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2024/05/22 13:40:00 企画展 堺から世界に響け「君死にたまふことなかれ」

  • Categoryイベント
  • Posted by岐部雅之
5月18日(土)から6月16日(日)までの期間、堺市で企画展「堺から世界に響け『君死にたまふことなかれ』」が開催されます。

与謝野晶子(1878年-1942年)は、明治から昭和初期にかけて活躍した日本の詩人であり、近代日本詩の先駆者の一人です。彼女の詩は感情豊かでありながらも、叙情的な美しさを持ち、多くの読者に愛されています。

その代表作である「君死にたまふことなかれ」は、彼女の平和に対する期待や反戦思想が凝縮された名詩です。

この企画展に合わせて、本学科のフェリッペ・モッタ講師が「君死にたまふことなかれ」のポルトガル語訳を提供しています。

「いうまでもないことですが、晶子のこの詩は知名度が高く、古典的な名作です。その翻訳に挑むのは初め躊躇がありましたが、ポルトガル語を母語とする読者にも作者の平和に対する願望を届けたいと思い、挑戦してみることにしました。念頭にはウクライナ戦争のこともありましたし、今はガザ地区の情勢のこともあります。この作品は戦争の虚しさを見事に描いており、日露戦争当時の反戦風潮を吐露させているテーマ性がよく注目されますが、実は技巧的にも優れているところが重要です。翻訳するにあたり、なるべく原文の本意を残しつつ、ポルトガル語の詩として成立するように努めました」(モッタ講師の言葉)

企画展についてはここをご参照ください。

なお、「君死にたまふことなかれ」の原文およびポルトガル語訳を下記に記載します。

☆☆☆☆☆

君死にたまふことなかれ
     旅順口包囲軍の中に在る弟を歎きて

あゝをとうとよ、君を泣く、
君死にたまふことなかれ、
末に生れし君なれば
親のなさけはまさりしも、
親は刃をにぎらせて
人を殺せとをしへしや、
人を殺して死ねよとて
二十四までをそだてしや。

堺の街のあきびとの
旧家をほこるあるじにて
親の名を継ぐ君なれば、
君死にたまふことなかれ、
旅順の城はほろぶとも、
ほろびずとても、何事ぞ、
君は知らじな、あきびとの
家のおきてに無かりけり。

君死にたまふことなかれ、
すめらみことは、戦ひに
おほみづからは出でまさね、
かたみに人の血を流し、
獣の道に死ねよとは、
死ぬるを人のほまれとは、
大みこゝろの深ければ
もとよりいかで思されむ。

あゝをとうとよ、戦ひに
君死にたまふことなかれ、
すぎにし秋を父ぎみに
おくれたまへる母ぎみは、
なげきの中に、いたましく
わが子を召され、家を守り、
安しと聞ける大御代も
母のしら髪はまさりぬる。

暖簾のかげに伏して泣く
あえかにわかき新妻を、
君わするるや、思へるや、
十月も添はでわかれたる
少女ごころを思ひみよ、
この世ひとりの君ならで
あゝまた誰をたのむべき、
君死にたまふことなかれ。


Não entregues a vida!
    (Lamentando meu irmão, no cerco de Porto Artur)


Ah, meu irmão, choro-te. Não entregues a vida!
O mais novo nasceste, desejado herdeiro,
Pelos pais tão amado.
Ensinaram-te eles a matar e a morrer, a brandir a espada?
Quatro anos e vinte, assim foste criado?

Novo senhor de loja renomada em Sakai:
Irmão, tu és só este.
Não entregues a vida!
Caia Porto Artur ou não caia Porto Artur, nada é diferente.
Mercantes, à nossa lei isso pouco importa.

Não entregues a vida!
Tão puro de coração, tão nobre e divino,
O imperador nosso à batalha não virá.
Como bestas, que homens, apenas pela glória,
Derramem o sangue e matem-se desejará?

Ah, irmão meu, não entregues a vida à guerra!
No outono passado, morreu-lhe o marido:
Entristece-se a mãe, à luta vai o filho.
Com neve em seu cabelo, dita paz a era,
A casa ela guarda.

Na sombra da cortina,
Grácil, tua jovem esposa lembra e chora.
Já presente não estás; quem amparará o coração desta donzela?
Nem por dez meses juntos! Esqueceste tu dela?
Não entregues a vida!

(Tradução/翻訳: Felipe Motta フェリッペ・モッタ)



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