80ヨーロッパ人移民やその子孫は、ブラジル社会に存在する白人を頂点とする人種秩序の中で社会上昇を果たした。一方、その多くがアフリカ人や先住民の血を引く国内移民は、十分な人的資本も持たず、人種秩序がもたらす「ガラス天井」の下で、景気の調整弁の役割を果たすようになった。注(1) 本稿は二〇一八年十二月七日京都外国語大学ラテンアメリカ研究所主催第十八回ラテンアメリカ研究講座「京都外国語大学ラテンアメリカ研究所の現在」にて行った研究発表を元に執筆した「外国人から国内移民へ」京都外国語大学国際問題研究会『PROBLEMATA MUNDI』二八号、二〇一九年を加筆修正したものである。(2) 一八七二年のセンサスは入手できる最も古い地域別の人口流入と人口流出のデータであると思われる。しかしながらデータ上は奴隷と自由労働者の区別がない(Vasconcelos 1956:85-87)。(3) 青年将校(テネンテ)が主導した一連の政治・軍事行動は「テネンティズモ」と呼ばれている。一九二四年にはサンパウロ、アマゾナス、リオ・グランデ・ド・スル、セルジペの各州で反乱が起こった。ベルナルデス政権は、戒厳令を敷いて、これらの反乱を力で抑え込んだ。(4) 一九一一年、ロンドン大学で開催された「第一回世界人種会議」で、ブラジルの国立博物館館長ジョアン・バティスタ・ラセルダは、百年後のブラジルの人口予測を発表し、二〇一二年には黒人は消滅し、混血人も三パーセントに減少すると述べた(Skidmore 1974:67)。(5) ラテン系の南欧出身者は、ブラジルの旧宗主国でありブラジル社会の基盤を成したポルトガルならびポルトガル人と言語、文化、宗教などにおいて共通点の多く、当初より好ましいと認識されていた(Oliveira 2001:27)。(6) 一九三〇年十二月十二日付命令一九四八二号では、第三条で会社の従業員の三分の二をブラジル人が占めなければならないとする法が定められた。同法は「三分の二法」として知られている。第四条ではブラジル人と外国人の失業者の届け出の義務を定め、労働力を必要とする農村への配置転換を試みた。(7) サンパウロ市はサントス港から急峻な海岸山脈を上って七〇キロほど北上した地点にある。(8) 一八八六年に建設が始まり、一八八八年に完成した。一九七八年に移民収容所としての活動を終え、現在ではサンパウロ州立移民博物館となっている。詳しくは拙著「サンパウロ市ブラスと移民収容所の変遷―移民揺籃の地の過去と現在―」京都外国語大学国際問題研究会『Problemata Mundi』二六号、二〇一七年を参照のこと。(9) 「一九〇八年から一九二〇年までの期間に、サン・パウロ州に入った自発的外国移民三十四万人のうちの、わずか二三%のみが農業に従事しただけだった。」富野幹雄「ブラジルにおける国内移住現象―その主要な原因と結果―」ラテン・アメリカ政経学会『ラテン・アメリカ論集』一三号、一九七九年、三五頁。(10) 「旱魃の被害を受けやすい地域はブラジル政府によって『干ばつの多角形地帯』として認識されている」(斎藤・松本・矢ケ崎 一九九九、五二―五三頁)。マラニョンを除く内陸部のほぼ全域と南は南東部のミナス・ジェライス州にも至っている。セアラ州とリオ・グランデ・ド・ノルテ州では沿海部も含まれる。(11) 二十世紀の北東部の旱魃の詳細については、丸山浩明『砂漠化と貧困の人間性―ブラジル奥地の文化生態―』古今書院、二〇〇〇年、一四―一二六頁。(12) セアラ出身者の国内移住の記録。アマゾニアや南部へも移住した(Paiva & Moura 2008:65)。(13) アルマンド・デ・サレス・オリヴェイラは、護憲革命後、サンパウロ州を懐柔すべく、州の利益に適う人物として、臨時執政官に任命された。クーデターにより実施されなかった一九三八年の大統領選では、反政府側の候補者として擁立されていた。(14) 契約された民間業者には、サンパウロにおける大規模農業の先駆者で企業家でもあったニョニョ・マガリャンエスが設立したイタケレ社、農業労働者導入会社、かつて外国人移民の輸送を行った海運会社で就労した経験を持つアティリオ・ファヴェロが設立したブラジル移民入植総合会社(CGICB)に起源を有する農業移民入植会社(CAIC)があった。CAICの株主はパウリスタ鉄道会社であった。同社はかつてのコーヒー農場の分割譲渡や、入植地の開発に関わるビジネスも行った(Tessari & Costa 2017:12-13)。(15) 雇用者と労働者の仲介は州を通じて行われたが、雇用者が民間業者に直接依頼するケースもあった。その際は、労働者の収容や仲介の業務が不要になり、会社は輸送に関わる費用のみ土地・入植・移民局に請求した(Tessari & Costa 2017:14)。
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