2018/11/01 15:40:00 帝政終焉から百二十九年、皇帝護衛の騎兵「ドラゴン」を想う
ブラジル紹介
住田 育法
日本は晩秋。一方、地球を挟んで反対側に位置するブラジルは、初夏を迎えました。来月は、日本が冬至、ブラジルが夏至です。いまからちょうど 129 年前の 1889年11月15日に、ブラジルの帝政が終わり、共和政に移行しました。日本は明治 22年、のちの大正天皇嘉仁親王が皇太子となり、立太子礼を挙行しました。
ブラジルは南米で唯一、皇帝をいただくエリートの政治体制を経験しています。1822年にポルトガルに対する独立を宣するペドロ摂政皇太子の絵 (写真) を見てください。1888年にブラジル人画家ペドロ・アメリコによって描かれた、ブラジルのサンパウロのイピランガの丘の光景で、優雅さと力を示しているのは、空を背に剣をかざす皇太子よりも、手前から右に展開する躍動感あふれる気鋭の近衛騎兵隊の「独立の龍」 = Cavalaria de Guardas “Dragões da Independência” でした。もっとも独立の時点ですから、「情景」は後の時代の「創作」でしょう。
しかし、ブラジル人の「軍」への「願望」は、絵のように、独立以来、優秀な軍人たちがブラジルの領土と国民を守ってきたことを求めていたのです。皇帝よりも軍人が主役だと。絵はイピランガ (パウリスタ) 博物館に所蔵されています。
2018年8月にブラジルのリオを訪問し、フルミネンセ連邦大学学長に面談して、ブラジル研究について議論した際、ポルトガル王室が 1万5,000 名の随員とナポレオン軍に背を向けてブラジルに逃避した 1808年、そして独立の1822年、さらに共和政樹立の1889年についてそれぞれ執筆された三分冊 (写真)を読むと良いとのアドバイスを筆者は学長から受けました。19世紀の皇室というエリートの体制にその後の変化を知る鍵がある、という説明でした。
帝政崩壊 1年まえの 1888年には、奴隷の完全解放令に署名がなされ、黒人奴隷社会のブラジルが、まったく新しい近代的な自由労働の社会に生まれ変わりました。ブラジルの歴史家セルジオ・B・デ・オランダは、民族的にも地域的にも多様な異種族混淆の国民から成るブラジル社会において、真心のある (cordial) 姿勢こそが、国民の間の悲惨な争いを避け、平和な国民の統合と調和を保つための背景となっている、と説いています。
2018年のいま、2002年に貧困階層から登場した左派ルラ元大統領が大統領選挙への再出馬を希望していました。しかし「汚職」のため立候補できず、右派の元軍人のボルソナロが、ルラの後継者アダジを破って当選しました。2018年のGDPの値が世界第 8 位であるように、国は豊かになってきました。引き続き、民を豊かにすることを考えるべきでしょう。
次期大統領は、独立以来、Cavalaria de Guardas “Dragões da Independência” のようにブラジルの領土と国民を守ってきた「軍」に理解のある指導者です。ただ 11月の最新のニュースでは、軍を前面に打ち出さず、経済や汚職対策に力を注ぐ姿勢を示しています。2019年 1 月に就任することになりました。東アジアの日本から、静かにゆくえを見つめたいと思います。
ブラジルは南米で唯一、皇帝をいただくエリートの政治体制を経験しています。1822年にポルトガルに対する独立を宣するペドロ摂政皇太子の絵 (写真) を見てください。1888年にブラジル人画家ペドロ・アメリコによって描かれた、ブラジルのサンパウロのイピランガの丘の光景で、優雅さと力を示しているのは、空を背に剣をかざす皇太子よりも、手前から右に展開する躍動感あふれる気鋭の近衛騎兵隊の「独立の龍」 = Cavalaria de Guardas “Dragões da Independência” でした。もっとも独立の時点ですから、「情景」は後の時代の「創作」でしょう。
しかし、ブラジル人の「軍」への「願望」は、絵のように、独立以来、優秀な軍人たちがブラジルの領土と国民を守ってきたことを求めていたのです。皇帝よりも軍人が主役だと。絵はイピランガ (パウリスタ) 博物館に所蔵されています。
2018年8月にブラジルのリオを訪問し、フルミネンセ連邦大学学長に面談して、ブラジル研究について議論した際、ポルトガル王室が 1万5,000 名の随員とナポレオン軍に背を向けてブラジルに逃避した 1808年、そして独立の1822年、さらに共和政樹立の1889年についてそれぞれ執筆された三分冊 (写真)を読むと良いとのアドバイスを筆者は学長から受けました。19世紀の皇室というエリートの体制にその後の変化を知る鍵がある、という説明でした。
帝政崩壊 1年まえの 1888年には、奴隷の完全解放令に署名がなされ、黒人奴隷社会のブラジルが、まったく新しい近代的な自由労働の社会に生まれ変わりました。ブラジルの歴史家セルジオ・B・デ・オランダは、民族的にも地域的にも多様な異種族混淆の国民から成るブラジル社会において、真心のある (cordial) 姿勢こそが、国民の間の悲惨な争いを避け、平和な国民の統合と調和を保つための背景となっている、と説いています。
2018年のいま、2002年に貧困階層から登場した左派ルラ元大統領が大統領選挙への再出馬を希望していました。しかし「汚職」のため立候補できず、右派の元軍人のボルソナロが、ルラの後継者アダジを破って当選しました。2018年のGDPの値が世界第 8 位であるように、国は豊かになってきました。引き続き、民を豊かにすることを考えるべきでしょう。
次期大統領は、独立以来、Cavalaria de Guardas “Dragões da Independência” のようにブラジルの領土と国民を守ってきた「軍」に理解のある指導者です。ただ 11月の最新のニュースでは、軍を前面に打ち出さず、経済や汚職対策に力を注ぐ姿勢を示しています。2019年 1 月に就任することになりました。東アジアの日本から、静かにゆくえを見つめたいと思います。
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1888年にブラジル人画家ペドロ・アメリコが描いた「理想」の光景。絵の中央で空を背に剣を掲げるのが摂政皇太子。パウリスタ (イピランガ) 博物館所蔵。
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『1808』、『1822』、『1889』と題された三分冊の1つ。1822年の独立を挟んで、1798年から1843年までが書かれている。
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当選した大統領が目指す開発優先の政策を裏付ける2018年の世界第8位のGDP値。2019年値は予測。Joanes Silvaさんが作成。






