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ブラジルポルトガル語学科ブログ RSS


2018/10/17 17:20:00 ブラジル大統領選挙結果とAIが導く人類の未来の話(3)

  • Categoryブラジルのニュース
  • Posted by住田 育法
 今回の選挙運動ではっきりしていることは、「選挙のための選挙のような運動」が影を潜めてまさに、真剣勝負の候補者対有権者のコミュニケーションが優勢であることです。具体的にはSNSなどの活発化です。従来のように、ビラを配ったり、テレビの演説をするのみでは立候補者の努力は投票に結びつかないようです。その意味で、第1回投票で敗退した大政党のブラジル社会民主党(PSDB) や民主運動党 (MDB) の、選挙後の未来に向けたこれからの活動が注目されます。

10月7日の選挙結果=得票率:
 Bolsonaro PSL 46.03%
 Haddad PT 29.28%
 Alckmin PSDB 4.76%
 Meirelles MDB 1.20%
 
 さぁて、2018年10月28日 (日) の右派 Bolsonaro と左派 Haddad の決選投票にむけて、興味深いニュースが私のSNSに飛び込んできました。

 まず 1 つ目はブラジルのサッカー選手のロナウジーニョがブラジル選抜チームのユニフォームに、ボルソナロ候補者の投票番号の17番の背番号を入れて、これを着た写真を自らのインスタグラムに発表し、この「反民主主義」候補を支持したために、FCバルセロナがロナウジーニョの「大使地位剥奪」を発表したことです。以下は、ロナウジーニョの発信と私のFacebookに飛び込んだ「ニュース」です。

 ronaldinho:
 Por um Brasil melhor, desejo paz, segurança e alguém que nos devolva a alegria. Eu escolhi viver no Brasil, e quero um Brasil melhor para todos!!!
 より良いひとつのブラジルに、僕は平穏、治安、喜びを僕たちにもたらす誰かを望む。僕はブラジルで生きることを選んだ。そして皆のためにより良いひとつのブラジルが欲しい!!!ロナウジーニョ
  
 Barcelona retira status de embaixador de Ronaldinho após apoio a Bolsonaro - Metro 1
 バルセロナ (スペインの有名なサッカーチーム) はボルソナロをロナウジーニョが支持 (投票) したのち、ロナウジーニョから大使の地位を剥奪。
 
 「大使剥奪」は、右派の民主主義に反する候補者を支持していることに対するスペインからの抗議と言えます。

 このニュースに、私のブラジル人の友人たちは、「もっともだ、いいね!」と反応する人と、「スペイン人はブラジルが分かっていない。悪いのは汚職にまみれ、経済を駄目にした左派だ」とする意見が対立。ちょとした「炎上」状態ですが、ブラジル人にとって、軍は国民に身近な存在でもあります。例えば古都リオは海軍と共存する都市です(写真)。

 第 2 のニュースは、サンパウロの私の友人のジョゼ・ジアノッティ(José Giannotti) USP名誉教授 (写真) がフォーリャ・デ・サンパウロ紙のインタビューを受けてその情報がFacebookに登場したことです。ジアノッティは、「右派の優勢を安心して見守っている」と語っています。「ブラジル政治が混乱しているとの心配は要らない」と。

 決選投票予定の世論調査結果では、右派が59%、左派が41% (写真) で、右派圧勝の勢いです。これにたいしても、「右派を押す人は間違っている」というコメントと、「いいね」のコメントがぶつかっています。

 私の立場は中立ですが、右派のボルソナロ候補者を支持する私の友人も多く、まず、「軍出身だからクーデターを起す危険がある」とか、「独裁に走るのではないか」との考えには筆者の私も反対です。左派のアダジ候補者を、貧者を優遇して、ブラジル経済の発展を損なう、と短絡的に批判することにも反対です。ブラジルにはこれまで同様、もちろんこれからも、教育を中心に、格差に苦しむ国民を助ける制度が必要です。

 右派と左派が決選にのぞむ運動を、彼らとともに緊張しながら引き続き観察していきます。
  • サンパウロのボルセナロを国会議員に選んだリオは海軍と共存する都市
  • 7年前に来日し、ブラジルの教育行政の必要性を主張したジアノッティ氏
  • 右派優勢の世論調査のニュース

2018/10/10 09:50:00 ブラジル大統領選挙結果とAIが導く人類の未来の話(2)

  • Categoryブラジルのニュース
  • Posted by住田 育法
 大統領選挙についてAI (Artificial intelligence) を話題にしていますが、今回のブラジルの大統領選挙運動は、SNS、つまりsocial networking service がポイントになっています。ボルソナロ候補は自らFacebookを書いているようです。アダジ候補は組織で動いているようです。

 AIに注目したのは、国際競争力を求める21世紀ブラジルのグローバルな開発優先主義に筆者が関心をもっているからです。さぁ、SNSを利用する新しい選挙運動を見つめてみましょう。誰もがインターネットを用いるブラジル社会の今への接近です。ブラジルのフォーリャ・デ・サンパウロ紙によると2018年第一四半期のブラジル人の月間Facebook利用者は1億2,700万人に達したそうです。このうち 9 割がスマートフォンなどの携帯の利用だそうです。

 29年まえの1989年の直接選挙では、右派のコロル (写真) と左派のルラが決選投票をきそい、グローボTVを中心とする選挙運動では、映像の印象が得票数を左右し、テレビ時代の選挙運動と呼ばれました。コロルがルラに勝利しました。

 21世紀の2002年の左派対右派の選挙では、ルラ陣営はネクタイの色にまで配慮する徹底したイメージ作戦を展開し、勝利します。この様子は後に公開された記録映画で紹介されています。

 ところで、1822年の独立以降、ブラジルが大切にしてきたのは広大な空間と異種族の「統合」です。21世紀の今回は特に、「空間の統合」と「社会の統合」でしょう。異種族混淆についてはリオを代表する文化人ロベルト・ダ・マタさんが、サンパウロのジャーナリストへのインタビューで過去の「多様」が「一つ」となった混淆の過程を興味深く語っています。

 選挙後のグローボTVが公表している全国5,570の日本の「市」に相当するムニシピオの投票行動を観察すると、左派は北東部と北部の一部で勝利しています。右派も内陸部の北部の一部、そして中西部で1位を占めています。異なるのは、地域的発展の著しい南部と南東部が右派の勝利となっていることです。

 右派のボルソナロ候補はイタリア人とドイツ人の間に生まれたサンパウロ生まれの移民二世。軍人出身です。左派のアダジ候補はレバノン人とレバノン系ブラジル人の間のレバノン系ブラジル人で、同じくサンパウロ生まれ。現在のブラジル大統領がレバノン系ですし、そのほか、自動車会社ルノー・日産・三菱のカルロス・ゴーン会長がレバノン系ブラジル人ですね。

 ともあれ、左派も右派も、ともに「統合」を求めていることは確かです。
 今回の国会議員選挙では、左派の労働者党 (PT) が下院で56議席、右派の社会自由党 (PSL) が52議席でこれに続きます。これでは、大統領に就任した後は、いずれの陣営も、議会における「統合」としての「連立」が必要になります。

 毎日届く、右派と左派それぞれを応援するブラジルの友人たちからのSNSメッセージ。選挙運動が活発となる2018年9月2日、リオのホテルからFacebookを利用していたとき、画面の「Cutir = いいね」が利用できなくなり、私宛にFacebookからポルトガル語で「アカウントへのログインに問題が発生」との連絡がありました。驚いて「私は不正使用はしていません。他人が不正入力した可能性があります」とFacebookに訴え、パスワードの変更を試みました。リスボンに移動して、作業を続けたところ、無事、回復しました。おそらく、私の友人たちの「政治宣伝」が背景になったのでしょう。

 これからも、中立の立場で、28日まで、地球の反対側から観察を続けましょう。

  • 遠方に国会議事堂をのぞむ首都ブラジリアの風景
  • 1989年のテレビ時代の選挙で勝利したコロル大統領。当時、リオのお手伝いさんたちの声は「男前!」でした。
  • 赤道と南回帰線に挟まれた熱帯空間のブラジル

2018/10/08 11:30:00 ブラジル大統領選挙結果とAIが導く人類の未来の話(1)

  • Categoryブラジルのニュース
  • Posted by住田 育法
 日本との時差12時間のブラジル (参照:北部・北東部・南部・南東部・中西部の五地域に区分された行政地図) の大統領選挙の結果が出ました。有効投票数が1億を超える直接選挙ですが、電子投票であるため、選挙当日10月7日 (日) 夜10時25分の時点で開票率99.42%の上位2位 (写真) の得票率は、グローボTVの速報でボルソナロ (Jair Bolsonaro - PSL) 46.16%、アダジ (Fernando Haddad - PT) 29.09%です。1位が50%に届かなかったため、10月28日 (日) に両者の決選投票となります。

 さてこの選挙運動で示されているのが、資本主義的開発優先の右派ボルソナロか、社会的格差是正のための福祉重視の左派アダジかという選択です。ちょうど日本時間のブラジルに比べて12時間早い7日 (日) 夜 9 時のNHKスペシャルの「仕事が無くなる!? AIロボットVS人間」を見ました。この番組に出演したソフトバンクグループの孫正義社長の話が特に印象に残りました。AIとはArtificial intelligenceの略語で、人工知能と訳されています。

 数日前、日本経済新聞で、「トヨタとソフトバンク提携 移動サービス新会社設立へ」という記事を読んでいたので、孫社長の考えには興味を持っていました。NHKが特別におこなった、番組に出演した孫社長にたいする「私たちは技術革新とどう向き合うべきなのか」というタイトルの単独インタビューの内容が、NHKのHPに発表されています。
 この中で、孫社長は、「(AIやロボット関連の投資の拡大は) まだまだいきますよ。どこまでもいきます。はじまったばかりです。普通の人ならそういう質問には謙虚に答えますが、私は謙虚さが足りないので。さらに加速度的に(投資の)ペースは上がっていきますね。そういうスピードについてこられない企業や人はどんどん取り残されるでしょうね。アメリカと中国はものすごい革命が起きています。特に中国は技術の面ではるかに上を行っている分野もありますし、安いから中国で作るという時代は終わったんじゃないですかね。非常にテクノロジーの分野で進化しています。日本はアメリカと中国の間で完全に置き去りにされた国です。ジャパンパッシングの時代で、議論に参加すらできていない。」と。

 NHKの番組では、「改革に取り残された人たちをいかに支援するか」も議論されました。半端ではない膨大な数の人類が貧者となるとき、勝者となる富者たちはどのように彼らを支援するかの問題は、まさにブラジルの社会的格差を考えるときの悩みに似ています。
 孫社長は、AIの進歩に遅れないことも、取り残された人たちを支援することも、どちらも大切だとおっしゃっていました。
 開発優先の強い経済を目指す右派、格差是正を重視する労働者党の左派。12時間の時差の中で、引き続き、ブラジルの選択を見守りたいと思います。
  • 面積が日本の22.5倍、人口が2億9百万人のブラジルの行政地図
  • 決選投票にのぞむ右派で元軍人のボルソナロ下院議員 (左) (Jair Bolsonaro - PSL) と左派のアダジ (Fernando Haddad - PT) 元サンパウロ市長。国民の希望は豊かな生活のようです。
  • 国際競争力のあるブラジルEMBRAER社の中型ジェット旅客機。筆者はパナマ・コパ航空の便に乗ってニカラグアからブラジルまで移動。EMBRAER社は「豊かなブラジル」の象徴です。

2018/09/23 17:40:00 ポルトガル人の特技は農業

  • Categoryポルトガルのニュース
  • Posted by住田 育法
 2018年夏、ポルトガルを訪問し、友人たちと風景の中の植物についておしゃべりしました。

 西は大西洋、南はアフリカに面したイベリア半島のポルトガル人は、大航海時代に熱帯を「発見」し、その豊かな「果実」を世界に伝えました。

 1992年にポルトガル人のジョゼ-・エドゥアルド・メンデス・フェランさんがマカオで出版した『植物の冒険とポルトガル人の地理上の発見 (A aventura das plantas e descobrimentos portugueses)』によると、アボガドやピーナッツ、バニラ、グアバ、トマトは中米原産、パイナップルやカジューは南米、チョコレートの原料のカカオはカリブ海に面した南米、パッションフルーツは中南米、パパイアがアンデス地域の原産です。
 ポルトガル人が日本に伝えたジャガイモはジャワの芋、サツマイモは薩摩の芋、さらに南米のトウガラシは唐の辛子と呼ぶようになりましたが、いずれも農業が得意なポルトガル人が、はるか大洋の彼方から運んだのですね。マルメロもポルトガル人が長崎に伝えたそうです。

 大学教授である私のポルトガルの友人たちは、よく自宅の庭に植えられている果樹を話題にします。コインブラ大学文学部のルイス・レイス・トルガルさんは森に囲まれた自宅に果樹を植えています。多くのポルトガル人のように、オリーブ、イチジク、ブドウ、マルメロ (写真)、リンゴ、栗などです。コルクガシや松、オーク (写真) などもあります。山の松林は、その実を食用にします。

 ポルトガルはイベリア半島の六分の一の面積のとても小さな国です。コインブラを流れるモンデーゴ川の北の地域の農業は特に小規模で、得意なオリーブの生産も欧州連合の規格からすれば自給自足的な経営が主流です。

 テージョ川の南のアレン・テージョと呼ばれる地域にはコルクガシやオリーブなどの常緑樹が多く(写真)、大土地所有制による牧羊や小麦の栽培が支配的です。本学でポルトガル語を教えていたエドゥアルド・コール・デ・カルヴァーリョさんはこの地域出身です。姓のカルヴァーリョはオーク、日本語のナラの意味です。この季節、乾燥した草木にいるカタツムリを塩ゆでにして食べます。私は食べましたが、カルヴァーリョさんは嫌いだそうです。ともあれ、自然と共存する日本の「里山」を思わせる環境の中で、ポルトガルの友人たちと樹木や果実についておしゃべりすることはとても楽しい時間でした。
  • ルイス・レイス・トルガルさんと訪れたポンバル城の敷地に植えられていたマルメロ。
  • ポンバル城のオーク。幹はワインの樽の材料となりますね。
  • エドゥアルド・コール・デ・カルヴァーリョさんと訪れたアレン・テージョのコルクガシの風景。

2018/08/04 16:40:00 経済の量と地理的空間で知るブラジルと中国の台頭

  • Categoryブラジル紹介
  • Posted by住田 育法
 ポルトガル語圏のブラジルと中国は、ポルトガル語と中国語を公用語としているマカオで繋がっています。学位を有する中国人のポルトガル語教育者をマカオのポルトガル語高等教育機関のマカオ大学やマカオ理工学院が育て、この中国人たちが中国の複数の大学でポルトガル語教育を実践しています。すでに中国では、20以上の大学でポルトガル語コースが生まれています。そして、ポルトガル語ができる中国人の若者を中国は南米やアフリカのポルトガル語圏諸国 (写真はその国旗)に送り出しているのです。グローバルに活躍する民間の中国人を国家が支援するというのが、日本にはない中国の強さの背景です。

 ブラジルと中国の関係は、20 世紀末から成長の速度を上げてきたブラジル、ロシア、インド、中国、南アフリカの新興 5 カ国(BRICS)の協力関係においても注目されています。世界の目が向かう最大の理由はその量のすごさです。
 まず、人の数です。現在、世界の総人口は2017年の推計で73億を超えているそうですが、中国が、一位の13億9千万、二位のインドが13億2千万、五位がブラジルで2億1千万、九位がロシアの 1億4千万、そして南アフリカが5千万です。合計が31億1千万となり、この 5 カ国のみで全人類の42パーセントを超えています。
 二つ目の量は経済の規模です。日本を抜いてGDP世界二位の中国、そして八位のブラジル。BRICSではインドが六位、ロシアが十二位、南アフリカが三十三位です。

 ちょうど今年の7月27日にBRICS (写真) 各国は南アフリカで首脳級の拡大会議を開催し、これには、エチオピアなどアフリカ 9 カ国が協議に加わりました。さらに、トルコやアルゼンチンなどと経済連携について話し合っています。
 注目すべきは、 中国の国家主席が米国に警戒感を示して、新興国との結束を強調したことです。欧米主導の秩序への対抗を目指したBRICS首脳会議は今回が 10 回目です。世界の国内総生産(GDP)の約2割を占めて経済のけん引役として期待されましたが、足元で構成国の多くが景気減速し、存在感の低下が指摘されてきました。日本経済新聞は次のように書いています。

 中国は独自の経済圏「一帯一路」構想などで勢力拡大を図っている。米国に次ぐ世界2位の経済大国として、BRICSでの主導権を握りたい考えだ。BRICSを「米国に対抗する多数国」という構図にするために利用する思惑が見え隠れする。

 2019年のBRICS首脳会議はブラジルで開催されます。ブラジルは南米南部共同市場(メルコスル:写真)参加のアルゼンチン、ウルグアイ、パラグアイをけん引する国です。中国はこのグループにも接近を望んでいるようです。世界の「米中逆転」がただちに起こるとは思いませんが、着実に、経済の量や地理的空間の場で良い条件にあるブラジルを含めて、新興国の台頭が本物になりつつあるようです。
  • ポルトガル語圏諸国共同体とその諸国の旗
  • 2018年のBRICS首脳会議の首脳たち
  • メルコスル主要国の国旗 左からアルゼンチン、パラグアイ、ブラジル、ウルグアイ

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