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2021/12/21 15:10:00 クリスマス直前のベルリンで人権について考えてみた

  • Category今考えるべき人権問題 ゲストライター
  • Posted by人権教育啓発室
はじめまして。深刻なコロナ禍真っ只中、そしてつい最近首相が交代したばかりで、何かと日本でも話題になっているドイツ・ベルリンからこのブログに投稿させていただきます。

 私は、夫の仕事の関係で、家族で米国サンフランシスコに約5年滞在後、ベルリンに移り住んで約4年になります。夫、9歳の長女、6歳の長男と4人暮らしをしています。
 こんな私が、まさか京都外国語大学の人権ブログを書かせていただくなんて?と思いましたが、普段私の目線で感じていることを素直に書いてみたいと思います。

 私の住むベルリンは、LGBTQの人たちが住みやすい街だということで有名です。ちなみに、サンフランシスコもそうでした。なぜかそういう都市に縁があり、10年近く住むようになって、日本の田舎育ちだった私自身の考え方にもこの2つの街の空気が随分影響されてきた気がします。
 日本では、「選択的夫婦別姓」や「同性婚」の議論が始まったばかりですが、ドイツでは既に法的に認められています。と言っても、実はドイツでも同性婚が認められたのはつい最近のことで、2017年になります。キリスト教信者が大半を占める国なので、昔からそういう考え方はあっても、なかなか実現しなかったようです。ただ、ドイツでは2001年からパートナーシップ制は導入されていて、これは婚姻と同等の権利を受けられる制度でした。2001年に、元ベルリン市長のクラウス・ヴォーヴェライト氏が、市長選前の演説でこう述べたのです。「Ich bin Schwul und das ist auch gut so!(私はゲイです。そしてそれで良いのです!)」高い地位にある政治家が同性愛者であることを宣言したのはこれが初めてで、当時まだ保守的な空気が残っていたドイツの国民は、驚愕したとか。これがドイツの大きなターニングポイントになりました。ベルリンから新しい空気が国全体に流れていったのではないでしょうか。

 ところで、ベルリンに住んでいると、週末に市内中心部へ車で出かけられないことが頻繁にあります。それは、ベルリン中心部、特にブランデンブルク門付近で毎週末のように大規模なデモが開かれているからです。最近は、コロナ規制に反対するデモが非常に多いです。また、ここ数年ずっと定期的に叫ばれているのは、人種差別に対する抗議運動です。
 今年のドイツのジェンダーギャップ指数は156カ国中で11位(日本は120位)で、ジェンダー意識も高く、また前述の通り同性婚が正式に認められており、LGBTQの人たちにも暮らしやすいはずですが、残念ながらそのドイツにも「人種差別」は根強く残っています。2015年の難民危機以来、極右による暴力事件の数は増え、人種差別的な思想を持つ右翼政党への支持率が急激に伸びました。ドイツで最も激しく人種差別を受けているのは、トルコ人やシリア人などのイスラム教徒です。その他、近年ではユダヤ人、そして私たち日本人含むアジア人も標的になっているようです。
 私の在独トルコ人の友人は、娘が幼稚園でドイツ人園児から「君の肌は黒いから汚い」と言われ、先生に相談しても一向に改善が見られなかったため、娘をインターナショナル幼稚園に転園させることを決めました。また、日本人の友人は、コロナ禍が始まったばかりの頃、街なかで若者から「コロナはこの国から出ていけ!」と言われたことがあるそうです。他にも似たような話を時々聞きます。幸い、私自身は今までの海外生活でそのような理不尽な思いを経験したことがありませんが、周りの話を聞く限り、この国での人種差別は相当根深い問題であることを感じざるを得ません。

 さて、ドイツの少し暗い部分の話をしてしまいましたが、私が日々奮闘しているドイツでの子育てについてもお話ししたいと思います。
 子どもたちと話をするドイツ人の親の姿を見ていて感じるのは、親が子どもたちを「子ども扱い」せず、一人の人間として対等に接しているということです。自分の子どもに対しても他人の子どもに対しても、時には犬に対しても、大人に話すのと全く同じように会話している姿をよく見かけます。
 先日、6歳の息子が眼鏡のレンズを代えるため、眼鏡屋に眼鏡を一晩預けることになりました。眼鏡を片時でも手放したくない息子は、眼鏡屋さんで自分の眼鏡を預けたくないと泣きだしました。どうしたものかと途方に暮れているところへ、眼鏡屋の店主が息子のところにやってきました。お菓子でもあげて機嫌を取るつもりかな?と思いきや、店主は息子の目線に合わせて座り込み、息子の目を見ながら真剣に話し始めました。「このレンズ見てごらん。これが君の眼鏡用の新しいレンズで、私はこれからこのレンズを君の眼鏡フレームにピッタリ合うように作業しなければならない。私にも家で待っている家族がいて、今日中に作業はできないから、どうか明日までこの眼鏡を私に貸してくれないか?」…息子はこれで落ち着き納得して、素直に眼鏡を店主に手渡したのです。相手が子どもでも誰でも、同じ目線に立ってきちんと分かりやすく説得してくれる、私はドイツ人のそういうところが大好きです。
 相手が子どもでも老人でも、男性でも女性でも、誰であっても対等に接する。対等に話す。対等に聞く。相手の気持ちが理解できなかったとしても理解しようと努力する。それは、全ての人の人権を尊重しているように見えます。人種差別がまだまだ根強く残るドイツとはいえ、今の私の周囲には、それを実践できている人たちがとても多いように感じています。このような素晴らしい部分は積極的に吸収して、日本に持って帰りたいと思っています。

 未来を生きる子どもたちのためにも、日本もアメリカもドイツも、そして世界中がより良い社会に、差別のない多様性を認める社会に生まれ変わってくれることを願ってやみません。




良田 愛(よしだ あい)
ドイツ・ベルリン在住
関西学院大学社会学部入学、2年次にイギリス・オックスフォード大学へ短期留学、卒業後、写真機器メーカー及び情報機器メーカーにて海外向け広報・販促・マーケティング業務を担当する。夫の米国駐在を機に退職。
2012年よりアメリカ・サンフランシスコに約5年駐在。2017年、ドイツ・ベルリンに転居。現在、ドイツ在住4年目。

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