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ブラジルポルトガル語学科ブログ RSS

2018/04/03 01:10:00 地球儀を俯瞰 (ふかん) して熱帯を歩く (2)

  • Categoryブラジル紹介
  • Posted by住田 育法
 2017年8月に日本を発ち、「新世界」アメリカ大陸をカナダから南下して、北回帰線を越えました。地球儀で眺めると一直線のルートです。

 この丸い地球の熱帯地域を回帰線で示した地図 (写真)を観察すると、アジアの台湾とカリブ海のキューバは緯度がほぼ同じです。

 キューバで熱帯に入り、続いて、カリブ海に面したその首都ハバナ (写真) を出発して南に向かい、赤道を越えて南米ブラジルのリオに到着しました。球体ですから、日本から弧を描いて直線で反対側に達しました。

 熱帯に位置する台湾もキューバも、砂糖黍の栽培が盛んです。南米のブラジルも同じです。異なっているのは、キューバとブラジルでは、砂糖の生産のために大量の黒人奴隷を利用しましたが、台湾では使わなかったことです。同じ熱帯気候でも、社会の形成は、地域によって異なります。

 キューバやブラジルで生産された砂糖は、大西洋を越えてヨーロッパで消費されます。熱帯の自然や黒人奴隷は世界システムの有利な投資対象となり、ヨーロッパの資本が投下されました。白い砂糖を生産するために、黒い肌の人々の奴隷制度が発達したのです。この歴史は、やがてキューバやブラジルにアフロ文化圏を形成します。

 ブラジルのリオを訪れて、レヴィ=ストロースは『悲しき熱帯』で次のように綴っています。(川田順造 訳、中央公論社、1977年)

第三部 新世界
グヮナバラ
 リオは、入江に、心臓のあたりまで喰い込まれている。
 (略)その網目模様の謎を、いま私は、濡れた土器のかけらの背に問いかけているのだ。
 リオとの最初の接触は、これとは違ったものだった。いま私は生まれて初めて、赤道の反対側に、熱帯に、新世界に来ている―この三重の変化を、私はどんな徴 (しるし) を主な頼りにして知ったらいいのだろう?どんな声が私にその変化を証 (あか) してくれるのだろうか、まだ聞いたことのないどんな調べが私の耳にまず響いて来るのだろうか?私が第一に感じたのは、極くつまらないことだった―私は自分が広間 (サロン) にいるように思ったのだ。
 (略) リオの街は、ミラノやアムステルダムのガラス屋根のある商店街や、パノラマの通路や、あるいは [パリの] サン=ラザール駅のホールを、屋根を取り払って再現したもののように、まず私の目に映った。

 2016年にリオではオリンピックが開催されました。そして、2017年には過去の黒人奴隷制の遺産である黒人奴隷貿易の埠頭の遺跡がユネスコの世界遺産に登録されました。まさに、時間の場合も、過去と現在と未来が、古都リオでは複雑な模様を描いています。

 レヴィ=ストロースはさらに続けます。

 一般に、旅というものは空間的な移動として考えられる。しかし、それは大したことではない。旅は、空間にも時間にも社会秩序にも関わるものである。旅の印象の一つ一つは、この三つの軸に十分引き当てて見ないかぎり明確にはならない。しかも空間だけで三つの次元があるのだから、旅の十全な表象を得るためには、少なくとも五つの軸が必要だということになる。私はこのことを、ブラジルに上陸してすぐに感じた。確かに私は大西洋の向う側から、赤道の北から来て、南回帰線の間近にいるのに違いない。沢山のものがそれを証拠立てていた。

 まさにその空間は、大西洋システムにおけるアフロ・ラテンアメリカ文化圏の姿です。
  • 北回帰線と南回帰線に囲まれた地球の熱帯図
  • キューバの首都ハバナのカリブ海を望む海岸線
  • 大西洋から喰い込んだ湾に面するリオの中心街

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