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ブラジルポルトガル語学科ブログ RSS


2017/02/17 03:10:00 CPLPを知っていますか(2)

  • Categoryポルトガルのニュース
  • Posted by住田 育法
 大西洋を挟んだアフリカ、ヨーロッパ、ラテンアメリカのポルトガル語圏に注目してみましょう。

  CPLP加盟の9か国のうち、アジアの東ティモールを除く8か国が、大西洋を挟んだアフリカ、ヨーロッパ、ラテンアメリカに位置しています(地図を参照)。さらに興味深いのは、ヨーロッパを除くすべてのポルトガル語圏のアンゴラ、ブラジル、カーボヴェルデ、ギニアビサウ、モザンビーク、サントメ・プリンシペ、赤道ギニア、そして東ティモールが、北回線と南回帰線の間の「熱帯」に属しています。世界地図の青い部分のAfが熱帯雨林気候、Amが熱帯モンスーン気候、Awがサバナ気候です。
 これら熱帯の国々の産業を確認しましょう。
 アンゴラの主要産業は、鉱業は石油、ダイヤモンド、農業はとうもろこし、フェイジョン豆、砂糖、コーヒー、サイザル麻です。人口は2,214万人(2014年)。
 ブラジルの主要産業は、製造業をはじめとして、鉱業は鉄鉱石など、農牧業は砂糖、オレンジ、コーヒー、大豆などです。人口は2億784万人(2015年)。
 カーボヴェルデはバナナ,サトウキビです。人口は52.1万人(2015年)。
 ギニアビサウは落花生、カシューナッツです。人口は184万人(2015年)。
 モザンビークの産業は、農林業がとうもろこし、砂糖、カシューナッツ、綿花、たばこ、丸太・木材、漁業がエビ、鉱工業がアルミ、石炭、天然ガです。人口は2,722万人(2014年)。
 サントメ・プリンシペはカカオ豆です。人口は19万人(2015年)。
 赤道ギニアはココアが主要産業でしたが、1992年に石油・天然ガス生産が開始されて以来、石油が主要輸出品となっています。人口は90万人(2016年)。
 東ティモールの主要産業は、農業は、コメ、とうもろこし、イモ類、ココナッツなど、輸出用作物としては特にコーヒー。人口は118.3万人(2015年)。

 大航海時代に、アフリカに面したイベリア半島のポルトガルが熱帯の土地を「発見」し、その豊かな産物を世界に伝えました。アボガドやピーナッツ、バニラ、グアバ、トマトは中米原産、パイナップルやカジューは南米、チョコレートの原料のカカオはカリブ海に面した南米、パッションフルーツは中南米、パパイアがアンデス地域の原産と伝えられています。
 興味深いのは、現在ではブラジルを代表するバナナやココヤシ、マンゴー、サトウキビの原産地が、実際には東南アジアだということです。つまりポルトガル人は大航海時代に、新世界の産物を旧世界へ、旧世界の産物を新世界へ運んだのです。植物のみではなく、家畜などの動物も、そして人も運び、接触させ、発展させたのです。

 CPLPの本部はリスボンにありますが、創設20周年の2016年にブラジルで首脳会談が開催され、新しいCPLPの事務総長にサントメ・プリンシペの元首相が選出されました。
  • 大西洋を挟んだアフリカ、ヨーロッパ、ラテンアメリカの地図
  • 世界地図の青い部分が熱帯。
  • カーボヴェルデ、ギネビサウ、サントメ・プリンシペなどの西アフリカの地図

2017/02/16 17:20:00 CPLPを知っていますか(1)

  • Categoryポルトガルのニュース
  • Posted by住田 育法
 CPLPはポルトガル語の Comunidade dos Países de Língua Portuguesa の略語です。ポルトガル語圏諸国共同体と訳しています。加盟国はポルトガル語圏の9か国です。

 アンゴラ、ブラジル、カーボヴェルデ、ギニアビサウ、モザンビーク、ポルトガル、サントメ・プリンシペ、東ティモール,赤道ギニア

 オブザーバーは日本を加えて、非ポルトガル語圏6か国です。

 日本、ジョージア、モーリシャス、ナミビア、セネガル、トルコ、ハンガリー、スロバキア、チェコ、ウルグアイ

 日本の外務省によれば、日本の取組は次のとおりです。
 2014年5月、安倍総理大臣が、現職の総理大臣として史上初めてポルトガルを訪問した際、日本のCPLPへのオブザーバー参加申請の意向を表明し、同年,7月のCPLPサミットにて、日本のオブザーバー参加が全会一致で承認されました。日本のオブザーバー参加を通じて、民主化、経済成長、開発協力等幅広い分野においてCPLPメンバー国との更なる協力が期待されます。2015年3月にポルトガルのコエリョ首相は来日に際して「日本がポルトガル語圏諸国共同体(CPLP)の会合にオブザーバーとして参加する方針も歓迎」し、日本は「ブラジルを含む2億2千万人の同国語圏に発信する機会を広げる狙い」であると紹介されました。

 設立の経緯は以下のとおりです。
 1996年、ポルトガルの首都リスボンでサミット開催、CPLPを正式に設立。今から20年前でした。
 1989年、サルネイ・ブラジル大統領 (当時) の呼びかけにより、ポルトガル語圏諸国の元首が設立に合意。各加盟国が持ち回りで2年に1度、首脳会談を開催。閣僚 (外相) 会合は毎年開催。

 世界のポルトガル語の話者数は、約2億3千万人です。近年は、ブラジル、アンゴラ、モザンビーク、東ティモールなどの目覚ましい経済成長と資源に対する関心の高まりとともに、CPLPの国際社会での存在感も高まりつつあり、特にアフリカでの影響力を強めています。

 活動例
 ① 開発協力(警察・司法、医療、教育など)、
 ② 民主化への相互協力、
 ③ 大学間交流、文化事業、
 ④ 査証・移民問題への取組、
 ⑤ 加盟国の接点を活かした民間企業の対外進出促進支援。

 ブラジルはBRICSで世界と繋がり、ポルトガルはEUでヨーロッパに加わっています。この両者がCPLPで積極的に働くことで、ポルトガル語圏がグローバルなプレゼンスを高めていると言えましょう。
  • CPLP加盟国とオブザーバー諸国の地図
  • リスボン市に2011年に設置された新CPLP本部(ペナフィエル伯宮殿・旧公共事業省庁舎)
  • CPLP創設20周年記念の案内図

2017/02/02 12:10:00 東アジア南蛮空間の旅(6)

  • Categoryマカオのニュース
  • Posted by住田 育法
 2017年1月最後の土曜日28日に、映画「沈黙―サイレンス―を京都の映画館で見ました。

 映画終了時の館内の雰囲気は、沈黙状態でした。ショックを受けて観客がおしゃべりできないような沈黙の理由が映画にあったとすれば、日本人キリシタンが侍に首を切られ、血の流れる首が地面を転がるとか、助けを求める女たちが簀巻きにされて海に投げ込まれ溺死するような酷い場面があるのに、ロドリゴが「転び」、最後は「仏教徒」になる、というようなストーリーへの驚きと悔しさでしょう。

 映画を見ながら私は、登場人物の誰に感情移入すべきか、途中で悩みました。監督の意図は、裏切り者のキチジローを許した、「転んだ」神父のロドリゴの本当の「こころ」を理解させることでしょうから、当然、悩める若き宣教師ロドリゴでしょう。「転ぶ」とは、キリスト教を捨てることではなく、起き上がれば元に戻ることを意味すると、マーティン・スコセッシ監督が来日の際の映画紹介のコメントで述べています。

 異教徒の日本人の立場では、「人間は自らの宗教を容易に改めることはできない」と理解することになるのでしょう。例えば、仏教徒としては、「日本人は、キリシタンになっても、それはうわべだけで、本当は日本の信仰を持ち続けた」と思うことも許されるでしょう。つまり、自らのこととしてよりも、あの「キリシタン」たち、あの「宣教師」たちというまなざしです。しかし、キリスト教の世界と呼べる欧米の人たちは、自らに問いかける映画となったようです。

 米国映画「沈黙―サイレンス―」を米国の映画館で米国人に対してマーティン・スコセッシ監督は、異文化理解の視点よりも、監督の全人生とキリスト教の関係、という自身の内面への思いを語っています。これを知ることで、東アジア人の私には、まさに異文化理解を認識できました。

 映画の中で「転ぶ」ことを勧める奉行井上筑後守(ちくごのかみ)の言葉が、遠藤周作の作品『沈黙』で丁寧に描かれています。映画では特にこの奉行に感情移入をしなかったのですが、今静かに思い返しながら、この人物に不思議な親しみを覚えます。以下の引用が、小説に描かれた彼の言葉です。
 
 「パードレが万里の外に使いとして、険阻(けんそ)艱難(かんなん)をへてここに来られる志の堅さに我々とていたく心を動かされる。さぞ、今日まで辛(つら)かったことであろうな」

 「我々とて、それを知るゆえに、職務とは申せこうして取り調べるのは心苦しい」

 「パードレの宗旨、そのものの正邪をあげつろうておるのではない。エスパニアの国、ホルトガル国、その他諸々(もろもろ)の国には、パードレの宗旨はたしかに正とすべきであろうが、我々が切支丹を禁制にしたのは重々、勘考の結果、その教えが今の日本国には無益(むえき)と思うたからである」

 この奉行の姿勢が、東アジアの日本人の文化の1つである、と見ることもできるのでしょう。もちろん、ずる賢い奴だ、という見方もあるでしょう。

 キリスト教徒であった原作者遠藤周作は、裏切りを繰り返したキチジローを取上げて、つぎのように纏めています。最後の「役人日記」の箇所、これの前の終わりの描写を引用しましょう。

 「怒ったキチジローは声をおさえて泣いていたが、やがて体を動かし去って行った。自分は不遜(ふそん)にも今、聖職者しか与えることのできぬ秘蹟(ひせき)をあの男に与えた。聖職者たちはこの冒瀆(ぼうとく)の行為を烈しく責めるだろうが、自分は彼等を裏切ってもあの人を決して裏切ってはいない。今までとはもっと違った形であの人を愛している。私がその愛を知るためには、今日(こんにち)までのすべてが必要だったのだ。私はこの国で今でも最後の切支丹司祭なのだ。そしてあの人は沈黙していたのではなかった。たとえあの人は沈黙していたとしても、私の今日までの人生があの人について語っていた。」

 映画では、さらにロドリゴの仏式の火葬の場面が続きますが、これはぜひ、映画館で見てください。ラストシーンの映像と暗転の語りに、キリシタンの不屈の「こころ」が示されています。
  • 日本から逃れたキリシタンが眠るマカオの聖パウロ大聖堂跡の正面の19世紀の姿
  • 聖パウロ大聖堂内部のキリシタン納骨堂
  • マカオの聖パウロ大聖堂の「あの人」の像

2017/01/06 02:00:00 東アジア南蛮空間の旅(5)

  • Categoryマカオのニュース
  • Posted by住田 育法
 遠藤周作の作品『沈黙』映画化のためのロケ地ついて、もう少し考えてみましょう。それは、高温多湿の雨がよく降る、モンスーン気候の、マカオ、台湾、日本の風景です。

 司馬遼太郎は彼の作品の中で、日本の豊かさの秘密は霧にかすむ風景にあると書いています。つまり、多雨という天気が豊かな自然をはぐくむのだと。豊かな森、豊かな河川、豊かな農地など。今回、その秘密は台湾にもあることに気が付きました。

 まったくの偶然ですが、2013年の春、台湾の茶臼山に登り、山頂付近から麓の海岸線を撮った写真が、映画の予告編で観たシーンとほとんど同じだったのです。私が妻と登ったのは、熱帯台湾の3月でしたが、モンスーン気候独特の湿った空気にかすむ景色は、『沈黙―サイレンス―』のロドリゴたちが最初に日本の九州に向かったのが梅雨の前の5月だったので、ちょうど湿潤な春の季節に重なりました。

 マカオもよく雨が降ります。20年ほど前にマカオに数年住んだ本学の卒業生が居ました。その卒業生の説明では、マカオは湿度が高く、建物の外壁も、日本の浴室にはえる黒カビが繁殖し、健康面では、アレルギーの原因にもなる、と語っていました。雨が多いというのは台湾も同じです。そして、梅雨の季節の九州は、まさにそのような湿潤な環境になっていて、台湾が、今回の映画の撮影には最適だったのでしょう。

 小説でロドリゴは、1638年10月9日にゴアに着き、5月1日にマカオに到着。それは1637年の島原の内乱以後のことですから、「日本政府は内乱にポルトガル人が関係していることを疑り、通商をまったく断ったのみではなく、新教徒の英蘭軍艦のポルトガル商船への砲撃も加わっていた」のです。5月5日にマカオを出発、5月8日ごろ日本に着き、やがて雨期の6月を迎えます。

 遠藤は作品で綴っています。

 「海図を失った嵐の海の船。それがおそらく今の日本の信徒たちの気持ちでしょう。(略)
昨日も雨でした。もちろん、この雨はやがてやってくる雨期の前ぶれではありません。しかし、1日中、この小屋をとり巻く雑木林に陰鬱な音をたてています。」

 京都は「日本のハリウッド」と呼ぶことができるように、太秦には過去、大映や東映、松竹などの撮影所があり、嵯峨野の広沢の池では、頻繁に撮影が行われていたそうです。その場合、池も川として、風景を提供することもあったようです。つまり、映画の撮影場所は、ストーリーとまったく同じなくても良い、ということです。『沈黙』の舞台は九州の長崎などが本来の環境ですが、映画であれば、セットを含めて別の場所が用いられても良い、といえます。それと、海岸線の風景を求める場合、波消しブロックが並んでいる日本の海岸ではなく、台湾の花蓮のような美しい小石の浜辺を利用することも許されるでしょう。
 
 ところで日本文化を描く際に、溝口健二監督の『雨月物語』が参考になったとマーティン・スコセッシ監督が語っています。1953年公開の日本映画です。湖の水と幻想的な小舟の風景の描き方を観察してみましょう。ちなみに『雨月物語』の撮影場所は琵琶湖だそうです。
  • 映画の風景に一致する茶臼山の頂上付近から撮った写真
  • 黒カビの目立つマカオ旧市街の廃屋の汚れた外壁
  • 多くの時代劇の撮影のロケ地に利用されてきた広沢の池の東岸

2017/01/03 12:50:00 東アジア南蛮空間の旅(4)

  • Categoryマカオのニュース
  • Posted by住田 育法
 ポルトガル語を公用語とする世界の9ヵ国は、ヨーロッパのポルトガルを除いて、すべて熱帯に位置しています。中国のマカオも回帰線に挟まれた高温多湿の地域です。ポルトガル人は過去の大航海時代に、熱帯空間の旅を経て、はるか東洋の気候温暖な日本に到達したのです。当時の東アジアのキリスト教布教活動の拠点はマカオでした。

 今回はそのマカオに近い台湾を私は取上げます。理由は北回帰線が通る熱帯の台湾で、遠藤周作の作品『沈黙』の映画製作のための撮影が行われたからです。2017年1月2日の夜、NHKBS1が、過去、「タクシードライバー」など多くの名作を作った今回の米国人マーティン・スコセッシ監督やキチジロー役の日本人俳優へのインタビューに基づいて、映画製作の舞台裏に迫るドキュメンタリー番組を放送しました。1月7日(土)午後7時から再放送。

 2012年に私は映画『沈黙―サイレンス―』のロケ地と伝えられている台湾の花蓮を訪問しています。日本からマカオへ向かうとき、台北経由の航空路線があります。さらに、マカオ在住のポルトガル人たちの勧めもあって、近年、台湾に出かけるようになりました。ポルトガル語を聴くためにはマカオが良いのですが、世界のポルトガル語圏、特にブラジルの「熱帯」の文化を楽しむには、英語の通じる台湾も素敵です。モンスーン気候によって熱帯のような夏を迎える西日本の環境は高温多湿の台湾の自然に似ていることを実感しました。

 スコセッシ監督は、日本語と欧米の言語の間に訳本には「翻訳の問題」があることを指摘しています。それは「棄教」あるいは「転ぶ」という言葉です。宗教の問題、というより、文化の違い、という立場からNHKの番組で、配慮せずに訳すことは、「誤訳」であるとまで主張しています。映画では予告編を観ると「棄教」は "Lost God"、「転ぶ」は "KOROBU"と語らせていますね。

 私の手元にはブラジルで購入した『沈黙』のポルトガル語訳版があります。これは英語版からの重訳のようです。「棄教」は「apostasia」、「棄教する」は「apostatar」としています。そして、日本人が「転ぶ」とも表現している箇所も「棄教する」と同じ「apostatar」になっています。「転ぶ」とは転んだのであって、「起き上がる」と、また元のキリスト教徒になる、ということも起こり得るのですから、もっと表現に幅を持たせるべきである、との監督の解釈に私も賛成です。

 宗教に対するこのような柔軟な姿勢は、欧米人には理解しがたいものであると監督は続け、文化の違いへの配慮を映画では試みたと述べています。 

 宣教師が悩んだ「棄教」の行為と神の「沈黙」の問題は、作家の遠藤周作自身の悩みでもあったはずだと監督は述べ、世界が不確実な時代に突入した今だからこそ、『沈黙』が伝える視点は意味がある、と強調しています。

 2017年1月21日(土)に日本で劇場公開されます。「棄教」と「転ぶ」が『沈黙―サイレンス―』の重要なテーマです。
  • 映画のロケ地と伝えられる台湾の花蓮県の小石のきれいな海岸。
  • 「沈黙」を続けたキリスト。ポルト市の教会で撮影。
  • 2011年ブラジルで出版された『沈黙』のポルトガル語訳本。

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