村上英俊閲
『英語箋』
安政4(1857)年

本書は、日本で最も早い時期に作られた英和・和英辞書である。しかし、この辞書は翻刻されたもので、その原著はイギリス人宣教師で後に上海領事となるウォルター・ヘンリー・メドハースト(1796−1857)という人物が、1830年に当時のオランダ領バタビアで刊行した " An English and Japanese and Japanese and English Vocabulary " である。
 しかし、メドハーストが実際に我が国に来たという記録は残されておらず、このため彼は、日本語の知識を来日経験のあるオランダ人などから伝え聞いた情報をもとに、この辞書の編纂事業を進めたものと考えられる。尤も、彼自身は中国語やマレー語に通じ、他にも聖書の中国語訳を行っているほど語学に堪能な人物である。
 また、この辞書を日本で翻刻した村上英俊(1811−1890)は、医学、漢学、蘭学に通じたフランス語学者で幕末から明治初期に活躍し、とりわけ我が国におけるフランス語研究の草分け的な存在として知られている。彼の知識は広く英語にも及び、本書の翻訳と編纂に尽力したのである。
 本書は2巻からなる和装本で、併せて1600語を収録している。また内容は、英和の部分で例えて挙げれば " comedian " を「役者」と訳しているなど少々、粗野な感じは歪めないが、文久3(1863)年に作られた後編4冊と共に、我が国の英語研究史上に残る名著に位置付けられている。

『GAIDAI BIBLIOTHECA』 135号より

   資料ID:301827(書誌詳細画面へ接続)


        
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