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ごあいさつ
 
 本年は「日仏交流150周年」の記念すべき年にあたります。今から丁度百五十年前の1858(安政五)年に江戸幕府とフランスとの間で修好通商条約が結ばれ、両国の正式な外交関係が始まりました。この年には、アメリカ、オランダ、ロシア、イギリスとも同様の条約が締結されています。1853(嘉永六)年にアメリカ合衆国のペリー提督が黒船で来航し、その翌年に日米和親条約が結ばれてから四年の歳月が経過していました。
 当時の日本国内の世論は、この「開国」を巡っての賛否両論の中で一時的な混乱をきたし、やがて江戸幕府は崩壊への道を辿ることになります。フランスはこの間、幕府を物心両面から支援し、世が明治に移った後も新政府から大きな信頼を寄せられ、日本の近代化に大きく貢献しました。
 日仏修好通商条約の締結後は多くのフランス人が日本を訪れるようになり、日本研究書も幅広い内容で書かれるようになりました。また、明治時代に入ると政府や府県がフランスから招聘した学問や産業分野の専門家である多くの「お雇い外国人」によって日本社会が様々な角度から分析され、両国の相互理解の基礎が築かれます。この間に著された日本芸術の研究書はアール・ヌーヴォーに、またフランス語に翻訳された養蚕の技術書はフランスの繊維産業に大きな影響を与えました。
 一方、フランスに目を転じると、イタリアのマルコ・ポーロの『東方見聞録』に記された「ジパング」の流布以降、イエズス会の布教報告書などを通じて早くから日本はよく知られていました。時代が下って、江戸時代の最後の年となる1867(慶応三)年にはパリで開催された万国博覧会に幕府と薩摩藩、佐賀藩が出展し、それが大きな関心を呼び、さらに1878(明治十一)年のパリ万博への明治政府の参加によって、ジャポニスム(日本ブーム)は一層の高まりを見せることになります。
 本学図書館では第三代図書館長であった森田嘉一理事長・総長の下で、これらのフランス人が著した書物を含むヨーロッパ諸言語による日本研究書が精力的に収集されました。いわゆるジャパノロジーと呼ばれる日本研究に関わるこれらの書物は、二十一世紀になって刊行されたものも含めて「ニッポナリア・コレクション」として、現在約一万三千点を数えるに至っており、そのうちフランス語資料は二千三百点に及んでいます。
 この展示会では、フランス人が著した日本研究書だけでなく、その源流を辿るという意味で、日本に関心を抱くきっかけとなった書物も併せて展示することにいたしました。従って、日仏修好通商条約が結ばれた1858(安政五)年を軸として、古くは『東方見聞録』をはじめ日本で「キリシタンの時代」と呼ばれた時代の書物まで遡り、新しくは十九世紀最後の年である1900(明治三十三)年に刊行されたものまでを出展いたします。このコレクションにつきましては、質・量ともに未だ充分とは申せませんし、展示におきましても行き届かぬ点が多々あるかとは存じますが、日仏両国の友好関係のさらなる発展に些かなりともお役に立つことができれば幸いに存じます。
 なお、本展示会の開催にあたり、本学の森本英夫教授、平山弓月教授、ナディーン・バタリア准教授にお力添えを頂きました。この場をお借りして厚く感謝申し上げます。
 最後になりましたが、フィリップ・フォール駐日フランス大使より本展示会に特別のメッセージを賜りましたことに対し深甚なる謝意を表する次第です。

 2008年(平成二十)年11月

 
京都外国語大学付属図書館
京都外国語短期大学付属図書館
 館長 下 村 秀 則