ページの先頭です。ページの本文へ

ブラジルポルトガル語学科ブログ RSS


2023/10/10 16:20:00 読書感想文コンクール 入賞者が決定!

  • Categoryお知らせ
  • Posted by上田
7月のブラジルポルトガルウィークのイベントの一つとして開催された「読書感想文コンクール」(課題図書:ルイ・ズィンク、黒澤直俊編『ポルトガル短篇小説傑作選』現代企画室、2019)の入賞者が決定し、10月5日に表彰式が行われました。入賞者は以下の皆さんです。


 1. 最優秀賞:田村翼(1年次生)

 2. 優秀賞:田邊有香(4年次生)

 3. 優良賞:古賀麻里子(1年次生)


最優秀賞の田村翼さんは、「普段から本を読むことが好きで、夏休みの北海道旅行中に課題図書を読んだ。また来年もチャレンジしたい」と話していました。普段の暮らしの中に本があるというのは素晴らしいことですね!

入賞者の皆さん、おめでとうございます。

以下に田村翼さんの読書感想文を掲載します。


「彼女のはさみの使い方」


 私がいくつかの短編の中からこの話(「美容師」)を選んだ理由は、その小気味良い一人称の書き出しからです。「髪を切るっていいですね。私も短い方が好きです。」このとても軽やかな書き出しからは、 陽気な女性のエッセイでも始まるような印象を受けます。最初のページを読み終えた時点でまさか彼女が殺人犯であるとは誰も思わないでしょう。
 彼女の人生は我慢の歴史です。おじからは性的な虐待を受けました。 夫からは暴力を受け、不倫までされました。しかし彼女は我慢という言葉を使いません。「完璧に誰の邪魔もすることなく」「慣れていた」というような、あくまで自分はそこまで辛くなかったというような言い回しをします。自分が同じ立場に置かれたらと思うと恐ろしい気持ちになりますが、不思議と空から彼女を見下ろしている分にはそこまでつらい印象は受けません。
 実際彼女のような人間が自分だった場合、私は非常に不愉快だと思います。自分のことは後回し。他人ばかりを優先して辛い目に遭う。自己主張もできない。しかし彼女にそこまでの嫌悪感を抱かないのはあくまで他人事だからだと思います。むしろ過酷な競争である就職活動などの中では、 彼女のような存在が潤滑油なのかなと思います。彼女は自分がなれなかった競争的な女性を「戦う女」と表現していました。彼女は戦って負けるタイプではく、そもそも戦うことを避けていたのだと思います。
 率直に怖いなと感じたのは、彼女が夫を刺した後に「悪気はなかった」「わざと(中略)悪いことをするような人間ではなかった」「激昂するような人間でもなかった」と話していたことです。彼女は夫を刺しに行くまでの感情の中に「奇妙な勇気」という言葉を用いています。人を刺しに行くのに、勇気。しかも悪気がないし激昂もしていないとあれば、彼女は自己観察のできていないサイコパスなのではないかとも伺えてしまいます。しかしそうではありません。むしろ文字を追う限り、彼女は自己観察のスペシャリストです。自分が周りに流されて、なんでも受け入れてしまう女性であることを非常によくわかっています。
 この話には彼女の半生が綴られているわけですが、 彼女は幸せだったのでしょうか。幸せとはとても曖昧な言葉でもありますが、幸せを得るものだと仮定する場合彼女には難しかったと思います。 彼女は非競争的な性分で反抗心も薄い人物です。しかし彼女はテレビ局の事務員という安定した職につき、そこで眉目秀麗なニュースキャスターの男性と結婚できています。こう見ると彼女の人生はとてもバラ色の人生なのではないかとすら思えますが、この文章に書かれていることのほとんどは彼女が辛かったこと、つまり我慢の歴史です。 彼女の面白いところは一般的に見たら幸運そうなチャンスを掴んでいても、彼女からすれば辛いことばかりだったということです。
 この話の題名が「美容師」であることを考えてみたいと思います。彼女は最終的には美容師として働いている描写があります。この話自体も、今カットを行なっている客への話しかけから始まり、最後にはカットが終わったような描写も含まれています。これはあくまで文章全体に及ぶ彼女の一人称の語りが独り言でも妄想でもなく、客を相手にした語りだということが推測できます。彼女は美容師になりたかったと文章中にはありましたが、 時勢や環境の都合から安定した職を求めテレビ局の書類係となりました。そのことが後の事件へとつながるわけですが、彼女がもともとなりたかった美容師という職についているということは彼女の運命を表しているようにも感じます。彼女が夫の命を奪った道具ははさみでした。しかし、彼女が美容師たりえるアイデンティティを確立している道具もまたはさみなのです。話の中に、このような一節がありました。「切ることが私の幸せなんです。(中略)まるでなにごともないかのように滑らかに姿を変えてしまうはさみ」とあります。この記述だけ見れば私はこの話のタイトルは「はさみ」でいいのではないのかとも思いました。彼女の人生を作っているのは良くも悪くもはさみであるからです。しかし私は、作者がつけた「美容師」という題名も大変好きです。はさみはあくまで道具で、それをどう使うかは彼女が決めることです。 彼女は2通りのはさみの使い方をしてしまったわけですが、 切ることが幸せであった彼女にとっては、どちらも幸せであったのかもしれません。夫を刺し殺したはさみも、彼女にとって滑らかに生活を変えてくれる道具でもあると感じました。
 最後付加的ではありますが、彼女の語りを聞いていてカットもされていた客の気持ちになってみましょう。萩原浩が書いた「海の見える理髪店」という短編小説の中にこのような記述があったことを覚えています。 理髪師である店主が殺人を告白したとき、 首に当たっているカミソリが冷たく感じたというような内容です。「美容師」の話の中に客の思考などは一切ありませんが、想像してみるとかなり面白いと思います。「はさみ」で人を刺し殺した美容師が、同じ「はさみ」で自分の髪を切っている。彼女から殺人の話を聞いたとき、私がそこに座っていたら、きっと冷や汗を垂らしながら金縛りに遭っていると思います。






  • 最優秀賞の田村翼さん

2023/10/02 07:00:00 本学科の在学生3人、京都府警察鉄道警察隊に感謝状を贈呈される

  • Categoryお知らせ
  • Posted byフェリッペ・モッタ
9月28日(木)、京都外国語大学のキャンパス内で開催された式典にて、本学科の在学生3人を含む本学の学生が京都府警察鉄道警察隊より感謝状を贈呈されました。

この度、京都府警察鉄道警察隊が制作する痴漢等防犯リーフレット「ちかん・盗撮ZEROハンドブック」の多言語化プロジェクトに本学と京都外国語専門学校が協力し、それぞれの教員による指導のもと英語・中国語・ポルトガル語・韓国語・ベトナム語の計5言語で学生を中心に翻訳作業を行いました。4号館6階で行われた式典に参加した学生たちは京都府警鉄道警察隊にプロジェクトの意義について語ってもらい、感謝の言葉をいただきました。

ブラジルポルトガル語学科は、岐部雅之講師の文学ゼミに所属する学生3人が中心になり翻訳作業を進めました。岐部講師は近現代ブラジル文学を専門としており、本年3月には編著『ブラジル文学傑作短篇集』を出版しました。岐部ゼミでは学生が主体となり、様々な文学作品の翻訳や再編する(現代風に訳し直す)試みがなされ、翻訳するとはどういうことなのか、物語の視点を変えることにより何が見えてくるかというテーマ等が議論されています。

今回のプロジェクトは日本語からポルトガル語に翻訳する難しさと面白さについて考える良いきっかけになるだけではなく、大学で培われた知識を社会に還元する社会貢献性があることで、岐部講師およびゼミ生の皆さんは喜んでに引き受けたということです。

プロジェクトに参加した山本千夏さん(3年次)は「日本語で助けを求めることが出来ない方々の手助けになればなと思いました。これまで学んできたポルトガル語をこのような形で活かせて、とても良い経験になりました」と述べました。

同じ3年次生である庄田純怜さんは「痴漢はあってはならない悪いことですが、巻き込まれないとは言い切れません。リーフレットを翻訳して駅や施設に置かせてもらえたことは必ず誰かの助けになると信じています」とリーフレットが多くの方々の助けになると語りました。

福田眞彩さん(3年次)は女性としてこのプロジェクトに関わった意義について「痴漢に遭ってもおかしくない私たちが被害に遭わない為にどう気をつければいいかというリーフレットを翻訳をすることが出来て、翻訳の勉強はもちろんですが、自分自身が痴漢に遭った時、もしくは遭っている人を見つけた時どうすればいいのかも改めて考えることが出来ました」と熱い思いを表明しました。

学生の指導に当たった岐部講師は「文学研究とリーフレットの翻訳作業は一見すると関係性が薄いように見えますが、小説や映画で描かれている『犯罪』について議論するきっかけになりました」と述べ、ゼミでの活動や社学連携の重要性について話しました。

なお、感謝状贈呈式の様子は、NHK総合「京いちにち ニュース630」でも取り上げられる予定です。

▼ウェブサイト
「京いちにち ニュース630」

【関連記事】
痴漢等防止リーフレットの多言語化プロジェクトに本学学生らが翻訳協力

京都府警鉄道警察隊から学生らに感謝状を贈呈

  • 感謝状を受け取る福田さん 感謝状を受け取る福田さん
  • 岐部講師と翻訳作業に携わったゼミ生3人 岐部講師と翻訳作業に携わったゼミ生3人
  • 感謝状(氏名のところは伏せています) 感謝状(氏名のところは伏せています)

2023/09/26 19:00:00 フェリッペ・モッタ講師が雑誌「alternativa」の取材を受ける

  • Categoryお知らせ
  • Posted by岐部雅之
本学科のフェリッペ・モッタ講師が日本で刊行されているポルトガル語雑誌「alternativa」(Nippaku Yuai Co., Ltd.)の取材を受け、その記事が571号に掲載されました。

表紙を飾る記事は「Somos malvistos no Japão?」(日本におけるブラジル人のイメージは悪いか?)と題され、専門家および関係者が在日ブラジル人コミュニティーについて意見を述べました。

モッタ講師は国際化の風潮と日系ブラジル人の受入れに関して具体的に言及し、より多様化された日本社会の実現にたくさんの移民を送った日本の過去を知る重要性について主張しています。

雑誌「alternativa」はこちらからご覧ください。

  • 表紙 表紙
  • 記事「Somos malvistos no Japão?」 記事「Somos malvistos no Japão?」
  • モッタ講師 モッタ講師

2023/09/08 12:10:00 ブラジリア大学留学体験記(小田果歩、3年次)

  • Category留学生活レポート
  • Posted byペドロ・アイレス
こんにちは。ブラジルポルトガル語学科3年次生の小田果歩です。今回はブラジリアでの留学で感じたことを少し紹介します。

小学生の時にブラジルが紹介されていたテレビ番組を見て以来、ぼんやりと地球の反対側の世界ってどんな感じだろうかと思っていました。その疑問はずっと消えずブラジルに行ってみようと思い、今年度(2023年度)春学期に留学をする事ができました。

ただ、私が抱いていたイメージは良いものではなく、治安が悪くて危険な国でした。ところが、不安や恐怖を抱えながらブラジリア大学の近くにある日本語学校の寮で待っていたのは、ブラジル人からの温かい歓迎ぶりでした。夜遅く着いた日本人のために快く荷物運びや寮の説明、次の日にはスーパーやショッピングモールなどの案内をしてくれたのです。

さらに大学では同じ授業を受けていた人が授業の空き時間にブラジリアの観光地の案内をしてくれたり、一緒にカフェや大学内で過ごしたり、休日は動物園やレストラン、遊園地などへ出かけてとても充実した日を共に過ごす事ができました。

また、寮で同部屋だったブラジル人はミナスジェライス州から来ていた子で、実家へ一緒に連れて行ってもらい、共にリオデジャネイロへ旅行するなど貴重な経験もしました。

ブラジル人と過ごしていく中で、数々の親切さを目の当たりにしました。風を引いてしまった時には授業の前に寮まで薬や食べ物を届けてくれたり、車で寮へ送ってくれたり、理解できないことは理解できるまで丁寧に教えてくれたりしていました。信じられないくらいの温かみを毎日のように感じていました。

私はブラジル人から受けた親切さを忘れずに生きていこうと思います。
地球の反対側には、人種、文化、住んでいる場所は違っていても、充分すぎるほどの親切さを与えてくれる人達がいます。

皆さんも新たな出会いを求めて、ブラジルへ旅立ってみませんか?
  • 帰国前日の寮にて 帰国前日の寮にて
  • ブラジル人と日本人でのリオ旅行でのバー ブラジル人と日本人でのリオ旅行でのバー
  • ブラジル国内旅行で素晴らしかったと思う場所 世界三大瀑布の一つ、イグアスの滝 世界三大瀑布の一つ、イグアスの滝

2023/09/01 09:30:00 コインブラ大学留学体験記(小林龍生、4年次)

  • Category留学生活レポート
  • Posted by岐部雅之
こんにちは。4年次生の小林龍生です。
私は2022年の9月から2023年の6月までの2学期間、ポルトガルのコインブラ大学に留学しました。

留学の動機は幼い頃から抱いていたヨーロッパでの生活とフットボールへの憧れです。

1学期は文法、文章・口頭表現、Callを履修し、日本で学んできたことの復習とポルトガル語を扱ううえでの土台を作ることができました。
2学期は上記の科目に地理、歴史、芸術を加えて履修しました。
冬期休暇中には時間があったため、大学が開講している短期のインテンシブコースを別途授業料を支払い受講しました。
約9か月間途切れることなく授業を受け続けることができたため、語学力を順調に向上させられたと思っています。

私が所属していたのは外国人向けのポルトガル語コースだったため、ネイティブスピーカーは1人もクラスメイトにはいませんでした。留学においては一見ネガティブな材料とも捉えられますが、多国籍の生徒たちと交流する中で様々な国の言語や文化に触れることができ、自分にとっては寧ろ興味深い経験でした。またクラス外で現地の友人を作るのは自分次第で可能であるため問題にはなりません。

ポルトガルに留学することの最大のメリットは、ポルトガルのポルトガル語を学べる点です。あくまでも個人的な視点ですが、国内外問わず、非ネイティブが学ぶことができるポルトガル語はほとんどがブラジルのものです。留学することによって現地で受け継がれてきたポルトガルのポルトガル語を学ぶことができたのは私の誇りです。

コインブラの立地と国の面積が小さいことの恩恵を受けて、気軽に旅行することができました。海とご飯が私のお気に入りです。
まとまった休みには国外旅行もしました。スペインのいくつかの都市、パリ、ロンドンなどを訪れました。現地で外国語を使って、コミュニティに入っていくことが楽しかったです。

成功体験を得ることで言語学習に前向きに取り組めるようになり、さらに扱うことができる言語数を増やしたいと思うようになりました。
留学の実現に関わってくださった皆さんありがとうございました。
  • 教室からの眺め 教室からの眺め
  • コインブラの街並み コインブラの街並み
  • FC Porto ホームスタジアム FC Porto ホームスタジアム

Page top