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2025/04/20 20:10:00 今日はイースター!

  • Categoryお知らせ
  • Posted by三好マリア
 こんにちは、三好です。今日はロシア正教のイースターです!ベラルーシに住んでいる私の両親から、早速、イースターに食べるパン「クリーチ」や、赤く染めた卵の写真が送られてきました。せっかくなので、今回はイースターについて少し書いてみようかなと思います。ちなみに、「イースター」という言葉は英語で、ロシア語では「Па́сха(パースハ)」と言います。

 キリスト教にはいくつかの大きな宗派がありますが、その中でも代表的なのがカトリック教と正教です。正教にはさらにいくつかの分派があり、そのひとつがロシア正教です。これだけ多くの宗派がありますが、イースターを祝うのはどの宗派にも共通しています。イースターは、イエス・キリストの復活を記念する日で、日本語では「復活祭」とも呼ばれます。

 イースターの日付は毎年変わるので少しややこしいのですが、春分の後の最初の満月の次の日曜日に祝われます(ちょっと頭をひねりますね、笑)。つまり「移動祝日」というわけです。また、カトリック教はグレゴリオ暦を、ロシア正教はユリウス暦を使っているため、両者のイースターの日付にはさらにずれが生じ、ロシア正教のイースターはカトリックより遅くなることがほとんどです。
 
 さて、イースターの日は「イエスが死に打ち勝ち、復活した日」とされていることから、「生命」や「希望」を象徴するモチーフがたくさん登場します。その代表的なものの一つがパンです。パンは、イエスの体を意味します。イースターに食べるパンを、カトリック教では「paska(パスカ)」、ロシア正教では「кули́ч(クーリチ)」と呼びます。形や作り方は非常に似ており、どちらも通常は甘く、レーズンやドライフルーツ、ナッツを加えて作られます。形は主に円形で、上にアイシングや砂糖をまぶし、十字架のシンボルなどを飾ることがあります。

 もう一つは卵です。卵は新しい命の始まりを表すものとされており、イースターには「イースターエッグ」と呼ばれる染めた卵を食べる習慣があります。
カトリック教では、卵をさまざまなカラフルな色に染めるのが一般的ですが、ロシア正教では主に「赤色」が使われます。ちなみに、この赤い卵、実は玉ねぎの皮で染めているのです!卵と一緒に皮を煮るだけで、こんなに綺麗な赤に!自然の恵みで、オーガニックなのも素敵ですよね!
 以前にも「色」についていろいろお話ししましたが、実はこの「赤」という色は、イエスの血を象徴する色でもあるのです。
卵もパンも、実はイエスが死ぬ前の夜に弟子たちと食事をした際に、「これは私の体である」と言ってパンを分かち合い、「これは私の血である」と言ってワインを分かち合ったことに由来しています。この儀式は「最後の晩餐」として知られており、イエスの復活を記念するイースターでのパンや卵の象徴と繋がっているのです。 

 また、カトリック教には「イースターバニー(復活祭のウサギ)」もよく登場します。ウサギは多産であることから、生命力や繁栄の象徴とされ、チョコレートなどで作られたウサギの形のお菓子が店頭に並びますが、ロシア正教にはこのような習慣はありません。

 違いと言えば、もう一つあります。イースターの前の日曜日、カトリック教では「Palm Sunday(直訳:棕櫚[しゅろ]の日曜日)」と呼び、ロシア正教では「Ве́рбное воскресе́нье(直訳:ヴェルバの日曜日)」と呼びます。棕櫚はヤシ科で、ヴェルバはヤナギ科です。実は、ロシアやベラルーシなど、ロシア正教の地域では、ヤシが育たないため、代わりに春に芽吹くヤナギが使われることになったのです。
 「ヴェルバの日曜日」には、ロシア正教の信者たちはヴェルバの枝を教会に持参し、祭壇で祝福を受けたあと、それを家に持ち帰って室内に飾ります。どこか、日本の笹の風習に似ていると思いませんか?
 日本の神道では、笹は古くから神様が降りてくるものとして神聖視されており、神社や家庭で飾られたり、七夕の飾りとしても使われたりします。こうした発想の中に、二つの宗教の共通点がひっそりと潜んでいるのかもしれません。
 
 共通点と言えば、ロシア正教のイースターで欠かせないものとしてもう一つ、「колоко́льный звон(直訳:鐘の音)」があります。イースター当日の真夜中、0時ごろになると、復活祭ミサの始まりとともに教会の鐘が一斉に鳴り響きます。しかも、教会によっては、誰でもその鐘を鳴らすことができるんです!
 今度は仏教の「除夜の鐘」にちょっと似ていませんか?日本の多くのお寺では、除夜の鐘は一般の人も撞くことができますし、こちらもまさに夜に鳴らされますよね。ただし、ロシア正教の「鐘の音」が復活の喜びを表現しているのに対し、仏教の除夜の鐘は煩悩を静かに手放すという意味合いがあります。同じ「鐘の音」でも、その目的も意味も、まったく異なるんですね!

 では、また次の投稿まで!素敵なイースターをお過ごしください!
  • 著者の母が作ったクリーチ
  • 赤く染めたイースターエッグ
  • パンと卵が並ぶイースターの食卓

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