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ブラジルポルトガル語学科ブログ RSS

2018/01/23 01:30:00 『阿片戦争』を読みパクス・ブリタニカのマカオを想う (6)

  • Categoryマカオのニュース
  • Posted by住田 育法
『阿片戦争』の新装版 4 冊のすべてを読み終えました。

 第六部の「生と死」の場面に、マカオで暮らしてきた連維材の愛人の西玲 (シーリン) が登場します。異種族混淆文化のマカオ (写真) の延長線上の世界です。
 
 めまいがしたので、連維材は次の部屋にさがって、椅子に腰をおろした。
 黙琴が彼のあとについてきて、すべるように部屋を出た。そして、椅子の肘かけにすがるようにして坐っている連維材のそばへ寄って、彼女はかがみこんだ。
「このようなときに、こんなことをおしらせしていいかどうかわかりませんが......さきほど、西玲さんに女の子が生まれましたの」
 黙琴は連維材の耳に、そう囁いた。
「生まれた?」
(略)
「どんな赤ん坊が生まれたのか、お知りになりたくありませんの?」
「知りたい」
 連維材は、すなおに答えた。
「髪は栗色です。色の白い、瞳は青みがかった赤ん坊。お星さまみたいに光る瞳です」
「西玲は?」
「お元気です。」
(略)
「......そうか、あの子は天からさずかったようなものだ。星の如し......如星 (ルーシン) 、これがいいではないか?」
「如星......きれいな名前です」
(略)
「姓は連ですね?」
 連維材はうなずいて、
「そうだ、如星は私の子だ」
 と答えた。


 小説は第一部「望潮山房主人」の亜熱帯の福建省厦門 (アモイ) の町からはじまりましたが、おわりは、遙か北の中原 (ちゅうげん) でした。阿片戦争 (歴史地図) が終わるとき、連維材、王挙志、林則徐の三人のおしゃべりが盛りあがり、陳舜臣の小説は「完」となります。

 第六部
「訣別」
 道中の風景は、連維材たち南方人の眼にはまるで別世界だった。
「これが中原ですね」
 王挙志は黄河流域の黄色っぽい風景を指さして、しみじめと言った。
(略)
9月6日(旧8月2日)の夜、蘭州道の林則徐の宿舎で、三人
(連維材、王挙志、林則徐)はテーブルを囲んだ。
(略)
 連維材は気を取り直したように言った。―
「しかし、わが国はひろいですね。こんどの旅行でつくづくそう思いました。ここにいると、広州のことなど、まるで夢のようです」
 台湾に統文、香港に承文、上海に理文。―それぞれ遠く離れている。怒濤の時代に立ち向かう若い人たちのことを思い、連維材は老いをかんじた。
 話し合っているあいだに、三人はだいぶ酒をのんだ。三人とも酒が好きであった。
「時代がかわります」
と、王挙志が言った。
(略)
 三人ともわかっていた。―
 この三人がそれぞれちがった道にはいって、新しい時代を迎える。―いや、新しい時代をつくろうとするだろうことを。

 21世紀の2018年。中国発の「新しい時代」が続きます。

 一帯一路で東西を結ぶ21世紀のシルクロード。
 ブラジルを加えた新興国BRICSの21世紀の跳躍。
 南蛮の足跡マカオ世界文化遺産 (2005年登録)。

  • 異種族混淆の民との中国茶の交流。マカエンセ (マカオ人) であるマカオの友人たちと。
  • 中国の一帯一路の空間。南北アメリカとカリブ海が見えない!
  • 中国語の阿片戦争図。

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