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ブラジルポルトガル語学科ブログ RSS


2019/02/20 11:10:00 グローバルな街路を歩く

  • Categoryお知らせ
  • Posted by住田 育法
 古都京都のあちこちで梅が満開を迎え、季節の変化を感じながら街路を歩く楽しさが増してきました。梅は中国から渡ってきた植物です。中国語で次のように紹介されています。梅 (学名:Prunus mume)、是蔷薇科杏属的落叶乔木、有时也指其果实或花。原产于中国、后来發展到韩国与日本等地。そしてこの2月、旧正月の春節の連休でたくさんの中国からの観光客の皆さんが入洛していました。

 過去、中国のマカオ滞在中にポルトガル人研究者と中国の都市について話題にしたことがありました。そのときポルトガル人が、「上海には街路 (rua) があるが、北京には大通り (avenida) しかない」と語っていたことが思い出されます。ポルトガルの友人は西洋化した中国を好んだようです。中国の西安をモデルにしたのが平安京ですから、京都にも街路 (rua)はありませんでした。しかし今は、車道と平行に歩道 (calçada) が造られています。外国からの観光客が京都を楽しむ空間にこの街路 (rua) があります。大通りではない、錦小路通や清水寺参拝道の二年坂・三年坂などが人気ですね。

 ポルトガル人のアジアの拠点として大航海時代からの歴史を紡ぐマカオも、その魅力は旧市街の散策です。東洋と西洋の出会いの街としてユネスコ世界遺産に登録されてのち、街並の整備が進み、歩く楽しみが増しています。

 とかく治安のことが話題となる南米ブラジルの古都リオの旧市街も、18世紀のゴールドラッシュ以降、おしゃれな街路が造られてきました。とくに19世紀末から20世紀にかけての近代化によって、その美しい雰囲気が定着してきました。

 歩く街路の魅力は、人々の飾らない普段のコミュニケーションでしょう。

 京都外国語大学で学ぶことになった皆さん、今、本学で学生生活を送っている皆さん。ぜひ、古都京都の街路を歩いて、そのグローバルな魅力を味わってください。
  • アジアの南蛮空間マカオ旧市街の坂道
  • 南米ブラジルの古都リオのグローバルな街路
  • 世界中から観光客を集める祇園祭りの街路

2018/11/08 22:30:00 ブラジルの混血理念と21世紀のDNA解析の衝撃

  • Categoryブラジル紹介
  • Posted by住田 育法
 SNSを使うようになって、以前よりはるかに頻繁に、自分の顔を他人の顔と比べる機会が増えてきました(リオの友人と撮った写真)。そして思うのは、白人、黒人、黄色人という「人種」の違いを超えて、わたしたちは皆「よく似ている」というのが率直な感想です。ブラジルにおいても、日本人の中でも、私は「目」が細いほうです。しかし、「表情」で見ると、それほど違わないように思えます。
 
 このように私たちの顔は「よく似ている」との印象を持っていたとき、2016年にNHKが放送した番組が目から鱗が落ちるような情報提供をしていました。土屋敏之解説委員の『時論公論』の「縄文人ゲノム解読 私たちのルーツは」です。

 「1987年、ミトコンドリアDNAの解析から、アメリカの研究グループが衝撃的な発表をしました。それは、<世界の人々の母方の祖先をさかのぼると、20万年前のアフリカにいた、たった一人の女性に辿り着く>というものでした。この女性は<ミトコンドリア・イブ>と名付けられました。このことは、それ以前から各地にいたはずの古い人類たちを、あとからアフリカを出た我々ホモ・サピエンスが全て絶滅させ、置き換わった証拠だと考えられました。しかし、これをくつがえす人類観も、今度は核DNAの解析から生まれました。2010年、ドイツのグループがおよそ4万年前にヨーロッパにいたネアンデルタール人の核DNAを解読。<我々はネアンデルタール人からDNAの数 % を受け継いでいる>と発表したのです。この発見は、ホモ・サピエンスはネアンデルタールと共存し交わりを持って子孫を残した、それが我々の祖先だということを意味します」。

 この核DNA解析について、日本人のルーツのことも説明しています。
 「およそ4万年前から2万年前の間に、大陸から日本に渡った人々がいました。大陸とは海で隔てられていたため、この人々はその後大陸のアジア人と交わること無く進化を遂げ、縄文人の祖先になります。その間、大陸のアジア人も様々に別れていきました。そして、縄文時代の末以降、再び大陸から日本に大勢の人が渡ってきました。いわゆる渡来系の弥生人です。稲作文化を持ち込んだ渡来系弥生人は人口の多くを占めるようになりますが、その過程で縄文人と幾らか交わりを持ったため、現代の日本人には12%だけ縄文人のDNAが伝えられたのです。従来の研究では、現代日本人には縄文人の遺伝子が2割~4割ほど入っているとも考えられていましたので、それよりかなり少ないという結果です」。


 20世紀ブラジル社会の混血 (異種族混淆) の姿は次のように説明できます。

 すでに、このブログでも紹介しているように、それは「家の外 (rua) ではリーダーである白人の男が、屋内 (casa) においては、子育てや料理をする黒人女性の《愛》によって支配される」ような社会。リオを代表する文化人である人類学者のロベルト・ダ・マタさんは、この社会の特徴は「多様」ではなく「1つ」であることだと述べています。つまり「リオの社会はヨーロッパ系貴族社会と黒人奴隷社会が混淆した伝統的な1つの社会である」と。

 ともあれ、21 世紀の科学が人類 (ホモ・サピエンス) のルーツはネアンデルタール人であるとして、これが他と共存し交わり、滅ぼすのではなくひとつとなった、という説明は「違っている」ではなく、「似ている」ことを日常の生活の中で実感できる面白さに繫がります。

 「よく似ている」というイメージの新しさです。
  • 左端が日本人 (筆者) ふたり。右はすべてリオの筆者の友人のブラジル人たち。写真は Facebook より。
  • 両端が日本人 (左・筆者)。挟まれているのがリオの筆者の友人のブラジル人たち。写真は Facebook より。
  • ブラジル人画家エミリアーノ・ディ・カヴァルカンティ (Emiliano Augusto Cavalcanti de Albuquerque e Melo) が描いた多様なブラジル人たち。2016年リオのオリンピック開催を記念して公開される。

2018/11/01 15:40:00 帝政終焉から百二十九年、皇帝護衛の騎兵「ドラゴン」を想う

  • Categoryブラジル紹介
  • Posted by住田 育法
 日本は晩秋。一方、地球を挟んで反対側に位置するブラジルは、初夏を迎えました。来月は、日本が冬至、ブラジルが夏至です。いまからちょうど 129 年前の 1889年11月15日に、ブラジルの帝政が終わり、共和政に移行しました。日本は明治 22年、のちの大正天皇嘉仁親王が皇太子となり、立太子礼を挙行しました。

 ブラジルは南米で唯一、皇帝をいただくエリートの政治体制を経験しています。1822年にポルトガルに対する独立を宣するペドロ摂政皇太子の絵 (写真) を見てください。1888年にブラジル人画家ペドロ・アメリコによって描かれた、ブラジルのサンパウロのイピランガの丘の光景で、優雅さと力を示しているのは、空を背に剣をかざす皇太子よりも、手前から右に展開する躍動感あふれる気鋭の近衛騎兵隊の「独立の龍」 = Cavalaria de Guardas “Dragões da Independência” でした。もっとも独立の時点ですから、「情景」は後の時代の「創作」でしょう。

 しかし、ブラジル人の「軍」への「願望」は、絵のように、独立以来、優秀な軍人たちがブラジルの領土と国民を守ってきたことを求めていたのです。皇帝よりも軍人が主役だと。絵はイピランガ (パウリスタ) 博物館に所蔵されています。

 2018年8月にブラジルのリオを訪問し、フルミネンセ連邦大学学長に面談して、ブラジル研究について議論した際、ポルトガル王室が 1万5,000 名の随員とナポレオン軍に背を向けてブラジルに逃避した 1808年、そして独立の1822年、さらに共和政樹立の1889年についてそれぞれ執筆された三分冊 (写真)を読むと良いとのアドバイスを筆者は学長から受けました。19世紀の皇室というエリートの体制にその後の変化を知る鍵がある、という説明でした。

 帝政崩壊 1年まえの 1888年には、奴隷の完全解放令に署名がなされ、黒人奴隷社会のブラジルが、まったく新しい近代的な自由労働の社会に生まれ変わりました。ブラジルの歴史家セルジオ・B・デ・オランダは、民族的にも地域的にも多様な異種族混淆の国民から成るブラジル社会において、真心のある (cordial) 姿勢こそが、国民の間の悲惨な争いを避け、平和な国民の統合と調和を保つための背景となっている、と説いています。
 
 2018年のいま、2002年に貧困階層から登場した左派ルラ元大統領が大統領選挙への再出馬を希望していました。しかし「汚職」のため立候補できず、右派の元軍人のボルソナロが、ルラの後継者アダジを破って当選しました。2018年のGDPの値が世界第 8 位であるように、国は豊かになってきました。引き続き、民を豊かにすることを考えるべきでしょう。

 次期大統領は、独立以来、Cavalaria de Guardas “Dragões da Independência” のようにブラジルの領土と国民を守ってきた「軍」に理解のある指導者です。ただ 11月の最新のニュースでは、軍を前面に打ち出さず、経済や汚職対策に力を注ぐ姿勢を示しています。2019年 1 月に就任することになりました。東アジアの日本から、静かにゆくえを見つめたいと思います。
  • 1888年にブラジル人画家ペドロ・アメリコが描いた「理想」の光景。絵の中央で空を背に剣を掲げるのが摂政皇太子。パウリスタ (イピランガ) 博物館所蔵。
  • 『1808』、『1822』、『1889』と題された三分冊の1つ。1822年の独立を挟んで、1798年から1843年までが書かれている。
  • 当選した大統領が目指す開発優先の政策を裏付ける2018年の世界第8位のGDP値。2019年値は予測。Joanes Silvaさんが作成。

2018/10/29 09:30:00 ブラジル大統領選挙結果とAIが導く人類の未来の話(5)

  • Categoryブラジルのニュース
  • Posted by住田 育法
 ブラジル人が選んだブラジルの未来を決める指導者は右派 PSLボルソナロです。
 昨日2018年10月28日 (ブラジルの27日) の未来が、今日10月29日 (ブラジルの28日) のいまになりました。

 ブラジルは夏時間まえですから、日本との時差は首都やリオ、サンパウロなどとは12時間。
 いま、日曜日の夜の11時を過ぎたところで、最終の集計結果が出ました。
 
 完全な電子投票による選挙は以下のとおり開票率100%で「当選」の結果が出ました。

 2018年10月28日23時9分
 投票結果 開票率 100%
 ボルソナロ (Jair Bolsonaro) PSL 当選
         55.13%
      57,797,073票

 アダジ (Fernando Haddad) PT
         44.87%
       47,039,291票

 白 票 2,486,581票
 無効票 8,608,022票


 右派ボルソナロはイタリア系の両親 (父 Perci Geraldo Bolsonaro, 母 Olinda Bonturi) の子としてサンパウロのグリセリオ (後にカンピナスで出生を登録) に1955年3月21日に生まれています。イタリアは日本とともに第二次世界大戦において枢軸国に属していました。ブラジルは連合国でした。終戦の1945年から73年。いままさにブラジル国内における「平和」と「調和」の絆を期待します。より良いブラジルの「未来」への希望です。

 北東部各地に掲げられた選挙運動中の選挙公報板にブラジルの地域的統合を望むボルソナロの姿勢が感じられます。

 ボルソナロ当選大統領に対して敗北したアダジ候補者は、以下のメッセージをツイッターで送ったとブラジルのグローボ(Globo)が伝えています

"Presidente Jair Bolsonaro. Desejo-lhe sucesso. Nosso país merece o melhor. Escrevo essa mensagem, hoje, de coração leve, com sinceridade, para que ela estimule o melhor de todos nós. Boa sorte!", escreveu Haddad.

「Jair Bolsonaro 大統領。私は貴殿に成功を望みます。私たちの国は最高の価値があります。 私はこのメッセージを今日、穏やかな心で誠意を持って書いています。メッセージは私たちのすべてに最高のものになるでしょう。幸運を!」アダジ 執筆。
  • 永い経験をもつ投票機器URNA (ポルトガル語: Coletor eletrônico de voto - CEV; 英語: Direct Recording Electronic - DRE) 。
  • 私の知人が住むサンバ発祥の北部コンセイサンの丘にある陸軍省 (国防省) 地理研究所
  • 緑が右派、赤が左派。地域で支持層は割れました。「融和」のときです。地図の出所: Globo - G1。

2018/10/27 11:10:00 ブラジル大統領選挙結果とAIが導く人類の未来の話(4)

  • Categoryブラジルのニュース
  • Posted by住田 育法
 今日は、2018年10月27日土曜日です。明日の28日の日曜日は、ブラジル大統領選の決選投票が行われます。時計ではいま日本が、10月27日の正午。ブラジルが10月27日の零時。
 決選投票のふたりは、右派の元軍人ボルソナロ下院議員と左派のアダジ元サンパウロ市長。

 筆者掲載の写真はすべて、反アダジに繫がります。
 まず、海底油田で潤ったブラジル石油公社 = ペトロブラス(Petrobras) は労働者党失脚を招いた「汚職」の舞台
 軍隊は右派ボルソナロ候補の過去の職場。最終階位は陸軍の大尉
 写真3 枚目のUFFの法学部は伝統的にエリートの権威主義を支持。

 学生の皆さんと考えたいのは、未来の予測はどの程度、可能かということです。
 ブラジルの世論調査機関のIBOPE (Instituto Brasileiro de Opinião Pública e Estatística) とDatafolha (um instituto de pesquisas do Grupo Folha) の数字は、微妙に異なっています。これは、有権者に質問し、その分析に従って答えを出すのですが、AIの助けを借りているはずです。しかし、基本的な情報は複雑な「こころ」を持つ人間から出ています。

 小学生のとき母に、「なぜ、過ぎ去ったことを調べるの。過ぎたことは誰でも知っているのではないの」と尋ねたことがありました。母の説明は、「過去のことも、分からないことがたくさんある」と簡単でした。ただそのとき、未来のことは分からないだろう、とは考えていました。そうした、「未来」の予測の話です。
 
 いまの疑問は、はるかな未来の話ではなく、明日の大統領選挙の予測です。明日になれば分かりますが、未知なるいまの、スリルたっぷりの「わくわく感」を味わいたいのです。

 人種差別反対や格差を無くすことを強調する人が選ばれるのか。左派のアダジがそうですね。
 あるいは、ドイツ、イギリス、インド、フランスに次いで世界8位にまで国内総生産 (GDP) が成長してきた経済の規模のさらなる拡大を求めるのか。右派のボルソナロです。

 第1回の投票結果はつぎのとおりでした。
10月7日の選挙結果=得票率:
 Bolsonaro PSL 46.03%
 Haddad PT 29.28%

 以下は、未来の決選投票結果を予想する数字ですね。
10月27日のIBOPEの投票予測率:
 Bolsonaro PSL 54%
 Haddad PT 46%


10月27日のDatafolhaの投票予測率:
最新
 Bolsonaro PSL 55%
 Haddad PT 45%


過去 (26日)
 Bolsonaro PSL 56%
 Haddad PT 44%
過去
 Bolsonaro PSL 59%
 Haddad PT 41%

 ともあれ、1億を超えるブラジル人の電子投票結果を待ちましょう

 1988年のブラジル連邦共和国憲法第Ⅳ章第14条
 人民の主権は、すべての者に平等の価値を有する普通選挙および直接かつ秘密の投票により、また、法律の定めるところに従い、次のものを通じて行使される:
 Ⅰ 国民投票
 Ⅱ レフェレンダム
 Ⅲ 人民発議
※1 選挙人登録と投票は、以下のとおりとする:
 Ⅰ 18歳以上の者に対しては義務とする。
 Ⅱ 次の者は任意とする。
  a) 非識字者
  b) 70歳以上の者
  c) 16歳以上および18歳以下の者。
(以下、省略)


 そして、ブラジル人の選択と未来への希望を地球の反対側のアジアの京都から考えてみましょう。
  • 大西洋深海油田の活動を終えてリオの湾内で整備を行うペトロブラスの浮体式海洋石油生産貯蔵積出設備の船とプラットホーム。2018年8月。
  • ブラジルの未来の海を守る若い水兵たちと撮影。2017年の海軍基地公開の日にリオの軍港にて。
  • フルミネンセ連邦大学法学部新入生。キャンバスでコインを求める新入生。先輩たちの「祝福」の1つが仮装と物乞いの「要求」。

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