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活動報告

2011年2月23日

EU支部 レポート①

逆カルチャーショック~珍道中空港編~

 旅立ち前の特有の興奮のせいか昨夜はほとんど眠っていない。長距離飛行の間中も瞼を閉じているだけの仮眠に過ぎなかった。何しろ一人旅のはずなのに搭乗して数時間後には臨席者の名前から出身地、身の上話など、飛行機利用者の調査に協力できる程の情報を安眠マスクを用いながら収集させられていたのだから...こんな旅の後の早朝空港到着は南国の真夏の太陽も跳ね返す強力サングラスが放せない。素性を隠したい怪しい人物ではないかと疑い深い視線を向けられても、そこは芸能人気取りでさらりとかわすしかない。心地良いお湯と使い慣れた洗顔剤としっとりしたクリームでようやく新しい一日の始まりを肌に告げる。そしてようやくその疲れたキャンバスに色を塗りはじめるが睡眠不足で酸素欠乏気味の頭を抱えての仕事は思うようにははかどらない…

 再び空港出口に向けて進路をとってもやけに足取りが重い。数々の掲示の文字もアルファベットが先に目に飛び込んでくる。縦書きは脳の位置を90度回転されたような錯覚に落ち入る。伝染病特別対策員を思わせる大きなマスクで覆われた顔の空港職員を前にしての違和感は30度のお辞儀付きの入国審査の後にはすっかり消えていた。そしてまるでホテルのチェックインを済ませたかのような錯覚に陥いりながら荷物引取所へ向かった。最低1時間半はロスすることはほとんどの地域でお決まりの恐怖の空間だ。中米では6時間以上も待たされたこともある。ところが日本のそこには全く人気が無い。長旅を共にした同乗者も見当たらない。そして荷物も見当たらない…

 無い、無い、無い!荷物が無い! 一つもない!まさか.... のロストバッゲージ?! 感動再発見の日本でこんな目に遭うとは.… 異国での度重なる困難から救われるうちに私の運勢もいよいよ下降線に入ったのだろうかと少し肩を落として、溜め息をついた。それでもきっと明日までには見つけてくれるだろう。と日本賛美を捨て切れない。 するとうぐいす嬢並みの声で呼び止められた。声の来る方へ目をやると再び脅威の検疫マスク。それでも微笑む瞳から優しい人柄が読み取れた。そして彼女の横にはなんと見慣れた旅行カバンがあるではないか。申請書類も既に作成されていた。働きの悪い脳に任せてふわふわ月面行動をとっている間に他の乗客は皆荷物を回収し税関までも突破していたのである。いったいこのカバンの持ち主はどこに消えてしまったのだろう…と同僚と心配しながら対処してくれた様子が鮮やかに浮かんだ。 たとえ心の底では、ロストバッゲージではなくロストパッセンジャーね…と笑い飛ばしていても... 彼女達の手際良い仕事振りとエレガントな応対には素直に感動した。更にうぐいす嬢は私が大型旅行カバンの操作に手を余しているのを見ると、すかさず援助を申し出てくれた。日本に到着して2時間弱、税関扉の向こうにも到達していないのに、私は既に忘れかけた日本美に打ちのめされたような気がした。ただ、「随分時間かかりましたね...」という税関員の意味深な発言には笑顔を失い戸惑った。それでも次の空港利用でこのか細い神経を守る為に特別に努力する予定は今のところない。むしろVIP扱いがすっかり気に入ってしまった。

 ポルトガル、英国、イタリア、フランスとヨーロッパ在中20年目に突入した外大娘はいつの間にか、在外マダムになり日本に足を踏み入れる度、以前は何気に通り過ぎていた文化に感動し、心洗われ、また時には戸惑う… 私の中の複数のヨーロッパ文化と日本文化が複雑に絡み合い、数々の異文化珍道中へと発展するのだ。 その珍道中、機会があればまたこの紙面を借りてご紹介出来ることを願って今回は終わりにしたい。

桜井 理恵子(ブラジルポルトガル学科卒業)

 

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