24われていた、別の言葉で言うなら「生きた」存在であったことに考えが及ばなかったと言っていい。したがって、本論文はマニ地方とカルキニ村の土地権原証書をもとに、用いられている様々な記号の分析を通じて、まずこれらの文書が「声に出して読まれていた」であろうことを推定し、そして多用されている記号は、その「読み方」を指定するためのものであった可能性を示すことにする。その上で、一五五二年以降実施された集住政策によって創り上げられた村落の空間領域を記録した土地権原証書は、植民地時代を通じて起こった村々の境界線をめぐる争いに証拠書類として現地で「声に出して読まれ」、マヤ語で言うツォル(tzol)、すなわち秩序を再構築するために用いられたことを述べる。そしてテキスト内におけるその具体的な特徴の議論から、「音読」されることの社会的・文化的意味を考察するものである。1 「音読の仕方」を示す記号 植民地時代マヤ文書の修辞学的特徴植民地時代に作成された先住民文書は、スペイン文書と同じ様に行替えが行われ、パラグラフまたはテキストが変わるたびに行間スペースが空けられている。この点において、両者は全く同じ形式で書かれていると言えるだろう(図5)。このテキストを、「韻文」として分かち書きをすることを初めて行ったのは、著名なマヤ学者であるバレーラ・バスケスとモーレイであった(Barrera Vásquez and Morley 1949)。彼らは、この方式を用いることで、異なったテキストの相互比較が容易になると考えたのであろうが、どの様な基準で韻文に分割したのか、またそれによって得られた結果についての評価に関しては沈黙したままであった。その後、バレーラ・バスケスは『ユカタン、ヤシュククル村土地境界に関する第一文書(Documento n. 1 del deslinde de tierras en Yaxkukul, Yuc.)』(Barrera Vásquez 1984)において、エドモンソンは『ティシミンのチラム・バラムの書(Chilam Balam of Tizimin)』(Edmonson 1982)、『チュマイェルのチラム・バラムの書(Chilam Balam of Chumayel)』(Edmonson 1986)を出版する際に、やはりテキストを韻文に分割しているが、そ(2)図5 『チュマイェルのチラム・バラムの書』f. 55v http://pudl.princeton.edu/viewer.php?obj=0z708w51x#page/106/mode/1up最終閲覧日2020年3月25日
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