――第12回開催記録――

  フォーラム 「和の心とは:日本の伝統スポーツにおける着物」
 
 日 時:平成22(2010)年11月2日(火) 午後2:00〜午後4:30
 
 場 所:本学図書館 第2閲覧室
 
 内 容: 本学職員の村岡氏には、和の心についての基調講演をお願いし、10名の発表者の方には、実演も交えて日本武道とその際に着用する着物についてご発表いただきました。 
 
 発表者と発表内容の要約、感想:
  基調講演:「和の心とは」
 村岡 孝之氏(本学点検評価調査室、剣道錬士六段)
  日本の文化では、「結ぶ」という事が一番大切なことであると思います。「結ぶ」には、人と人とが手を結ぶ、絆を深く結ぶなどや国同士が協定を結ぶなどいろいろな意味があります。いずれも人と人をくっつけるということで理解されています。
 例えば紐結びには、いろいろな結び方があり、右が上、左が下というのが基本です。また紅白の水引は、紅の紐が右にきています。剣道などの試合の主審も本部席に向かって立ち、右手に赤い旗、左手に白い旗を持っています。つまり日本文化では、右が上という考え方が根本にあります。逆に左というと亡くなった人の着物は左前だったり、会社などでどこかに飛ばされるという意味で使われる左遷など悪い意味に使われています。
 お茶室などにみられる結界は、向こうの世界とこちらの世界を結ぶという意味があります。普通違う世界なので分け隔てるという考え方もでてきますが、全く違う世界を結ぶというところにお互いが手を取り合う場であると解釈している日本人特有の文化があると思います。
 最後に国際化ですが、本来言葉だけでは何も使い物になりません。その国の事情、すなわち文化を理解して相手の国の人とお話をすることができます。海外に行くと必ず自分の国について聞かれます。また日本に来ている留学生の方々は、みな自分の国のことを聞かれてもしっかりと紹介できる人が多いです。そのために日本文化に触れるということがとても大事です。本日発表していただく学生の皆さんは、日本の伝統スポーツである 柔道や合氣道などをされていますので、外国に留学などで行く機会があるとその話ができると思います。これからもいろんな日本文化に触れていただき、時にどうしてこうなっているんだと疑問に思ったことは自分で調べたり、周りの人に聞いたりして知識を深めていただければと思います。
 
  発  表1:「柔道」
 田丸 真也さん(国際教養学科1年次生)
マルチェロ・デ・モラエス・ディアス・エ・モラエスさん(授業アシスタント、出身地・ブラジル)
  今日は、ブラジルの柔道の歴史を中心にお話しします。1800年代の末に嘉納治五郎により柔道が創られました。嘉納さんは、柔術を習って自分自身の武道を考えだしたのです。
 嘉納さんの生徒で富田常次郎さんという方がおられましたが、この人がアメリカに行き、柔道を広められました。富田さんは、前田光世さんに柔道を教えて、この人がブラジルに柔道を広めたのです。前田さんは大変タフな方で生涯2000回試合をして、柔道を広めました。ブラジルでは、柔道の帯にたくさん種類があります。それは、柔道を指導する学校や宗教によって色が異なるからです。
 
  発  表2:「和の心、合氣道の心」
 國松 祐巳子さん(英米語学科4年次生) 大角 和矢さん(イタリア語学科4年次生)
  合氣道の稽古などで履く袴は、腰より下を覆うようにして着用する衣服の一部です。胴着の上から履き、紐で結ぶ。膝より下の部分がキュロットスカート状になるように縫製した構造になっています。足を入れても十分に余裕があり、裾にいくほど布が大きく広がります。前布、後布の最上部の左右に紐があり、計4本の紐で袴を固定させます。
 合氣道の原点は、植芝盛平が大正末期から昭和前期にかけて始めた日本の武道で、日本古来の柔術、剣術などを基に成立した体術を主にする総合武術です。本学の合氣道は、植芝盛平を師とした藤平光一が創始者です。心身統一合氣道の流派で、心が身体を動かすという氣の原理を通して心の在り方を知る武道です。型が数多くあり、稽古ではその型を学びながら心の使い方も共に学びます。型には様々あり、基本的には投げ技・固め技で、相手を傷つけずに制することが出来ます。合氣道の技は、相手の攻撃に対する防御技・返し技です。攻撃は牽制程度で攻撃中心の稽古はしません。合氣道で何の目的で袴を着用するかといえば、相手に次の動きを読まれないようにするために、足の動きを隠すためなのです。合氣道の技は基本的に足を大きく動かすものが多いので、足下を隠すことで相手に悟られずに動くことが出来ます。
 心身統一合氣道では、技術によって級や段を与えられます。5級から始まり、技術を磨くごとに級が上がっていきます。京都外大の合氣道では、3級を取った時点で袴の着用が許可されます。3級を取得するまでは、足の動きがしっかりできているか確認するためにあえて袴を着用せずに稽古しますので、袴を着用出来るということは、合氣道の技術が身に付いたことを意味して袴は一種のステータス的な存在です。
 
  発  表3:「和の心・弓道」
 山本 愛弓さん(英米語学科4年次生) 吉海 光さん(ドイツ語学科4年次生)
  京都外大の弓道部は、小笠原流の弓道の流派です。私達がまず弓道部に入ったら弓を使う前に基本的な形をゴム弓で覚えます。それが射法八節という型です。打起しから引分け、口の高さまで矢を下ろし、矢を離すまでの所作です。矢が離れたあとも、残心といって、自分の心をじっくり落ち着けさせるところに和の心があるのではないかと思います。練習で使う的は、自分たちで作ります。初めは、矢を使わないで、弓を使って素引きを何度もします。次に、巻藁を使って練習します。最後に的にかかります。学生が競技で使う的は、星的で、審査や行事で使う的は、霞的を使います。
 今までに私達が入部してから、留学生が何人か入部してくださいました。1人は、スイス人で、今もスイスに帰って弓道を続けておられます。もう1人はこの春から半年間おられたオランダ人です。留学生は、毎年たくさん弓道部の活動を見に来られます。
 英語で書かれた弓道の教本が出版されていて、アジア図書館で英語で書かれた教本を見つけました。私達が留学生に教えていて、伝わらなかった事がこの教本を読んでわかってもらえるのでとても役に立ちます。
 
  発  表4:「袴で語る日本の歴史」
 谷 瑞紀さん(フランス語学科3年次生) 
コールマン・ラシュトンさん(留学生別科、出身地・アメリカ)
  剣道は、現在日本国内にとどまらず、世界中で行われています。剣道着は胴着と袴に分かれています。胴着は、かつて野良作業をするときの作業着でした。袴は、様々な種類があり歴史や用途共に変化してきました。とりわけ袴に注目してお話していきます。剣道で履く袴は、襠(まち)あり袴という種類です。真中に襠があり、左右それぞれに足を入れるという構造です。かつて武士が馬に乗っていたことからこの形が名残として残っています。武家の子どもは5歳になると「袴着」という儀式があり「武門入り」を意味しました。裾広がりの形状と5本のひだによって作られる中の部分の構造が打撃の衝撃を緩める効果があります。袴の全面には5本のひだがありますが、これは儒教でいう「五倫・五常」をあらわしていると言われています。「五倫・五常」は、儒教で人として守るべき五つの道(徳)を指します。 また剣道では、腰板が付いていますが、後ろ腰や背中を中心とした身体意識の養成も容易になるかと思われます。
 明治の頃から女性が外で働きだしました。それまでは、「働く」=「男性」でしたから、その男性的な要素である袴が女性の仕事着に採用されて、今では学生生活を終えて社会へ出て行く節目である大学の卒業式で袴がよく着用されています。
 剣道で袴をはくときは、「前下がり、後上がり」にはくことが定着してきました。実戦のために短くはくという考え方もあるようです。このように剣道の袴は、安全性、象徴性を兼ね備えた日本が残した伝統的な衣服なのです。  
 
  実  演1:「杖道」
 スヴェン・ケーリンさん(留学生別科、出身地・スイス)
  
 
  実  演2:「居合道」
 加藤 麻弥さん(豊剣会)