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2023/09/27 09:50:00 トランスジェンダーとして生きるとは【全文】vol.2

  • CategoryGAIDAI BIBLIOTHECA
  • Posted by付属図書館
2023年9月に発行したGAIDAI BIBLIOTHECA(館報)で、「特集:ジェンダーを考える」に掲載された、本学の卒業生である松本友生さんへのインタビューの全文vol.2です。



榎本:学生時代に留学に行かれたと聞いてるのですが、留学先の国を選んだ理由、留学中のエピソードというのも、お聞かせください。
松本:もともとは旅行で、NYで仕事をしている知り合いがいて、「英語勉強してるんだったら遊びにおいでよ」って声かけてもらって2週間ぐらい遊びに行きました。印象としては、いろんな人種の人がいて、文化も入り混じっていて、たった2週間いただけでも、キラキラしていて楽しそうで、友達作りしながら、英語を勉強したいなと、座って勉強というより、コミュニケーション取って、もっとしゃべれるようになりたいという思いが芽生えました。
榎本:旅行中に留学を決めたんですね。
松本:家帰ったら、親に話をして、外大は1年休学校して、NYの語学学校に行きました。自分で手続きして、学校や家や何か見て、学生ビザを取得して。1年2カ月とか、ぎりぎりまで行ってました。
榎本:その留学中にいろいろあったと思いますが、お話を聞かせてください。
松本:現地の人とルームシェアみたいなかたちで、暮らすようになって。そこでルームメイトや、周りの友達を家に呼んで、みんなで遊んだりしていて、その中にたまたまゲイの方がいました。最初全然知らなくて、ある日「パートナーを連れてくるけどいい?」と、ルームメイトに聞いていて。本当に自然な会話で、その後、カップルで遊びに来て、みんな普通にごく自然にいるんです。別にそこがLGBTのコミュニティってわけではなく、自然に遊んで、話をして、何の特別もない。
榎本:普通に一緒にいたんですね。何の違和感もなく。
松本:そうです。そこから、LGBTのことを調べたり、同性カップル、同性愛、LGBT、というワードをたくさん検索して、NYにもそういう人が集まる場所、施設とかあるかなと、いろいろ調べていたら、友達が「一度一緒にコミュニティへ行く?」と、カフェへ連れて行ってくれて。ここはそういうエリアだから、ほかのカフェにも友達探してるんだったら沢山いるよと教えてくれて、それから僕1人でどんな雰囲気だろうって興味を持って、行くようになりました。歩いてると自然に同性同士のカップルだったり、そういう人がいっぱい歩いていて、その人たちだけがいるわけではないし、街の中にエリアとしてはあるけど、区切られてるわけでもない、そういうエリアがあるっていうことを知りました。
榎本:それまで日本でLGBTについて検索してみたり、調べたりしましたか?
松本:ほとんどしてなかったですね。
榎本:環境が変わったから、わあっと扉が開いたんですね。すごいきっかけですね。
松本:そういうのがきっかけで、日本の大学の友達に電話で、実は友達がゲイで、そういうエリアに最近よく行ってると話せるようになって。その子が、今、『ラスト・フレンズ』というドラマが日本で放送されていて、上野樹里が演じているの役の子があなたと同じような感じだよ、見てみたら?と言われて、ネットで調べたらトランスジェンダーと出てきたんです。そういう会話から自分からいろいろ言えるきっかけを作れました。
榎本:NYで気持ちが柔らかくなって、それで日本の友人にも電話でそういう話ができたんですね。そこから、LGBTの中のカテゴリーについてもちょっと調べだしたんですね。
松本:そうです。僕も無知で、そのあたりからこれは違うかな、これかなとか。ある日ルームメイトにパーティーに誘われて。パーティードレスみたいなのをいろいろみんなが選んでいて。で、僕はそういうの着たくない。そしたら、ルームメイトが「あ、OK」と言って、部屋で、パンツスタイルの服を出してきてくれて。どれが似合うかなと選んでくれて。僕、そのときに「嫌」って言えたから、友人が自然に一緒に考えてくれたんです。
榎本:感動しますね。
松本:嫌って言えるんだ、それを言ってもじゃあ次これは?って、選択肢を出してくれたことに安心しました。パーティー行けるなと思ったんです。行ってもいいんだと。こういうの似合うかもとか、これ素敵だねとか、そういう事を言える関係ができて、そういう素直な気持ちを言えたり一緒に考えてくれるっていうのがすごい心地よくて、それからはルームメイトにもナチュラルにいろんな話ができるようになりました。
榎本:ルームメイトの存在は大きかったですね。
松本:大きかったです。言語は壁じゃないと思ったし、コミュニケーションでそうやって日本では言えなかったことを導いてくれたような気もしています。
榎本:では、LGBTについてある程度調べ始めて、自分がその中のどのカテゴリーに属するのか知った経緯をお伺いできればと思うのですが。
松本:知った経緯は、帰国して実際にそのドラマを見たりして、でも自分の性自認というより、性的嗜好、同性が好きというのは、もう多分絶対そうだって。
榎本:そこはわかりやすかったんですね。
松本:そこはわかりやすかったです。ずっと中学生ぐらいから、それを隠してきたし、今でも思うということはそうなんだと、それを大学の友達にオープンにしました。
榎本:大学の友達にはちゃんとカミングアウトできてたんですね。
松本:向こうでの環境とかを話してたので、実は同性が好きかもと思ったと。それで家族に話すか悩んでたときに、マイノリティの研究をしている先生のゼミを取っていて、LGBTのことではなく、文化の中のマイノリティとか言語の中のマイノリティとか、何かそういうマイノリティに関することを教えられていて、LGBTはマイノリティだという認識はあったので、先生に一度相談してみようかなと。この人だったら話せるかもって、初めて身近な大人で相談できそうだと思いました。ある程度の距離もあったし、家族や友達ほど近くない。
榎本:ちょうどいい距離感だったんですね。
松本:ちょっと相談乗ってほしいとお願いし、2人で話す時間を作ってくれました。
実は留学中に女の人が好きだとわかり、友人には話せたけれど、次、親にどう話せばいいか、どう思いますかと。先生は「同性を好きなことは全然変じゃない、そもそも好きになるという感情があることがうらやましい」と言ってくれました。先生が断言してくれたので、そう言ってくれる大人がいるんだと安心しました。
そこから自分のLGBTカテゴリーを調べ始めて。LGBTのLのほうから、僕、レズビアンなのか?みたいなところで一度立ち止まって調べて、そのコミュニティのオフ会行ったのですが、すごく居心地が悪くって、僕は。
榎本:レズビアンではないと。
松本:そう。それを肌で感じたというか、僕の居場所じゃないと。レズビアンじゃなかったら何なんだろうと、自分は女として女が好きなわけじゃないってなって、いろいろ調べて、ドラマも参考にして、トランスジェンダーにたどり着きました。
榎本:自分で一から調べて、トランスジェンダーということがわかったってことですね。
松本:はい。ほぼ、ネットですね。インターネットで調べたりして、体験談とかを見て。全く一緒ってわけじゃないけど、ここ似てるなとか。
榎本:そのカテゴリーとわかったあとのアクションはどうされましたか。
松本:まず体が嫌だったので、トランスジェンダーの人が着けている下着っていうのがあって、胸をきゅっと締める、それを身につけるようになり、それで楽になりました。それがあるだけで本当に楽で、好きな服が着れました。でもお風呂に入ると、何か自分じゃない姿にまずなるみたいな感覚で自分が嫌になる。これは何とならないのかとも思っていました。
榎本:最初は下着で問題ないと思っておられたんですね?その後、性別適合手術を行われたということですけれども、その繰り返しでそうなったのか、それ以外に何かきっかけがあったのか。
松本:つき合っていたパートナーが、「トランスジェンダーで手術までしてる人が知り合いにいるよ」と教えてくれて、じゃあ、ぜひ会わせてほしいとなり。
榎本:その方に具体的な手術の過程を聞けたんですね。
松本:しっかり聞いて、まず安心しました。そういう人生があるということに。何か、仲間を見つけた。これは自分が目指す姿かもと、希望が持てて、その人と会えて凄く嬉しかったのを覚えています。
榎本:二つ目の大きな扉ですね。
松本:そうですね。この人だけじゃなくて、きっと他に近くにいるんだと、トランスジェンダーの集まりに行きました。実際に手術された方、ホルモンの注射を打っている方いっぱいいて、本当にノート持ってインタビューじゃないけど、今の生活で困ってることないですか、周りの関係どうですか、仕事できてますか、不安はありませんかとか。本当に事細かく日常生活の困り事から、あらゆる事をちゃんと調べようと思いました。でもトランスジェンダーと言っても本当にばらばらで、手術を望んでる人もいれば、ホルモンの注射だけでいいという人もいるし、下着だけで十分楽っていう人もいて、そういう感覚まで違うんだとわかりました。絶対こうだから手術しないといけないとか、性別を変えないといけないというわけではないんだと思い、自分はどういうふうに生きたいのかを考えるようになりました。
まずはカウンセリングに行って、医師に相談したいと思うようになり、親にも言えてなかったので、それをきっかけに、実はこういうことで悩んでいて、女性が好きで、カウンセリングに行ってみたいと初めて言いました。
榎本:カウンセリング行く前にご両親にカミングアウトをされたんですね。
松本:はい。まず相談しようと思って。親の反応は「わからへんから病院で診てもらえるなら行っておいで」と、「私たちは悩み事に応えてあげれない」と言われて。でもその中でも親に言えたってことにすごいほっとしました。
榎本:そうですね。
松本:親は凄く泣くのかなとか、何か言われるかなと想像していたのですが、親はわからないって(笑)。「否定も肯定もできない。わからないから、答えを出してあげられないから、病院の先生に聞いてみたらいい」と。じゃあ病院に行こうとカウンセリングに通い始めました。
榎本:このあとに手術をされて、その後ご結婚されたとお伺いしていますが、手術は結婚と結びつかれたものがあるのでしょうか。
松本:結婚したいから戸籍を変えるというイメージではなくて、結婚という未来もあるけど、まず僕は自分のことを知って、自分の人生がわかる状態まで持ってきたので、それから結婚の話でした。相手は結婚をしたいと思ってくれていて、僕がどういう状況になるかわからないけれど、それを支えると言ってくれて。カウンセリングからホルモン注射、手術、戸籍変更まで、時間はかかりました。
榎本:そうですよね。かなり大きな決断ですからね。
松本:そうですね。相手が待ってくれていたので、ちゃんと向き合って結婚できるように僕自身も自分がどうしたいかっていうのを考えました。やっぱり体が嫌だというのはあったので、とにかく上は取りますと自分の中では決め、プラス、戸籍変更をする要件に、子宮摘出が入っていたので、自然に受け入れられました。
榎本:そのほうが自分の中では自然という感覚だったのでしょうか?
松本:そうです。ないほうがいい。だから、じゃあ取ろうっていう(笑)取ってもらえるのであれば取ってもらいたいなと、手術はもう自然でした。戸籍も変わるし、じゃあ結婚できるんだと。
榎本:ご自身の望みで。パートナーの思いとかいうわけでは決してなくて。
松本:そうです。僕は僕の意思でそうしたほうが気持ちが楽で、生きやすい。
榎本:どうですか?今、本当に生きやすくなりました?
松本:すごく生きやすいというか、自然っていうのが一番しっくりくるかなって。
榎本:これでやっと自然な自分になった感じ。
松本:そうです。
榎本:すごい、何かすてきな話聞けたなと思って、私じーんとしてるんですけど。
松本:(笑)

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