メリメ(1803-1870)は、画家を父にパリに生まれたロマン主義の小説家であったが、同時に歴史学者・考古学者・言語学者であったことが彼の作品の題材を決定的にした。 『クララ・ガスル戯曲集』は、彼の処女作であるが、彼はこの作品をスペイン女優の作品の仏訳と称して発表している。巻頭には原著者クララの肖像と称するものまで揚げているが、実は、作者メリメの女装に他ならない。自作の戯曲を当時評判のスペインの戯曲と偽って出版したわけであるが、当時の新聞・雑誌も真相を見抜くことが出来ず、まんまとこのまやかしに引っかかった。 本書は1825年、パリで出版された初版本である。 |