2018/11/08 22:30:00 ブラジルの混血理念と21世紀のDNA解析の衝撃
ブラジル紹介
住田 育法
SNSを使うようになって、以前よりはるかに頻繁に、自分の顔を他人の顔と比べる機会が増えてきました(リオの友人と撮った写真)。そして思うのは、白人、黒人、黄色人という「人種」の違いを超えて、わたしたちは皆「よく似ている」というのが率直な感想です。ブラジルにおいても、日本人の中でも、私は「目」が細いほうです。しかし、「表情」で見ると、それほど違わないように思えます。
このように私たちの顔は「よく似ている」との印象を持っていたとき、2016年にNHKが放送した番組が目から鱗が落ちるような情報提供をしていました。土屋敏之解説委員の『時論公論』の「縄文人ゲノム解読 私たちのルーツは」です。
「1987年、ミトコンドリアDNAの解析から、アメリカの研究グループが衝撃的な発表をしました。それは、<世界の人々の母方の祖先をさかのぼると、20万年前のアフリカにいた、たった一人の女性に辿り着く>というものでした。この女性は<ミトコンドリア・イブ>と名付けられました。このことは、それ以前から各地にいたはずの古い人類たちを、あとからアフリカを出た我々ホモ・サピエンスが全て絶滅させ、置き換わった証拠だと考えられました。しかし、これをくつがえす人類観も、今度は核DNAの解析から生まれました。2010年、ドイツのグループがおよそ4万年前にヨーロッパにいたネアンデルタール人の核DNAを解読。<我々はネアンデルタール人からDNAの数 % を受け継いでいる>と発表したのです。この発見は、ホモ・サピエンスはネアンデルタールと共存し交わりを持って子孫を残した、それが我々の祖先だということを意味します」。
この核DNA解析について、日本人のルーツのことも説明しています。
「およそ4万年前から2万年前の間に、大陸から日本に渡った人々がいました。大陸とは海で隔てられていたため、この人々はその後大陸のアジア人と交わること無く進化を遂げ、縄文人の祖先になります。その間、大陸のアジア人も様々に別れていきました。そして、縄文時代の末以降、再び大陸から日本に大勢の人が渡ってきました。いわゆる渡来系の弥生人です。稲作文化を持ち込んだ渡来系弥生人は人口の多くを占めるようになりますが、その過程で縄文人と幾らか交わりを持ったため、現代の日本人には12%だけ縄文人のDNAが伝えられたのです。従来の研究では、現代日本人には縄文人の遺伝子が2割~4割ほど入っているとも考えられていましたので、それよりかなり少ないという結果です」。
20世紀ブラジル社会の混血 (異種族混淆) の姿は次のように説明できます。
すでに、このブログでも紹介しているように、それは「家の外 (rua) ではリーダーである白人の男が、屋内 (casa) においては、子育てや料理をする黒人女性の《愛》によって支配される」ような社会。リオを代表する文化人である人類学者のロベルト・ダ・マタさんは、この社会の特徴は「多様」ではなく「1つ」であることだと述べています。つまり「リオの社会はヨーロッパ系貴族社会と黒人奴隷社会が混淆した伝統的な1つの社会である」と。
ともあれ、21 世紀の科学が人類 (ホモ・サピエンス) のルーツはネアンデルタール人であるとして、これが他と共存し交わり、滅ぼすのではなくひとつとなった、という説明は「違っている」ではなく、「似ている」ことを日常の生活の中で実感できる面白さに繫がります。
「よく似ている」というイメージの新しさです。
このように私たちの顔は「よく似ている」との印象を持っていたとき、2016年にNHKが放送した番組が目から鱗が落ちるような情報提供をしていました。土屋敏之解説委員の『時論公論』の「縄文人ゲノム解読 私たちのルーツは」です。
「1987年、ミトコンドリアDNAの解析から、アメリカの研究グループが衝撃的な発表をしました。それは、<世界の人々の母方の祖先をさかのぼると、20万年前のアフリカにいた、たった一人の女性に辿り着く>というものでした。この女性は<ミトコンドリア・イブ>と名付けられました。このことは、それ以前から各地にいたはずの古い人類たちを、あとからアフリカを出た我々ホモ・サピエンスが全て絶滅させ、置き換わった証拠だと考えられました。しかし、これをくつがえす人類観も、今度は核DNAの解析から生まれました。2010年、ドイツのグループがおよそ4万年前にヨーロッパにいたネアンデルタール人の核DNAを解読。<我々はネアンデルタール人からDNAの数 % を受け継いでいる>と発表したのです。この発見は、ホモ・サピエンスはネアンデルタールと共存し交わりを持って子孫を残した、それが我々の祖先だということを意味します」。
この核DNA解析について、日本人のルーツのことも説明しています。
「およそ4万年前から2万年前の間に、大陸から日本に渡った人々がいました。大陸とは海で隔てられていたため、この人々はその後大陸のアジア人と交わること無く進化を遂げ、縄文人の祖先になります。その間、大陸のアジア人も様々に別れていきました。そして、縄文時代の末以降、再び大陸から日本に大勢の人が渡ってきました。いわゆる渡来系の弥生人です。稲作文化を持ち込んだ渡来系弥生人は人口の多くを占めるようになりますが、その過程で縄文人と幾らか交わりを持ったため、現代の日本人には12%だけ縄文人のDNAが伝えられたのです。従来の研究では、現代日本人には縄文人の遺伝子が2割~4割ほど入っているとも考えられていましたので、それよりかなり少ないという結果です」。
20世紀ブラジル社会の混血 (異種族混淆) の姿は次のように説明できます。
すでに、このブログでも紹介しているように、それは「家の外 (rua) ではリーダーである白人の男が、屋内 (casa) においては、子育てや料理をする黒人女性の《愛》によって支配される」ような社会。リオを代表する文化人である人類学者のロベルト・ダ・マタさんは、この社会の特徴は「多様」ではなく「1つ」であることだと述べています。つまり「リオの社会はヨーロッパ系貴族社会と黒人奴隷社会が混淆した伝統的な1つの社会である」と。
ともあれ、21 世紀の科学が人類 (ホモ・サピエンス) のルーツはネアンデルタール人であるとして、これが他と共存し交わり、滅ぼすのではなくひとつとなった、という説明は「違っている」ではなく、「似ている」ことを日常の生活の中で実感できる面白さに繫がります。
「よく似ている」というイメージの新しさです。
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左端が日本人 (筆者) ふたり。右はすべてリオの筆者の友人のブラジル人たち。写真は Facebook より。
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両端が日本人 (左・筆者)。挟まれているのがリオの筆者の友人のブラジル人たち。写真は Facebook より。
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ブラジル人画家エミリアーノ・ディ・カヴァルカンティ (Emiliano Augusto Cavalcanti de Albuquerque e Melo) が描いた多様なブラジル人たち。2016年リオのオリンピック開催を記念して公開される。