2024/12/12 18:30:00 宇治市源氏物語ミュージアム館長に聞くー『源氏物語と今』ー【全文】vol.1
GAIDAI BIBLIOTHECA
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宇治市は、『源氏物語』の最後を飾る宇治 十帖の主な舞台。この特集にあたり、宇治市にある源氏物語ミュージアムの家塚智子館長から、『源氏物語』にまつわる貴重なお話を伺ってきました。ミュージアムをご丁寧にご案内くださった後は会話も弾み、家塚館長の『源氏物語』への溢れる愛が伝わる取材となりました。
インタビューは 60 分に渡り、『GAIDAI BIBLIOTHECA vol.241』に対談内容をすべて掲載することができなかったため、こちらの「図書館ブログ」に掲載いたします。 (聞き手:榎本恭子、戸田奈緒子)
宮中に与えた影響
榎本:本日は、よろしくお願いいたします。私は『源氏物語』について本当に不勉強で、大和和紀さんの描かれた漫画の『あさきゆめみし』を過去に読んだことがあるだけなのですが、この取材のために少しだけ勉強しました。本日いくつか質問させていただきたいと思っています。
まず最初に、『源氏物語』が、当時の宮中に与えた影響というのを、お伺い出来たらと思います。
家塚:宮中に与えた影響は様々あると思うのですが、まず、当時は、漢籍や和歌に対して、仮名文字で書かれた物語は、所謂サブカルチャーのような扱いでした。ところが、『源氏物語』が執筆され、高く評価されたことによって、物語自体の評価があがりました。語弊があるかもれませんが、この数十年の間で、漫画やアニメが高く評価され、現代の日本を代表する文化になったじゃないですか。それと同じと考えていただくと分かりやすいかもしれませんね。次に、やはり女性が書いた文学が一気に花開いたっていうことが大きいのかなと思いますね。『源氏物語』の時代は、紫式部の時代よりも少し前の時代設定にして書きつつも、時事ネタも織り交ぜているところもあるので、やはり皆さん熱心に読んだし、面白かったのではないでしょうか。長編化させたのは藤原道長のサポートだと思うのですが、やはり文字の力は大きいですよね。
榎本:やはり、清少納言の『枕草子』があったからこその『源氏物語』っていう。
家塚:最近言われていますよね。実際には紫式部と清少納言は時期はずれるけれども、やはり書いたものは読んでいるだろうから意識はしているでしょうね。
榎本:大河ドラマでは、彰子(しょうし)のところに一条天皇が九年間くらい全く来られなくて、それで一条天皇に興味を持ってもらうために書いたという内容でしたが、やはりそういう戦略もあったのでしょうか?
家塚:道長的にはあったのでしょうね。だけど最初から、道長が『源氏物語』を書かせたのかどうかはわからないですよね。よく言われるのは、紫式部の夫の宣孝(のぶたか)が亡くなって、悲しみを紛らわせるためにちょっと書いていたものが話題を呼び、宮仕えして、そこから長編化して話題になり、一条天皇の目にも留まったと。最初から『源氏物語』ありきかどうかというのは、研究者の間で議論がわかれるところかなと思います。大河ドラマ監修の倉本先生は、「道長プロデュース」というお説ですから、ドラマではそう描こう!という感じです。そこはまだ決着がついてないんじゃないでしょうか。
ただ、その面白さというのが、物語が面白いだけではなくて、これが政治的に利用されたのかというと、何か嫌な感じがしますけれども、やはり皆がすごく興味を持ったというのは事実なんだろうなと。それが結局、政にも影響を与えたかどうかっていうのは、また評価の問題にはなりますけれども、やはりその当時の読者たちも一生懸命読んだのだろうと思います。
角田光代さんにお話を伺ったときにおっしゃっていたのですが、執筆をやめさせてもらえなかったんじゃないかと。作家のお立場としたら、そういうご意見なんだなと思いました。
榎本:少年ジャンプのようですね。もうどうしようもなく人気が出た漫画に関しては、どんどん。
家塚:そう、引き延ばし。やめたくても長編化していくという。角田さんもおっしゃっていて、「少年ジャンプの発売日が楽しみっていうのと一緒ですよ」と。
榎本:それを生きがいにしている人たちも多くいる中で。
家塚:最初は小さなお話だったかもしれないけれども、本人の才能も含めて周りのプロデュースもあって、どんどん長編化することによってその当時の人々に大きな影響を与えて、ついには政まで影響を及ぼしたのかな、というところかなと思いますね。やはり面白いものっていうのは人の気持ちを動かすものなんだなっていうことを今回の大河ドラマ見ていても、改めて思いました。
榎本:道長は本当に『源氏物語』を政治に利用したのでしょうか?
家塚:利用したでしょうね。彰子のため。一番の読者は彰子になりますよね。最初は違ったかもしれないけれど、一番の熱心な読者は彰子でしょうし、その辺は後世の人たち、後世の読者たちもわかっている肌感覚です。だから彰子が書かせたっていう説もありますね。彰子と『源氏物語』、紫式部っていうのは切っても切っても切り離せないものだと思います。その結果、政治に利用したというか、その当時の社会に大きく影響を与えたと思います。
戸田:当時は、今ほど娯楽がない時代ですから。人が読んでいると、読もうかなってと思う人が今よりよっぽど多いと思いますね。
家塚:あとはドラマに影響されているかもしれませんが、例えば『源氏物語』の中で「絵合(えあわせ)」の巻では、まさに絵を合わせるんですね。それもやはり帝の関心を引くためにやる。本当そういうふうに書いてあるんです。絵を持ち寄ってどちらがいいと優劣を競います。明らかに一大政治イベントで、それをわかっていて書いているんだなって改めて感じます。
榎本:もうあれですね、一条天皇が最初に彰子を寵愛していたら、この物語はできなかった可能性も。
家塚:あるかもしれないですよね。別の形で作られ残ったかもしれない。『源氏物語』の中にも、今は残ってないような物語の題名がたくさんありますから。本の名前だけ残っているとか、やはり散逸されるんですね、面白くなかったら、誰も書き写さないし(笑)。
榎本:(笑)後世の人たちが残していかないと。
家塚:いろいろ考え方はあると思うんですけど。もしもっていうのは、あまりね。
榎本:いろんな人たちが、もしもで考えて。
家塚:歴史研究の中でもしも、っていうのはタブーですけど。でも、あえて考えるならば、そうですよね。
榎本:それを上手に大河が描いてくれているという。
家塚:そう思いますね。
戸田:紫式部が宮仕えをしてなかったら、その宮中のことを詳しく書いたりはできなかったということですよね。
家塚:それはもう明らかにね。宮仕えしたから知り得たっていう。「家政婦(夫)は見た」じゃないですけど、一大政治小説になるのは宮仕えしたから。それは間違いない。
戸田:女房は見た、ですよね
家塚:本当にそうです(笑)。本当に垣間見てますからね。
榎本:(笑)そういう目線で見たら面白いですよね。
家塚:『源氏物語』後半は、完全にそうです。女房が見た!
インタビューは 60 分に渡り、『GAIDAI BIBLIOTHECA vol.241』に対談内容をすべて掲載することができなかったため、こちらの「図書館ブログ」に掲載いたします。 (聞き手:榎本恭子、戸田奈緒子)
宮中に与えた影響
榎本:本日は、よろしくお願いいたします。私は『源氏物語』について本当に不勉強で、大和和紀さんの描かれた漫画の『あさきゆめみし』を過去に読んだことがあるだけなのですが、この取材のために少しだけ勉強しました。本日いくつか質問させていただきたいと思っています。
まず最初に、『源氏物語』が、当時の宮中に与えた影響というのを、お伺い出来たらと思います。
家塚:宮中に与えた影響は様々あると思うのですが、まず、当時は、漢籍や和歌に対して、仮名文字で書かれた物語は、所謂サブカルチャーのような扱いでした。ところが、『源氏物語』が執筆され、高く評価されたことによって、物語自体の評価があがりました。語弊があるかもれませんが、この数十年の間で、漫画やアニメが高く評価され、現代の日本を代表する文化になったじゃないですか。それと同じと考えていただくと分かりやすいかもしれませんね。次に、やはり女性が書いた文学が一気に花開いたっていうことが大きいのかなと思いますね。『源氏物語』の時代は、紫式部の時代よりも少し前の時代設定にして書きつつも、時事ネタも織り交ぜているところもあるので、やはり皆さん熱心に読んだし、面白かったのではないでしょうか。長編化させたのは藤原道長のサポートだと思うのですが、やはり文字の力は大きいですよね。
榎本:やはり、清少納言の『枕草子』があったからこその『源氏物語』っていう。
家塚:最近言われていますよね。実際には紫式部と清少納言は時期はずれるけれども、やはり書いたものは読んでいるだろうから意識はしているでしょうね。
榎本:大河ドラマでは、彰子(しょうし)のところに一条天皇が九年間くらい全く来られなくて、それで一条天皇に興味を持ってもらうために書いたという内容でしたが、やはりそういう戦略もあったのでしょうか?
家塚:道長的にはあったのでしょうね。だけど最初から、道長が『源氏物語』を書かせたのかどうかはわからないですよね。よく言われるのは、紫式部の夫の宣孝(のぶたか)が亡くなって、悲しみを紛らわせるためにちょっと書いていたものが話題を呼び、宮仕えして、そこから長編化して話題になり、一条天皇の目にも留まったと。最初から『源氏物語』ありきかどうかというのは、研究者の間で議論がわかれるところかなと思います。大河ドラマ監修の倉本先生は、「道長プロデュース」というお説ですから、ドラマではそう描こう!という感じです。そこはまだ決着がついてないんじゃないでしょうか。
ただ、その面白さというのが、物語が面白いだけではなくて、これが政治的に利用されたのかというと、何か嫌な感じがしますけれども、やはり皆がすごく興味を持ったというのは事実なんだろうなと。それが結局、政にも影響を与えたかどうかっていうのは、また評価の問題にはなりますけれども、やはりその当時の読者たちも一生懸命読んだのだろうと思います。
角田光代さんにお話を伺ったときにおっしゃっていたのですが、執筆をやめさせてもらえなかったんじゃないかと。作家のお立場としたら、そういうご意見なんだなと思いました。
榎本:少年ジャンプのようですね。もうどうしようもなく人気が出た漫画に関しては、どんどん。
家塚:そう、引き延ばし。やめたくても長編化していくという。角田さんもおっしゃっていて、「少年ジャンプの発売日が楽しみっていうのと一緒ですよ」と。
榎本:それを生きがいにしている人たちも多くいる中で。
家塚:最初は小さなお話だったかもしれないけれども、本人の才能も含めて周りのプロデュースもあって、どんどん長編化することによってその当時の人々に大きな影響を与えて、ついには政まで影響を及ぼしたのかな、というところかなと思いますね。やはり面白いものっていうのは人の気持ちを動かすものなんだなっていうことを今回の大河ドラマ見ていても、改めて思いました。
榎本:道長は本当に『源氏物語』を政治に利用したのでしょうか?
家塚:利用したでしょうね。彰子のため。一番の読者は彰子になりますよね。最初は違ったかもしれないけれど、一番の熱心な読者は彰子でしょうし、その辺は後世の人たち、後世の読者たちもわかっている肌感覚です。だから彰子が書かせたっていう説もありますね。彰子と『源氏物語』、紫式部っていうのは切っても切っても切り離せないものだと思います。その結果、政治に利用したというか、その当時の社会に大きく影響を与えたと思います。
戸田:当時は、今ほど娯楽がない時代ですから。人が読んでいると、読もうかなってと思う人が今よりよっぽど多いと思いますね。
家塚:あとはドラマに影響されているかもしれませんが、例えば『源氏物語』の中で「絵合(えあわせ)」の巻では、まさに絵を合わせるんですね。それもやはり帝の関心を引くためにやる。本当そういうふうに書いてあるんです。絵を持ち寄ってどちらがいいと優劣を競います。明らかに一大政治イベントで、それをわかっていて書いているんだなって改めて感じます。
榎本:もうあれですね、一条天皇が最初に彰子を寵愛していたら、この物語はできなかった可能性も。
家塚:あるかもしれないですよね。別の形で作られ残ったかもしれない。『源氏物語』の中にも、今は残ってないような物語の題名がたくさんありますから。本の名前だけ残っているとか、やはり散逸されるんですね、面白くなかったら、誰も書き写さないし(笑)。
榎本:(笑)後世の人たちが残していかないと。
家塚:いろいろ考え方はあると思うんですけど。もしもっていうのは、あまりね。
榎本:いろんな人たちが、もしもで考えて。
家塚:歴史研究の中でもしも、っていうのはタブーですけど。でも、あえて考えるならば、そうですよね。
榎本:それを上手に大河が描いてくれているという。
家塚:そう思いますね。
戸田:紫式部が宮仕えをしてなかったら、その宮中のことを詳しく書いたりはできなかったということですよね。
家塚:それはもう明らかにね。宮仕えしたから知り得たっていう。「家政婦(夫)は見た」じゃないですけど、一大政治小説になるのは宮仕えしたから。それは間違いない。
戸田:女房は見た、ですよね
家塚:本当にそうです(笑)。本当に垣間見てますからね。
榎本:(笑)そういう目線で見たら面白いですよね。
家塚:『源氏物語』後半は、完全にそうです。女房が見た!







