2024/12/12 19:50:00 宇治市源氏物語ミュージアム館長に聞くー『源氏物語と今』ー【全文】vol.3
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読み継がれていく物語
榎本:最後は、本当にシンプルな質問なんですけれども、あの、『源氏物語』が今もなお読み継がれている理由っていうのを、お話しいただければ。
家塚:まずは読み継がれていることがすごいと思いますね。今読んで、千年前にこんな面白いことがあったんだなすごいね、って再評価されているのではなくて、ずっと常に読者がいたこと。それがその時代によって解釈されて。注釈書も出ているわけじゃないですか。常に最新のメディアを通して発信されている。だから、『源氏物語』ができて約百年後というのが、大絵巻ブームで、優れた絵師に描かせた絵巻物ができる。それが、九百年ぐらい前にできた国宝「源氏物語絵巻」と言われている絵巻物です。
一方で、『源氏物語』を真似た短いお話を作っていく。それは残らなかったんですが。
戸田:残ったのは『更級(さらしな)日記』ぐらいですね。
家塚:菅原孝標女(すがわらたかすえのむすめ)も、本当に共感しますね。あと藤原俊成(しゅんぜい)は、その「源氏見ざる歌詠みは遺恨の事也」と言っています。『源氏物語』の中には795首あるから、やはりすごい一大歌集なんですよね。だから歌人ならば『源氏物語』の和歌は読んでるよねって、知ってるよねって。それを踏まえて、歌詠まないといけないよねっていう。俊成が言ったので、鎌倉時代以降の人はみんな、源氏の歌を読んだ上で歌を詠むとか。
榎本:理解しておかないと、歌すら読めない。
家塚:周りも理解できない。本人は『源氏』を踏まえて読んでいるのに、この歌そんな面白くないよねって言ってしまうと、君はそもそも『源氏』を知らないのか、みたいな。
榎本:(笑)
家塚:もうなんかね、いたたまれないでしょうね、その会話もね。室町時代になると能が流行れば、『源氏物語』の能もできる。屏風にも浮世絵にもなる。今にいたっては大河ドラマになります。源氏供養を踏まえた『刀剣乱舞』も。最近一番びっくりしたのは、今日(※1)までかな、歌舞伎座で『源氏物語』やってるんですね。
榎本:あ、やってるんですね。
家塚:(坂東)玉三郎が六条御息所(ろくじょうのみやすどころ)で。
榎本:えー!ものすごく見たいです。
家塚:玉三郎って、2000年にやったときは藤壺だったんです。今回、光源氏が(市川)染五郎なんです。
常に最新のメディアで、今、話題の人が光源氏を演じています。古くは市川雷蔵もあったし長谷川一夫もあったし…宝塚でもやるし、いろいろやるけど、ついに玉三郎の六条御息所に対して染五郎かぁ、一番若いところにきましたよね。
榎本:そうですね。でも、確かに今、光源氏できるのは彼かもしれないですね。
家塚:ね、納得しますよね。最初はえっと思っても。
榎本:そうか、でも六条御息所、観たいですね、お岩さん並みに怖いでしょうね。
戸田:めちゃくちゃ、これは呪い殺されても仕方がないとか。
榎本:ああいう何か、生きているのか生きてないのか分からないとうのを演じさせると、もう玉三郎の上を行かれる方いらっしゃらないですよね。
家塚:玉三郎さんの六条御息所に対しての、その染五郎っていうことが、これはネタにできるな、と思いました。
やはり常に読まれるだけではなく、新しいものが生まれてくるっていうところが面白いなと思います。し、それがね、大河ドラマがきっかけだったのかもしれないですけど。でも、大河ドラマだけにとどまってないわけじゃないですか。大河でブームですねって言いながらも、染五郎が光源氏とうのは、一歩二歩進んでいる。多分こういうふうにして『源氏物語』って読まれているんだろうなと思いますね。
榎本:その時代、その時代に、合わせてというか。
家塚:合わせているのか、先を行っていくのかが、ちょっとわからないところありますけれども。だから、やはり社会現象になるんでしょうね。
榎本:いやあ面白い。
戸田:だから、それだけ後の時代の、時代を経た人でも、この題材で何かを作ってみたいと思わせる魅力があると。
家塚:あると思いますね。でも、なんだろうなと思うんですよね。でも、それが本当に『源氏物語』のテキストだけ、テキストからではないような気もするんです。だから本当に今、二次創作と言いましたけど、二次三次四次という流れで、作られていることも多いかと思います。能の「葵上」原作からすごくかけ離れちゃってるけど、600年経ったら、古典じゃないですか。
榎本:そうですね、古典になりましたね。
家塚:あと、大和和紀さんの漫画『あさきゆめみし』の影響も多大です。
榎本:ああ私も、もう完全にそうです。中学とか高校時代に読んだので。
家塚:この漫画を読んだ世代には、『源氏物語』の内容が、知らず知らずに刷り込まれています。特に人物造形については。本文には書いていないこと、特定していないこともたくさんあります。たとえば夕顔にとりついたのは誰かっていう問題はあるわけなんですよね。で、本文には誰とも書いてないんです。だけど六条御息所だと思っていますよね。
榎本:はい。思ってます(笑)。
家塚:室町の注釈書にも六条御息所、って書いてあるんですよね。で、それは一説なんです。だけど、『あさきゆめみし』の中では完全に六条御息所です。知識っていうか、解釈のベースになってくらい影響を与えてる、と指摘された論文を読みました。
榎本:なるほど。大和和紀さん、すごい絶大な影響力。
戸田:結局あれですよね、「葵」の巻で、葵の上を六条御息所が取り殺すところが強烈すぎるんで、じゃあ、この女の生霊としたら六条御息所だろうって、みんな思ってしまって。
家塚:六条御息所の影はあるけれど、本当は一切書いてない。いくつか説はあるけれど、でも視覚化するとやはり、これも文字の面白いところで、文字だけだったら誰でもいいわけじゃないですか。そこは想像できるけれども、視覚化することによって、固定しなくちゃいけないですよね。
榎本:なるほど。すごいです『あさきゆめみし』絶大な影響力ですね。
家塚:侮ってはいけないですね。
戸田:そうなったら、中にはこの元の話どうなんだろう、って気になって『源氏物語』本体を手に取る人が出てくる。
榎本:多いですよね、漫画から、じゃあ誰かの現代語訳にいこうっていう方は。
戸田:映画を見て、これ原作あるのか、じゃあどんな話なのか、ちょっと読んでみたいな、って。
家塚:日本の話だけではなくて、それで外国語に興味を持つ人も多いわけじゃないですか。だから何がきっかけなのかというのは、何でもいいのかなと。
榎本:そうですね。
家塚:もう一つ思うのは、何でもデジタル化されているじゃないですか。だけど、これ、このデジタルっていうものは千年後とかどうなっているのか、と、ふと思うことがあって、でも紙だったら、千年後は残らないものも多いけど、でも、かろうじて残っていくっていう。
紫式部の和歌にもあるんです、この書き留めたものは誰が読むのだろうか…いや書き留めているから残ってるでしょ、そういう歌を詠んでるってすごいなと。
と、いうことで、皆さん図書館に行きましょうというオチですよね。
榎本:(笑)はい、ぜひ紙媒体も。
家塚:本は装丁もね。
榎本:大事です。装丁は大事。
家塚:与謝野晶子の源氏がそうですよね。与謝野源氏って、装丁がとても綺麗なんです。
榎本:与謝野晶子の本って、全て装丁が綺麗ですよね。
家塚:そうですね、もうミュシャだし。だけど、与謝野源氏のあの装丁があるから『源氏物語』の本って、谷崎源氏も、本の美しさがあるのかと。
谷崎源氏は、「桐壺」の中扉を描いてるのが安田靫彦(ゆきひこ)なんですね、挿図も安田靫彦や、前田青邨(せいそん)だったりで、谷崎潤一郎と同じ時代に生きた日本画家が描いているので。やはり『源氏物語』の本の装丁も貴重と思うんですけど、それは与謝野晶子が最初かなと。彼女は、江戸時代に出版された絵入りの『源氏物語』を大事にしていたといわれています。江戸時代に版本で出て、また流行するんです。
榎本:やっぱり百年後に絵巻ができたというのが大きいのかもしれないですよね
家塚:そうですね。
あと室町になると屏風になります。『源氏物語』って、読むのは大変ですけど、絵がどんと「源氏です」とあると、あー源氏だ!ってやはり思いますよね。婚礼調度にもなります。あと今、春画の展覧会を細見美術館(※2)でやっていますけれども、大名のお姫さまたちの婚礼調度に、源氏の春画持っていくんですよね。
榎本:そうなんですか?!
家塚:何て立派な豪華装丁春画!と思ったら、婚礼調度だそうです。
榎本:へえー!
家塚:はい、源氏なんですよ。それは『偐紫田舎源氏(にせむらさきいなかげんじ)』をベースにした春画。何でも源氏なんですよね。
榎本:『源氏物語』を題材にした春画、っていうのがあるんですね。
家塚:それはしやすいですよね。
榎本:そうですね確かに。
家塚:はい、記録にも室町時代の伏見宮貞成親王の日記『看聞(かんもん)日記』には、枕絵について出てくるんです。
榎本:そうなんですか『看聞日記』に、ありとあらゆるところで。
家塚:そうなんですよね。
戸田:その春画の題材になるような話を書いたから、紫式部は地獄に落とされたっていう。
榎本:言われてますよね。
家塚:でもね、正確に言うと、題材よりも、何がいけないかっていうと、嘘ついたことなんですよね。
戸田:創作をしたっていうこと。
家塚:創作っていうのは嘘じゃないですか。仏教の教えでは、嘘というのはいけないんですよ。
戸田:嘘って現実にないことだから。
家塚:だから、嘘をついたっていうことで地獄に落ちるんです。物語というのは嘘なので。
榎本:へえ、じゃあ、作家は全員嘘つきってことになるんですね。
家塚:はい。
榎本:あらーそんな…。
家塚:でも、その裏返しで石山寺の観音の化身なんです。
榎本:(笑)
戸田:結局、小野篁(おののたかむら)が助けてくれて。
榎本:そうですね。お隣で頑張って。
家塚:隣でね。だから、そういう話もなんかちょっとずつ、いろんなところでくっついていくという。
榎本:後付けでみんな楽しんでいますね。
(一同):(笑)
家塚:こうやって笑えるじゃないですか。だから、結構皆さんよく昔から、なるほどって思っているんだろうなと。
いやあでも、でもちゃんと本当にうまくできていますよ。嘘も方便なんで全て。方便として、紫式部は『源氏物語』
を書きました。だから石山寺の観音の化身として、方便、使いましたという救いが。
戸田:その嘘によって、衆生が救われたというか、楽しんでくれたからっていう。
家塚:本当に、嘘も方便って便利だと思ったけど、でも説話でもそう書いてあるし、その辺をうまく作って拾って、
能の『源氏供養』にもなっていますし。
榎本:いやあ、面白いですね。本当にこんなに『源氏物語』広がっていくものなんですね。
家塚:そうですね。ありがとうございます。
榎本・戸田:ありがとうございました。
※1 インタビューは10月25日(金)に行われ、歌舞伎座での『源氏物語』公演が含まれた「錦秋十月大歌舞伎」は26日(土)に千穐楽
※2 細見美術館「美しい春画-北斎・歌麿、交歓の競艶-」展は、9月7日(土)~11月24日(土)開催
榎本:最後は、本当にシンプルな質問なんですけれども、あの、『源氏物語』が今もなお読み継がれている理由っていうのを、お話しいただければ。
家塚:まずは読み継がれていることがすごいと思いますね。今読んで、千年前にこんな面白いことがあったんだなすごいね、って再評価されているのではなくて、ずっと常に読者がいたこと。それがその時代によって解釈されて。注釈書も出ているわけじゃないですか。常に最新のメディアを通して発信されている。だから、『源氏物語』ができて約百年後というのが、大絵巻ブームで、優れた絵師に描かせた絵巻物ができる。それが、九百年ぐらい前にできた国宝「源氏物語絵巻」と言われている絵巻物です。
一方で、『源氏物語』を真似た短いお話を作っていく。それは残らなかったんですが。
戸田:残ったのは『更級(さらしな)日記』ぐらいですね。
家塚:菅原孝標女(すがわらたかすえのむすめ)も、本当に共感しますね。あと藤原俊成(しゅんぜい)は、その「源氏見ざる歌詠みは遺恨の事也」と言っています。『源氏物語』の中には795首あるから、やはりすごい一大歌集なんですよね。だから歌人ならば『源氏物語』の和歌は読んでるよねって、知ってるよねって。それを踏まえて、歌詠まないといけないよねっていう。俊成が言ったので、鎌倉時代以降の人はみんな、源氏の歌を読んだ上で歌を詠むとか。
榎本:理解しておかないと、歌すら読めない。
家塚:周りも理解できない。本人は『源氏』を踏まえて読んでいるのに、この歌そんな面白くないよねって言ってしまうと、君はそもそも『源氏』を知らないのか、みたいな。
榎本:(笑)
家塚:もうなんかね、いたたまれないでしょうね、その会話もね。室町時代になると能が流行れば、『源氏物語』の能もできる。屏風にも浮世絵にもなる。今にいたっては大河ドラマになります。源氏供養を踏まえた『刀剣乱舞』も。最近一番びっくりしたのは、今日(※1)までかな、歌舞伎座で『源氏物語』やってるんですね。
榎本:あ、やってるんですね。
家塚:(坂東)玉三郎が六条御息所(ろくじょうのみやすどころ)で。
榎本:えー!ものすごく見たいです。
家塚:玉三郎って、2000年にやったときは藤壺だったんです。今回、光源氏が(市川)染五郎なんです。
常に最新のメディアで、今、話題の人が光源氏を演じています。古くは市川雷蔵もあったし長谷川一夫もあったし…宝塚でもやるし、いろいろやるけど、ついに玉三郎の六条御息所に対して染五郎かぁ、一番若いところにきましたよね。
榎本:そうですね。でも、確かに今、光源氏できるのは彼かもしれないですね。
家塚:ね、納得しますよね。最初はえっと思っても。
榎本:そうか、でも六条御息所、観たいですね、お岩さん並みに怖いでしょうね。
戸田:めちゃくちゃ、これは呪い殺されても仕方がないとか。
榎本:ああいう何か、生きているのか生きてないのか分からないとうのを演じさせると、もう玉三郎の上を行かれる方いらっしゃらないですよね。
家塚:玉三郎さんの六条御息所に対しての、その染五郎っていうことが、これはネタにできるな、と思いました。
やはり常に読まれるだけではなく、新しいものが生まれてくるっていうところが面白いなと思います。し、それがね、大河ドラマがきっかけだったのかもしれないですけど。でも、大河ドラマだけにとどまってないわけじゃないですか。大河でブームですねって言いながらも、染五郎が光源氏とうのは、一歩二歩進んでいる。多分こういうふうにして『源氏物語』って読まれているんだろうなと思いますね。
榎本:その時代、その時代に、合わせてというか。
家塚:合わせているのか、先を行っていくのかが、ちょっとわからないところありますけれども。だから、やはり社会現象になるんでしょうね。
榎本:いやあ面白い。
戸田:だから、それだけ後の時代の、時代を経た人でも、この題材で何かを作ってみたいと思わせる魅力があると。
家塚:あると思いますね。でも、なんだろうなと思うんですよね。でも、それが本当に『源氏物語』のテキストだけ、テキストからではないような気もするんです。だから本当に今、二次創作と言いましたけど、二次三次四次という流れで、作られていることも多いかと思います。能の「葵上」原作からすごくかけ離れちゃってるけど、600年経ったら、古典じゃないですか。
榎本:そうですね、古典になりましたね。
家塚:あと、大和和紀さんの漫画『あさきゆめみし』の影響も多大です。
榎本:ああ私も、もう完全にそうです。中学とか高校時代に読んだので。
家塚:この漫画を読んだ世代には、『源氏物語』の内容が、知らず知らずに刷り込まれています。特に人物造形については。本文には書いていないこと、特定していないこともたくさんあります。たとえば夕顔にとりついたのは誰かっていう問題はあるわけなんですよね。で、本文には誰とも書いてないんです。だけど六条御息所だと思っていますよね。
榎本:はい。思ってます(笑)。
家塚:室町の注釈書にも六条御息所、って書いてあるんですよね。で、それは一説なんです。だけど、『あさきゆめみし』の中では完全に六条御息所です。知識っていうか、解釈のベースになってくらい影響を与えてる、と指摘された論文を読みました。
榎本:なるほど。大和和紀さん、すごい絶大な影響力。
戸田:結局あれですよね、「葵」の巻で、葵の上を六条御息所が取り殺すところが強烈すぎるんで、じゃあ、この女の生霊としたら六条御息所だろうって、みんな思ってしまって。
家塚:六条御息所の影はあるけれど、本当は一切書いてない。いくつか説はあるけれど、でも視覚化するとやはり、これも文字の面白いところで、文字だけだったら誰でもいいわけじゃないですか。そこは想像できるけれども、視覚化することによって、固定しなくちゃいけないですよね。
榎本:なるほど。すごいです『あさきゆめみし』絶大な影響力ですね。
家塚:侮ってはいけないですね。
戸田:そうなったら、中にはこの元の話どうなんだろう、って気になって『源氏物語』本体を手に取る人が出てくる。
榎本:多いですよね、漫画から、じゃあ誰かの現代語訳にいこうっていう方は。
戸田:映画を見て、これ原作あるのか、じゃあどんな話なのか、ちょっと読んでみたいな、って。
家塚:日本の話だけではなくて、それで外国語に興味を持つ人も多いわけじゃないですか。だから何がきっかけなのかというのは、何でもいいのかなと。
榎本:そうですね。
家塚:もう一つ思うのは、何でもデジタル化されているじゃないですか。だけど、これ、このデジタルっていうものは千年後とかどうなっているのか、と、ふと思うことがあって、でも紙だったら、千年後は残らないものも多いけど、でも、かろうじて残っていくっていう。
紫式部の和歌にもあるんです、この書き留めたものは誰が読むのだろうか…いや書き留めているから残ってるでしょ、そういう歌を詠んでるってすごいなと。
と、いうことで、皆さん図書館に行きましょうというオチですよね。
榎本:(笑)はい、ぜひ紙媒体も。
家塚:本は装丁もね。
榎本:大事です。装丁は大事。
家塚:与謝野晶子の源氏がそうですよね。与謝野源氏って、装丁がとても綺麗なんです。
榎本:与謝野晶子の本って、全て装丁が綺麗ですよね。
家塚:そうですね、もうミュシャだし。だけど、与謝野源氏のあの装丁があるから『源氏物語』の本って、谷崎源氏も、本の美しさがあるのかと。
谷崎源氏は、「桐壺」の中扉を描いてるのが安田靫彦(ゆきひこ)なんですね、挿図も安田靫彦や、前田青邨(せいそん)だったりで、谷崎潤一郎と同じ時代に生きた日本画家が描いているので。やはり『源氏物語』の本の装丁も貴重と思うんですけど、それは与謝野晶子が最初かなと。彼女は、江戸時代に出版された絵入りの『源氏物語』を大事にしていたといわれています。江戸時代に版本で出て、また流行するんです。
榎本:やっぱり百年後に絵巻ができたというのが大きいのかもしれないですよね
家塚:そうですね。
あと室町になると屏風になります。『源氏物語』って、読むのは大変ですけど、絵がどんと「源氏です」とあると、あー源氏だ!ってやはり思いますよね。婚礼調度にもなります。あと今、春画の展覧会を細見美術館(※2)でやっていますけれども、大名のお姫さまたちの婚礼調度に、源氏の春画持っていくんですよね。
榎本:そうなんですか?!
家塚:何て立派な豪華装丁春画!と思ったら、婚礼調度だそうです。
榎本:へえー!
家塚:はい、源氏なんですよ。それは『偐紫田舎源氏(にせむらさきいなかげんじ)』をベースにした春画。何でも源氏なんですよね。
榎本:『源氏物語』を題材にした春画、っていうのがあるんですね。
家塚:それはしやすいですよね。
榎本:そうですね確かに。
家塚:はい、記録にも室町時代の伏見宮貞成親王の日記『看聞(かんもん)日記』には、枕絵について出てくるんです。
榎本:そうなんですか『看聞日記』に、ありとあらゆるところで。
家塚:そうなんですよね。
戸田:その春画の題材になるような話を書いたから、紫式部は地獄に落とされたっていう。
榎本:言われてますよね。
家塚:でもね、正確に言うと、題材よりも、何がいけないかっていうと、嘘ついたことなんですよね。
戸田:創作をしたっていうこと。
家塚:創作っていうのは嘘じゃないですか。仏教の教えでは、嘘というのはいけないんですよ。
戸田:嘘って現実にないことだから。
家塚:だから、嘘をついたっていうことで地獄に落ちるんです。物語というのは嘘なので。
榎本:へえ、じゃあ、作家は全員嘘つきってことになるんですね。
家塚:はい。
榎本:あらーそんな…。
家塚:でも、その裏返しで石山寺の観音の化身なんです。
榎本:(笑)
戸田:結局、小野篁(おののたかむら)が助けてくれて。
榎本:そうですね。お隣で頑張って。
家塚:隣でね。だから、そういう話もなんかちょっとずつ、いろんなところでくっついていくという。
榎本:後付けでみんな楽しんでいますね。
(一同):(笑)
家塚:こうやって笑えるじゃないですか。だから、結構皆さんよく昔から、なるほどって思っているんだろうなと。
いやあでも、でもちゃんと本当にうまくできていますよ。嘘も方便なんで全て。方便として、紫式部は『源氏物語』
を書きました。だから石山寺の観音の化身として、方便、使いましたという救いが。
戸田:その嘘によって、衆生が救われたというか、楽しんでくれたからっていう。
家塚:本当に、嘘も方便って便利だと思ったけど、でも説話でもそう書いてあるし、その辺をうまく作って拾って、
能の『源氏供養』にもなっていますし。
榎本:いやあ、面白いですね。本当にこんなに『源氏物語』広がっていくものなんですね。
家塚:そうですね。ありがとうございます。
榎本・戸田:ありがとうございました。
※1 インタビューは10月25日(金)に行われ、歌舞伎座での『源氏物語』公演が含まれた「錦秋十月大歌舞伎」は26日(土)に千穐楽
※2 細見美術館「美しい春画-北斎・歌麿、交歓の競艶-」展は、9月7日(土)~11月24日(土)開催
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