GISSING, George
The private papers of Henry Ryecroft
Westminster, 1903

ジョージ・ギッシング 『ヘンリー・ライクロフトの私記』

 イギリスの小説家ジョージ・ギッシング(1857-1903)はヨークシャーのウェイクフィールドに生まれた。幼少時から秀才として知られ、マンチェスターのオウエンズ・カレッジに入学して古典学者としての将来を期待されていたが、人助けのための窃盗行為で放校処分を受けた。しばらくアメリカで生活した後、1877年にロンドンに戻り、古典語の教授をしながら作家を志した。『三文文士』、『流謫の地に生まれて』、『余計者の女たち』などの小説で知られている。
 この『ヘンリー・ライクロフトの私記』は随筆的な作品であり、ギッシングが架空の人物に託して春夏秋冬の感慨を述べている。冒頭に、ローマの詩人ホラティウスの諷刺詩から、"Hoc erat in votis(これは我が祈願の一なりき)" という句を引用していることからも推測できるように、彼がかくありたいと願った境遇に自己を置いて書いたもので、ヘンリー・ライクロフトという人物を創り出し、その陰から作者が理想とする生活を描き出している。ちなみに、本書は1903年に出版された初版本である。
 この作品の主人公ヘンリー・ライクロフトは貧困のうちに作家生活を続けていたが、50歳の時に思いがけず遺産が手に入ったので、南イングランドのデヴォンシャーに移って田園生活を始め、季節とともに微妙に変化する自然の移り変わりを楽しみながら、本を友として悠々自適の日々を過ごすことになる。5年後には永遠の眠りにつくが、その間に気の向くままに書きためていた文章をギッシングが発見してそれを春夏秋冬の4章に分け、一冊にまとめたという形をとっている。
 自然観、古典への傾倒など日本の『方丈記』や『徒然草』といった随筆文学の伝統に通じるものがあり、日本では多くの読書人に歓迎された。1909(明治42)年7月号の雑誌『趣味』に戸川秋骨の抄訳『田園生活』が掲載されてから、多くの翻訳本が出版され教科書にも採用された。

「GAIDAI BIBLIOTHECA」181号より

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