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2023/09/27 09:50:00 トランスジェンダーとして生きるとは【全文】vol.3

  • CategoryGAIDAI BIBLIOTHECA
  • Posted by付属図書館
2023年9月に発行したGAIDAI BIBLIOTHECA(館報)で、「特集:ジェンダーを考える」に掲載された、本学の卒業生である松本友生さんへのインタビューの全文vol.3です。

榎本:ここからお伺いする内容を少し変えたいなと思うのですが、令和2年9月から「京都市パートナーシップ宣誓制度」が開始されました。この制度で救われた方は多いかなと思うのですが、ただ、マイノリティにはすごく認知された制度かもしれないのですが、マジョリティにはまだ認知度っていうのが低い気がしてるんですね。この制度によって良くなったことや、友生さんの立場からもっと改善しないといけないところっていうのがあれば、できれば具体的に教えていただきたいのですが。
松本:本当におっしゃってるとおり、当事者の中では本当に認知度は高くて、実際に利用してるカップルも僕の周りでも複数知っています。その人たちが使うことで生活における安心感にはつながっているという話を聞いて、良かったと思っています。その反面、その人たちがスムーズに使えなかったことも聞いています。「ちょっと確認します」と裏に持っていって「これどういうことですか」というようなことも聞いて、使っている本人たちはわかっていても、マジョリティ側が認知してない環境があります。例えば病院とかで。
榎本:持っていったときに、「これは何ですか?」となる。
松本:そうです。一から説明しないといけない。家を借りるときでも、同性カップルは借りにいくのでそれを見せても、「何ですかこれ?」と、使ったら使ったでストレスが生まれる。
榎本:やっぱりまだまだ認知度が低いんですね。
松本:パートナーシップ制度は、同性婚に向けての動きであってほしいって思っています。このままの制度で終わらずに同性婚の法制化に向けてどんどん広げていってほしい。今、この制度を導入している自治体は320と、どんどん増えていってるのですが。
榎本:日本でもだいぶ増えてきているということなんですね。
松本:そうですね。そういう動きを国が感じて、ちゃんと数字で何組利用していますと見せていく。必要としてる人がいるという、目安になるものであってほしいと思ってます。
パートナーシップのカード出したときに、結局は法的な効力がないから認知されないこともあって、パートナーが出産して、同じ家族になれないとか、亡くなったとき相続の権利がないとか問題点は山積で、パートナーシップ宣誓制度を使ってるのに、権利的には守られていないところが大きな問題です。国は、制度があるから暮らしやすくなったでしょうと止めてしまうのではなく、次のステップにしてほしいと思っています。
榎本:この前、広島でG7サミットが行われて、その直前になって慌ただしく国会でも「LGBT法案」が議論され始めたところがありますが、これに関してはどうお考えですか。
松本:広島サミットがあるから急いだのかなっていう感覚はありますね。法案の内容も結構、いろいろ議論されてるのかなとも思うのですが。
榎本:パートナーシップ宣誓制度からLGBT法案と、議論され始めて、日本はもしかしたら変わっていく、周りの人たちも少し変わってきてるんじゃないかと思う感覚っていうのはどうでしょうか、感じてきていますか?
松本:そうですね。周りの人というか、やっぱりニュースで出てきたりすると、また、そういう法案があるの?とか、やっぱり関心度はすごく高まってきています。
榎本:友生さんはカミングアウトをある程度されて生活されておられると思うのですが、そういうときに、こういう人からこういうこと聞かれるというような、ことはあったりしますか?
松本:「何か知ってる?」とか、「最近ニュースでやってるよね、日本でも結婚できるんだっけ?」「どうなってるの?」という会話はあります。
榎本:ラフな会話ですね。
松本:そうです。「今、実際どう?」みたいな。他人事のようなそういう言い回しなのかなって思います。
榎本:ある程度は他人事なんだろうと思うのですが、そういう話が出るということ自体が少しずつ日本が変わってきているのかなと思ったりするのですが。
松本:そうですね。関心度は高まってきているし、そういう話を当事者じゃない相手とできるといいなと思います。
榎本:今、友生さんは京都市内でLGBTQ+やアライの方も安心してつながり合える「カラフル」という団体を立ち上げられていますが、団体を立ち上げられた経緯や活動内容をお伺いしたいのですが。
松本:団体を立ち上げた経緯は、僕自身が自分らしくいてもいいと思える場所が欲しくて、学生時代のNYでの経験だったり、そのあと働いたゲストハウスの職場で、様々な背景や文化、もちろんセクシュアリティなどがある人と出会って交流する中で、前向きに自分と向き合うことができ、今の自分に繋がってきたことを感じているので、そういう環境を京都でも作りたいと思いました。まずは交流センターに行って「LGBTの団体やイベントとかありますか」と聞きに行ったら、そういう団体は無いと言われて、一応調べてくれたのですが、結局は、ないから案内できませんと言われて。「もし何か探しているのなら自分でやったらどう?」と言われました(笑)。
榎本:京都市からそう言われたのですか?
松本:そうですね。ひと・まち交流館という施設が河原町五条にあるのですが、家が近かったので行ったら、突き放されたという感覚があって、自分でやりなさいって。寄り添ってくれるというイメージではなくて、だから自分で考えようとなりました。
榎本:それで、立ち上げようと。
松本:そうです。まずどれぐらいの関心のある人が集まるんだろうとか、別に当事者じゃなくても関心のある人なら全然いいと。僕が、留学中に経験したみたいに、自然に話せる友人がいればいいかなと思い、関心のある人なら誰でもいいですと書きました。
その時、海外の人を交えた職場にいて、日本にいる海外の方は既にマイノリティで、結構困っていることが沢山あったり、僕もその人たちの生活をヘルプして、お互い助け合っているイメージがあって、そういう中で自然に受け入れる環境作りはできるのではないかと。いろんなマイノリティを重ねないと、日本人だけではダメだと感じて。LGBTは当事者だけの問題、海外の人はその人たちの問題と、何かカテゴライズすればするほど交わらなくなっていくので。
榎本:それこそがダイバーシティですね。
松本:僕、前の職場のときわざわざカミングアウトしてなかったんです。別に自然に伝えて受け入れられるような環境だったので。
榎本:わざわざカミングアウトをしなくていいところが大きなポイントなんですね。
松本:そうです。凄く居心地よかった。それはさまざまな国の文化や背景を持っている人が多かったから、LGBTは特別じゃないという理解のもと、自分が自然でいられる会社でした。僕はそういう環境を作りたかった。京都は留学生が多いので、手を貸してもらいたいなと、自分たちが前へ進むために環境つくりをしたいと思ってます。
榎本:どうやって立ち上げられたのですか?
松本:Meetupというアプリがあって、それはもともとアメリカで発信してるアプリなんですが、日本だったら料理教室とか、語学のためのコミュニティがあります。
榎本:なるほど。いろんなコミュニティがあるんですね。
松本:そうなんです。スポーツや文化などの様々なカテゴリーの中にLGBTもあって、ここだったら登録者数の半分以上は海外の人なので、このアプリを使って集めていきました。
LGBTというカテゴライズの中で交流会をしよう、気兼ねなくお茶をしながら話しましょうという感じでスタートしました。
榎本:今、活動はどういった事を主にされておられるんでしょうか。
松本:メインの活動は、毎月第2日曜日に鴨川のごみ拾いというイベントをしていて、あとは年に1回撮影会、プライド撮影会というイベントも行っています。
榎本:プライド撮影会というのは、どういったものですか?
松本:プライド撮影会は様々なメッセージを京都から発信しようと、鴨川でメッセージボード書いてもらいその場でそのボードを持ってもらい撮影をしています。
榎本:どこかで展示会などはされているのですか?
松本:展示会は今年度6月に京都大丸で展示を行います。あと今も四条通の地下道で、6月末プライド月間に合わせて展示会を行っています。
榎本:6月末までなんですね。
松本:今後は、亀岡市の市役所でも展示予定です。
榎本:京都市外でも行われるんですね。
松本:そうです。それは京都市ともつながりがあって、「まぁぶるスペース」というところで、京都市、亀岡市、長岡京市と共にLGBTのコミュニティを作っていて、そういったつながりで亀岡市でもやりませんかというお声をいただいてます。
榎本:京都市人権文化講座の講演会もされる予定がありますよね。
松本:あります。今まであまり講演とかは受けてこなかったのですが、その人権文化講座については、カラフルの紹介をしながら、LGBTのことに興味を持ってもらえるような、伝えたいことがあれば、出てもらえませんかという依頼だったので。
榎本:ありがとうございます。本当にたくさんお話をお伺いしました。最後に本学にもこういったジェンダーの問題ですごく悩んでいる学生や教職員もいると思うのですが、そういう方にお薦めの本があれば是非、教えていただきたいのですが。
松本:僕が悩んだときに読んでいた、『LapH(ラフ)』という雑誌です。これはFTMトランスジェンダーの体験談が載った本で。これは本当に僕が悩んでたときにインターネットで購入し、親にカミングアウトする際に使った本です、こういう方もいると、だから読んでほしいと。
テレビに出てる人じゃなく、身近にいる人の話が書いてあるので、助けられた1冊です。
あとは、双葉社から出ているLGBTER著者の『LGBTと家族のコトバ』という本です。
これは当事者だけではなくて、当事者にかかわる家族の気持ちも赤裸裸に書いてあります。
榎本:なるほど、それはいいですね。
松本:親の気持ちは100%わかりきれないと頭でもわかってるし、経験したものがお互い違うので、本心はその人にしかわからないと思って、やっぱり親はどう思ったのだろうなというのを想像できます。自分の思いだけではなく、親の思いも知れると、すごく勇気づけられ、参考になった言葉がたくさん載ってました。僕がLGBTERのインタビューを受けたあとに、親の本心ってどうだったのかと思うことが結構あって、そのときには手術もして戸籍も変わっていたのですが。
榎本:本心はどう思ってたのかということですね。
松本:そうです。やっぱりそれがずっとあって、今でもあります。確かめる必要もないですが、何となく想像ができるので。こういう同じような経験をした家族の言葉を参考に、親が言えない思いなどもきっとあると思って大事にしています。ふと読み返したりします。
榎本:あんなこと載ってたなって。
松本:そうです。参考です。
榎本:私も読んでみたくなりました。
松本:ぜひ。
榎本:本当に本日は、長時間さまざまなお話をありがとうございました。
松本:ありがとうございました。

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