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ブラジルポルトガル語学科ブログ RSS

ブラジル紹介

2019/07/20 06:30:00 アフロ・ラテンアメリカを語る(2)

  • Categoryブラジル紹介
  • Posted by住田 育法
 第1回アフロ・ラテンアメリカ研究会(写真)が開催されました。

●日時:2019年7月19日、15時40分~19時10分
●場所:京都外国語大学171教室。
●内容:
大西洋システムにおけるアフロ・ラテンアメリカ研究会講演会

 研究会講演者
1. 日本ブラジル中央協会常務理事 岸和田仁 (Hitoshi KISHIWADA)
ジルベルト・フレイレとアミルカル・カブラル~Lusotropicalismoの功罪
2. 弘前大学准教授 冨田晃 (Akira TOMITA)
「ルーツとはなにか?ガリフナのアイデンティティ、言語、宗教、遺伝子、音楽から考える「起源」と「混交」

 岸和田さん(写真)は、これまで批判の多かったLusotropicalismo、つまり「熱帯ポルトガル主義」の「功」というポジティヴな評価に注目して、ジルベルト・フレイレとアミルカル・カブラルを紹介しました。冒頭で岸和田さんが引用したギニアビサウ生まれのアミルカル・カブラルの長女イヴァ・カブラル(カーボヴェルデの大学で歴史学博士号取得)の言葉が印象に残りました。

“Eu sou mundialização. Sou isto tudo.”
“O meu pai sempre acrecitou que a união faz a força. Então, a Comunidade dos Países de Língua Portuguesa (CPLP) deve ser um espaço de união. Se há pessoas que não gostam da palavra lusofonia estão no seu direito, eu prefiro não entrar em grandes discussões filosóficas.” (2 de março de 2016, Rede Angola)

 冨田さん(写真)は2001年に世界無形文化遺産に登録されている「ガリフナ」を取りあげ、「混ざる」とはなにかについて実証研究の成果を語りました。
  • 発表の準備をする岸和田さん(左)と冨田さん(中央)
  • 大学正門の研究会案内の掲示板
  • アミルカル・カブラルの長女の写真を背に熱く「熱帯ポルトガル主義」を語る岸和田さん

2019/07/05 15:50:00 アフロ・ラテンアメリカを語る(1)

  • Categoryブラジル紹介
  • Posted by住田 育法
 以下のとおり、第1回大西洋システムにおけるアフロ・ラテンアメリカ研究会を開催します。学生の皆さんもふるってご参加ください。ラテンアメリカに関心をお持ちの一般の方も歓迎します。

●日時:2019年7月19日、15時40分~19時10分
●場所:京都外国語大学171教室。
●内容:
大西洋システムにおけるアフロ・ラテンアメリカ研究会講演会

 研究会講演者
1. 日本ブラジル中央協会常務理事 岸和田仁 (Hitoshi KISHIWADA)
「ジルベルト・フレイレとアミルカル・カブラル~Lusotropicalismoの功罪」
2. 弘前大学准教授 冨田晃 (Akira TOMITA)
「ルーツとはなにか?ガリフナのアイデンティティ、言語、宗教、遺伝子、音楽から考える『起源』『混交』」(仮題)

 本共同研究の全体の内容は次のとおりです。
 まず第 1 に、研究代表者の住田育法、共同研究者の(学内)牛島万、伊藤秋仁、モイゼス・キルク・カルヴァーリョの4名でアフロ・ラテンアメリカ研究会を発足させて、定期的に議論する場を持つことにより、相互の理解を深めます。
 第 2 に、当該テーマを研究するに当たり、まずは個別の地域研究、つまりブラジル地域と、キューバ、ベネズエラを含むカリブ海地域における実証研究が重要であると考えています。先行研究を洗い直し、より詳細に研究内容を検討します。
 第3に全体を統合してみる場合、理論に頼らなければならないのですが、基本は実証的個別研究がその基盤にあると考えます。

 本研究会においては、対象地域をブラジル地域とメキシコ・カリブ海地域に分けると同時に、両地域をつなぐ「アフロ・ラテンアメリカ研究会」とします。
  • ニカラグアのブルーフィールズに建てられているアフロ民族の像
  • 南米からイベリア半島に飛ぶ機内で映す大西洋路線の地図
  • 岸和田講師の2005年の著書『熱帯の多人種社会―ブラジル文化讃歌』柘植書房新社

2019/06/13 11:40:00 ケペル木村さんがやって来た!

  • Categoryブラジル紹介
  • Posted by住田 育法
 音楽ライターであり演奏家のケペル木村さん (写真) が京都にやって来ました。
 ケペルさんは、6月12日 (水) 午後18時から「ブラジル音楽におけるトルコ―アラブ音楽の影響―」と題して、ブラジル音楽の時空を超えたグローバルな事情を打楽器の演奏を交えて紹介しました。

 以下が配布されたパンフレットの言葉です。
 京都外国語大学ラテンアメリカ研究所主催第18回ラテンアメリカ教養講座
 民族楽器の奏でるラテンアメリカ文化 
 ブラジルで現在絶大な人気を誇るフォホーという大衆音楽で大事な役割のザブンバという太鼓のルーツを調べていたら、アラブやトルコの音楽にたどり着きました。そんなザブンバの演奏法やリズムパターン、そしてブラジル北東部の豊かな音楽をご紹介します。

 名前はブラジル人のようですが、ケペルさんは東京生まれの日本人です。1986年にはじめてブラジルを訪問、3カ月の滞在後に月刊『Latina』編集部に入社して、編集・執筆を担当しました。21世紀の2008年から2017年まで有名な浅草サンバカーニバルの審査員を務めていました。昨年2018年には17年間ブラジルのフォホーという音楽を演奏してきたことが認められ、サンパウロのSESC (Serviço Social do Comércio: ブラジル商業連盟に属する社団法人社会サービス連盟) からケペル木村さんのバンドが招待されました。そのとき、サンパウロ州で開催された日本移民110周年記念イベントのコンサートが大絶賛を得て、一躍、ブラジル音楽の地でその名を知られることになったそうです。
 今回の講座では、ブラジルの打楽器ザブンバが、ローマ帝国前後のトルコ地域を起源として、西には、スペインやポルトガル、さらには新大陸のブラジルなどへ、東には、シルクロードを通って中国に達し、雅楽を生んだという説が、ケペル木村さんの永い音楽生活の体験に基づいて紹介され、参加者の知的好奇心を満足させました。
 ケペル木村さんの音楽活動は関西でも広く知られているため、171教室には110名を超える参加者が集い (写真) 太鼓の音と愉快な説明に聞き入りました。
 配布のレジュメによると、ケペルさんは、音楽ライターとして『ミルトン・ナシメント/トラヴェッシア』(DU BOOKS) や『ムジカ・ロコムンド 1 & 2』(アスペクト) など10冊以上を共著、国内盤CDの解説も数多く執筆しています。ブラジル人音楽家との親交もあつく、エギベルト・ジスモンチジョアン・ドナートミルトン・ナシメントイヴァン・リンストニーニョ・オルタジョイスらと永年にわたる交流を続けています。
  • 音楽ライターのケペル木村さんが本学に登場!
  • ザブンバを叩くケペルさんとトライアングルを奏でるブラジリアンパーカッション制作者坂東さん。
  • ブラジルの国旗、ペルナンブコ州の旗、そして南米の地図をバックに掲げて、ケペルさん講師の171教室に110名以上集まり、ブラジル音楽ファンの皆さんは熱心に楽しいおしゃべりに聞き入りました。

2019/03/18 18:30:00 ポルトガル語圏研究のすすめ(1)

  • Categoryブラジル紹介
  • Posted by住田 育法
 ポルトガル語圏の人々の文化や社会の形成の過程とその特徴に注目して、特に熱帯の新世界ブラジルを取りあげて、学生の皆さんの入学直後にはレポート、卒業前のゼミでは論文の執筆を指導しています。

 皆さん、大切なのは良いキーワード (keyword) に出会うことです。

 では、どこに研究のためのキーワードがあるのでしょうか。
 それは、先輩たちが利用した参考文献の中にあります。

 私のゼミ生の多くが「ブラジルのコーヒー」について取り上げています。そこで、このテーマについて文献の検索をすると以下の書名に出会います (写真)。

服部洋生著『ブラジル・コーヒーの歴史』1973年9月、パウリスタ美術印刷株式会社 (聖市オスカル・シントラ・ゴルジンニョ街46番)。

 この文献の「目次」には、皆さんが研究に利用できるキーワードが溢れています。

目次
第Ⅰ部 コーヒーの由来と伝播
 第Ⅰ章 コーヒーの由来/第Ⅱ章 近東への伝播と迫害/第Ⅲ章 ヨーロッパ諸国への伝播/第Ⅳ章 ラテン・アメリカへの導入
第Ⅱ部 ブラジルへの導入とその発展過程
 第Ⅰ章 植民地時代のコーヒー (1727~1822)/第Ⅱ章 帝制時代のコーヒー (1822~1889)/第Ⅲ章 コーヒーを巡る社会経済事象/第Ⅳ章 共和政初期のコーヒー
第Ⅲ部 今世紀のコーヒー
 第Ⅰ章 今世紀初期のコーヒー (1907~1928)/第Ⅱ章 コーヒーの好況時代 (1922~28)/第Ⅲ章 生産過剰とコーヒー・ドラマ/第Ⅳ章 ブラジルのコーヒー政策/第Ⅴ章 コーヒー栽培の合理化/第Ⅵ章 コーヒー国際協定/第Ⅶ章 ブラジルのコーヒー事情/第Ⅷ章 2大生産州の生産事情/第Ⅸ章 コーヒーの種類、規格及び工業化問題/第Ⅹ章 コーヒーと降霜/第XI章 在伯邦人とコーヒー栽培/第XII章 世界のコーヒー事情/第XIII章 コーヒー国際価の推移/第XIV章 その他諸相/第XV 結び

 コーヒーの歴史につながる奴隷売買 (写真) やリオデジャネイロのコーヒー生産地域 (写真) の出来事も、新しいキーワードに加えることができるでしょう。
 参考文献は、本学付属図書館や指導の先生方の研究室にあります。頑張って、書店で購入して、線を引きながら読むことも出来るでしょう。

 いつも、学生の皆さんの、知的な生活を応援します。
  • 多くの先輩たちが利用した本学付属図書館所蔵の1973年発行の重要文献です。
  • 服部著『ブラジル・コーヒーの歴史』で「グアナバラ湾の荷揚場でコーヒー園に行く奴隷を売買している光景」と紹介している21世紀にユネスコ世界遺産に登録されたヴァロンゴ埠頭の絵。
  • 同書で紹介している「フルミネンセのコーヒーの中心地、ヴァソーラス」の写真。

2018/11/08 22:30:00 ブラジルの混血理念と21世紀のDNA解析の衝撃

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  • Posted by住田 育法
 SNSを使うようになって、以前よりはるかに頻繁に、自分の顔を他人の顔と比べる機会が増えてきました(リオの友人と撮った写真)。そして思うのは、白人、黒人、黄色人という「人種」の違いを超えて、わたしたちは皆「よく似ている」というのが率直な感想です。ブラジルにおいても、日本人の中でも、私は「目」が細いほうです。しかし、「表情」で見ると、それほど違わないように思えます。
 
 このように私たちの顔は「よく似ている」との印象を持っていたとき、2016年にNHKが放送した番組が目から鱗が落ちるような情報提供をしていました。土屋敏之解説委員の『時論公論』の「縄文人ゲノム解読 私たちのルーツは」です。

 「1987年、ミトコンドリアDNAの解析から、アメリカの研究グループが衝撃的な発表をしました。それは、<世界の人々の母方の祖先をさかのぼると、20万年前のアフリカにいた、たった一人の女性に辿り着く>というものでした。この女性は<ミトコンドリア・イブ>と名付けられました。このことは、それ以前から各地にいたはずの古い人類たちを、あとからアフリカを出た我々ホモ・サピエンスが全て絶滅させ、置き換わった証拠だと考えられました。しかし、これをくつがえす人類観も、今度は核DNAの解析から生まれました。2010年、ドイツのグループがおよそ4万年前にヨーロッパにいたネアンデルタール人の核DNAを解読。<我々はネアンデルタール人からDNAの数 % を受け継いでいる>と発表したのです。この発見は、ホモ・サピエンスはネアンデルタールと共存し交わりを持って子孫を残した、それが我々の祖先だということを意味します」。

 この核DNA解析について、日本人のルーツのことも説明しています。
 「およそ4万年前から2万年前の間に、大陸から日本に渡った人々がいました。大陸とは海で隔てられていたため、この人々はその後大陸のアジア人と交わること無く進化を遂げ、縄文人の祖先になります。その間、大陸のアジア人も様々に別れていきました。そして、縄文時代の末以降、再び大陸から日本に大勢の人が渡ってきました。いわゆる渡来系の弥生人です。稲作文化を持ち込んだ渡来系弥生人は人口の多くを占めるようになりますが、その過程で縄文人と幾らか交わりを持ったため、現代の日本人には12%だけ縄文人のDNAが伝えられたのです。従来の研究では、現代日本人には縄文人の遺伝子が2割~4割ほど入っているとも考えられていましたので、それよりかなり少ないという結果です」。


 20世紀ブラジル社会の混血 (異種族混淆) の姿は次のように説明できます。

 すでに、このブログでも紹介しているように、それは「家の外 (rua) ではリーダーである白人の男が、屋内 (casa) においては、子育てや料理をする黒人女性の《愛》によって支配される」ような社会。リオを代表する文化人である人類学者のロベルト・ダ・マタさんは、この社会の特徴は「多様」ではなく「1つ」であることだと述べています。つまり「リオの社会はヨーロッパ系貴族社会と黒人奴隷社会が混淆した伝統的な1つの社会である」と。

 ともあれ、21 世紀の科学が人類 (ホモ・サピエンス) のルーツはネアンデルタール人であるとして、これが他と共存し交わり、滅ぼすのではなくひとつとなった、という説明は「違っている」ではなく、「似ている」ことを日常の生活の中で実感できる面白さに繫がります。

 「よく似ている」というイメージの新しさです。
  • 左端が日本人 (筆者) ふたり。右はすべてリオの筆者の友人のブラジル人たち。写真は Facebook より。
  • 両端が日本人 (左・筆者)。挟まれているのがリオの筆者の友人のブラジル人たち。写真は Facebook より。
  • ブラジル人画家エミリアーノ・ディ・カヴァルカンティ (Emiliano Augusto Cavalcanti de Albuquerque e Melo) が描いた多様なブラジル人たち。2016年リオのオリンピック開催を記念して公開される。

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