査では確認されていなかった石列群や建造物群が新たに発見され、エルサルバドルの全国紙でタマニケ考古学プロジェクトが紹介されました。また、遺跡の概要を地元住民や観光客に知ってもらうためのガイダンスルームの内装や展示内容について地元の代表者の方々と話し合いました。

遺跡からの眺め

ドローンを用いた調査
光波測量機を使用して、遺跡の一部で地形測量を実施しました。また、ガイダンスルームの開設に向け、共同体が所有する倉庫の一部を改装する工事をはじめました。ガイダンスルームに展示するパネルの内容についても検討しました。文字が読めない人や子供たちにも分かりやすい展示を目指すため、写真や図を多用したパネルの製作を目指しています。

光波測量機による遺跡の測量

ガイダンスルーム工事中
2014年、コスタリカ南部太平洋岸オサ半島にある「ディキスの石球のある先コロンブス期首長制集落群」が世界遺産に登録されました。コスタリカ国立博物館は、世界遺産ディキス集落郡とオサ半島に点在する遺跡を含む一帯の保存と活用を目指し、「考古学と観光を利用したコミュニティ連携活動」を開始しました。京都外国語大学 国際文化資料館では、福井県越前町や「プロジェクト・マティグアス」で行ってきたフィールドミュージアム活動を踏まえて、共同でオサ半島のプロジェクトに携わることになりました。
オサ半島の活動の拠点となっているのは、半島南部に流れるティグレ川流域に位置する二つの村、ガジャルド村とドス・ブラソス村です。先スペイン期から、この一帯はティグレ川で採れる砂金の採掘により生計を立てていました。しかし、砂金の採掘は時代とともに規制され、現在は不当な採掘は違法行為とみなされるようになりました。地域住民にとっては先祖代々教えられてきた砂金の採掘であり、この一帯にみられるいわゆる先住民文化の名残とも言えるでしょう。

オサ半島地図
ガジャルド村からティグレ川を挟んだ対岸には、カンタレロ遺跡があります。カンタレロ遺跡は、コスタリカ国立博物館により考古学調査が実施されており、カンタレロ(壺型土器)が多く出土することからこの名がつけられました。複数のマウンドからなる遺跡で、それらのマウンドを構成する丸みを帯びた石は遺跡近くのティグレ川のものと思われます。この遺跡はガジャルド村の住民により、定期的に清掃活動が行われており、住民にとっても親しみ深い遺跡となっているようです。ただし、村から遺跡へ行くにはティグレ川を横断するしかなく、雨季やスコールによる増水で安全に遺跡へアクセスできない点が課題となっているようです。

カンタレロ遺跡へ向かうにはティグレ川を渡らなければならない
またこの地域の大きな魅力のひとつとして、コルコバード国立公園を中心とした豊かな自然が挙げられます。コスタリカはエコツーリズムの聖地ですが、この地域も例外ではなく、自然を満喫できる観光ツアーが行われています。コルコバード国立公園の麓にあるドス・ブラソス村は、エコツーリズムの拠点としてビジターセンターを開設しています。
というわけで、ガジャルド村とドス・ブラソス村、世界遺産「ディキスの石球」をフィールドとしてコスタリカ国立博物館が課題としていた「考古学と観光を利用したコミュニティ連携活動」に京都外国語大学国際文化資料館もこれまでのフィールドの経験を見込まれてサポートさせていただくことになりました。

ドス・ブラソス村ビジターセンター
昨年の視察をもとに、オサ半島ガジャルド村とドス・ブラソス村を再訪問し、地域住民代表者と協議を行いました。コスタリカ国立博物館とオサ半島コミュニティと連携した「プロジェクト・リオ・ティグレ」を立ち上げました。
新型コロナウイルス感染拡大による海外渡航禁止が緩和された2022年8月~9月に約2年半ぶりにメキシコから中米エルサルバドル、ニカラグア、コスタリカを訪問しました。これはプロジェクト代表の南が分担する科研費(代表:嘉幡茂/本学国際言語平和研究所嘱託研究員)による遺物調査を兼ねて、本学学園創立75周年を記念する映像プログラム「(仮)国際文化資料館における中米考古学・博物館調査の歩み」の取材を行いました。また、しばらく現地から離れていたということで、エルサルバドル、ニカラグア、コスタリカのフィールドの確認と関係者との調査再開に向けての協議も実施しました。
活動を簡単にまとめると以下となります。
フィールドの太平洋側タマニケ方面を訪問する機会はありませんでしたが、カウンターパートのミリアム・メンデスさんのインタビューにあわせて協議ができました。
また、遺物調査で訪問したチャルチュアパでは、カサブランカ遺跡の現状を撮影するとともに(写真1)、トラピチェ地区で調査(写真2)を実施されている名古屋大学の伊藤伸幸先生にグァテマラのカミナルフユ遺跡調査について取材、インタビューできました。
カミナルフユ遺跡の調査は、国際文化資料館(当時は、国際文化資料室)の設立に尽力された故大井邦明先生によって実施されました(1990~1993年)。先生はその後、チャルチュアパ遺跡にあるカサブランカ遺跡公園内で2000年まで発掘調査を実施。その調査主任として公園内で住み込んで発掘にあたったのが、現在エルサルバドル文化省自然文化遺産局で考古学の調査をされている柴田潮音さんです。インタビューでは当時の様子を取材させてもらいました。(写真3)

写真1:エルサルバドル カサブランカ遺跡にて杉岡さん

写真2:エルサルバドル チャルチュアパ遺跡

写真3:エルサルバドル 柴田さん、ミリアムさんと杉岡さん
「中米カリブ海域プロジェクト」のフィールドであるカリブ海側への調査は、調査日程の都合で実施できませんでした。しかし、ニカラグア文化庁の副長官や国立博物館館長など政府関係者と協議ができ、コミュニティミュージアム活動をテーマに今後再開に向けて準備を進めます。
「プロジェクト・マティグアス」のフィールドであるマタガルパ県マティグアス市を訪問し、市長さんと面会することができました(写真4)。計画が止まっているコミュニティミュージアム建設については、具体的な候補地の選定など来年度以降に事業を進めるべく日本大使館との協議も進めることができました。また、遺跡のある手前のティエラブランカ村の小学校を訪問し、いつもお世話になっている先生と面会することができました(写真5、6)。残念ながら遺跡手前の川が増水のため渡ることができず、遺跡の現状を確認することはできませんでした。
同行していただいたニカラグア国立自治大学のサグラリオ先生のインタビューを現地で予定していましたが断念し、マナグアに戻ってから先生の大学研究室で実施しました。
マティグアスの活動拠点の調査事務所も管理人さんのおかげで綺麗な状態でしたし、町の人々も前向きに歓迎していただきましたので、調査再開に向けて具体的な計画を作っていきたいと思います。

写真4:ニカラグア マティグアス市長との面談

写真5:ニカラグア ティエラブランカ小学校にて

写真6:ニカラグア ティエラブランカ小学校こどもたち
3年ぶりに国際文化資料館交流協定館である国立博物館、ヒスイ博物館、黄金博物館を訪問し、館長先生と面談するとともに、先生方から学園創立75周年記念に向けてメッセージを頂戴することができました。
そして、太平洋側オサ半島へは国立博物館研究員で現地のプロジェクトリーダーであるフランシスコさんと同じく研究員でコミュニティミュージアム担当のロナルドさんと3年ぶりに現地ガジャルド村を訪問しました。「プロジェクト・リオ・ティグレ」は、遺跡の考古学調査と博物館活動によるコミュニティミュージアムづくりが目的の一つですが、国立博物館が進めるオサ半島での地域開発ともリンクするということで、ロナルドさんを派遣していただいた次第です。
村の小学校で行った村の文化振興委員会メンバーとの協議では、村長さん(委員長)はじめ新たに現地で観光ビジネスを行っている方も参加し、3年前と同様にみなさん大変前向きで、我々のプロジェクトへの期待を感じました(写真7)。遺跡はこれまた増水のため確認はできませんでしたが、具体的な調査再開に向けて準備をすすめたいと思います。
コスタリカではJICA事務所を訪問し、このプロジェクトについてご相談しました。近年、コスタリカ内での経済格差問題がとりあげられていて、太平洋側は低所得地域ということで、地域開発につながるような活動になればとアドバイスもらいました。また、日本大使館では一昨年からコスタリカでの文化活動についてご相談いただいていた小松親次郎大使に面会し、今後の日本とコスタリカの文化交流について意見交換できました(写真8)。大使のご意見も踏まえて今後の活動を計画していきたいと思います。

写真7:コスタリカ ガジャルド村での協議

写真8:コスタリカ 日本大使館にて
今回は2年半ぶりの現地調査ということで現地の視察と関係者との協議が大きな目的でしたが、どこの組織も非常に前向きに対応いただけました。これまでの資料館との交流だけでなく、長くラテンアメリカ地域で友好交流を続けてきた本学の活動の賜物だと思います。今回の調査では、本学スペイン語学科卒業で現在、同志社大学院総合政策科学研究科博士課程前期に在籍中の杉岡明日香さんに通訳および撮影、インタビュー協力をお願いしました。感謝申し上げます。
最後になりましたが、ラテンアメリカ諸国との友好交流に長きにわたって尽力されてきた前理事長の森田嘉一先生(学園最高顧問)、前京都外国語大学ラテンアメリカ研究所長大垣貴志郎先生、そして故大井邦明先生に心からお礼申し上げる次第です。
なお、映像プログラム「(仮)国際文化資料館における中米考古学・博物館調査の歩み」(映像時間約30分)は、学園創立75周年記念特別展「古代とは何か」の開催期間中に、国際文化資料館3階ギャラリーホールにて公開を開始します。ぜひご覧ください。
2023年度は、学内競争資金である他機関連携「世界遺産の持続性にかかる住民主体の仕組みづくりに関する比較研究」として、中米ニカラグアとあわせて調査した。詳細は「プロジェクト・マティグアス」を参照ください。

コスタリカ太平洋側オサ半島カンタレロ遺跡

コスタリカ太平洋側先住民クレのコミュニティ・ミュージアム
Page top