MEDHURST, W. H.
An English and Japanese and Japanese and English vocabulary
Batavia, 1830

メドハースト 『英和・和英辞典』

  ウォルター・ヘンリー・メドハースト(Walter Henry Medhurst, 1796-1857)はロンドンで生まれ、印刷屋の見習を経てロンドン布教会に入った。のちに牧師としてバタビアに赴き、同地に20 年以上も滞在してプロテスタント布教の基礎を築いた。そのかたわら、中国語、マレー語、日本語を学び、聖書や布教書、キリスト教入門書などを中国語、マレー語に翻訳し、また数種の辞書を編纂した。その他、中国文献の英訳や旅行記などもあり、彼の著作は100 種に近い。晩年イギリスに帰り、ロンドンで没している。
 本書はイギリス人によって初めて編集された英和・和英の対訳辞書である。メドハーストは日本に来たことはなかったが、バタビアにもたらされた日本の書籍を参考にし、同地で編纂、発行した。本書の構成は英和と和英の2 部に分かれ、英和の部では、主題別に分類して関連のある単語をまとめて配列するという体裁をとっている。前半では、5000 語近い英単語を宇宙、人間、動物、植物、鉱物などの主題別に分け、それらをさらに小さい項目に分けている。後半では、動詞、形容詞、副詞、接続詞、前置詞などといった品詞別に英単語が配列してあり、見出し語の英単語の横に、それに相当する日本語をローマ字、片仮名、漢字の3 種で表記している。和英の部は7000 余りの日本語の語彙がイロハ順に配列されていて、見出し語の片仮名には漢字、ローマ字、そしてそれに相当する英単語が併記してある。
 日本における英学研究は、1808(文化5)年のフェートン号事件を契機として、幕府が国防上の動機からオランダ通詞に英語研究を命じたもので、間もなく数部の英学書が編集されたが、極めて不完全なものであった。そのため、本書は日本でも注目され、1855(安政2)年に村上英俊が一部を翻訳し、『洋学捷径英訓弁』として出版、1857(安政4)年に『英語箋前編』3 冊、1863(文久3)年には同後篇4 冊として全体が翻訳出版されている。
 本書の「はしがき」で石版印刷が失敗しやすい熱帯での印刷であること、石版印刷に適した用紙が入手し難かったこと、英語も日本語も理解しない職人の手による印刷であったことを述べ、著者も充分な水準に達していないことを認めているように、綴り等に間違いが多いが、本書が我が国での訳書の流布を通じて英学交流の機運を高めたことは言うまでもない。

展示目録 『日本をヨーロッパに紹介した戦国期の宣教師たち』 より

   資料ID:098303(書誌詳細画面へ接続)


        
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