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大学院修了生の声

2016/02/16 11:40:00 大学院修了生の声6

  • Category大学院修了生の声
  • Posted by北川幸子
【王尤さん(2015年3月 博士前期課程修了)】
中国の長春出身。93年に来日し、日本語学校を経て、大学に進学し、経営学を学ぶ。卒業後、日本の企業に6年勤めたのち、結婚、出産を機に中国へ帰国。その後、中国の吉林華橋外国語大学で日本語教師に。今度は研究に取り組んでみたいと再来日。京都外国語大学大学院の一年制コースに進学され、博士前期課程修了後、現在は再び吉林華橋外国語大学に戻られ、ご活躍されています。

北川:大学院進学を決めた理由は?

王さん:中国の大学で日本語を教え始めたときは知らないことが多くて、同僚の先生から直接法の教え方など教えてもらったり、自分自身でも実践を重ねて、だんだんうまく教えられるようになりました。自分のキャリアを積み重ねていく中で、教えることは問題なくても、研究の能力を伸ばすのは独学では難しいと感じたんです。自分の書いた論文を見ても、レベルが低いように感じて。それで、大学院に進学しようと思いました。

北川:なぜ中国の大学院ではなく日本の大学院に進学しようと思ったんですか。

王さん:住んでいる町の近くにそのような専攻の大学院がなかったことと、やっぱり「日本語教育」「日本語学」の最新の研究は日本でしか勉強できないんじゃないかって、思ったんですよね。

北川:研究のテーマについて教えてください。

王さん:これは9年間、中国の大学で日本語を教えた経験から始まっているんですけど、どうしても学生たちの勉強の意欲に問題があると感じたんですね。ただ授業を受身的に聞いている学生は日本語がなかなか上手にならないんですよね。もっと文化に興味を持たせて、意欲を持って勉強してくれるようにできないかと、中国の大学の日本語専攻者に対する日本語教育のあり方について研究してみることにしました。

北川:当時、指導されていた日本語専攻の大学生はどんな目的意識で入学してきていたんですか。

王さん:そうですね。いろいろですけど、入試制度によって、勉強したくないのに日本語学科に割り振られたという学生もいれば、親の言いなりで入ったという学生、自分自身でも何を勉強したいかよくわからないままに人に勧められて入ってくる学生なんかもいましたね。もちろんアニメなどの影響で自分の意志で入ってくる学生もいましたけど、半分くらいでした。日本語や日本語の学習を好きになってもらうということが意味のあることだと、その当時から思っていました。

北川:どのように研究を進められたのですか。

王さん:日本文化教育というテーマではたくさん研究があるんですが、中国の大学の事情として、「もっと学生を解放してあげましょう」という政策に従わなければならないんですね。それで大学のカリキュラムの中で授業に割く時間がカットされて、日本の文化を学ぶような授業を組み込んでいくというのは非常に難しい状況なんです。そこで私が注目したのが、課外活動なんですね。大学院に入学する前に、日系企業に勤める日本人で空手の経験者の方に協力していただいて、半年間、空手の課外活動を行いました。実施前と後とで、学生の変化を見たんです。そしたら、考え方の変化、モチベーションの変化が見られて、さらに大学院に入ってから成績への影響を統計を用いて分析してみましたら、ちゃんと有意差が出たんです。嬉しかったですね。

北川:きちんと結果が出たんですね。

王さん:はい。実は大学には空手以外に13もの日本文化を学ぶ課外活動があるんですけど、あまり成績などへのいい影響がないんですね。今回の空手の課外活動の利点はいろいろありますが、ひとつは自己決定理論ですね。大学からやらされるものと、自分で自発的に取り組んだものとの差です。あとは、空手の講師の方の日本語を、できる学生が通訳すると、他の学生はかっこいいと思ったり、講師の方に対しても、お金も出ないのに一生懸命教えてくれて、いい人だなぁと尊敬するようになって、それが学習動機につながった、ということです。

北川:大学院在学中、一番大変だったことは何ですか。

王さん:時間が短かったことと、研究をやればやるほど、自分の配慮不足に気づいて、このテーマでやる意味があるのか、自己否定するようになって、一時期は本当に自信をなくしましたね。でも、先生が「自信を持ちなさい」と何度も励ましてくださって。9月末に帰国して最終データを取りました。これで、先行研究もデータも揃っていて、あとは書くだけと思っていたんですが、書き出してみると、文字数が増えすぎてしまって、最後はまとまらなくなってしまって。そのあとはカットしていく作業で、全体の構成を整えなければいけなくて、大変でした。

北川:王さんは一年制ですので短かったと思いますが、大学院での学び、収穫はどこにあったと思いますか。

王さん:これまでたくさんの教育実践を重ねてきましたけど、いろいろと気になる部分やこうじゃないかなと思ってモヤモヤしていた部分が、大学院の授業を通して理論的な支えを得ることができて、そうか、ここに答えがあったんだとか、こうすればよかったんだって、毎回の授業で発見がありました。解決までは至らなくとも、どこに問題があるのかということは理論的に説明できるようになりましたね。これまでは職場での教師同士の議論でも「たぶんこうだと思います」としか言えなかったのが、今後はきちんと論理的に説明できるようになると思います。

北川:帰国後はどのようなことに挑戦されたいですか。

王さん:大学院で学んだ、「学生を動かす」授業を私も実践してみたいと思います。学生の授業外での学び、その動機づけを工夫していきたいですね。あとは有効な論文指導の方法なども考えていきたいです。

2016/02/03 14:50:00 大学院修了生の声5

  • Category大学院修了生の声
  • Posted by北川幸子
【吉田奈々さん(2015年3月 博士前期課程修了)】
京都外国語大学外国語学部日本語学科を卒業後、同大学大学院に進学。現在は日本語教材専門書店にお勤めで、日本語教材の出版や販売、教材に関連したイベントの企画運営等に携わっておられます。

北川:大学院進学を決めた理由は?

吉田さん:大学三年生の時に、ここ(京都外大)の留学制度を利用して、韓国仁川大学に留学しました。今思えば、そこで出会った日本語の先生に「大学で学ぶことの楽しさ」を教えてもらったことがきっかけだったのではないかと思っています。私は留学先の大学で日本語の授業のアシスタントに入っていたのですが、その中の1つに「上級日本語会話」という授業がありました。その授業は映画を見た後、その映画を題材にディスカッションをする授業でした。ディスカッションは、ただ、映画の感想を話し合うのではなく、映画という具体化されたストーリーの中から、この作品が伝えたいことは何かという抽象的な部分を、その映画が作成された背景を調べたり、映画と関係している宗教に関する文献を読んだりして議論し合うことが重視されていました。今思えば、文学が専門だった先生の掌でうまいこと転がされていたのだと思うのですが(笑)「あの映画のあのワンシーンにはどのような意味があったのか」と疑問に思ったことをきっかけに、自ら図書館に足を運び、調べ、自分の考えを膨らまし、言語化して伝えるという行為、そして、その過程を経ても必ず「これが答えだ!」というものがないというのがなんだか魅力的で楽しくて。あの時はじめて「本当の学問の楽しさ」に触れた気がしました。そこから「大学」という場所に魅力を感じ、「大学で働きたい!→働くためには大学院に行かなくてはいけない」というなんとも安易なんですが、そんな理由で大学院進学を決めました。

北川:大学院で取り組んだ研究テーマとその内容について教えてください。

吉田さん:作文の教材として使われる「モデル文」について研究しました。きっかけは、作文の授業のときに、教師がモデル文を学生さんに配付しても、回収した作文は、モデル文のような作文もあれば、モデル文とは全く異なった作文もあって、でも、教師が知りたい「モデル文が学生さん1人1人にどのような影響を与えたか」という部分は、出来上がった作文で想像するしかないという現状があると思いました。そこで、学生さんにモデル文を使用したタスクとインタビュー調査を行って、学生さんのモデル文に関する認識や使用実態を明らかにし、モデル文の「役割」について考えました。

北川:どんな結果が得られましたか。

吉田さん:表現や接続詞のバリエーションが少ない学生さんへの補助や、文章を構成する上での助けになるなど文章を産出するための補助輪的な役割があることは想像の範囲内だったのですが、その他にも、教師がモデル文を配付した意図を自分なりに考え、教師が何を望んでいるかを考えながら文章を産出する学生さんがいたり、良い評価を得るために、自己表現を抑えてあえてモデル文のように書いている学生さんがいたりなど、アンケートではなく「インタビュー」にしたからこそ得られた学生さんの「本音」も明らかになりました。「それは修論では書けないかな…」というような本音まで打ち明けてくれる学生さんもいて驚きましたが、そのような学生さんの「声」が届けられた論文になったのではないかと思います。

北川:二年間で一番大変だったことは?

吉田さん:量的研究ではなく、質的研究を手法にとった上で、できるだけ避けたかったのは、個々に焦点当てて調べた結果、色んな人がいて、色んな意見を得ることができました、人によってモデル文の役割もそれぞれでしたよ、ってゆう研究結果。でも、調査の人数が少ないので、結果を一般化することができないのも事実、その中で、「どのように結果をまとめるか」という論文の着地点に一番悩みました。日本語教育における質的研究の存在や意義とは一体何だろうと何度も考えたのが苦しい期間でしたね。

北川:大学院二年間での自分自身の成長をどのあたりに一番感じていますか。

吉田さん:視野がかなり広がったことだと思います。広がった視野とは、日本語教育が社会に貢献できる範囲や教育理念などです。それらは修論を書いた経験から得たものもありますが、多くは修論を執筆していく過程での、院生同士の勉強会や、学会・研究会に参加したこと、そして多くの先生にお会いして先生の発表や著書、お話に触れたことから得ていたと思います。

北川:では最後に今後の展望について教えてください。

吉田さん:色んな経験を積んで、オリジナリティのある先生になれたらいいなというのと、先生としての引き出しを増やすという意味も込めて日本語教材専門書店で働くことにしました。でも、大学で学ぶことの楽しさも忘れられないので、やはり将来は大学で日本語を教えたいです。その目標が達成できるよう、仕事も研究も頑張っていきたいと思います。

2016/02/03 14:50:00 大学院修了生の声4

  • Category大学院修了生の声
  • Posted by北川幸子
辻野美穂子さん(2015年3月 博士前期課程修了)
京都外国語大学外国語学部英米語学科を卒業後、同大学大学院に進学。現在は国際交流基金のJ-LEAPプログラムにより、アメリカ、カリフォルニア州のカストロバレー高校に派遣され、アシスタントティーチャーとしてリードティーチャーと共に約160人の高校生に日本語を教えていらっしゃいます。

北川:大学院進学を決めた理由は?

辻野さん:大学院に入る前は、京都外国語大学で英米語学科を専攻していました。大学に入る時から日本語教師になりたいと思っていたので、副専攻で日本語教員養成プログラムのコースに入りました。大学卒業後は普通の就職をするつもりだったので、就職活動を本格的に始める前の大学3年の春に、最後の思い出づくりと思ってハワイに日本語の教育実習に行きました。そこで他に参加していた院生や日本語学科の学生と自分を比べて、やっぱり全然違うなと、自分の経験のなさとか知識のなさとかを実感して、もっと勉強したいなと思い始めて、帰ってきて進学を決めました。

北川:大学院ではどんなテーマで研究したんですか。

辻野さん:ハワイの日系人日本語学習者の日本語学習ってどんなものか、どうして日本語を勉強しているのかっていうのを明らかにするというのをテーマにしました。

北川:研究の方法は?

辻野さん:ハワイの日系人日本語学習者の方に、「生まれてから今までどんな生活を送ってきたのか」、「どうして日本語を勉強しているのか」ということをテーマにインタビューをとって、彼らのライフストーリーを作成しました。そこから彼らの人生において起こった出来事と日本語学習との関係を見ていくという方法をとりました。

北川:研究の中で大変だったことや、苦労したことは?

辻野さん:2つあるんですけど、1つは、自分が知りたいことがいっぱいあって、インタビューの中には面白いと思う内容がたくさんたくさんあるんですけど、それを全部研究対象にすると収拾つかなくなってしまうので、修士論文の中でどこにフォーカスをあてるか、自分のテーマをこれって決めるのがまず難しかったですね。あとは、絶対自分はこうだ、こういう結論にしたいと思っても、自分の考えだけでは研究は成り立たないっていうか、ちゃんと自分の主張を通すために、先行研究などを引用しながら論理的に書いていくことが難しかったです。

北川:大学院の二年間で得られたもの、収穫は?

辻野さん:一番は自分の視野が広がったこと。他の院生たちがそれぞれのテーマについて熱意を持っていて、環境的に他の人の研究対象にも関心を持たざるを得なかったです。私の関心のあることは「日系人の生き方」とか「日本語学習動機」とかで、一人だったらやっぱりそれに関係のある文献しか読まないですよね。でも他の院生も「教室活動」とか「文法」とかにそれぞれ熱心に取り組んでるので、隣にいると自然とそういう関係の文献も読むようになっていて、自分のテーマ以外のことも真剣に考える時間が持てました。自分の研究においても、日系人の人たちがどう考えどう感じているのか、調査をするまでは私は想像することしかできなかったんですが、インタビューを研究方法にとったので、彼らの葛藤とか決意とか、いろんな声が直接聞けました。こんな感じで視野が広がったというのが大きな収穫ですね。

北川:今後の展望は?

辻野さん:まずはやっぱり日本語教師として実際に日本語を教えてみたいです。でも研究も続けたいと思っています。できるなら、自分で収入を得て、ある程度余裕ができればアメリカで大学院にも行ってみたいです。

2016/01/25 13:00:00 大学院修了生の声3

  • Category大学院修了生の声
  • Posted by北川幸子
【古澤純さん(2015年3月 博士前期課程修了)】
地元、愛知県の大学では文学部に在籍していた古澤さんですが、「言語」と「教育」への関心から本学の大学院へ進学されました。現在は、京都市内の私立高校で国語教師をされています。

北川:大学院進学を決めた理由は何ですか?
古澤さん:地元の大学(学部)では、文学部に在籍し、国語教師になるための勉強をしていました。2年生のときに国際学部という他学部の授業を受ける機会を得て、「日本語教育研究」という授業を受けました。その授業の最初の回で、先生が「この授業は国語教員を養成するための授業ではありません」とおっしゃったんです。それを聞いたとき、「あっ、間違えた」と思いました。そのときの僕は、「日本語教育」という世界を知らなかったんですね。その日から、「だまされた」と思いつつも受講し続けたんですが、毎回の授業が新鮮だったことを今でも覚えています。普段、当たり前に使っている日本語を外国語として学ぶ人の視点から見ると、まったく違ったふうに見える。鏡のない世界のひとが、初めて鏡を手にいれて、「ああ、僕ってこんな姿をしていたんだ」といった驚きに似ているかもしれません。そこから日本語教育への興味をもちつつも、国語教師の夢はそのままに卒業の年を迎えました。このまま教壇に立つか、大学院にいって学問をするか悩んだとき、単純に「もっと知りたい!」と思って大学院進学を決意しました。国語教師としての視野を広げるために、日本語教育が学べる本学の大学院に進学を決めました。

北川:大学院に入るまでは日本語教育ではなく国語ばかり?
古澤さん:先ほどの他学部の先生に勧められて地域の日本語教室で二年ほどボランティアで教えていたことがあります。愛知県は外国人集住都市のひとつで、南米地域の人が多いのが特徴です。そのときは日本語教育能力検定試験の勉強をしながら手探りで教えていました。

北川:大学院での研究テーマは?
古澤さん:「「名詞+ヲスル」構文の機能」というテーマで、日本語の文法を研究しました。この研究は明日すぐに役立つという「実践的な研究」ではないのですが、この研究を通して、「じっくり考える」ということが身についたと思っています。目の前の言語データを分析する目は、学習者の発した誤用を分析する目にもなると考えています。「基礎的な研究」も教師になるための大切な勉強だと思えたからこそ、「地味な研究」も続けられたのかもしれません。

北川:二年間で大変だったことは?
古澤さん:大変だったと思ったことはありません。院生仲間との自主ゼミ、推進室主催のニケの会、学部生と院生からなる文法勉強会、また、読書会など様々な会を掛け持ちしましたが、大変だったとは思いませんでした。いろんな人と議論することは、ただただ楽しかったです。また、院生みずから会を主催するというのも大事なんだなと思いました。大学院というところは主体的に学びの機会を得ることも大切なことであると考えています。

北川:自分自身の成長、大学院での収穫をどのように感じていますか?
古澤さん:自分の「専門」を語れるようになることではないでしょうか。先行研究が明らかにできていないことを発見して、自分がそれを明らかにしてやろうと思って、修士論文を執筆する。そうやって研究を進めていくと、その研究分野への愛着がわき、「分かった!」という喜びから、自分自身の「自信」に繋がっていきました。学部のときと決定的に違うのは、この研究が自分の「専門だ!」と自信をもって言えることです。また、そうして得た「研究者の視点」を私たち教師は、教育現場に生かすことを考えていかなければならないと思います。

2015/10/28 11:00:00 大学院修了生の声2

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  • Posted by北川幸子
 前回に続き、今回は一年制の修士コースを修了された瀬川綾子さんにお話をうかがいました。

【瀬川綾子さん(2015年3月 博士前期課程修了)】
短大を卒業後、化粧品会社に就職。約10年の会社員生活に区切りをつけ、念願のイタリア留学へ。帰国後、イタリア語講師に。留学中に日本語を学ぶイタリア人とLanguage Exchangeをした経験がきっかけとなって日本語教師養成講座へ。大学三年次に編入し、大学を卒業。国内の日本語学校やタイの中等教育などで日本語を教えたのち、本学の大学院へ。ユニークな経歴をもつ瀬川さんです。

北川:大学院進学を決めた理由は何ですか?
瀬川さん:大学院進学はタイから戻るちょっと前から考え始めていたんですが、教えていて感じた疑問を既存の本でしか確認できないなぁと思って、もっと自分の力で調べたりできないかなと思ったのがきっかけですね。

北川:大学院で取り組まれた研究のテーマを教えてください。
瀬川さん:どうしたら学習者が日本人と円滑なコミュニケーションができるのか、ということに一番のポイントを置いて、その題材として可能形をとりあげました。可能形に潜んでいる含意というものがあるのか、日本語母語話者を対象に調査をして使用実態を明らかにしました。そのうえで、それを今度はどのように学習者に教えていけるのか、指導法を見つけていく、ということをやりました。

北川:研究で大変だったことは?
瀬川さん:全部大変だったんですけど(笑)。日本語学についての基礎知識が十分ではなかったので、その点で一番苦労しました。自分が教えてきた経験はあるんですけどそれを学問としてとらえることが難しくて…

北川:その基礎的な知識を補う部分で何か在学中にされたことはありますか?
瀬川さん:そうですね、とにかく本はたくさん読みました。本と論文ですね。

北川:その他に大変だったことは?
瀬川さん:可能形の指導(授業)を実際にやってみてデータをとるということだったんですけど、教材を作る段階でもかなり悩みましたし、結果が出なかったら話にならないので…、夏休みにデータをとることになっていたんですけど、そこまでに教材を作らなければいけないというプレッシャーもあって…。教材を作るための理論をおさえたり、データをどのように分析してどのように説明をしてばいいかなど、いろいろ難しく、悩みました。
自分はひとつの視点から見ていても、他の角度から見ればいろいろ出てきますし、研究の過程で周りから自分の思ってもいないご意見をいただいたりして、それをどう解決していけばいいのか、気づかない部分での指摘は役に立つ部分もあるんですが、対処にも困りました。

北川:今のお話にも関連するかもしれませんが、瀬川さんにとって大学院の一年間、そこでの収穫やご自身の成長はどのように感じていらっしゃいますか。
瀬川さん:そうですね。私は、ものごとを順序立てて論理的に考えることが苦手だったんですね。でも何かを考えていくときにひとつずつ丁寧に考えていくという癖はついたかなと思います。いろんな視点をもつこととか。すごく凝り固まっていた自分の考えをほぐすことはできたかなと感じています。

北川:現場で感じた疑問を解決したいという具体的な目的があったかと思うんですが、結果的にはその解決のプロセスで得られた方法や姿勢といったもののほうが実りが大きかったんですね。
瀬川さん:そうかもしれないですね。凝り固まっているからこその問題ってたくさんあったんだなって感じています。

北川:最後に今後の展望を聞かせてください。
瀬川さん:言葉を勉強することのもっとも大切な点は、やはりコミュニケーションだと思いますので、何年日本語を勉強していても話せない学生って多いですけど、話せる学習者をどうやって育てていけばよいか、指導法や教材作りにもとても興味がありますので、そういったものを作っていきたいと思っています。
北川:ぜひ。楽しみにしています。

瀬川さんは近々、国際交流基金から日本語専門家としてインドネシアに派遣されることになっています。インドネシアでのご活躍をお祈りしています。教材作成のタネ?がインドネシアに落ちているかもしれませんね。

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