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ブラジルポルトガル語学科ブログ RSS

お知らせ

2018/03/08 17:30:00 『菜の花の沖』のことば (1)

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  • Posted by住田 育法
 学生のころ繰返し読んだ『坂の上の雲』(文藝春秋) も『菜の花の沖』と同じく全六巻でした。

 『坂の上の雲 一』1969年

 懐かしい、司馬遼太郎の「語り」です。

 春や昔
 まことに小さな国が、開花期をむかえようとしている。
 その列島のなかの一つの島が四国であり、四国は、讃岐 (さぬき)、阿波、土佐、伊予にわかれている。伊予の首邑 (ゆう) は松山。
 城は松山城という。

 『坂の上の雲 二』1969年
 『坂の上の雲 三』1970年
 『坂の上の雲 四』1971年
 『坂の上の雲 五』1972年
 『坂の上の雲 六』1972年

 ちょうど『坂の上の雲 六』最終巻刊行10年後の1982年に『菜の花の沖 (六)』が出版され、今、当時読んだものが手元にあります。

 さて、主人公の高田屋嘉兵衛が函館に拠点を置く商人だったので、小説のことばは日本語と北の国のロシア語です。そして『菜の花の沖 (六)』はナポレオン軍がモスクワへ兵を進めて敗北したロシア戦役の1812年から始まっています。

 遭遇
 リコルド少佐は、不期の戦いも覚悟していた。毎日の緊張が、目の下の肉を削 (そ) ぎとってしまった。かれがひきいる軍艦ディアナ号と護送艦ゾーチック号が、ともすれば霧が出て視界を乳色にしてしまう南千島の海域をうろつきはじめたのは、ロシア暦の八月中旬 (1812年・文化九年) のことである。
 霧のほか、風も潮流もすべて操船に都合 (つごう) が悪かった。
(略)
 霧の中の軍艦ディアナ号の「目」のほうが早く、嘉兵衛がディアナ号を見るよりさきに観世丸みつけた。
「大型日本船が」
と、艦長リコルド少佐は書いている。
「外海からまともな湾内に入って来るのを認めた」
 といって、べつに戦時ではないのである。観世丸が、なにごともないはずの自分の海域を帆走していて、油断していたのに対し、ディアナ号のほうは日本船をとらえるべく鵜 (う) の目鷹 (たか) の目になっていた。そういう姿勢のちがいはあるが、ほかに日本船が高いマストに見張りを置いていないということもある。さらに決定的なのは、日本船の伝統では、ほとんど訓練がほどこされていないということにあったろう。
(略)
 イギリスで発達した商船、私掠船 (しりゃくせん 戦時の通商破壊の私的な船)、さらには海軍の伝統にあっては、乗組員というものは、陸 (おか) の世間に住む人間とはずいぶんちがっていた。かれらは合理化されぬいた役割を個々に自覚し、それにともなう激しい訓練をうけ、かつ各員の役割についてはきびしい倫理観で裏打ちされていた。
 そういうシステムによって訓練されたロシア海軍にあっては、見張りの者の能力一つとっても日本船とはけたはずれにすぐれていた。

 司馬遼太郎の目線から、19世紀瀬戸内生まれの商人、高田屋嘉兵衛の北の国のリコルドとのことばの交流を小説を読みながら取り上げてみましょう。 
  • 1812年ロシア戦役 (ナポレオン戦争) における戦闘の1つボロジノの戦い。絵はウィキペディアより。
  • 函館の高田屋嘉兵衛の銅像。筆者撮影。
  • 函館の高田屋嘉兵衛の住居跡と筆者。

2017/11/09 21:50:00 元ゼミ生の安部さん、アジアのポルトガル語圏東ティモールで活躍

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  • Posted by住田 育法
 今から8年前の2009年度にポルトガル語圏歴史文化ゼミで「ブラジルにおける開発―農業に特化した資源大国の素顔―」と題する卒業論文を提出した安部久美子さんが、昨年2016年に青年海外協力隊員として、アジアにおけるポルトガル語圏東ティモールの2年間の活動を終えて帰国、故郷の兵庫県加古川市で帰国報告を行いました。その際、毎日新聞の取材を受けました。(参照:写真)

 加古川市のブログでも紹介されました。

【東ティモールで活躍! 青年海外協力隊】

 青年海外協力隊として派遣されていた安部さんが、帰国報告のために岡田市長を訪問しました。
 安部さんは平岡町在住。学生時代に農業が国の発展の手段となったことに興味を持ち、語学と農業の知識を高め、青年海外協力隊に初めて参加しました。...
 インドネシアの東側に位置する東ティモールは、独立してから14年目の新しい国です。食料はほぼ輸入に頼っているので、まずは自給自足を目指し、農業の普及に向けて取り組んでいます。安部さんは平成26年から今年6月までの2年間、現地で野菜栽培を指導しました。
 東ティモールの国立雇用職業訓練センターでは、18歳から20代半ばの働いていない若者に半年から1年の研修プログラムを組み、農業に必要な知識だけでなく仕事への意識なども指導します。現地ではさまざまな言語を使ってコミュニケーションをとる必要があり、同僚や研修生とお互いを理解し合うまでに時間がかかることもあったそう。
 安部さんは「大変なこともあったが、指導をした研修生が自覚や自信を持って成長していく姿を見ることにやりがいを感じました。これからも国際協力という分野に関わり、10代、20代の若い人が持っている力を引き出したい」と話し、市長もエールを送りました(参照:写真)。

 安部さんの卒業論文は以下のように始まっていました。

はじめに
 ブラジルは今や発展途上国と呼ばれることもなくなり、BRICs諸国などをリードする力を備えるほどの新興国となった。中国と並ぶ貿易大国にもなりつつあり、近年秘めた力をどんどん見せ始めてきている。2016年にはリオ・デ・ジャネイロでオリンピックが開催されることも決まり、ブラジルは今乗りに乗っている。そして日本にとってはただ遠く大きいだけの国ではなく、戦前から交流を持ち、互いに信頼を築いてきた関係である。我々とも関係深いブラジルを第5章に渡り、その可能性や問題点などを出来る限り多くの視点から考察した。資源大国ブラジルと呼ばれるようになったその背景を探るため、農作物やエネルギー産業などに重点を置いている。
  
 東ティモールの活動を終えて現在、安部さんは、フィリピンで活動を続けています。
 「お陰様で、東ティモールでの活動が終わってからもフィリピンと日本を行ったり来たりして、楽しく暮らしております。フィリピンに来てからはポルトガル語よりもスペイン語をよく聞くようになり、どんどんと色々な言語が混ざってしまいましたが・・・」

 ますますのご活躍をお祈りします。
  • 毎日新聞の取材を受けました。
  • 加古川市長の歓迎を受けました。
  • 東ティモールでポルトガル語圏諸国共同体の国際会議が開催されました。

2017/10/09 12:30:00 校友との懐かしい再会に感動!次回は戌年2月18日に集合!

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  • Posted by住田 育法
 2017年10月7日(土)に本学のキャンパスで懐かしい多くの「再会」がありました。ブラジルポルトガル語学科創設50周年記念の懇親会・記念誌編集委員会が開催されたのです。

 出席予定の卒業生の皆さんには、次のような案内を送りました。

 10月7日の予定を確認します。
 まず、京都外国語大学校友会の卒業生の集いに参加しましょう。
 校友会ホームページより
 いよいよ「卒業生の集い」が開催されます!
 10月7日(土)11:00~
(受付10:30~)
 森田記念ホールにて
 校友会総会・懇親会「卒業生の集い」を開催致します。
 当日参加申し込みも受け付けています。
 受   付 10:30~ 森田記念講堂ロビー
 第 一 部 総会 11:00~ 森田記念講堂
 第 二 部 懇親会 12号館リブレ


 続いて、ブラジルポルトガル語学科の同窓会の参加について
 ブラジルポルトガル語学科創設50周年記念懇親会・記念誌発行編集委員会
 日時
 2017年(平成29年)10月7日(土)
 校友会「卒業生の集い」後、17:00頃から上記の懇親会・委員会を開催。
 場所 
 新4号館432教室
 参加者の皆さんへのお願いです。
 1 会場となる教室は、一切の飲食が禁止されています。ご理解ください。
 2 参加者はほぼ、30名です。当日の突然の参加決定も歓迎します。
 3 記念誌発行のための編集会議は2018年2月に2度目を開催する予定。
 皆様にお会いできるのが楽しみです。
 ご不明なことは、どうか自由にご連絡ください。
 記念誌編集委員会幹事

 10年前の40周年記念同窓会には160名ほどが参加しましたが、今回の50周年記念は約40名ですから、規模が小さくなりました。しかし10年前に欠席した複数の皆さんが今回、出席しました。北は北海道、南は沖縄からと、飛行機を使った泊まりがけの参加の方もいました。
 数十年ぶりの再会でいつも感じるのは、互いに白髪やしわが増えているものの、つい数日前に会ったかのような気分になれることの不思議さです。私の同級生は10年ぶり、北海道からの後輩は21年ぶりでした。そのほか、41年・42年ぶりの人たちも。

 2018年戌年2月18日に、以下のとおり、記念誌編集のための2度目の懇親会を行います。同窓生のほか、懐かしい先生方も出席されます。

 2018年2月18日(日)
 新4号館が会場です
  場所/時間
  4号館3階 432教室 12時~12時25分 編集について
  4号館6階南 12時30分~16時 懇親の同窓会 
 ※準備の都合により出席予定の連絡は 2018 年 1 月末日で締切ります
  • 10年前の2007年の40周年記念同窓会参加の皆さん 160名ほどの校友が集合!
  • 今回の2017年校友会懇親会参加の学科卒業生の皆さん
  • 新4号館432教室で開催した記念誌編集懇親会参加の皆さん

2017/04/07 01:20:00 CPLP事務総長のスピーチ

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  • Posted by住田 育法
 ポルトガル語圏諸国共同体 (CPLP) マリーア・シルヴェイラ事務総長が、2017年3月20日に本学を公式訪問しました。森田記念ホールで開催された、ブラジルポルトガル語学科の卒業生たちの学位記授与式に出席し、式の後、873教室において同学科の卒業生に対して通訳を含めて、約20分のスピーチを行いました。

 以下は通訳の和訳によるその内容の一部です。

 卒業生の皆様、本日はおめでとうございます。私はCPLP、ポルトガル語圏諸国共同体を代表して、本日皆様の人生の社会人に向けての最初の一歩を祝福します。そして皆様の成功を祈ります。本日は皆様の人生の大切な日をシェアできることを喜び、この機会を与えてくださった京都外国語大学に感謝します。あわせて本日は、われわれのCPLPについてお話しします。

 CPLPは、1996年にポルトガル語を話す9カ国が、互いの関係性を強めようという目的の下に、同じ協力体制と連帯感を持って立ち上げた共同体です。同じ理想を共有しようと形成されました。それは平和であり、法治国家であり、人権です。このような価値を共有することによってお互いが経済的、社会的発展を遂げようということです。さらにポルトガル語を使って、お互いの共通の対話を行い、協力しあい、連携することが、われわれのCPLPの基本姿勢となっています。

 こうして結成から20年、ポルトガル語をベースとした活動を行ってまいりました。そして、世界の舞台において、ポルトガル語を通じて、国際的な関係を維持していく、ということです。特にポルトガル語に関しましては、近年ますます注目されており、世界でよく話されている言語、ということになっています。実際その総人数は、2億7千万人いると言われ、特にインターネットの普及によって、とりわけSNSの中で、とても使われている言語であり、それによってグローバル言語の1つと位置づけられています。ポルトガル語は世界で5番目に話されている言語であり、インターネットでは3番目になります。さらに国際地域機関の32の団体において、公式言語になっています。中でも南半球でもっとも成長率の高い言語であるとみなされています。

 ポルトガル語の普及は4つの大陸にまたがっているという顕著な特徴があります。複数大陸間言語、というふうにとらえられています。さまざまな文化的背景、さらに民族のアイデンティティーをなす言語であります。今ではさまざまな民族が交流して、さまざまな価値を共有しています。このようなポルトガル語におけるさまざまな活動やさまざまな交流が、ポルトガル語圏以外の国においても、興味を引いています。その証拠にさまざまな国がこのCPLPのオブザーバー国として、任命されており、日本もオブザーバーの1つになっています。ポルトガル語は、ひじょうに多様性に富んだ言語であり、さきほども述べた4つの大陸、つまりヨーロッパ、中南米、アフリカ、アジアにおいて、使われております。

 この機会を利用して、われわれCPLPが主宰しているIILP 国際ポルトガル語研究所 (Instituto Internacional da Língua Portuguesa)、こちらを活かして京都外国語大学にわれわれのイニシアチブに賛同いただきますよう、今回、皆様をこの活動に招待いたします。これはカボヴェルデに事務所があります。さらに協力関係については、われわれは人材育成、特に科学技術において、大学と連携し、人材育成を行っていくこと、これをわれわれはCPLPの1つの課題、前提の1つとしています。特に高等教育に関しては、われわれのCPLP側からも、長期的な観点に立って、特に発展途上国における人材不足に鑑み、「いかに、教育、さらには研究、こういったものを推進していくか」、ということがわれわれの課題となっており、これを特に10年の課題と考えています。とりわけ大学間ネットワーク、というのをわれわれは提唱しており、その協力関係の中に、ポルトガル語圏の国だけではなく、第三国の参加も促しており、それに関しては日本も含まれます。

 卒業生の皆様、ポルトガル語はこれからますます可能性が広がっていく言語です。特に、さまざまな研究の成果をポルトガル語で発表するとか、あるいはイノベーションを行うとかに活かせます。さらには、デジタルの世界でポルトガル語が積極的にツールとして使われる、といった、多くの可能性があります。ポルトガル語を学ぶ皆様の学習の過程が、本日「卒業」により終わりますが、この先、個人の人生におきましても、あるいは職業におきましても、新たな一歩になると私は理解しています。

 ARIGATO-GOZAIMASU。 ※最後の言葉は日本語でした。
  • 学位記授与式でポルトガル語でお祝いを述べる事務総長 左側は森田理事長・総長 右側は駐日メキシコ大使
  • ブラジルポルトガル語学科の学生にスピーチをする事務総長
  • 本学正面玄関の「言語を通して世界平和を」の標語の前にて

2014/04/02 23:20:00 第13回ラテンアメリカ教養講座「オーパ! ブラジル」

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  • Posted by京都ラテンアメリカ研究所
日時:2014年5月14日より毎週水曜日(全5回)18:15~19:30
会場:京都外国語大学 国際交流会館4階 会議室
後援:京都ラテンアメリカ文化協会
※申込不要・入場無料

 サッカーワールドカップを目の前に、ブラジルに世界中の目が注がれています。ブラジルと言えば、サッカー、サンバ、カーニバル、アマゾンというイメージがすぐに喚起されます。それらはそれで素晴らしい魅力を今も変わらず湛えていますが、それらを凌駕せんばかりの新たな魅力がまさに生まれつつあります。昨年のサッカーフェデレーションカップの開催時に世界中に報道された市民の抗議行動から、政治が混乱していると感じた方々がおられるかもしれませんが、ブラジルの政治は決して不安定であるわけではありません。むしろ強固で成熟した民主主義の国でありながら、進取の気性に富んだその国民の活力が、様々なシーンで噴出しつつあるのです。
 本講座が、皆様の新たなブラジルを感じる機会になることを祈っています。

5月14日(水)
ブラジルの教育:多様性の国における希望
モイゼス・カルヴァーリョ(京都ラテンアメリカ研究所)

 『多様性』は、ブラジル共和国の素晴らしさの一つであると同時に、深刻な問題でもある。本講演では、多様性に富んだ国における「教育」の重要性と国の発展におけるその役割について考察する。具体的には、ブラジルの教育制度の現状とその充実を図るためのいくつかの国家レベルでの計画や先住民教育、将来の展望などについて述べる。

5月21日(水)
大陸国家・ブラジル経済の底力
堀坂浩太郎(上智大学名誉教授)

 新興国ブラジルの経済は今、調整局面にあるが、視野をもう少し広げてみると、大陸サイズの国としての強みが浮かび上がってくる。熱帯の北部から降雪もある南部まで、全国12都市で繰り広げられるサッカーW杯は、その底力を結集する絶好の機会ともいえそうだ。

5月28日(水)
日本とブラジルのサッカー ―水島武蔵氏を中心に―
下田幸男(京都産業大学)

 ブラジルでの日本人プロ第一号である水島武蔵氏(現:藤枝MYFC監督)の半生に焦点を当て、Jリーグの始まる前の日本サッカーの状況とブラジルで苦闘しながらも成長する水島氏とのコントラストを中心にお話しします。

6月4日(水)
サンバの国の民主主義
住田育法(京都ラテンアメリカ研究所)

 アフリカ文化をルーツとするサンバは、古都リオデジャネイロを舞台に、国民音楽の地位を獲得した、異種族混淆の賜物です。このサンバの国の指導者は、国民の直接選挙によって選ばれます。真心と情熱に満ちた人々の、社会正義を希求する、政治の素顔に迫ります。

6月11日(水)
ブラジル日本移民の歴史を考える
二宮正人(弁護士/サンパウロ大学)

 100年を超えるブラジル日本移民の歴史は、20世紀末のデカセギ現象によって大きな転換期を迎えました。日本の入管法改正による影響、CIATE(国外就労者情報援護センター)の活動、在日ブラジル人に対するブラジル政府の支援などに触れながら、移民史の今と未来を考えます。
  • 経済発展著しいサンパウロ市中心街
  • 近代美術博物館からリオを望む
  • ポスター

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