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36したキリスト教化政策が加わったのである(Hanks 2010)。マヤ人にとって、これは間違いなく「新しい時代の創造」だったのであり、この場合「時代」は「世界」と読み替えて差し支えなく、その中で創成された空間とそれを主導した先住民の首長の事績を記した土地権原証書は、事実上彼らの間では「聖書のように大切な文書」として代々受け継がれていった。そして、これが用いられる状況は、植民地時代を通じて土地・境界線にまつわる訴訟の形で頻繁に起こったのであった。インディオ裁判所を介しての訴訟では必ず実地検証が行われ、関係の村々の土地権原証書と地図が、問題となっている境界線を辿りつつ比較検討された。文書は参加村役人の目の前で書記によって「音読」され、その読み方に関しては、文書に用いられている様々な記号に従っていたのだった。その抑揚や会話の引用部分はこれによりさらに豊かな表現が与えられ、それを聞く人々は描かれている過去と現在とを自在に往来しつつ現実の風景(境界線)に歴史を感取し、そしてその歴史を持つ自分の村への帰属意識をより強めたのである。記号で示された「読み方」や散りばめられている修辞的要素は、明らかに先スペイン期の文学伝統を基礎にしていたことは言うまでもなく、大きな改変を被ったとはいえ、植民地時代のマヤ先住民社会は、そして彼らが生産した様々な土地権原証書やその他の文書は、マヤ人達がいかに新しい時代を生きていく上に必要な要素を自らの論理に従って取捨選択し、自家薬籠中のものとしていったのかを見せてくれるのである。そしてそれは同時に、フェリーパ・シウの言葉に見るように、彼らの生きるよすが444になっていたのであり、またアイデンティティの源でもあったのだ。注(1) 歴史上「マニ地方土地権原証書(一五五七年八月十五日付)」には四つのそれぞれに異なったテキストが存在している。もっとも重要なのは、『ユカタン・ヤシャ村のシウ家関係文書(Papeles de los Xiu de Yaxá, Yucatán)』に収められているものである(Quezada, and Okoshi Harada 2001: 55-65)。次に十八世紀中葉、ティクル村に保存されていたこの文書のコピーをノフカカブ村の書記が筆写したものが、現在『マニ地方土地協定文書・マニ村年代記(Mani Land Treaty / Crónica de Maní)』として知られている文書群に収められている。本論文ではこの二つの「マニ地方土地権原証書」を史料として用いるが、混同を避けるために前者を「マニ地方土地権原証書(Ⅰ)」、後者を「マニ地方土地権原証書(Ⅱ)」としておく。残りの二つは、フアン・ピオ・ペレスが編纂した『ペレス文書(Códice Pérez)』に収められているテキスト(Solís Alcalá 1949:347-353)、そして最後がジョン・L・スティーブンスが書いた『ユカタンの旅の出来事(The Insidents of Travel in Yucatan)』に引用されているものである(1963:II:172-174)。この最後の二つのテキストは、その来歴が不明である。これらのテキストの相互関係についての詳細な議論はOkoshi Harada(2017a:15-33)を参照されたい。(2) 韻文に分割されたテキストに関しては、以下の具体例を参照されたい。(3) 先スペイン期の王国は、バタブ(batab)と呼ばれる首長が治める複数のバタビル(batabil)から成っていた。このバタビルは、植民地時代に村(pueblo)に再編されることになる。(4) 「マニ地方土地権原証書(Ⅰ)」では、lay tun hop’anil u tzolan utial ah maniob ah mamaob ah kitob [...]とある(Quezada, and Okoshi Harada 2001:60)。(5) ユカタン・マヤ語ではkax、スペイン語ではmonteと呼ばれた森林地帯を指す。ただし現実にはサバンナであり、比較的背の低い棘の多い木々から成っている。マヤの人々は、その木々を切り倒して焼畑農耕を行い続けてきた。(6) このテキストでは、登場人物は全て先スペイン期の名前や役職で言及されている。(7) この時にカルキニ村が提出した文書は、現在米国プリンストン大学図書館が所蔵している『カルキニ文書』であり、ノフカカブ村の文書は米国テューレーン大学ハワード・ティルトン記念図書館ラテンアメリカ図書館に収められている『マニ地方土地協定文書・マニ村年代記』である。(8) このことから、『マニ地方土地協定文書・マニ村年代記』は、そのタイトルが示すような「マニ村を中心とした内容を持つ、同村の保管にかかる文書」ではなく、実際

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