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ごあいさつ

 今年はフランスの皇帝ナポレオン・ボナパルトの生誕250年の節目の年に当たります。本学図書館はこれを記念して「ナポレオン、偉大なるエジプト文明に挑戦する」を開催いたします。
 ナポレオンは1769年の8月15日に地中海のコルシカ島に生まれました。彼は若くしてフランス軍の将官となり、イタリア戦線を指揮して勝利に導きました。まだ、ヨーロッパでは軍事力の行使で他国の領土を侵略することが、国際関係上の常套手段と考えられていた時代です。その後も中部ヨーロッパから東ヨーロッパを制覇して、破竹の勢いで進軍を続けました。しかし、この間、対イギリス戦略の一環として行ったエジプト遠征だけは、厳しい失敗に終わりました。
 ナポレオンは1804年に皇帝の地位に就くと、ローマ教皇との融和を図りながら「ナポレオン法典」とよばれる国内法を制定して国民の自由と平等を保障し、さらに高等教育制度を充実するなど、内政面にも力を注いでいます。また、学術文化政策面では1809年から『エジプト誌』の刊行を始めて、失敗したエジプト遠征に同行していた学術調査団の成果を示そうとしたのです。
 やがて、ナポレオンが率いるフランス軍はロシアへ侵攻して手痛い敗北を喫し、これが原因となりナポレオンは皇帝の地位を退きました。その後、国際関係の隙間を縫って再び帝位に戻りましたが、ワーテルローでフランス軍が敗れるとセント・ヘレナ島へ流され、1821年にこの島で生涯を終えます。
 先に紹介しました『エジプト誌』はナポレオンの失脚後も刊行が続けられ、彼が亡くなった翌年の1822年にようやく最終巻が発行されるほどの長期的な大事業になりました。この超大型本全20巻には、エジプト文明を紹介するための多くの記述や石版画があります。例えば、発掘されたロゼッタ・ストーンとよばれる石からは、そこに彫られた象形文字ヒエログリフを言語学者シャンポリオンたちが解読することによって、紀元前約200年の統治の姿を蘇らせ、後の「エジプト学」の進展に大きな影響を与えることになります。
 さらに、その後のナポレオンの戦争によって、ヨーロッパや世界が戦乱に巻き込まれ、やがて日本へも影響を及ぼすことになります。ここでは、その時代に作られた我が国の資料も併せてご紹介させていただきます。
 本学図書館では森田嘉一理事長・総長が図書館長の時代(昭和43年から12年間)に「世界の探検と航海コレクション」の構築を進めました。この時、超大型本で全20巻からなる『エジプト誌』も収集され、また、シャンポリオンの代表作『古代エジプトの象形文字体系概説』も「世界の語学コレクション」として集められています。今回の稀覯書展示会では、これらの資料とともに、偉大なるエジプト文明に挑戦したナポレオンの姿を思い浮かべながらご覧ください。

令和元(2019)年10月吉日

京都外国語大学付属図書館
京都外国語短期大学付属図書館

館長 宇城 由文


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