2025/11/07 09:30:00 京都府立図書館・京都外国語大学付属図書館共催展示会始まりました!
京都府立図書館共催展示
付属図書館
読書の秋、図書館ではイベントが目白押しです!
11月6日(木)より、4号館6Fにて本学図書館と京都府立図書館との共催稀覯書展示会を開催中です!
今年のテーマは、
「フランスの書架から-心を動かす名作と、作家たちの直筆に出会う秋-/絵が誘う洋書-100年前の蔵書から-」です。
本学図書館からは『パリ万国博覧会』の本や、サン=テグジュペリ『星の王子様』、本学教員宛にカミュが送った手紙などなど、貴重なフランスの文献や書簡などを紹介します。
京都府立図書館からは、『不思議の国のアリス』、ビアズリーの挿絵でも有名なワイルドの『サロメ』など、明治・大正期に収集した貴重な洋書をご覧いただけます。
貴重な本を見ていただける一週間、皆さまのご来場をお待ちしています!!
京都外国語大学会場開催告知動画を公開しました(音楽が流れます)
◆京都府立図書館・京都外国語大学付属図書館共催稀覯書展示会
「フランスの書架から-心を動かす名作と、作家たちの直筆に出会う秋-/絵が誘う洋書
―100年前の蔵書から―」
◆開催概要
京都外国語大学会場 〒615-8558 京都市右京区西院笠目町6 【アクセス】
会 期:11月6日(木)~11月13日(木)
会 場:京都外国語大学4号館6階
開館時間:平日/10:00~18:00 土曜・日曜/10:00~17:00
休 館 日:なし
備 考:入場無料
駐車場はありませんので、公共交通機関をご利用ください。
11月6日(木)より、4号館6Fにて本学図書館と京都府立図書館との共催稀覯書展示会を開催中です!
今年のテーマは、
「フランスの書架から-心を動かす名作と、作家たちの直筆に出会う秋-/絵が誘う洋書-100年前の蔵書から-」です。
本学図書館からは『パリ万国博覧会』の本や、サン=テグジュペリ『星の王子様』、本学教員宛にカミュが送った手紙などなど、貴重なフランスの文献や書簡などを紹介します。
京都府立図書館からは、『不思議の国のアリス』、ビアズリーの挿絵でも有名なワイルドの『サロメ』など、明治・大正期に収集した貴重な洋書をご覧いただけます。
貴重な本を見ていただける一週間、皆さまのご来場をお待ちしています!!
京都外国語大学会場開催告知動画を公開しました(音楽が流れます)
◆京都府立図書館・京都外国語大学付属図書館共催稀覯書展示会
「フランスの書架から-心を動かす名作と、作家たちの直筆に出会う秋-/絵が誘う洋書
―100年前の蔵書から―」
◆開催概要
京都外国語大学会場 〒615-8558 京都市右京区西院笠目町6 【アクセス】
会 期:11月6日(木)~11月13日(木)
会 場:京都外国語大学4号館6階
開館時間:平日/10:00~18:00 土曜・日曜/10:00~17:00
休 館 日:なし
備 考:入場無料
駐車場はありませんので、公共交通機関をご利用ください。
2025/11/05 11:40:00 「学生選書展2025」が始まりました!
学生選書展
付属図書館
今年度もL.E.M.(L.E.M.は、図書館の可能性を探求する学生グループです。)による「学生選書展2025」が始まりました!
2025年8月1日にL.E.M.のMISSIONとして、丸善京都本店へ行き、図書館に所蔵する本を選ぶ“ブックハンティング”を行いました。
ブックハンティングをして感じたこと、何故その本を選書したのか等、学生の感想や、選書した本を展示しています。
ポスター展示は4号館南側エントランスで11月1日~11月30日まで1ヵ月間開催しています。
本の展示は図書館本館1Fギャラリーで行っており、学生が選書した本は全て借りていただけますので、皆さん図書館にお越しください!
11月11日(火)には「学生選書展2025」のブックトークインスタライブを行いますので、そちらもお見逃しなく!
2025年8月1日にL.E.M.のMISSIONとして、丸善京都本店へ行き、図書館に所蔵する本を選ぶ“ブックハンティング”を行いました。
ブックハンティングをして感じたこと、何故その本を選書したのか等、学生の感想や、選書した本を展示しています。
ポスター展示は4号館南側エントランスで11月1日~11月30日まで1ヵ月間開催しています。
本の展示は図書館本館1Fギャラリーで行っており、学生が選書した本は全て借りていただけますので、皆さん図書館にお越しください!
11月11日(火)には「学生選書展2025」のブックトークインスタライブを行いますので、そちらもお見逃しなく!
2025/06/19 10:00:00 映画の上映会を開催します!!!
イベント
付属図書館
京都外国語大学付属図書館では映画の上映会を開催します!
カリフォルニアのバークレーを拠点に、半世紀かけてアメリカの食文化を変えたアリス・ウォータース。彼女はイタリアから始まったスローフードという運動を、ファストフード大国のアメリカで広めた第一人者です。今ではアメリカで当たり前になったオーガニックスーパーやオーガニックファーマーズマーケット、食農教育など、アメリカの食文化を半世紀かけて根底から変えていきました。
この映画は、彼女の書籍『スローフード宣言』(2022年発行)の出版1周年を記念し、アリス氏を日本に招いたところから始まりました。日本のスローフード文化が根付く地域や学校、レストランなどを彼女が訪れ、交流していく様子や、アリスの拠点であるカリフォルニア・バークレーでの取材を通じて、「食べることは生きること」の探求を追いかけたドキュメンタリーです。
この映画が、皆さんのこれからの未来に、何かしら大切な「おいしい革命」になることを願っています!
映画は予約制なので、ご予約お待ちしています!
映画:『食べることは生きること~アリス・ウォータースのおいしい革命~』
(通常の映画館では上映しない映画です)
日程:7月3日(木)
時間:開場17:30
上映&意見交換会18:00-19:30
上映時間66分の後、来場者の皆さんと映画
に関する意見交換を行います
場所:京都外国語大学 7号館 R741
料金:無料
定員:100名 ※予約制(学外の方も申込み可能)
◆予約は下記のフォームからお願いします
https://forms.gle/LNy1m6LgjgK6UJjA8
◆予告編
https://youtu.be/u29K0phqxm4
問合せ先
e-mail:toshokan@kufs.ac.jp)
電話:075-322-6028
カリフォルニアのバークレーを拠点に、半世紀かけてアメリカの食文化を変えたアリス・ウォータース。彼女はイタリアから始まったスローフードという運動を、ファストフード大国のアメリカで広めた第一人者です。今ではアメリカで当たり前になったオーガニックスーパーやオーガニックファーマーズマーケット、食農教育など、アメリカの食文化を半世紀かけて根底から変えていきました。
この映画は、彼女の書籍『スローフード宣言』(2022年発行)の出版1周年を記念し、アリス氏を日本に招いたところから始まりました。日本のスローフード文化が根付く地域や学校、レストランなどを彼女が訪れ、交流していく様子や、アリスの拠点であるカリフォルニア・バークレーでの取材を通じて、「食べることは生きること」の探求を追いかけたドキュメンタリーです。
この映画が、皆さんのこれからの未来に、何かしら大切な「おいしい革命」になることを願っています!
映画は予約制なので、ご予約お待ちしています!
映画:『食べることは生きること~アリス・ウォータースのおいしい革命~』
(通常の映画館では上映しない映画です)
日程:7月3日(木)
時間:開場17:30
上映&意見交換会18:00-19:30
上映時間66分の後、来場者の皆さんと映画
に関する意見交換を行います
場所:京都外国語大学 7号館 R741
料金:無料
定員:100名 ※予約制(学外の方も申込み可能)
◆予約は下記のフォームからお願いします
https://forms.gle/LNy1m6LgjgK6UJjA8
◆予告編
https://youtu.be/u29K0phqxm4
問合せ先
e-mail:toshokan@kufs.ac.jp)
電話:075-322-6028
2024/12/12 19:50:00 宇治市源氏物語ミュージアム館長に聞くー『源氏物語と今』ー【全文】vol.3
GAIDAI BIBLIOTHECA
付属図書館
読み継がれていく物語
榎本:最後は、本当にシンプルな質問なんですけれども、あの、『源氏物語』が今もなお読み継がれている理由っていうのを、お話しいただければ。
家塚:まずは読み継がれていることがすごいと思いますね。今読んで、千年前にこんな面白いことがあったんだなすごいね、って再評価されているのではなくて、ずっと常に読者がいたこと。それがその時代によって解釈されて。注釈書も出ているわけじゃないですか。常に最新のメディアを通して発信されている。だから、『源氏物語』ができて約百年後というのが、大絵巻ブームで、優れた絵師に描かせた絵巻物ができる。それが、九百年ぐらい前にできた国宝「源氏物語絵巻」と言われている絵巻物です。
一方で、『源氏物語』を真似た短いお話を作っていく。それは残らなかったんですが。
戸田:残ったのは『更級(さらしな)日記』ぐらいですね。
家塚:菅原孝標女(すがわらたかすえのむすめ)も、本当に共感しますね。あと藤原俊成(しゅんぜい)は、その「源氏見ざる歌詠みは遺恨の事也」と言っています。『源氏物語』の中には795首あるから、やはりすごい一大歌集なんですよね。だから歌人ならば『源氏物語』の和歌は読んでるよねって、知ってるよねって。それを踏まえて、歌詠まないといけないよねっていう。俊成が言ったので、鎌倉時代以降の人はみんな、源氏の歌を読んだ上で歌を詠むとか。
榎本:理解しておかないと、歌すら読めない。
家塚:周りも理解できない。本人は『源氏』を踏まえて読んでいるのに、この歌そんな面白くないよねって言ってしまうと、君はそもそも『源氏』を知らないのか、みたいな。
榎本:(笑)
家塚:もうなんかね、いたたまれないでしょうね、その会話もね。室町時代になると能が流行れば、『源氏物語』の能もできる。屏風にも浮世絵にもなる。今にいたっては大河ドラマになります。源氏供養を踏まえた『刀剣乱舞』も。最近一番びっくりしたのは、今日(※1)までかな、歌舞伎座で『源氏物語』やってるんですね。
榎本:あ、やってるんですね。
家塚:(坂東)玉三郎が六条御息所(ろくじょうのみやすどころ)で。
榎本:えー!ものすごく見たいです。
家塚:玉三郎って、2000年にやったときは藤壺だったんです。今回、光源氏が(市川)染五郎なんです。
常に最新のメディアで、今、話題の人が光源氏を演じています。古くは市川雷蔵もあったし長谷川一夫もあったし…宝塚でもやるし、いろいろやるけど、ついに玉三郎の六条御息所に対して染五郎かぁ、一番若いところにきましたよね。
榎本:そうですね。でも、確かに今、光源氏できるのは彼かもしれないですね。
家塚:ね、納得しますよね。最初はえっと思っても。
榎本:そうか、でも六条御息所、観たいですね、お岩さん並みに怖いでしょうね。
戸田:めちゃくちゃ、これは呪い殺されても仕方がないとか。
榎本:ああいう何か、生きているのか生きてないのか分からないとうのを演じさせると、もう玉三郎の上を行かれる方いらっしゃらないですよね。
家塚:玉三郎さんの六条御息所に対しての、その染五郎っていうことが、これはネタにできるな、と思いました。
やはり常に読まれるだけではなく、新しいものが生まれてくるっていうところが面白いなと思います。し、それがね、大河ドラマがきっかけだったのかもしれないですけど。でも、大河ドラマだけにとどまってないわけじゃないですか。大河でブームですねって言いながらも、染五郎が光源氏とうのは、一歩二歩進んでいる。多分こういうふうにして『源氏物語』って読まれているんだろうなと思いますね。
榎本:その時代、その時代に、合わせてというか。
家塚:合わせているのか、先を行っていくのかが、ちょっとわからないところありますけれども。だから、やはり社会現象になるんでしょうね。
榎本:いやあ面白い。
戸田:だから、それだけ後の時代の、時代を経た人でも、この題材で何かを作ってみたいと思わせる魅力があると。
家塚:あると思いますね。でも、なんだろうなと思うんですよね。でも、それが本当に『源氏物語』のテキストだけ、テキストからではないような気もするんです。だから本当に今、二次創作と言いましたけど、二次三次四次という流れで、作られていることも多いかと思います。能の「葵上」原作からすごくかけ離れちゃってるけど、600年経ったら、古典じゃないですか。
榎本:そうですね、古典になりましたね。
家塚:あと、大和和紀さんの漫画『あさきゆめみし』の影響も多大です。
榎本:ああ私も、もう完全にそうです。中学とか高校時代に読んだので。
家塚:この漫画を読んだ世代には、『源氏物語』の内容が、知らず知らずに刷り込まれています。特に人物造形については。本文には書いていないこと、特定していないこともたくさんあります。たとえば夕顔にとりついたのは誰かっていう問題はあるわけなんですよね。で、本文には誰とも書いてないんです。だけど六条御息所だと思っていますよね。
榎本:はい。思ってます(笑)。
家塚:室町の注釈書にも六条御息所、って書いてあるんですよね。で、それは一説なんです。だけど、『あさきゆめみし』の中では完全に六条御息所です。知識っていうか、解釈のベースになってくらい影響を与えてる、と指摘された論文を読みました。
榎本:なるほど。大和和紀さん、すごい絶大な影響力。
戸田:結局あれですよね、「葵」の巻で、葵の上を六条御息所が取り殺すところが強烈すぎるんで、じゃあ、この女の生霊としたら六条御息所だろうって、みんな思ってしまって。
家塚:六条御息所の影はあるけれど、本当は一切書いてない。いくつか説はあるけれど、でも視覚化するとやはり、これも文字の面白いところで、文字だけだったら誰でもいいわけじゃないですか。そこは想像できるけれども、視覚化することによって、固定しなくちゃいけないですよね。
榎本:なるほど。すごいです『あさきゆめみし』絶大な影響力ですね。
家塚:侮ってはいけないですね。
戸田:そうなったら、中にはこの元の話どうなんだろう、って気になって『源氏物語』本体を手に取る人が出てくる。
榎本:多いですよね、漫画から、じゃあ誰かの現代語訳にいこうっていう方は。
戸田:映画を見て、これ原作あるのか、じゃあどんな話なのか、ちょっと読んでみたいな、って。
家塚:日本の話だけではなくて、それで外国語に興味を持つ人も多いわけじゃないですか。だから何がきっかけなのかというのは、何でもいいのかなと。
榎本:そうですね。
家塚:もう一つ思うのは、何でもデジタル化されているじゃないですか。だけど、これ、このデジタルっていうものは千年後とかどうなっているのか、と、ふと思うことがあって、でも紙だったら、千年後は残らないものも多いけど、でも、かろうじて残っていくっていう。
紫式部の和歌にもあるんです、この書き留めたものは誰が読むのだろうか…いや書き留めているから残ってるでしょ、そういう歌を詠んでるってすごいなと。
と、いうことで、皆さん図書館に行きましょうというオチですよね。
榎本:(笑)はい、ぜひ紙媒体も。
家塚:本は装丁もね。
榎本:大事です。装丁は大事。
家塚:与謝野晶子の源氏がそうですよね。与謝野源氏って、装丁がとても綺麗なんです。
榎本:与謝野晶子の本って、全て装丁が綺麗ですよね。
家塚:そうですね、もうミュシャだし。だけど、与謝野源氏のあの装丁があるから『源氏物語』の本って、谷崎源氏も、本の美しさがあるのかと。
谷崎源氏は、「桐壺」の中扉を描いてるのが安田靫彦(ゆきひこ)なんですね、挿図も安田靫彦や、前田青邨(せいそん)だったりで、谷崎潤一郎と同じ時代に生きた日本画家が描いているので。やはり『源氏物語』の本の装丁も貴重と思うんですけど、それは与謝野晶子が最初かなと。彼女は、江戸時代に出版された絵入りの『源氏物語』を大事にしていたといわれています。江戸時代に版本で出て、また流行するんです。
榎本:やっぱり百年後に絵巻ができたというのが大きいのかもしれないですよね
家塚:そうですね。
あと室町になると屏風になります。『源氏物語』って、読むのは大変ですけど、絵がどんと「源氏です」とあると、あー源氏だ!ってやはり思いますよね。婚礼調度にもなります。あと今、春画の展覧会を細見美術館(※2)でやっていますけれども、大名のお姫さまたちの婚礼調度に、源氏の春画持っていくんですよね。
榎本:そうなんですか?!
家塚:何て立派な豪華装丁春画!と思ったら、婚礼調度だそうです。
榎本:へえー!
家塚:はい、源氏なんですよ。それは『偐紫田舎源氏(にせむらさきいなかげんじ)』をベースにした春画。何でも源氏なんですよね。
榎本:『源氏物語』を題材にした春画、っていうのがあるんですね。
家塚:それはしやすいですよね。
榎本:そうですね確かに。
家塚:はい、記録にも室町時代の伏見宮貞成親王の日記『看聞(かんもん)日記』には、枕絵について出てくるんです。
榎本:そうなんですか『看聞日記』に、ありとあらゆるところで。
家塚:そうなんですよね。
戸田:その春画の題材になるような話を書いたから、紫式部は地獄に落とされたっていう。
榎本:言われてますよね。
家塚:でもね、正確に言うと、題材よりも、何がいけないかっていうと、嘘ついたことなんですよね。
戸田:創作をしたっていうこと。
家塚:創作っていうのは嘘じゃないですか。仏教の教えでは、嘘というのはいけないんですよ。
戸田:嘘って現実にないことだから。
家塚:だから、嘘をついたっていうことで地獄に落ちるんです。物語というのは嘘なので。
榎本:へえ、じゃあ、作家は全員嘘つきってことになるんですね。
家塚:はい。
榎本:あらーそんな…。
家塚:でも、その裏返しで石山寺の観音の化身なんです。
榎本:(笑)
戸田:結局、小野篁(おののたかむら)が助けてくれて。
榎本:そうですね。お隣で頑張って。
家塚:隣でね。だから、そういう話もなんかちょっとずつ、いろんなところでくっついていくという。
榎本:後付けでみんな楽しんでいますね。
(一同):(笑)
家塚:こうやって笑えるじゃないですか。だから、結構皆さんよく昔から、なるほどって思っているんだろうなと。
いやあでも、でもちゃんと本当にうまくできていますよ。嘘も方便なんで全て。方便として、紫式部は『源氏物語』
を書きました。だから石山寺の観音の化身として、方便、使いましたという救いが。
戸田:その嘘によって、衆生が救われたというか、楽しんでくれたからっていう。
家塚:本当に、嘘も方便って便利だと思ったけど、でも説話でもそう書いてあるし、その辺をうまく作って拾って、
能の『源氏供養』にもなっていますし。
榎本:いやあ、面白いですね。本当にこんなに『源氏物語』広がっていくものなんですね。
家塚:そうですね。ありがとうございます。
榎本・戸田:ありがとうございました。
※1 インタビューは10月25日(金)に行われ、歌舞伎座での『源氏物語』公演が含まれた「錦秋十月大歌舞伎」は26日(土)に千穐楽
※2 細見美術館「美しい春画-北斎・歌麿、交歓の競艶-」展は、9月7日(土)~11月24日(土)開催
榎本:最後は、本当にシンプルな質問なんですけれども、あの、『源氏物語』が今もなお読み継がれている理由っていうのを、お話しいただければ。
家塚:まずは読み継がれていることがすごいと思いますね。今読んで、千年前にこんな面白いことがあったんだなすごいね、って再評価されているのではなくて、ずっと常に読者がいたこと。それがその時代によって解釈されて。注釈書も出ているわけじゃないですか。常に最新のメディアを通して発信されている。だから、『源氏物語』ができて約百年後というのが、大絵巻ブームで、優れた絵師に描かせた絵巻物ができる。それが、九百年ぐらい前にできた国宝「源氏物語絵巻」と言われている絵巻物です。
一方で、『源氏物語』を真似た短いお話を作っていく。それは残らなかったんですが。
戸田:残ったのは『更級(さらしな)日記』ぐらいですね。
家塚:菅原孝標女(すがわらたかすえのむすめ)も、本当に共感しますね。あと藤原俊成(しゅんぜい)は、その「源氏見ざる歌詠みは遺恨の事也」と言っています。『源氏物語』の中には795首あるから、やはりすごい一大歌集なんですよね。だから歌人ならば『源氏物語』の和歌は読んでるよねって、知ってるよねって。それを踏まえて、歌詠まないといけないよねっていう。俊成が言ったので、鎌倉時代以降の人はみんな、源氏の歌を読んだ上で歌を詠むとか。
榎本:理解しておかないと、歌すら読めない。
家塚:周りも理解できない。本人は『源氏』を踏まえて読んでいるのに、この歌そんな面白くないよねって言ってしまうと、君はそもそも『源氏』を知らないのか、みたいな。
榎本:(笑)
家塚:もうなんかね、いたたまれないでしょうね、その会話もね。室町時代になると能が流行れば、『源氏物語』の能もできる。屏風にも浮世絵にもなる。今にいたっては大河ドラマになります。源氏供養を踏まえた『刀剣乱舞』も。最近一番びっくりしたのは、今日(※1)までかな、歌舞伎座で『源氏物語』やってるんですね。
榎本:あ、やってるんですね。
家塚:(坂東)玉三郎が六条御息所(ろくじょうのみやすどころ)で。
榎本:えー!ものすごく見たいです。
家塚:玉三郎って、2000年にやったときは藤壺だったんです。今回、光源氏が(市川)染五郎なんです。
常に最新のメディアで、今、話題の人が光源氏を演じています。古くは市川雷蔵もあったし長谷川一夫もあったし…宝塚でもやるし、いろいろやるけど、ついに玉三郎の六条御息所に対して染五郎かぁ、一番若いところにきましたよね。
榎本:そうですね。でも、確かに今、光源氏できるのは彼かもしれないですね。
家塚:ね、納得しますよね。最初はえっと思っても。
榎本:そうか、でも六条御息所、観たいですね、お岩さん並みに怖いでしょうね。
戸田:めちゃくちゃ、これは呪い殺されても仕方がないとか。
榎本:ああいう何か、生きているのか生きてないのか分からないとうのを演じさせると、もう玉三郎の上を行かれる方いらっしゃらないですよね。
家塚:玉三郎さんの六条御息所に対しての、その染五郎っていうことが、これはネタにできるな、と思いました。
やはり常に読まれるだけではなく、新しいものが生まれてくるっていうところが面白いなと思います。し、それがね、大河ドラマがきっかけだったのかもしれないですけど。でも、大河ドラマだけにとどまってないわけじゃないですか。大河でブームですねって言いながらも、染五郎が光源氏とうのは、一歩二歩進んでいる。多分こういうふうにして『源氏物語』って読まれているんだろうなと思いますね。
榎本:その時代、その時代に、合わせてというか。
家塚:合わせているのか、先を行っていくのかが、ちょっとわからないところありますけれども。だから、やはり社会現象になるんでしょうね。
榎本:いやあ面白い。
戸田:だから、それだけ後の時代の、時代を経た人でも、この題材で何かを作ってみたいと思わせる魅力があると。
家塚:あると思いますね。でも、なんだろうなと思うんですよね。でも、それが本当に『源氏物語』のテキストだけ、テキストからではないような気もするんです。だから本当に今、二次創作と言いましたけど、二次三次四次という流れで、作られていることも多いかと思います。能の「葵上」原作からすごくかけ離れちゃってるけど、600年経ったら、古典じゃないですか。
榎本:そうですね、古典になりましたね。
家塚:あと、大和和紀さんの漫画『あさきゆめみし』の影響も多大です。
榎本:ああ私も、もう完全にそうです。中学とか高校時代に読んだので。
家塚:この漫画を読んだ世代には、『源氏物語』の内容が、知らず知らずに刷り込まれています。特に人物造形については。本文には書いていないこと、特定していないこともたくさんあります。たとえば夕顔にとりついたのは誰かっていう問題はあるわけなんですよね。で、本文には誰とも書いてないんです。だけど六条御息所だと思っていますよね。
榎本:はい。思ってます(笑)。
家塚:室町の注釈書にも六条御息所、って書いてあるんですよね。で、それは一説なんです。だけど、『あさきゆめみし』の中では完全に六条御息所です。知識っていうか、解釈のベースになってくらい影響を与えてる、と指摘された論文を読みました。
榎本:なるほど。大和和紀さん、すごい絶大な影響力。
戸田:結局あれですよね、「葵」の巻で、葵の上を六条御息所が取り殺すところが強烈すぎるんで、じゃあ、この女の生霊としたら六条御息所だろうって、みんな思ってしまって。
家塚:六条御息所の影はあるけれど、本当は一切書いてない。いくつか説はあるけれど、でも視覚化するとやはり、これも文字の面白いところで、文字だけだったら誰でもいいわけじゃないですか。そこは想像できるけれども、視覚化することによって、固定しなくちゃいけないですよね。
榎本:なるほど。すごいです『あさきゆめみし』絶大な影響力ですね。
家塚:侮ってはいけないですね。
戸田:そうなったら、中にはこの元の話どうなんだろう、って気になって『源氏物語』本体を手に取る人が出てくる。
榎本:多いですよね、漫画から、じゃあ誰かの現代語訳にいこうっていう方は。
戸田:映画を見て、これ原作あるのか、じゃあどんな話なのか、ちょっと読んでみたいな、って。
家塚:日本の話だけではなくて、それで外国語に興味を持つ人も多いわけじゃないですか。だから何がきっかけなのかというのは、何でもいいのかなと。
榎本:そうですね。
家塚:もう一つ思うのは、何でもデジタル化されているじゃないですか。だけど、これ、このデジタルっていうものは千年後とかどうなっているのか、と、ふと思うことがあって、でも紙だったら、千年後は残らないものも多いけど、でも、かろうじて残っていくっていう。
紫式部の和歌にもあるんです、この書き留めたものは誰が読むのだろうか…いや書き留めているから残ってるでしょ、そういう歌を詠んでるってすごいなと。
と、いうことで、皆さん図書館に行きましょうというオチですよね。
榎本:(笑)はい、ぜひ紙媒体も。
家塚:本は装丁もね。
榎本:大事です。装丁は大事。
家塚:与謝野晶子の源氏がそうですよね。与謝野源氏って、装丁がとても綺麗なんです。
榎本:与謝野晶子の本って、全て装丁が綺麗ですよね。
家塚:そうですね、もうミュシャだし。だけど、与謝野源氏のあの装丁があるから『源氏物語』の本って、谷崎源氏も、本の美しさがあるのかと。
谷崎源氏は、「桐壺」の中扉を描いてるのが安田靫彦(ゆきひこ)なんですね、挿図も安田靫彦や、前田青邨(せいそん)だったりで、谷崎潤一郎と同じ時代に生きた日本画家が描いているので。やはり『源氏物語』の本の装丁も貴重と思うんですけど、それは与謝野晶子が最初かなと。彼女は、江戸時代に出版された絵入りの『源氏物語』を大事にしていたといわれています。江戸時代に版本で出て、また流行するんです。
榎本:やっぱり百年後に絵巻ができたというのが大きいのかもしれないですよね
家塚:そうですね。
あと室町になると屏風になります。『源氏物語』って、読むのは大変ですけど、絵がどんと「源氏です」とあると、あー源氏だ!ってやはり思いますよね。婚礼調度にもなります。あと今、春画の展覧会を細見美術館(※2)でやっていますけれども、大名のお姫さまたちの婚礼調度に、源氏の春画持っていくんですよね。
榎本:そうなんですか?!
家塚:何て立派な豪華装丁春画!と思ったら、婚礼調度だそうです。
榎本:へえー!
家塚:はい、源氏なんですよ。それは『偐紫田舎源氏(にせむらさきいなかげんじ)』をベースにした春画。何でも源氏なんですよね。
榎本:『源氏物語』を題材にした春画、っていうのがあるんですね。
家塚:それはしやすいですよね。
榎本:そうですね確かに。
家塚:はい、記録にも室町時代の伏見宮貞成親王の日記『看聞(かんもん)日記』には、枕絵について出てくるんです。
榎本:そうなんですか『看聞日記』に、ありとあらゆるところで。
家塚:そうなんですよね。
戸田:その春画の題材になるような話を書いたから、紫式部は地獄に落とされたっていう。
榎本:言われてますよね。
家塚:でもね、正確に言うと、題材よりも、何がいけないかっていうと、嘘ついたことなんですよね。
戸田:創作をしたっていうこと。
家塚:創作っていうのは嘘じゃないですか。仏教の教えでは、嘘というのはいけないんですよ。
戸田:嘘って現実にないことだから。
家塚:だから、嘘をついたっていうことで地獄に落ちるんです。物語というのは嘘なので。
榎本:へえ、じゃあ、作家は全員嘘つきってことになるんですね。
家塚:はい。
榎本:あらーそんな…。
家塚:でも、その裏返しで石山寺の観音の化身なんです。
榎本:(笑)
戸田:結局、小野篁(おののたかむら)が助けてくれて。
榎本:そうですね。お隣で頑張って。
家塚:隣でね。だから、そういう話もなんかちょっとずつ、いろんなところでくっついていくという。
榎本:後付けでみんな楽しんでいますね。
(一同):(笑)
家塚:こうやって笑えるじゃないですか。だから、結構皆さんよく昔から、なるほどって思っているんだろうなと。
いやあでも、でもちゃんと本当にうまくできていますよ。嘘も方便なんで全て。方便として、紫式部は『源氏物語』
を書きました。だから石山寺の観音の化身として、方便、使いましたという救いが。
戸田:その嘘によって、衆生が救われたというか、楽しんでくれたからっていう。
家塚:本当に、嘘も方便って便利だと思ったけど、でも説話でもそう書いてあるし、その辺をうまく作って拾って、
能の『源氏供養』にもなっていますし。
榎本:いやあ、面白いですね。本当にこんなに『源氏物語』広がっていくものなんですね。
家塚:そうですね。ありがとうございます。
榎本・戸田:ありがとうございました。
※1 インタビューは10月25日(金)に行われ、歌舞伎座での『源氏物語』公演が含まれた「錦秋十月大歌舞伎」は26日(土)に千穐楽
※2 細見美術館「美しい春画-北斎・歌麿、交歓の競艶-」展は、9月7日(土)~11月24日(土)開催
-
ミュージアム内にある図書館
-
瀬戸内寂聴さんの『源氏物語』
-
『源氏物語』の香りのコーナー
2024/12/12 19:40:00 宇治市源氏物語ミュージアム館長に聞くー『源氏物語と今』ー【全文】vol.2
GAIDAI BIBLIOTHECA
付属図書館
平安時代の女性と学問
榎本:ではもう一つ、書かれたその巻がまず年代順になってないっていうのは何故かっていうところで。年代中に整理されたのはいつからなのか、紫式部本人が編集したのか、というのを知りたいなと。
家塚:それこそね『源氏物語』研究の大きなテーマですよね。
戸田:あ、そうなんですね。
家塚:書かれた順になってないっていうのは、そもそもどこから書いたかっていうのも、大きな問題であって。もう一つ言うと、『源氏物語とその作者たち』っていう本も出ているぐらいなので、『源氏物語』の作者が誰なのかっていうのも、大きな研究テーマなんです。わかりやすく言うと、宇治十帖を誰が書いたかとか。別人説っていうのは、ずっとあるんですね。あと玉鬘(たまかずら)十帖も別人説とか。大きな研究の課題だと思います。
戸田:解明されるのでしょうか。
家塚:いやあ、これは解明されたら面白くないかも知れないですね。
本当に、『源氏物語』の大きな課題というかテーマです。一般的には「帚木(ははきぎ)」くらいから書いて、「若紫」ぐらいまでは、ちょっと身近な話じゃないですか。出てくる人が別に光源氏じゃなくてもよくて、中流貴族の女性が、誰かに出会うみたいな話というのは、身近な話ですよね。それが全部光源氏になって、だんだん宮中の政治の世界になってくると、「女房が見た」。
榎本:(笑)
家塚:「桐壺」はどの時点で書いたのかとかもありますけど。「桐壺」は一条天皇と定子(ていし)の問題に注目されています。昔から「長恨歌(ちょうごんか)」だと言われています。だから「長恨歌」をベースに、一条天皇と定子の話を重ね合わせるというすごいですよね。一見、「長恨歌」風なんですけれど、いやいや時事ネタみたいな。
榎本:一条天皇はあれ読んだときどう思われたのかなと思いながら。
家塚:『紫式部日記』には『日本紀(にほんぎ)』をよく読んでいると一条天皇にほめられたと書いてあるし、漢籍を読んでいることもわかっている。「桐壺」の巻の構成や、和歌と定子の辞世の和歌が似ていることなどに注目され、「桐壺」はこのぐらい時期に書いたのかな、というのがわかってくる。パーツって言ったら変ですけれども、小さいことから全体が見えてくるっていうことでしょうか。
戸田:どっちにしても、「桐壺」は宮中に上がらなかったら書けなかったでしょうね。
家塚:書けなかったでしょうね。ベースとして、「長恨歌」を日本語訳しているところが、またうまいなって思いますね。源氏の中は白居易がすごく多い。ですから、これもやはり読者としてはくすぐられますよね。
榎本:一条天皇も漢詩読まれていますからね。この作者の女性ちょっと只者ではないなっていう。
戸田:あの時代の男性は、知識としては漢詩、漢文がベースですからね。
榎本:これまでの話に少し関連性はあるかと思いますが、千年前の、一条天皇を支えた女性たちのキャリアについて、どう思われますか。
家塚:女房にも、やっぱりいろいろクラスがあったり、働くきっかけっていうのがあるんですよね。これもそれこそ女性史とかジェンダーの研究の中でよく話題になりますけれども、あの時代の女性という自由だったのか不自由だったのかとか。
榎本:そうなんです、すごく気になります。
家塚:気になりますよね。やはり、学問というのは身を助けるというか、評価はされているだろうと思います。だからこれだけ、平安時代の女性の文学が盛んになった。
榎本:そうですね、本当その通りですね。学問は今でも身を助けるんでしょうね。
家塚:百人一首のちょうど真ん中ぐらい、みんな女性!って並んでいるじゃないですか。彼女たちは、受領(ずりょう)階級の育ちですよね。紫式部、清少納言、和泉式部。紫式部は学者の家でもあり、そういう環境にはありました。一方で、『紫式部日記』のあの書きっぷりで女子には学問はいらないとか、漢字読めないふりしているとか。でも、『源氏物語』の中でも、やはり皆さん賢く描いていますから。当時は結婚問題がありますから、親たちも、いかに賢くしようかと、女房たちに勉強をさせて。教育熱心ですよね。だから彰子にも。
榎本:紫式部をつけてっていう。
家塚:本当に。私はその中で言ったら、赤染衛門(あかぞめえもん)先生のサロンに入りたいです。あそこいい感じじゃないですか、いろいろと理解もあり。酸いも甘いもというところも含めて。だから、やはり皆さん賢く学んで、それがもう常識だったでしょうし。
あともう一つ、女性史などで、改めて注目されていますが、紫式部でも生没年がわからないんです。本名もわからない。でも、夫は藤原宣孝、お父さんは為時(ためとき)ということはわかっているんです。紫式部の娘は大弐三位(だいにのさんみ)、名前は賢子(けんし)です。何故わかっているかというと、賢子は後冷泉(ごれいぜい)天皇の乳母(めのと)になってるんですね、皇太子が天皇になったときに従三位(じゅさんみ)という位をもらってるんです。典侍(ないしのすけ)で、彼女は、国家公務員なんですね、歌人としては大弐三位。大弐っていうのは、太宰府の役人の官職なんですが、それは夫の官職で、彼女は従三位。「大弐三位」とは、夫の役職名と、彼女が持っている位のドッキングなんですね。典侍で従三位をもらっているから、記録に残る人なんですね。だから、賢子という名前もわかる。でも母は『源氏物語』を書いても、その公式記録には残らない。
戸田:あの時代の女性で名前が残っているって言ったら、それこそ。
榎本:奇跡みたいな。
戸田:宮中で高い位のお后になったか、あるいは宮中で位人臣を持っている人の奥さんになったとかじゃないと、名前残らないですね。
家塚:もし記録に残ろうと思ったら、やはり自分のキャリアで、国家公務員になると残るということを、紫式部と大弐三位でちょっと考えましたね。
榎本:ではもう一つ、書かれたその巻がまず年代順になってないっていうのは何故かっていうところで。年代中に整理されたのはいつからなのか、紫式部本人が編集したのか、というのを知りたいなと。
家塚:それこそね『源氏物語』研究の大きなテーマですよね。
戸田:あ、そうなんですね。
家塚:書かれた順になってないっていうのは、そもそもどこから書いたかっていうのも、大きな問題であって。もう一つ言うと、『源氏物語とその作者たち』っていう本も出ているぐらいなので、『源氏物語』の作者が誰なのかっていうのも、大きな研究テーマなんです。わかりやすく言うと、宇治十帖を誰が書いたかとか。別人説っていうのは、ずっとあるんですね。あと玉鬘(たまかずら)十帖も別人説とか。大きな研究の課題だと思います。
戸田:解明されるのでしょうか。
家塚:いやあ、これは解明されたら面白くないかも知れないですね。
本当に、『源氏物語』の大きな課題というかテーマです。一般的には「帚木(ははきぎ)」くらいから書いて、「若紫」ぐらいまでは、ちょっと身近な話じゃないですか。出てくる人が別に光源氏じゃなくてもよくて、中流貴族の女性が、誰かに出会うみたいな話というのは、身近な話ですよね。それが全部光源氏になって、だんだん宮中の政治の世界になってくると、「女房が見た」。
榎本:(笑)
家塚:「桐壺」はどの時点で書いたのかとかもありますけど。「桐壺」は一条天皇と定子(ていし)の問題に注目されています。昔から「長恨歌(ちょうごんか)」だと言われています。だから「長恨歌」をベースに、一条天皇と定子の話を重ね合わせるというすごいですよね。一見、「長恨歌」風なんですけれど、いやいや時事ネタみたいな。
榎本:一条天皇はあれ読んだときどう思われたのかなと思いながら。
家塚:『紫式部日記』には『日本紀(にほんぎ)』をよく読んでいると一条天皇にほめられたと書いてあるし、漢籍を読んでいることもわかっている。「桐壺」の巻の構成や、和歌と定子の辞世の和歌が似ていることなどに注目され、「桐壺」はこのぐらい時期に書いたのかな、というのがわかってくる。パーツって言ったら変ですけれども、小さいことから全体が見えてくるっていうことでしょうか。
戸田:どっちにしても、「桐壺」は宮中に上がらなかったら書けなかったでしょうね。
家塚:書けなかったでしょうね。ベースとして、「長恨歌」を日本語訳しているところが、またうまいなって思いますね。源氏の中は白居易がすごく多い。ですから、これもやはり読者としてはくすぐられますよね。
榎本:一条天皇も漢詩読まれていますからね。この作者の女性ちょっと只者ではないなっていう。
戸田:あの時代の男性は、知識としては漢詩、漢文がベースですからね。
榎本:これまでの話に少し関連性はあるかと思いますが、千年前の、一条天皇を支えた女性たちのキャリアについて、どう思われますか。
家塚:女房にも、やっぱりいろいろクラスがあったり、働くきっかけっていうのがあるんですよね。これもそれこそ女性史とかジェンダーの研究の中でよく話題になりますけれども、あの時代の女性という自由だったのか不自由だったのかとか。
榎本:そうなんです、すごく気になります。
家塚:気になりますよね。やはり、学問というのは身を助けるというか、評価はされているだろうと思います。だからこれだけ、平安時代の女性の文学が盛んになった。
榎本:そうですね、本当その通りですね。学問は今でも身を助けるんでしょうね。
家塚:百人一首のちょうど真ん中ぐらい、みんな女性!って並んでいるじゃないですか。彼女たちは、受領(ずりょう)階級の育ちですよね。紫式部、清少納言、和泉式部。紫式部は学者の家でもあり、そういう環境にはありました。一方で、『紫式部日記』のあの書きっぷりで女子には学問はいらないとか、漢字読めないふりしているとか。でも、『源氏物語』の中でも、やはり皆さん賢く描いていますから。当時は結婚問題がありますから、親たちも、いかに賢くしようかと、女房たちに勉強をさせて。教育熱心ですよね。だから彰子にも。
榎本:紫式部をつけてっていう。
家塚:本当に。私はその中で言ったら、赤染衛門(あかぞめえもん)先生のサロンに入りたいです。あそこいい感じじゃないですか、いろいろと理解もあり。酸いも甘いもというところも含めて。だから、やはり皆さん賢く学んで、それがもう常識だったでしょうし。
あともう一つ、女性史などで、改めて注目されていますが、紫式部でも生没年がわからないんです。本名もわからない。でも、夫は藤原宣孝、お父さんは為時(ためとき)ということはわかっているんです。紫式部の娘は大弐三位(だいにのさんみ)、名前は賢子(けんし)です。何故わかっているかというと、賢子は後冷泉(ごれいぜい)天皇の乳母(めのと)になってるんですね、皇太子が天皇になったときに従三位(じゅさんみ)という位をもらってるんです。典侍(ないしのすけ)で、彼女は、国家公務員なんですね、歌人としては大弐三位。大弐っていうのは、太宰府の役人の官職なんですが、それは夫の官職で、彼女は従三位。「大弐三位」とは、夫の役職名と、彼女が持っている位のドッキングなんですね。典侍で従三位をもらっているから、記録に残る人なんですね。だから、賢子という名前もわかる。でも母は『源氏物語』を書いても、その公式記録には残らない。
戸田:あの時代の女性で名前が残っているって言ったら、それこそ。
榎本:奇跡みたいな。
戸田:宮中で高い位のお后になったか、あるいは宮中で位人臣を持っている人の奥さんになったとかじゃないと、名前残らないですね。
家塚:もし記録に残ろうと思ったら、やはり自分のキャリアで、国家公務員になると残るということを、紫式部と大弐三位でちょっと考えましたね。
-
女性たちが囲碁を打つ様子
-
宇治の間












