本研究センターでは、2018年4月より新しい取り組みとして、客員研究員を含む研究員間の学問的な交流、意見交換、そして共同研究の可能性を探ることを目的とし、ラテンアメリカ研究センター内研究会(名称:IELAK研究会)を開催しています。
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本発表では、ブラジルにおける近年のアフロブラジル作家ブームを取り上げ、イタマール・ヴィエイラ・ジュニオル『曲がった鋤』などを紹介した。ただし、その原点には20世紀初頭に活躍した黒人奴隷の血を引くリマ・バレットの存在があったことを忘れてはならない。社会問題を辛辣に告発するだけでなく、ユーモア溢れる作風で死後100年を経た今でも読み継がれる作家である。さらに、翻訳論については、グラシリアノ・ハーモス『サンベルナルド』の各国語訳(英、伊、西)の事例を挙げ、先行研究を踏まえつつ、北東部文化らしさと日本語としての読みやすさのバランスを図る重要性を指摘した。
発表者 | 岐部 雅之 |
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日時 | 2024年10月31日(木) |
会場 | 京都外国語大学11号館ラテンアメリカ研究センター |
本発表では日系ブラジル移民の「住居」をめぐる表象に着目した。そのため、戦前の写真集に表れる移民が住む家を取り上げ、木材を主とする簡易住宅から煉瓦建てへの移行を分析し、緩やかな経済成功および社会上昇過程の言説を示唆した。また、日本語新聞の社説および記事を取り上げ、住居と関連のある衛生および性役割の問題を提示し、さらなる調査の必要性を主張した。補助資料として移民が詠む短詩型(短歌)作品をいくつか紹介し、正史の流れから排除される感情を拾い上げるその資料の重要性を述べた。最後は博物館学の観点から移民の居宅をめぐる展示物を再現・復元の問題性を念頭に置き、論じた。
発表者 | フェリッペ・モッタ |
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日時 | 2023年7月13日(木) |
会場 | 京都外国語大学1号館167教室 |
カリブ領域に位置する旧オランダ領アンティル6島のうち、オランダ構成国となったキュラソーとアルバ、そして、カリブ海に面したアメリカ大陸部にあり、1975年にオランダから独立したスリナムが採った、それぞれ異なる主権獲得への道のりから、21世紀における主権のあり方を検証した。歴史的背景や地域性も影響するが、21世紀の今日において、主権獲得は必ずしも独立とイコールではない。
発表者 | 兒島 峰 |
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日時 | 2023年5月12日(金) |
会場 | 京都外国語大学1号館157教室 |
本発表は、ラテンアメリカで起こっている広範な脱植民地運動の一環として、先住民作家の出現について焦点をあてた。
メキシコとグアテマラのマヤ先住民作家の事例を、その歴史的、理論的、思想的背景と、そこから生まれた文学批判を考慮に入れながら議論した。
私の全体的な主張は、この脱植民地運動は、覇権的な文学の規範を覆す方向に向かっているということである。
発表者 | ホセ・アレホス |
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日時 | 2022年10月28日(金) |
会場 | ラテンアメリカ研究所【ハイブリッド開催】 |
アステカ社会(後1325年~1521年)の神話は、荒唐無稽なおとぎ話ではない。テノチカ人(アステカ王国の中核集団)は、既に存在していた「四つの太陽の神話」に、続編として「五番目の太陽の創造神話」を編纂し「歴史」を復元した。その目的は、自国民や他者に発信するプロパガンダ(情報戦略)にあり、これを通して、テノチカ人の選民思想の浸透や王国のナショナリズムの高揚を促した。神話として語られる各エピソードを丁寧に読み解き、これらの断片(プロット)を歴史資料として捉え総合的に考察すると、興味深い姿(ストーリー)が見えてくる。さらに、神話の製作者チームは各方面の知識に造詣が深く、これらを体系的にまとめ上げた完成度の高さに驚かされる。本発表では、なぜ神話が「歴史」であったのか、そして、なぜ「五番目の太陽」はテノチカ人によって「私物化」されたと言えるのかについて議論した。
発表者 | 嘉幡 茂(かばた しげる) |
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日時 | 2022年5月30日(金) |
会場 | ラテンアメリカ研究所【オンライン開催】 |
メソアメリカやアンデス地域の古代民族の間では、ピューマやジャガーなどの大型ネコ科動物は、さまざまな宇宙論的、宇宙創生論的思考を形成、定義、理解するための発想の源となっていた。これらの動物の特徴的な身体的特性や捕食行動は、芸術的着想の源でもあり、宗教的、トーテム的、軍事的要素の基礎となり、支配王朝にさえ影響を与えた。それは、チャビン・デ・ワンタル、ティアワナコ、テオティワカン、テノチティトランなどの代表的な遺跡に見られるように、古代アメリカの縦横に広がる建造物群の中に反映されている。
発表者 | アルフォンソ・ガルドゥーニョ |
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日時 | 2022年2月21日(金) |
会場 | ラテンアメリカ研究所【オンライン開催】 |
戦前期ブラジル日系社会は活発なメディアを誇っていた。本発表ではエスニック・メディア研究を概観してから、ブラジルの「邦字新聞」の基本的な構成および先行研究を紹介した。また、新聞と日系移民の「戦争」の関連を論じ、柳条湖事件や盧溝橋事件を含むアジア戦線の情報が邦字新聞においてどういう風に論じられたかを取り上げた。最後は、新聞に載った「聖戦」という論説を通して日系移民と戦争の意識を探る可能性を模索した。
発表者 | フェリッペ・モッタ |
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日時 | 2021年10月29日(金) |
会場 | ラテンアメリカ研究所【オンライン開催】 |
本発表は、今年度から着手した研究のその背景と目的の説明を中心に行った。研究の目的は、高齢化が進行するブラジルで、高齢の家族を介護するということがブラジルの家族の機能と成員間の関係に対してどのような変化をもたらしているのかを明らかにすることである。ブラジルではいまだ「家族介護神話」が根強いが、今後は、高齢者介護の担い手に着目して社会史を読み直し、介護サービスを利用する家族へのインタビュー調査等を行う予定である。
発表者 | 渡会 環 |
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日時 | 2021年9月30日(木) |
会場 | ラテンアメリカ研究所【オンライン開催】 |
サントス港移民局の“Lista Geral de Passageiros”と海外興業株式会社「伯剌西爾行移民乗客名簿」という、ブラジルと日本双方の史料のクロスチェックから、日本の移民船航海における感染症発生の実態を明らかにした。そして、移民船における感染症流行とその予防や治療に、「文明の闘い」としての性格を見出し、1930年代ブラジルにおける排日運動を防疫・保健衛生の面から再検討する可能性を展望した。
発表者 | 根川 幸男 |
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日時 | 2021年7月22日(木) |
会場 | ラテンアメリカ研究所【オンライン開催】 |
現代自由民主主義にとり両義的なポピュリズムとしてベネズエラ・チャベス政権を扱う。代表制民主主義において「代表されていない」と感じる人々や新自由主義政策で疲弊した一般庶民の声を代弁する形でチャベスは登場した。参加型民主主義を新憲法で制度化し、貧困解決や参加促進を目指した。然し、そうした制度改革は、政敵の排除による多元主義の欠如や自身の連続再選正当化をも招き入れた。同国の政治社会対立を分析したい。
発表者 | 林 和宏 |
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日時 | 2021年5月21日(金) |
会場 | ラテンアメリカ研究所【オンライン開催】 |
本発表では、コロナ禍の中で生じたペルーのビスカラ政権の崩壊過程を、主として司法戦争(lawfare/guerra judicial/guerra jurídica)の観点から詳述した。また、サガスティ暫定政権のもとで発生したワクチンゲート(vacunagate)、そして研究会前日に投開票が行われた大統領選挙について短く述べた。
発表者 | 中沢 知史 |
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日時 | 2021年4月12日(月) |
会場 | ラテンアメリカ研究所【オンライン開催】 |
ブラジルの都市部における犯罪者の多くは人種秩序の下位に置かれ、社会関係資本を持たない国内移民の子孫である。経済の悪化と治安の悪化は明確に結びついており、その結果、犯罪者に対する憎悪が人種偏見を強化している。発表者が翻訳したドラウジオ・ヴァレーラ著『カランジル駅—ブラジル最大の刑務所における囚人たちの生態』が執筆された背景や著者が同書に込めた思いを解説することで、ブラジルの治安問題の根源的な原因を探った。
発表者 | 伊藤 秋仁 |
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日時 | 2021年3月10日(水) |
会場 | ラテンアメリカ研究所【オンライン開催】 |
2012年からのエステロ・ラボン遺跡の調査の目的はメソアメリカ先古典期のエリート層以外のオルメカ人の日常生活を明らかにしオルメカ社会全貌の解明に寄与する事である。これまでの発掘成果は古典期ビジャ・アルタ社会に関するデータがほとんどであった。これらのデータがベラクルス州南部におけるオルメカ社会からビジャ・アルタ社会への文化変容と維持の様相を理解する手助けとなり、発表ではこの点を中心に述べられ、今後の調査の方向性が示された。
発表者 | 古手川 博一 |
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日時 | 2021年2月18日(木) |
会場 | ラテンアメリカ研究所【オンライン開催】 |
先スペイン期の建造物について述べる際、建築について、その様式の変化や発展からその時代の社会について語られる。これと関連し、本発表では中央メキシコに位置する古代都市・トラランカレカ遺跡出土の遺物を分析した考古科学の手法とその結果、ならびに解釈について述べた。
発表者 | フリエタ マルガリータ・ロペス フアレス |
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日時 | 2020年12月10日(木) |
会場 | ラテンアメリカ研究所【オンライン開催】 |
メキシコ中央高原の形成期終末期に「宇宙の都」の建設が加速した。発端はポポカテペトル火山の大噴火(後70年頃)にあったが、壊滅的な被害はパラダイムシフトを誘発させた。これが「宇宙の都」の建設に拍車を掛けた。本発表ではこの社会変容について論じた。
発表者 | 嘉幡 茂 |
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日時 | 2020年10月22日(木) |
会場 | ラテンアメリカ研究所【オンライン開催】 |
ラテンアメリカにおける先住民のための学校教育に関する政策の現状について議論した。とくに、先住民のための学校教育の特異性と質を高めることを目的として、教育心理学の観点から、先住民学校教育において用いられている教授法の適切性を検討した。
発表者 | モイゼス・カルヴァーリョ |
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日時 | 2020年8月28日(金) |
会場 | ラテンアメリカ研究所【オンライン開催】 |
現中米五カ国を包含するグアテマラ総監領・植民地時代のフランシスコ会、ドミニコ会、メルセデス会、イエズス会の布教活動の地理的分布、修道会士と世俗司祭の布教をめぐる葛藤、混淆した先住民信仰の事例などについて述べた。
発表者 | 桜井 三枝子 |
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日時 | 2020年2月14日(金) |
会場 | ラテンアメリカ研究所 |
ヨーロッパにおけるエネルギー移行についてのさまざまな研究アプローチを分析し、ラテンアメリカの再生可能エネルギーの状況についてのデータを見ながら、ラテンアメリカにおけるエネルギー移行を調べるための枠組みを考察した。
発表者 | ユイス・バユス |
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日時 | 2019年12月18日(水) |
会場 | ラテンアメリカ研究所 |
本発表では、本研究所が獲得した学術研究振興基金採択研究課題「ニカラグアの考古学及び文献学資料評価と発展への応用—アメリカ地中海文化圏研究へのアプローチ—」(2015年度・2016年度)のもと、16世紀ニカラグアの文献資料を紹介し、その分析結果を報告した。
発表者 | 立岩 礼子 |
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日時 | 2019年10月31日(木) |
会場 | ラテンアメリカ研究所 |
発表では2013年から開始した「アメリカ地中海文化圏研究」の中から、先スペイン期アメリカ地中海の交流に関する考古学的研究と題して、アメリカ地中海における「海の道」を視点に当該地域を5つ区分し、考古学資料を用いて「ヒトとモノの交流」の復元を試みた。
発表者 | 南 博史 |
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日時 | 2019年7月4日(木) |
会場 | ラテンアメリカ研究所 |
米国のコモンウェルスであるプエルトリコにおける、1930年代に高揚したHispanidadに基づく人種混淆論が抱える今日的問題について分析し、この過程で生じているタイノ族による先住民文化と、黒人奴隷に端を発するアフロ文化のそれぞれ復興運動が、人種混淆論やコロニアリズムに与えるインパクトについて考察した。
発表者 | 牛島 万 |
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日時 | 2019年2月28日(木) |
会場 | ラテンアメリカ研究所 |
18世紀末以降、リオのポルトガル人奴隷貿易商は大西洋に一大通商網を築く。19世紀に内陸のパライーバ川流域に奴隷制コーヒー生産地ヴァソーラスが誕生した。帝政時代に「カフェの都」となり、この発展がブラジルの内陸部と古都リオを結ぶことになる。
発表者 | 住田 育法 |
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日時 | 2019年1月15日(金) |
会場 | ラテンアメリカ研究所 |
植民地時代の史料をもとに、後古典期後期のマヤ社会において、人口の大多数を占めていた平民が、王国の政治に大きな発言力を持ち、その決定を左右し得たことを示した。そしてそれは古典期終末の「マヤ文明の崩壊」研究に重要な見方を提供するはずであることも述べた。
発表者 | 大越 翼 |
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日時 | 2018年9月20日(木) |
会場 | ラテンアメリカ研究所 |
ブラジルは、奴隷制を発展させ、黒人に対する白人の優越と支配を確立し、奴隷解放した後、ヨーロッパから大量の自発的移民を受け入れた。19世紀から20世紀前半の国家的な人種に対する意識の変遷をブラジルの移民の導入や社会上昇を背景に分析した。
発表者 | 伊藤 秋仁 |
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日時 | 2018年6月29日(金) |
会場 | ラテンアメリカ研究所 |
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