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Diderot, Denis (ed.)
"Encyclopédie, ou dictionnaire raisonné
des sciences, des arts et des métiers"
35 vols. Paris, 1751-80
ディドロ編 『百科全書』
本書は18世紀のフランスを代表する百科事典で、わが国では「ディドロの 『百科全書』 」の名で知られている。
1728年にイギリスで刊行されていたチェンバーズによる 『百科事典』 に影響を受けた出版家ル・ブルトンが、フランスでの新しい百科事典の発行を企画し、ディドロとダランベールが編集を担当して作りはじめたもので、ルソーやボルテール、モンテスキューなどが執筆陣に加わった。
しかし、彼ら進歩的な思想家たちの文章は貴族階級や宗教家などを刺激せずにはおかず、当時の保守勢力によって多くの弾圧が加えられた。資金難もあいまって、ダランベールをはじめ多くの脱落者が出る中、スイスのジュネーブに印刷所を移すなど様々の苦難を経ながら編集が続けられた。
このようにして完成した百科全書は、本文を中心に図版、索引など合計35巻からなる斬新なもので、内容において科学技術と生産性の向上を重視している点が多くの知識人の支持を得て、フランス革命に向うこの国の民意の形成に貢献したものといわれている。こうした意味から本書は、「フランス社会を変えた本」に数えることもできる程の価値をもった書物といえよう。
なお、本学図書館が所蔵するこのパリ版の初版本はわが国での存在が少なく、これまでに出版社や学外の研究者からの依頼に応じて、データや写真を提供してきている。
『GAIDAI BIBLIOTHECA』 131号より |