ROSTAND, Edmond
"Cyrano de Bergerac"
Paris, 1898

ロスタン 『シラノ・ド・ベルジュラック』

 エドモンド・ロスタンは(1868-1918)はフランスのマルセイユ生まれの劇作家である。始めは法律を学んでいたが、詩集《手すさび  Les Musardises, 1890》を発表し、文学の創作を始めた。間もなく劇作に転じ、韻文劇《ロマネスク Les Romanesques, 1896》、 《遠き姫君 La Princesse Lointaine, 1895》、《サマリヤの女 La Samaritaine, 1897》などを書き、19世紀末の写実的な舞台 に新風を送り、評判をとった。しかし、最も高い名声を得たのは、この『シラノ・ド・ベルジュラック』であり、サン・マルタン座 で約1年半上演され、空前の大成功を納めた。
 劇の主人公シラノは17世紀に実在した自由思想家で、先駆的な哲学者の一人であるが、思想的な著作以外に風刺文や恋愛文がある。 劇中ではシラノは剣客として英雄化される一方、恋文の大家でありながら、その大鼻を恥じ、直接異性に愛を伝えられないという気の 弱さを与えられている。シラノは自分の思いを隠し、同じ女性を愛した友人の恋文や口説の代役を務めるのである。
 その後のロスタンの作品には、ナポレオン2世を題材にした《鷲の子 L'Aiglon, 1900》や鶏を始め様々な動物を登場させた寓喩劇 《シャントクレール Chantecler, 1910》など、新しい分野の開拓を試みた作品があるが、『シラノ・ド・ベルジュラック』の名声に は及ばなかった。なお、本書は1898年にパリで出版された初版本である。

「GAIDAI BIBLIOTHECA」169号より


        
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