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今考えるべき人権問題 ゲストライター

2021/07/16 16:40:00 「ジェンダー」について考えてみませんか

  • Category今考えるべき人権問題 ゲストライター
  • Posted by人権教育啓発室
最近「ジェンダー平等」という言葉をよく耳にするようになったと思いませんか?
例えばSDGs(Sustainable Development Goals=持続可能な開発目標)は、行政や企業などが力を入れて取り組んでいますが、その17の目標の中にも「5.ジェンダー平等を実現しよう」が掲げられています。持続可能な社会にしていくためには「ジェンダー平等」が不可欠だということですね。

排除されてきた女性たち

「ジェンダー平等」が特に取り上げられるようになったのは、何といっても東京オリンピック・パラリンピック大会組織委員会の森喜朗元会長の女性理事をめぐる発言がきっかけでしょう。これは2021年2月3日に開かれた、日本オリンピック委員会(JOC)臨時評議員会で、森元会長が「女性がたくさん入っている理事会の会議は時間がかかります」などと発言したものです。
なぜ森元会長はこのような発言をしたのでしょうか。IOC(国際オリンピック委員会)が2018年に『ジェンダー平等政策』を発表し、東京2020大会はジェンダー平等を推進することが期待されていました。JOCの会長・副会長・理事25人中、女性は5人しかいなかったのを、2019年には女性理事の割合を40%にすることが目標とされていたのです。それを当時の森会長が反対したわけです。
この発言は「女性差別だ」と批判され、森氏は会長辞任に追い込まれ、日本政府もジェンダー平等の推進を方針として打ち出します。2021年6月16日に決定された「女性活躍・男女共同参画の重点方針」の中にも「(5)ジェンダー平等に関する社会全体の機運の醸成」として「東京2020大会におけるジェンダー平等のムーブメントを継承し、固定的な性別役割分担意識や無意識の思い込みの解消に向けた取組を強化」という項目があげられています。このような国の方針の中に「ジェンダー平等」という言葉が入ったのは画期的なことといえます。
何しろ日本は国際的にジェンダー格差が激しい国で有名です。ジェンダーギャップ指数(Gender Gap Index:GGI)を聞いたことがあるでしょうか。世界経済フォーラム(World Economic Forum:WEF)が毎年発表するもので、「政治」「経済」「教育」「健康」の4つの分野のデータから作成されます。2021年の日本の順位は156か国中120位(前回は153か国中121位)、先進国の中で最低レベル、アジア諸国の中でも韓国や中国、ASEAN諸国より低いのです。
中でも日本は「政治」「経済」における順位が低く、国会議員の女性割合は9.9%、大臣の同割合は10%など政治分野の女性の参加が非常に少ないのです。経済分野についても、管理職の女性の割合が14.7%と低く、女性が重要な意思決定の場から排除され、経済力も持たされていない状況があります。しかし、この状況を是正する政策はほとんどとられてきませんでした。

なぜ日本はジェンダー不平等な社会のままなのか

そもそもジェンダーとは何でしょうか?ジェンダーとは「生物学的な性差ではなく社会的文化的に作られた性別」のことで、例えば「お金を稼いで家族を養えないと、男として評価されない」「家事・育児が女性の本分だから責任ある仕事は任せられない」などといった伝統的な役割分担意識が代表的なものといえます。
「ジェンダー」というと、「よくわからない。ちょっと抵抗を感じてしまう」という反応もよくあります。「そもそも日本は男女平等じゃないのか」「企業の正社員や管理職に女性の割合が少ないのは、女性が結婚や出産で辞めてしまうからだ」「政治家に女性が少ないのは、女性に立候補を勧めても、嫌がるからではないか」「女性を積極的に登用しようとするのは、男性に対する逆差別で、女性に『下駄をはかす』のはおかしい」「女性も男性も関係なく、人として評価すればいい」など、本当にそれは妥当なことでしょうか?
女性であることで評価されず、不利益を被ることが現実にあります。2018年8月、東京医科大学の入学試験において「女性」であることを理由に得点操作が行われていたことがわかりました。その後、順天堂大学、聖マリアンナ医科大、北里大などでも同様の得点調整が行われていた事実が明るみとなり、社会に大きな衝撃を与えました。また最近、都立高校全日制普通科で男女別の定員が定められている為、女子と男子で合格最低点が40点も違っているということも明らかになりました。入試で同じ点数であったとしても、女子というだけで不合格になるという実態があるのです。
先ほどのGGIでもわかるように日本社会は男女平等とはいえません。それなのにジェンダー平等の実現のために、意思決定機関に女性のメンバーを増やそうと言うと、「女性にばかり下駄を履かすのか」と言われます。しかし、そもそも男性の方が「下駄」を履いていて、女性が裸足だったので、女性も下駄を履いて同じにしようというだけのことなのです。

男性・女性ともに生きやすくなるには

「ジェンダー平等」と言われると、男性の中には既得権益を奪われるような気持ちになってしまうこともあるかもしれません。しかし、男性も「男なんだから泣き言を言わずがんばれ」とか「家族を養うだけの経済力がなければ男として失格」などとプレッシャーをかけられてばかりいると苦しいはずです。そんな環境では、本当の意味での生きやすさは得られません。

ジェンダー平等が必要なのは、女性のためだけではなく、そのほうが社会全体にとってもよく、経済的にも発展するからなのです。世界経済フォーラムがGGIを発表するのは、まさしくそのためです。コロナ禍への各国の対応においても女性のリーダーは大変評価されています。
ジェンダー平等について「日本にはなじまない」「どうせ実現しない」などというのは、実は思い込みであって、ジェンダー平等こそが誰もが楽になり、もっと日本をより良い方向へ変えていくための起爆剤になると信じています。

周藤 由美子






プロフィール

周藤 由美子(すとう ゆみこ)ウィメンズカウンセリング京都カウンセラー。
NPO法人日本フェミニストカウンセリング学会・フェミニストカウンセラー協会認定フェミニストカウンセラー。公認心理師。
1995年よりウィメンズカウンセリング京都のスタッフとして個人カウンセリングや講座・グループを行う他、行政や大学、男女共同参画センターなどで相談業務に従事する。ジェンダーの視点で女性全般、特にDVや性暴力、(セクシュアル)ハラスメント被害者の心理的支援を行っている。2000年より京都外国語大学のハラスメントの外部相談員として週1回金曜日に人権教育啓発室で相談を受けている。
2015年より京都性暴力被害者ワンストップ相談支援センター(京都SARA)のスーパーバイザー。2021年よりNPO法人日本フェミニストカウンセリング学会理事。
著書に『疑問スッキリ!セクハラ相談の基本と実際』新水社。
共著に『性暴力救援マニュアル』種部恭子編著、新興医学出版社など

2021/06/14 10:50:00 「遠くの人権」なら踏みにじられてもいいのだろうか?

  • Category今考えるべき人権問題 ゲストライター
  • Posted by人権教育啓発室
はじめまして。宗田勝也と申します。
「じんけんブログ」の開設、本当におめでとうございます。

突然ですが、初めての国を一人で訪れた場面を想像してみてください。
空港を出て、路線バスに乗り込み、ホテル近くの停留所らしきところで降りる。さあここからホテルまで、どちらに行けばいいのだろう。不安に思っていると、行き交う人が親切に道を教えてくれる。一気にその国が好きになる――。そんな経験はありませんか?
最初の出会いはとても大切だと思うのです。ですから第1回に書かせていただくことを光栄に思うと同時に、キーボードの前で緊張しています。

京都外国語大学とのつながりを紹介します。
2015年4月にネパールで大きな地震が起こったとき、ネパールとチベット難民の男の子を描いた映画のチャリティ上映会を全国の大学で開きました。ネパールとの関わりを持つ京都外国語大生たちともつながり、同年6月、キャンパス内で上映会を開きました。まさに僕にとって、京都外国語大学との最初の出会いでした。学生の皆さんの献身的で、飾らない姿を通して、この大学のファンになりました。2020年度から「ボランティア活動論」という科目を担当していますが、京都外国語大学へ再び通えると決まったときは本当に嬉しかったです。

さて、本題に入ります。僕は2004年から難民問題だけを扱うラジオ番組「難民ナウ!」を作り続けています。その活動を通してミャンマーから日本に逃れてきた難民の方々と出会いました。
皆さんは「ラペットゥ」という料理を食べたことがありますか?
これはお茶の葉を用いたサラダですが、塩味と辛味、少しの酸味、揚げたひよこ豆やピーナッツの歯ごたえが混ざり合った、とても美味しい料理です。日本で暮らす難民の方々の支援、などという大仰なものではなく、好物の「ラペットゥ」を囲み、話し合うことを重ねてきました。現在は、東京で暮らすミャンマー難民・コミュニティの成人に向けた日本語教室と、子どもたちに向けた母語教室を開いています。じんけんブログの観点からは、「学習権」を保障しようとする草の根の取り組みを当事者とともに続けてきた、と言えるでしょう。

この間、難民の方々をめぐる状況にも変化がありました。2015年、ミャンマーの総選挙でアウンサンスーチーさんの率いる国民民主連盟(National League for Democracy:NLD)が大勝すると、「ミャンマーは民主化への道を本格的に歩み始めている」という認識が広がり、日本に逃れてきた方々の中にも本国へ自主的に帰還する人が現れました。
一方で、少数民族が暮らすエリアでは内戦が続いていました。100を超える多民族によって構成されるミャンマー国内には、「民主化」とは異なる状況に生きる人たちが存在していたのです。2019年、僕がミャンマー北部の少数民族エリアを訪れ、国内避難民キャンプへ行ったときも、いかに権力の二重構造(政府と国軍)が維持されているかという多くの証言を耳にしました。そして内戦によって、自分のふるさとに戻れない多くの人たちと出会いました。

2021年2月1日、ミャンマー国軍は、前年11月に実施され、再びNLDが圧勝した総選挙に不正があると主張し、アウンサンスーチー国家顧問兼外務大臣、ウィンミン大統領などを拘束、非常事態宣言を発令しました。国軍が強大な権力を維持し続けていたことが明らかになりました。
国軍の不当な行為に反対する市民は、市民的不服従運動(Civil Disobedience Movement:CDM、良心に基づき、従うことができないと考える法律や命令に非暴力的な手段で公然と違反する行為。職場の放棄などを含み、今回は医療従事者から始まったとされる)を起こし、それに対して国軍が苛烈な弾圧を加えるとともに、平和的な抗議活動さえ犯罪行為とみなすよう法制度を変更するなど、市民の生命と人権を踏みにじっている事実は、ニュースで見聞きしておられると思います。

僕は、ミャンマーの方々と関わってきた自分に何ができるだろうと考え、「とにかく声を上げ続けることが大切」というメッセージを発信していたミャンマーの女性と『ミャンマー ともに歩む/まえに進む―いまの情勢と声』というオンライン番組を週3回、配信しています。小さな試みですが、関心を示し続けることには意味があると信じています。なぜなら、人の関心が薄れたとき、暴力はより激しさを増し、「人の生命や権利」はさらに脆いものとなってしまうからです。

皆さんにとって、ミャンマーはどのような国でしょうか?
ある人にとっては、訪れることを「戻る」と感じるような身近な国かもしれません。ある人にとっては友人のふるさとかもしれませんし、全くつながりのない未知の国かもしれません。
どれだけ遠い国であっても、そこに生きる人の生命や権利に目を向けてほしいです。そしてそれらが危機に直面している時には、小さくても声をあげてほしいと願っています。
この短い文章が「ミャンマーの現在地」との接点となりますように。






宗田勝也 プロフィール

宗田 勝也(そうだ かつや)難民ナウ!代表。2004年、情報発信を通した難民支援団体「難民ナウ!」を設立。京都三条ラジオカフェ(FM79.7MHz)で、「難民問題を天気予報のように」をコンセプトにした同名のラジオ番組を制作し、これまでに延700人へのインタビューを行っている。京都外国語大学、龍谷大学、神戸親和女子大学で非常勤講師。
総合地球環境学研究所研究員。ミャンマー少数民族の自助団体で事務局長を務め、日本語教育にも取り組んでいる。著書に「誰もが難民になりうる時代に―福島とつながる京都発コミュニティラジオの問いかけ」(現代企画室、2013)など。

  • 2019年、訪問したミャンマー北部の少数民族エリアで国内避難民の子どもたちと
  • 2015年、京都外国語大学で行ったネパール支援のチャリティ映画上映会学内ポスター
  • ミャンマーの女性Swe Sett Ayeさんと続けている「ミャンマー ともに歩む/まえに進む―いまの情勢と声」

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