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ブラジルポルトガル語学科ブログ RSS

ブラジル紹介

2019/12/05 10:30:00 アフロ・ラテンアメリカを語る(6)

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  • Posted by住田 育法
 初冬の12月4日 (水) 午後13時55分から15時30分まで本学141教室において「アメリカスにおける黒人たましいの音楽」と題して、ブラジル音楽評論家カルロス・カラード(Carlos Calado)さん(写真参照)が講演をおこないました。音楽ライターであり演奏家のケペル木村さんも東京から講演に参加してくださいました(写真参照)。ケペルさんは6月12日 (水) の午後18時から「ブラジル音楽におけるトルコ―アラブ音楽の影響―」と題して、ブラジル音楽の時空を超えたグローバルな事情を打楽器の演奏を交えて紹介しました。

 講演の冒頭でカルロス・カラードさんは、音楽で繋がる3つの国についての説明を始めました。以下はその一部です。

 講演のタイトルは、「アメリカスにおける黒人(アフロ)たましいの音楽」です。最初に「ラテンアメリカにおける黒人たましいの音楽(a música de alma negra na America Latina)」の講演を務める招待を受けたときすぐに、20カ国からなるいわゆるラテンアメリカに対して、私が選ぶべきはどの国かと、その広大なテーマに着手するためのプロセスを思案しました。結局、3つのアメリカの国を選ぶことにしました。それは、ブラジル、キューバ、米国です。
 そこで私は偉大な北米のトランペット奏者であり作曲家であるディジー・ガレスピー(Dizzy Gillespie 1917~1993年)というモダンジャズのもっとも革新的音楽家のひとりへのインタビューのことを思い出しました。
 1985年にキューバを訪れたとき、サックス奏者のパキート・デリベラやトランペット奏者のアルトゥーロ・サンドヴァルのような、若く能力のあるローカルな音楽家たちによって創られた新しい団体に勇気づけられ、ガレスピーは、ある種の音楽的予言をしました。
 それは、「15年、あるいは20年のちに、米国とキューバとブラジルの音楽は、世界でもっとも重要であるが、やがて1つとなるであろう。そして私はそれを見るためにそこに居るだろう。」という内容でした。
 そのまことしやかな予言は、まさにガレスピーの願望もしくは音楽的夢の表現でありました。その実現を見るために、彼は単に腕組をして待ってはいなかったのです。
 1980年代の終わりにすでに、ラテンアメリカの他の国々といっしょに、北米、ブラジル、キューバの音楽家たちによって、諸国連合オーケストラを創ったのです。
 その協力を重視するオーケストラのオリジナルなレパートリーに、ガレスピーは、ある種の、アフロ・クバーノ的リズムとブラジル音楽やジャズを混ぜて、音楽的に夢みる混淆を具体化させたのです。


 カラードさんは講演の中で、ビデオによって映像と音を紹介しながら、ブラジル、キューバ、米国の「黒人たましいの音楽」の比較を解説しました。
 圧巻は1954年のサンパウロ市誕生400年祭の記念公演のピシンギーニャのビデオ(写真参照)の紹介でした。カラードさんは、youtubeで映像と音を紹介し、熱く解説しました。
 
 講演の最後もまたカラードさんは、ガレスピー(Gillespie)で締めくくりました。ポルトガル語で紹介しましょう。

Mesmo que a profecia musical de Dizzy Gillespie não tenha se realizado ainda, as tradições musicais e coreográficas do Brasil, de Cuba e dos Estados Unidos continuam conversando entre si. Afinal, são parentes distantes de uma cultura que existe há séculos. E que continua influenciando a cultura contemporânea mundial.
  • 141教室で映像を使って講演をするブラジル音楽評論家カルロス・カラード(Carlos Calado)さん。
  • 熱心に講演を聴く音楽ライターであり演奏家のケペル木村さん(写真左端最前列)。
  • ビデオで紹介されたブラジル民衆音楽の創始者ピシンギーニャたち。

2019/11/30 16:40:00 シネマ・ノーヴォ誕生を告げたサントス監督回顧の映画祭

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  • Posted by住田 育法
 世界的に知られるネルソン・ペレイラ・ドス・サントス監督回顧の映画上映会が京都で開催されます。2010年に京都外国語大学は監督の公開講座を開催しました。この実現はいくつかの幸運に恵まれました。
 その一つは、当時のブラジルのルーラ政権が映画をはじめとするブラジル文化のグローバルな普及に積極的であったことです。監督夫妻の移動と宿泊について、ブラジル文学アカデミーとブラジル政府からの助成がありました。第二には、アテネ・フランセ文化センターの支援を頂戴できたことです。サントス監督の作品は2000年に大島渚監督の推薦によって日本で紹介されていました。京都での2010年の上映は、東京のアテネ・フランセ文化センターが保管しているそのときの35mmフィルムを無料で利用できました。三つ目は、京都文化博物館の学芸員森脇清隆氏の援助でした。博物館が会場となって行った映画上映は、監督の講演に命を吹き込む貴重な恵みとなりました。
 そしてもっとも重要なことですが、幸いにも、ブラジルリオのフルミネンセ連邦大学と本学が交流協定を締結していることによって、同大学名誉教授のサントス監督を学術交流のレベルで招へいできたことです。フルミネンセ連邦大学にネルソン・ペレイラ・ドス・サントス監督は映画コースを創設し、映画人として多くの若者を指導してきましたので、私は1974年の留学以来、監督の指導を受けた教授たちと仲間として親しくさせていただきました。2018年のブラジル時間4月21日土曜日の夕刻 5時、リオの病院で肝臓癌で亡くなられ、友人からの連絡で私が知ったのは、時差12時間の22日日曜日の朝でした。

 2019年末の回顧上映の内容は次のとおりです。
 私も観客のひとりとして鑑賞いたします。

Nelson Pereira dos Santos
As Spiritual Pillar Behind Brazil's Cinema Novo in Kyoto
《ネルソン・ペレイラ・ドス・サントス監督回顧 in 京都》

開催年月日:
2019年12月12日(木)
開催時間:
18:00開場/18:30開演
開催場所:
寒梅館ハーディーホール
「乾いた人生」

開催年月日:
2019年12月27日(金)~ 2020年1月2日(木)※1月1日(水)休映
開催場所:
京都みなみ会館
「リオ40度」
「私が食べたフランス人」
「オグンのお守り」
「奇蹟の家」
「人生の道~ミリオナリオとジョゼ・リコ1979」
「監獄の記憶」
「第三の岸辺」
「アントニオ・カルロス・ジョビン」
「トム・ジョビンの光」
  • 2010年5月京都文化博物館の映画関係アーカイブにて。中央: 監督、右端: 森脇学芸員、左: 筆者。
  • 2010年5月太秦映画村で使ったことのある同型のカメラを見つけ、喜んで指をさす監督。
  • 2010年5月太秦映画村で黒澤明監督の写真をじっと見つめるネルソン・ペレイラ・ドス・サントス監督

2019/11/18 23:20:00 アフロ・ラテンアメリカを語る(5)

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  • Posted by住田 育法
 ブラジルを代表する音楽評論家として『フォーリャ・デ・サンパウロ』紙に執筆を続けているカルロス・カラード(Carlos Calado)さん(写真、ホームページより)が京都にやってきます。ブラジル大使館の招聘で来日し、本学で講演をおこなってから13年ぶり(2006年の講演会ポスター参照)の本学訪問です。
 京都外国語大学学内共同研究「大西洋システムにおけるアフロ・ラテンアメリカ研究」に参加します。具体的には、研究会の研究代表者や共同研究者(学内)、さらに一般の学生や研究者を対象に「アメリカスにおける黒人たましいの音楽(A Música de Alma Negra nas Américas)」というテーマで講演会を開催します。ブラジルやキューバ、米国に注目します。
 ※ 参加は自由です。音楽も聴いていただきます。皆様、ふるってご参加ください。

 講師:
ブラジル音楽評論家(写真参照)
カルロス・カラード(Carlos Calado)
タイトル:
アメリカスにおける黒人たましいの音楽
 日時:
2019年12月4日(水)午後1時55分~3時15分
 場所:
京都外国語大学141教室
 通訳:
住田 育法

 講師自己紹介:
Quem sou
  Jornalista, editor e crítico musical, escrevo sobre festivais, shows e discos. Desde meados dos anos 1980 tenho acompanhado profissionalmente a produção fonográfica brasileira e eventos musicais em diversos países. Faço palestras sobre música, curadorias e já dirigi projetos para o Sesc SP. Sou autor dos livros "Tropicália: a História de Uma Revolução Musical", "A Divina Comédia dos Mutantes", "O Jazz como Espetáculo" e "Jazz ao Vivo", entre outros. Atualmente colaboro com os jornais "Folha de S. Paulo" e "Valor". Durante os shows e festivais que acompanho, quando permitem, gosto de fotografar músicos que admiro.
  • カルロス・カラード氏
  • 2006年の講演者のポスター
  • カルロス・カラード氏著書『トロピカリア』の表紙

2019/10/21 23:40:00 アフロ・ラテンアメリカを語る(4)

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  • Posted by住田 育法
 6年ぶりにブラジル人研究者カイゾー・イワカミ・ベルトランさんが入洛し、大西洋システムにおけるアフロ・ラテンアメリカ研究会の講演会に参加します。
 リオデジャネイロ地理統計院 (IBGE) 所属・リオ市ヴァルガス財団研究員、同財団ブラジル行政スクール (EBAP) 教授カイゾー・イワカミ・ベルトラン(Kaizô Iwakami Beltrão)さんです。東京で11月5日・6日に国際会議に参加したあと、京都を訪問し、本学のアフロ・ラテンアメリカ研究会で講演を行います。カイゾーさんの入洛は2013年7月(写真)でした。
 今回のテーマは、「1960年以降のブラジルにおける黒人と混血の教育水準ならびにフォーマル/インフォーマル労働 (o nível educacional de pretos e pardos e o trabalho formal/informal desde 1960 no Brasil)」です。

趣旨:
 本学でアフロ・ラテンアメリカ研究会を発足させて、定期的に議論する場を持つことにより、相互の理解を深めます。そして当該テーマを研究するに当たり、まずは個別の地域研究、つまりブラジル地域と、キューバ、ベネズエラを含むカリブ海地域における実証研究が重要であると考えています。今回はブラジルです。
※ 参加自由。ふるってご参加ください。

講師:
リオ市ヴァルガス財団研究員
Kaizô Iwakami Beltrão
(カイゾー・イワカミ・ベルトラン)
同財団ブラジル行政スクール (EBAP) 教授

日時:
 2019年11月11日(月)午後1時50分~3時30分
場所:
 167教室
通訳:
住田育法

参考資料:
住田育法監修『ブラジルの都市問題―貧困と格差を越えて』2009年、春風社、pp. 101 - 130。
第4章 カイゾー・イワカミ・ベルトラン/ソノエ・スガハラ共著 “昼間の断水、夜間の停電”*―リオデジャネイロ都市部における過去20年のインフラ整備の進展
* ポルトガル語の"DE DIA FALTA ÁGUA, DE NOITE FALTA LUZ"は、1941年に作曲され、1954年リオのカーニバルで流行った曲のよく知られたフレーズである。このタイトルの採用に、リオ市民である執筆者の水と電気の問題への複雑な思いが感じられる。つまりこれは、人々が口ずさむほどに、古く、かつ深刻な問題である。
1.序論
 基礎的インフラ整備は、市民生活の質の基盤であり、経済活動にも影響を与える。適切なインフラ整備は、それだけで発展を促すものではないが、貧困の根絶、生活の向上、教育、保健など社会生活の向上に欠かせない問題である。発展理論は、単に経済成長だけでなく、貧困の改善や教育や保健福祉、インフラ整備を含む生活の向上をも含めて考える必要があることはすでに指摘されている。また、ゴミの削減や下水道、水道水の浄化など、環境問題とも関連している。本稿では、1981年から2007年の間のリオデジャネイロ州大都市圏の住居におけるインフラ整備の進展を分析する。電力の供給や一般水道、トイレ設置状況、下水道や浄化槽の状況、ゴミの収集などの項目で検証した。企業や産業と関連するインフラについては検証の対象としない。たとえば電力のように、生産と消費が地理的に離れた場所で行われるインフラ設備もある。南東部、南部、中西部の電力消費の大部分は、イタイプダムから供給されている。本稿の目的は広範囲での設備状況を検討することではなく、特定地域に限定したインフラ整備、利用状況に言及することである。(以下 引用省略)
  • 2013年7月8日本学164教室にてカイゾー氏が講演 A DESIGUALDADE NO ACESSO À INFRAESTRURURA BÁSICA NO BRASIL: 1981/2009
  • 2013年7月8日、司会から紹介を受けるカイゾー氏
  • 2013年7月13日に南禅寺水路閣を訪れたカイゾー氏

2019/08/03 13:10:00 アフロ・ラテンアメリカを語る(3)

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  • Posted by住田 育法
 1964年にブラジル地理統計院(IBGE)が発行したブラジルの統計年鑑(Anuário estatístico do Brasil、写真)が、大学の私の研究室の書棚にあります。1960年のブラジル国勢調査に基づいた統計の年鑑です。今回、20世紀のアフロ・ブラジル人の教育事情調査のために、この書物を手にして、55年前の数字の確認を始めました。55年前のその年には東京オリンピックが開催されていますね。

 まず、ブラジルの総人口が日本より少ない1億未満であったことに驚きます。本日、2019年8月3日のブラジル地理統計院発表のインターネットによる推計総人口は2億1,026万5千人です。1964年の推計総人口は7,983万7千人でした。現在の約三分の一です。さらに今日と大きく異なるのは、地方区分です。南東部という区分はなく、北部、北東部、東部、中西部、南部となっています。2019年は南東部に属するリオデジャネイロ州とミナスジェライス州は東部、サンパウロ州は南部となっています(地図)。

 リオデジャネイロの地理統計院所属の私のアフロ・ラテンアメリカ共同研究の協力者から今回、以下のメールが届きました。

Temos um levantamento começando com o Censo de 1940 sobre a taxa de alfabetização da população preta e parda nos anos censitários e uma comparação com a média do Brasil. A partir do Censo de 1960 temos uma comparação das probabilidades e terminarem os níveis formais de ensino: primário, secundário, universidade.

 つまりブラジルの1940年と1960年の国勢調査の統計に基づいて、人種間の識字率の調査を始めた、というものです。

 55年前の人口統計を手がかりに、20世紀ブラジル社会の変化を調べていきます。65年前の1954年には20世紀ブラジル政治指導者ヴァルガスが自殺をし、59年前の1960年にはヴァルガスの後継者クビシェッキ大統領によって新首都ブラジリアが誕生しています。2016年のリオデジャネイロのオリンピックは南米最初の大会でした(写真)。

 1964年の東京オリンピックはアジアで最初の記念すべき行事でした。NHKの大河ドラマ『いだてんが描いているように、第12回大会の開催地が東京に決定しつつも開催返上をしてから、実に20年の月日が経過していたのです。

 2019年の今、過去の数字を読みながら、ラテンアメリカ研究を続けます。
  • 1964年発行のブラジル地理統計院の統計年鑑
  • 1960年のブラジル地域区分地図
  • 2016年リオデジャネイロ・オリンピックのエンブレムの前で

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