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ポルトガルのニュース

2020/09/03 10:40:00 ポルトガル語圏の食文化(6)

  • Categoryポルトガルのニュース
  • Posted by住田 育法
 再び、豚肉です。
 よきキリスト教徒の証としての食べ物、イベリア半島の生ハム(presunto ibérico)の話です。ユダヤ教徒もイスラム教徒も豚肉を食べません。したがって、キリスト教徒のレコンキスタによって建国を果たし、大航海時代以降、異端審問を経験したポルトガルの民にとって、「豚」を食することは、神への祈りにつながったのでしょう。
 巡礼地サンティアゴ・デ・コンポステーラに近いポルトガル北部のポルト市のレストラン「アバディアABADIA」(写真)には、イベリア半島の生ハムを吊るしています(写真)。ポルトから歩いて巡礼地に向かうことができます(地図参照)。
 イベリア半島の生ハムはスペインの特産として知られていますが、ポルトガルでは、南部のアレンテージョの黒豚が有名です。ポルトガル語では、porco de pata negra あるいはporco de raça alentejanaと呼ばれます。
  • レストランの名のABADIAはポルトガル語では大修道院、あるいは司祭のいる教区の意味です。入口の巡礼者 (修道士) の像。
  • 吊るしてあるハムには「Monte Nevado 1898」のラベルが付いています。
  • ポルトからサンティアゴへの巡礼の道

2020/08/27 20:10:00 ポルトガル語圏の食文化(5)

  • Categoryポルトガルのニュース
  • Posted by住田 育法
 チーズ(queijo) です。
 このブログの(1)で、ポルトガルの食事でチーズが美味しいと「今日の料理は素晴らしい」とコメントできると書きました。ポルトガル人のチーズへのこだわりはブラジルにも伝わります。
 ポルトガルの「最高峰 (1993メートル)」エストレーラ山脈 (Serra da Estrela) にコインブラ大学の教授と登ったとき、現地で評判のチーズを食べました(写真参照)。熱帯ブラジルでも、涼しい高地のミナスジェライスで、チーズが発達しました。チーズの製造は18世紀の金ブームにさかのぼります。富を求めて鉱山師、聖職者、男女の興行師、役人たちが大西洋を越えてブラジルに殺到しました。誰もが鉱山活動に向かう中、豊かになった住民がポルトガル風のチーズを求め、これに応える地場産業へと発展したのです。チーズ作りに欠かせないレンニンにはカピバラのものがよく使われたそうです。
 植民地時代にルーツをもつミナスジェライスのチーズとブラジルのゴイアバーダ (goiabada)を組み合わせたスイーツを「ロメオとジュリエット(Romeu e Julieta)」と呼びますが、これは筆者の好物です(写真参照)。
  • 店に並んだチーズ Queijo Curado Seco
  • エストレーラ山脈に向かう途中のレストランでチーズを食す。
  • リオデジャネイロのコロンボで「ロメオとジュリエット(Romeu e Julieta)」を食す。

2020/08/26 15:50:00 ポルトガル語圏の食文化(4)

  • Categoryポルトガルのニュース
  • Posted by住田 育法
 ワインのためのブドウの木についてです。
 ブドウはポルトガル語で uva。ブドウの木は videira、ブドウ園は vinha。そしてワインは vinhoとなります。
 漢字で国名を書くとき「音」から「漢字」をあてた中国語を真似て葡萄牙と書きますが、ブドウとは関係ありませんね。しかしポルトガルの1人当たりのワイン消費量は世界1ですから、偶然とは言え「葡萄の国」とは面白い一致です。2018年の統計でポルトガルが第1位、フランスとイタリアがそれに続きました。
 ワインの味を決めるのはブドウです。世界的に有名な品種はカベルネ・ソーヴィニヨン(Cabernet Sauvignon)やピノ・ノワール(Pinot Noir)ですが、ポルトガルでは違う品種を用います。ウィキペディアに赤用146種、白用134種が紹介されています。
 今は未成年の皆さんも、ワインを飲める将来に向けて、ブドウの品種を学びませんか。
  • ドーロ川流域に広がるブドウ園 コインブラ大学教授とドライブ(筆者撮影)
  • コインブラ大学教授の自宅のブドウ園 赤ワイン用ブドウ(筆者撮影)
  • 京都府立植物園のヤマブドウの木 Vitis coignetiae(日本の北海道、本州、四国、アジア東北部)

2020/08/25 08:50:00 ポルトガル語圏の食文化(3)

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  • Posted by住田 育法
 真夏の果物、イチジクの話です。
 田舎育ちの筆者は、お盆のころ、早朝のもぎたてのイチジクを食べるのが好きでした。
 16世紀にポルトガルの宣教師が日本に来たとき、彼らは日本の柿をイチジクと思ったようです。
 1603年刊行の長崎版日葡辞書≪VOCABVLARIO DA LINGOA DE JAPAM≫の邦訳版(『邦訳日葡辞書』1980年、岩波書店)を紹介しましょう。
 Caqi, カキ(柿)林檎に似ている日本の無花果(いちじく) *訳者注) 原文はFigos de Iapão. Figoは無花果なので、これに‘日本の’という限定をつけて‘柿’にあてたもの。(略)ロドリゲスの日本教会史によれば、わが国(日本)の干し柿が南欧の無花果に似ているので、最初のポルトガル人たちが‘柿’をfigoと呼んだのであろうという。(全訳日葡辞書、96ページ)
 イチジクは干す以外に、イチゴやアンズのようにジャムにすると良いですね。

  • コインブラのホテルの部屋でイチジクを食す。
  • ポルトの市場に並ぶイチジク
  • ポルトの市場のイチジク

2020/08/23 15:10:00 ポルトガル語圏の食文化(2)

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  • Posted by住田 育法
 パンの次は、キリスト教徒の証、豚肉料理です。
 ブラジルの豚と豆の料理のフェイジョアーダ(feijoada 写真参照)を取り上げます。
 フェイジョアーダは、豚足や鼻、耳、皮など、コラーゲンたっぷりの部位をブラジルのインゲン豆(リオデジャネイロではfeijão preto)とゆっくり煮込んだものです。ブラジルでは独立後の首都リオデジャネイロに豚肉の店がありました(Debretの絵参照)。諸説ありますが、フェイジョアーダをブラジル固有の国民食とする意見もあります。
 ポルトガル料理で大切な、パンもチーズも、そしてワインもテーブルに登場しません。必要なのは、白米、マンディオッカの粉、緑葉ケール、そしてサトウキビの火酒カシャッサのカイピリーニャ、オレンジなどです。
 今でもリオデジャネイロの友人宅に招かれるときはフェイジョアーダがご馳走です。料理を準備するのはお手伝いさん(empregada)。カイピリーニャを作るのは男たちです。
  • リオデジャネイロのレストランのフェイジョアーダ
  • ニテロイの大学教授宅のフェイジョアーダ
  • リオデジャネイロの豚肉の店 “Loja de carne de porco”, aquarela sobre papel, 15,5 x 22 cm, J.B. Debret, Rio de Janeiro, 1827.

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