皇帝の位に就いたナポレオンは1809年、先のエジプト遠征における学術研究上の成果をまとめて、『エジプト誌』として刊行し始めた。これは一名『フランス軍のエジプト遠征中になされた観察と研究の集成』とも呼ばれ、彼が死亡した1年後の1822年までパリの国立印刷所から「ナポレオン大帝の勅命により発行されていた。
本文は「古代遺物」4巻、「現状」3巻、「博物」2巻の計9巻にわかれ、図版は超大型本で「古代遺物」5巻、「現状」2巻、「博物」3巻、「地図」1巻の計11巻よりなっている。なお、本書は製本の加減で本学所蔵本のように20巻で刊行されたものもあれば、また22巻のものもある。図版はすべて精巧な銅版画で、古代遺物や動植物などには美しい手彩色刷りもあり、製版印刷は今日から見てもその先鋭さと表現の技巧さからは、当時のフランスの印刷技術の水準の高さを伺うことができる。
この頃、ヨーロッパにおいて北東アフリカの事柄は殆ど知られていなかったが、本書の刊行を契機にしてエジプトを対象にした研究が可能となった。また本書に収められたロゼッタ・ストーンから、多年にわたって不解文字とされていた古代エジプト文字が、シャンポリオンらの努力で解読できるようになったのは余りにも有名である。
(本文40×28 cm×9 vols. 図版72×56 cm×11 vols.)
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