■学会動向■
ラテン・アメリカ政経学会2010年度第47回大会(慶応義塾大学)
研究報告U
ブラジル総選挙の地域主義と労働者党ルラ主義の展開
司会:山崎圭一(横浜国立大学)
討論者:近田亮平(アジア経済研究所)
発表者:
住田育法(京都外国語大学)
総選挙におけるルラ+労働者党(PT)の有権者に対する人気の背景を、ルラの
カリスマ性と地域性に求めることができる。報告では、2002年と今回の2010年の
選挙動向を比較しながら、特にルラと労働者党の人気の背景に注目して、ブラジ
ルの政党の全国規模の展開と地域に基盤を置く状況を比較。
■ブラジル旧共和政(1889〜1930年)はカフェ・コン・レイテの地方エリートの
時代であったが、これをヴァルガスの独裁体制(1930〜1945年)が強く否定した。
現代ブラジル政治史におけるヴァルガスの影響は、民主的な選挙体制が確立した
1990年代のカルドーゾ政権で終わったと考えられる。しかし、2010年総選挙の投
票行動について地域主義の傾向を観察することができた。過去の地方ボス政治と
は違う、新しい民主的な地域主義の表れである。
■30年前の1980年、ブラジル共産党(PCB、PC・DO・ B)に対抗する社会主義勢力か
ら、カトリック教会や中産階級をも基盤として、ABCパウリスタ地区のサンベルナ
ルド・ド・カンポ金属労組委員長のルラによって労働者党(PT)が結成された。彼
は、北東部ペルナンブコ内陸部の貧農出身であった。8年前の2002年大統領選挙には、
このルラが、新自由主義を掲げる与党ブラジル社会民主党(PSDB)とブラジル民主
運動党(PMDB)が支持する候補者ジョゼ・セーラに対して、新ポピュリズムとも呼べ
る新風を巻き起こして闘い、野党の労働者党(PT)として勝利した。2002年の選挙は
労働者党のマーケティングの勝利であったと見なしうる。与党のブラジル社会民主党
(PSDB)に所属するカルドーゾ大統領は、与党では、PSDB、自由前線党(PFL)、ブラ
ジル民主運動党(PMDB)が連立を維持することが必要であることを強調していたが、
それぞれに独自の候補者が示されて、連立には失敗した。選挙は有権者が1億人を超
える電子投票であった。大統領選挙の有効得票数は、第1回の候補者6名の合計が
8,492万8,204票、ルラがこの46.44%の3,944万3765票、決選投票は、合計が8,616万4,103票、
ルラがその61.27%で5,279万3,364票を得て勝利した。
■今回の2010年大統領選挙では、赤いシンボルカラーの労働者党のディルマ・ルセフ候補
と、トゥカーノをシンボルとする青色のブラジル社会民主党のジョゼ・セーラ候補の争
いとなった。南東部のミナスジェライスとサンパウロの州知事選ではブラジル社会民主
党が強いものの、全国レベルの投票となる大統領選挙では、労働者党のディルマ・ルセ
フが圧倒的な強さを発揮した。10月3日の選挙直前の9月27日実施のDatafolhaのブラジル
大統領選挙投票行動予測によると、ブラジル全体の投票行動予測は、ディルマが46%、
セーラが28%、マリーナが14%であるが、 地域別では、北東部では、ディルマ59%、
セーラ19%、マリーナ11%、北部・中西部では、ディルマ44%、セーラ30%、マリーナ17%、
南東部では、ディルマ41%、セーラ31%、マリーナ17%、南部では、ディルマ39%、セーラ35%、
マリーナ10%であった。
■2010年の大統領選挙では、赤いシンボルカラーの労働者党(PT)のディルマ・ルセフが
勝利するか、トゥカーノをシンボルとする青色のブラジル社会民主党(PSDB)のジョゼ・セ
ーラが勝つのか予測不能の状況にあったが、ディルマが5,575万2,529票、つまり有効票の
56.05%を獲得して勝利した。
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