OUEKAKI-Morikouni (Uegaki Morikuni)

Yo-san-fi-rok
Paris, 1848.


上垣守国 『養蠶祕録』

 本書は日本に伝わる養蚕業の方法を記した『養蠶祕録』をフランス語に翻訳したもの。原著者である上垣守国(1753-1808)は但馬の国(兵庫県)の養父の生まれで、蚕種の産地であった陸奥の国(青森、秋田、岩手、宮城、福島各県)を頻繁に訪れて蚕の飼育を学んだ。その成果を纏めたのが『養蠶祕録』であるが、この原本は江戸時代中期の1802(享和二)年に三冊本として刊行されたもので、内容は蚕の発生起源や種類、伝承、飼育方法などが述べられている。特に、これらの内容が絵を以て示されていることから、当時の農民も理解しやすく、これが当時の日本国内で本書の値打ちを高めた要因であったと思われる。
 この頃、養蚕業は我が国の主要産業の一つであったが、1823(文政六)年にオランダの出島商館医として来日したドイツ人フランツ・フォン・シーボルトが、高い技術に着目して本書を持ち帰ったとされる説があり、ヨーロッパでも注目されてフランスのパリやイタリアのトリノで翻訳出版された。
 本書はヨハン・ホフマン(1805-1878)によって翻訳されたもので、原著を一巻に取りまとめ、後半に図版が入れられている。この後、『養蠶新説』のレオン・ド・ロニーによる翻訳書(Yô-son-sin-sets)などがフランス国内で普及するによって、日本の養蚕業の技術はリヨンを中心とした絹織物産業に大きな影響を与えることになる。

展示目録 『フランス人による日本論の源流をたどって』 より

   資料ID: 171823(書誌情報へ接続)



        
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