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60いないからだと論じる。その根拠は、人種混淆により人種的に混血が進むが、同時に文化的にも白人性が高められ、黒人的要素は薄まっていくということを明確にした(Ayala and Bernabe 2007:123)。以上から、プエルトリコは人種混淆により、米国がかかえる人種差別の問題を克服していると論じた。そこにはブランコの反米主義が濃厚に表れていると考えられる。さらにペドレイラは、プエルトリコの場合は先住民要素がほぼ皆無で、先住民をナショナル・アイデンティティの基盤となる文化的要素にはなりえないと述べる。そうなるとスペイン文化がナショナル・アイデンティティの核になるのが最も妥当であると考える。一九三〇年代世代の論客がこのような持論を展開する背景に、人種の白人化、文化による白人化が理論の上で想定しているからにほかならなかった。スペイン人白人こそが、先住民と混血することにより、先住民の白人性を高めたまさにその民族であったからである。ペドレイラは次のように述べる。「スペインの要素が我々民族を創出し、さらにそのほかの人種がこれに融合された。この融合によって、われわれの混淆(con-fusión)は始まった」(Pedreira 2004:27)。ペドレイラは、プエルトリコはうつ状態の民族である(Pedreira 2004:35)という。この状況下で、進歩か後退かを決定する要因はスペイン民族およびスペイン文化による国の統合如何にかかっていたのである。プエルトリコ人はスペイン人のディアスポラである(Pedreira 2004:33)。しかし、スペインの支配下にあったプエルトリコは植民地状況にあったことも事実であり、この為政者に抑圧されてきたプエルトリコにとって、ヒスパニック文化をナショナル・アイデンティティの基盤とすることにも躊躇があったのではないかと推察する(Pedreira 2004:35)。では、なぜ文化的ヒスパニック性へ回帰しなければならなかったのか、その理由を解明しなければならない。「島嶼主義」(Insularismo)のなかでペドレイラが述べる見解は概して悲観的である。しかし、その中でも為政者であるスペインの文化がナショナル・アイデンティティとして醸成されていく背景に、ヒバロ(jíbaros)を高く評価していることはプエルトリコに希望の光を与えている。ヒバロとはペドレイラによれば、クリオージョから生まれた農民である。従って、大切なことは、ヒバロはスペイン人の血筋をひく白人であるということである。彼らは内陸部の高地の小農で、サンフアンの都市部やポンセなどの海岸部の黒人との対立を回避しながら、鍬一つで炎天下の中で懸命に働き、自給自足さながらの生活を続けながら自分の土地を守ってきた。また身体的にも丈夫で疫病や自然界の脅威を克服してきた。資本主義経済がきわめて萌芽的な状態のなかで、脆弱ながらも「自立」できていたという意味で、プエルトリコの自治や自律権を求める現代プエルトリコ人の象徴であり崇拝すべき対象であった。ヒバロは無愛想で用心深い性格ではあったが(Pedreira 2004:29)、その反面、ロマンに満ち溢れた存在であった。純粋かつ田園的で、古き良き時代の伝統的なノスタルジックな風景に重ねてヒバロは回想された(Fahey 2001:6)。ヒバロ文化は半ば伝承の世界のものであるが、文化的ヒスパニック性の精神的な宿りであり、プエルトリコ性(puertorriqueñidad)の象徴となっているとペドレイラは考える(Duany 2017:33-34; 牛島 二〇一九、四九頁)。ところが、このヒバロに関しては別の解釈がある。一九三〇年世代の一人であるエンリケ・ラゲーレ(Enrique A. Laguerre)は「ヒバロとはわが民族のアイデンティティの最も深遠な表現(expresión)である」と述べている(Fahey 2001:9)。また、ヒバロがクリオージョと別物として区別される場合と、ペドレイラはどちらかといえば後者であるが、ヒバロとクリオージョが一部重ねて言われる場合の両方があると考えられる。前者の場合、一説には、ヒバロは二十世紀初頭にプエルトリコの山岳部や地方に暮らしていた先住民であるといわれている。この場合は先住民タイノ族との連続性については議論が分かれる。先住民タイノ族の末裔がヒバロであるとする半ば神話的な解釈は実在する(Godreau 2015:219)。さらに、ヒバロはエスニックというよりは文化的で社会経済的なものであるとも言われている。決して人種概念ではないという主張である(Fernandez et al. 1998:177)。他方、ヒバロとクリオージョが一部で重なる背景には、十九世紀におけるプエルトリコのスペインの専制政治に対抗する自治主義派の台頭が想起される。

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