■学会動向■
ラテン・アメリカ政経学会2007年度第44回大会(南山大学)
研究報告
ブラジル・リオデジャネイロの低所得者層共同体の問題
司会:辻豊治(京都外国語大学)
論評:近田亮平氏(アジア経済研究所)
発表者:
住田育法(京都外国語大学)
「麗しの都市」と歌われるブラジルの旧都リオデジャネイロの訪問者は誰でも、イパネマやコパカバーナ
海岸の瀟洒な風景と対照をなす山肌の低所得者層共同体の住居群、いわゆるファヴェーラの光景に強烈な
印象を受ける。リオ市ペレイラ・パソス研究所のSABRENの統計によると、ファヴェーラ数は2002年現在752
に達し、居住者の人口はリオ市全体の18.7%を占めている。20世紀後半、ファヴェーラ人口はリオ市全体の
約2倍を超える率で増え続けた。IBGE(ブラジル地理統計院)の資料によれば、1950年はリオ市全体の人口
237万5千人に対してファヴェーラ人口は僅かに16万9千人であったが、1960年は330万人に対して33万5千人、
1970年は425万1千人に対して56万5千人、1980年は509万人に対して72万2千人、1991年には548万人に対して
96万2千人に増加した。
ブラジルの著名な映画監督ネルソン・ペレイラ・ドス・サントスは「新しい映画」誕生に息吹をもたらすこと
になる彼の最初の長編映画『リオ40度』(1955年)で、ファヴェーラで暮らす黒人の貧しい子どもたちの日常
生活を取りあげた。従来、美しい町並みの国際観光都市としてリオは描かれてきたが、サントス監督は、この
作品で裕福な地区と貧しい地区のコントラストを浮き彫りにした。映画のタイトルバックに、空撮によるパン
・デ・アスーカルやコパカバーナ海岸が現われ、続いて中心街の近代的なビル群の風景が展開する。そして北
地区のマラカナン・サッカー競技場へとカメラが移動し、やがて丘の斜面のファヴェーラを映して、そこを舞
台に本編が始まる。
もう1つ、2000年にリオで実際に起こった事件を取りあげた、ジョゼ・パディーリャ監督の
記録映画『バス174』(2002年)でも映画の冒頭で、大都会の貧富の格差の現実を空撮で見せている。『リオ
40度』同様、南地区の海岸線の風景から始まるが、『バス174』の空撮はイパネマやレブロン西方の海岸にせ
り出したファヴェーラから進み、丘の谷間の広大なファヴェーラのロシーニャにカメラが移動する。広大な貧民
街に隣接するモダンな植物園近くのレブロンの富者の町並みを映して、最後にパン・デ・アスーカルの遠景で終
わる。観客を驚かせるのは、貧しい地区と裕福な地区が混在する強烈なコントラストである。
このような、富者の地区と貧者の地区が混在するブラジルの旧都リオデジャネイロの低所得者層共同体、ファヴ
ェーラの誕生と形成の歴史を考察する。特に、共同体住民のルーツが、古くは解放黒人奴隷、新しくは北東部奥
地人であることに注目し、ブラジル近代化の「光と影」の展開を都市問題の面から論じる。
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