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ブラジルポルトガル語学科ブログ RSS

2019/04/27 12:20:00 ポルトガル語圏から眺める「一帯一路」

  • Categoryポルトガルのニュース
  • Posted by住田 育法
 大航海時代の歴史地図 (写真) を見ると、西にブラジル、東に中国が広がる陸と海の東西交流の姿が強く印象づけられます。まさにこれは、古代から中世に至る陸と海の永いシルクロードの歩み以後に展開した、大型帆船による南蛮人ヴァスコダ・ガマやマゼランの大航海の足跡です。
 リスボンの春で世界の植民地支配を放棄したポルトガルが、20世紀末にヨーロッパ連合に加盟し、同時に、ポルトガル語圏諸国共同体(CPLP)を創設します。つまり、「武力」による植民地支配ではなく、文化や経済活動による「平和」な共同体の創出です。これに加盟している9ヵ国、ポルトガル,ブラジル,アンゴラ,カーボベルデ,ギニアビサウ,モザンビーク,サントメ・プリンシペ,赤道ギニア,東ティモールは、植民地時代からの共通の言語・文化による連携,20・21世紀の経済関係の強化、人的交流の促進,さらにポルトガル語の国際語化などを、共同体の活動によってグローバルに進めています。
 今このポルトガルの構想をポルトガル語圏を超えて、中国の「21世紀のシルクロード」構想とも言える「一帯一路」のシステム (写真) に参加させようとする動きが起こっています。
 「一帯一路」は、ポルトガル語では “Uma Faixa, Uma Rota” と表記します。
 「シルクロード」はポルトガル語では“Rota da Seda” 、中国語では「絲綢之路」となります。「一帯」はシルクロードの陸上の「草原の道」や「オアシスの道」、「一路」は海上の「海の道」に一致するようです。したがって、15・16世紀ポルトガルの大航海時代の「道」は「一路」に重なりますね。ヨーロッパのポルトガルとアフリカのアンゴラが参加を決めています。東アジアのポルトガル語圏マカオは中国ですから、当然、「一帯一路」の一角を担うことになります。
 ポルトガルのコスタ首相は2018年11月29日に、中国が主導する広域経済圏構想「一帯一路」に協力する方針を明らかして、同年12月4日からポルトガルを訪れた中国の習近平(シー・ジンピン)国家主席と合意文書を取り交わしました (写真)。そして、2019年4月26日から北京で開催の中国が掲げる巨大経済圏構想「一帯一路」をテーマにした国際会議の開幕式に初めて首脳を送りました。マルセロ・レベロ・デ・ソウザ大統領です。27日までの3日にわたる国際フォーラムは、37ヵ国の首脳が参加して終わりました。
 「一帯一路」には懸念の声もあります。4月28日の『日本経済新聞』の社説「一帯一路は国際基準順守を」の結びを最後に紹介しておきましょう。

 「中国は経済力では先進国並みだ。ならば、経済協力開発機構(OECD)の規定に準じた透明な手法で一帯一路の事業を運営すべきだ。それが現地に利益をもたらさないという問題を解決し、質の高いインフラ整備につながる。第三国で協力を進める日本は、豊富な対外援助の経験を生かして中国の変化を後押しする必要がある。」

 今後の展開をアジアの日本からも、しっかり眺めたいと思います。
  • カンティーノ世界図。1502年。
  • 「一帯一路」構想の地図。青色の線が「一路」。
  • マカオの新聞に掲載された中国の習近平(シー・ジンピン)国家主席とポルトガルの首相との和やかな面談の様子の写真。

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