SWIFT, Jonathan
"Travels into Several Remote Nations of the World, by Lemuel Gulliver"
2vols. London, 1726

スウィフト 『ガリヴァー旅行記』

 ジョナサン・スウィフト(1667-1745)はダブリンに生まれ同地の大学に学んだが、 在学中、 学業を怠り規律を守らず 「特別をもって」 学位を得たと言われる。 その後ウィリアム・テンプル(政治学・著作家、1628-99)の秘書や、 牧師になったりした。
 『ガリヴァー旅行記』 は、 見たところ船員ガリヴァーの滑稽な架空の冒険談のようであるが、 実は悲痛な迫真的な写実の文学で、 作者の火のような憤慨が氷のような風刺となって全巻にみなぎっている。 小人島のリリパット(Lilliput)国は当時の政争さかんな英国であり、 小人国の大臣フリムナップ(Flimnap)はウォルポールを諷している。 大人国ブロブディングナグ(Brobdingnag)の国王はガリヴァーにむかって、 「君の国では人が徳望によって貴族になるのではなく、 僧が信仰と学問とによって昇進するのでもないらしい」 と言い、 「君の同胞たちは地上で最もいまわしい害虫の一種であると結論せざるを得ない」 と批評している。 さらに理性ある馬の種族フィンヌム(Houyhnhnm)の国では動物的な人間ヤフー(Yahoo)の醜悪さが完膚なきまでに諷刺されている。 このように痛烈無残な諷刺の対象になった人々自身がこれを愛読したとすれば、 これくらい諷刺の極致も珍しいというべきであろう。
 この作品の前半、 小人国や大人国への旅行のかもし出す面白さは、 人間と同形のものとの間における幾何学的な対比の示す面白さだと言えよう。 想像力というレンズを一方においては拡大する方向に、 他方においては微小化する方向に人間像を映しだしてみることは、 たしかに童話的ということもできる。 しかし、 ここではまだ作者の諷刺にわれわれは耐え得られる。 だが、 第3、 4篇、 とくにバルニバービ (大陸の名) 首府ラガードー学士院や馬人国の描写にいたっては、 ほとんどわれわれの心情は拷問にひとしい試練にあわされる。
 ちなみに本書は1726年10月スウィフトが59歳の時、 ロンドンで出版された初版本で、 正式の題名は 『レミュエル・ガリヴァー世界の僻地への旅』 である。 最初、 著者の名は秘してあったが、 すぐに知れ渡り、 初版は一週間で売切れ、 同年中に数回版を重ねて、 「上より下まで、 閣議室より子供部屋まで」 ゆきわたり、 大いに人々に愛読されたという。

 原寸 20.3×12.3cm

『GAIDAI BIBLIOTHECA』 151号より


        
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