■研究計画■
平成16年度科学研究費補助金研究計画(案)
基盤研究C 現代ブラジルにおける都市問題と政治の役割
研究代表者:住田育法(京都外国語大学)
研究分担者:
田所清克(京都外国語大学)
山崎圭一(横浜国立大学)
萩原八郎(四国大学)
研究協力者:
谷口恵理(筑波大学大学院)
奥田若菜(大阪大学大学院)
その他
@ 現代ブラジルにおける都市問題と政治の役割を考察し、ブラジルの都市システムの変化と地方の社会構造を明らかにしたい。現代ブラジルの民主化の進展、とくに2003年の労働者党(PT)ルーラ大統領誕生という政治変動を基底に、新旧首都のリオデジャネイロとブラジリア、さらにこれらとライバル関係にある巨大都市サンパウロの事例を取りあげつつ、広大な空間をかかえるブラジルの都市化における社会格差の問題を考察する。総論として、ブラジル現代政治史における都市問題の展開を位置づけ、各担当者がこれまで現地調査などで蓄積してきた業績を踏まえて、情報交換、議論を積み重ね、ブラジルの都市システムの変化と現状を把握することが目的である。具体的には、旧首都リオについては、近代国家形成の首都としての役割の歴史的検討を踏まえて、ファヴェーラの問題を検証する。とくに、リオのファヴェーラの実態を調査してきた田所が、文学誌などを通して、ファヴェーラにおける富裕化の傾向や階層化の状況について追求する。新首都ブラジリアについては、フィールドワークの調査に基づいて、研究協力者が、「連邦区における社会格差と政策」の問題について情報を提供する。サンパウロに詳しい萩原は、この巨大都市の構造を、都市インフラストラクチャーと社会教育の問題から考察する。山崎はブラジルの地方財政構造の視点から、ブラジルの5千を超える大小の地方都市(市街化された小規模集住地を含む)とリオ、サンパウロ、ブラジリアなどの巨大都市との関係を相互比較の視点から追及する。住田が、中央集権から地方分権へ、国営から民営化への大きな変化の時代を迎えている現代ブラジルの政治史の立場から、担当者各自に、議論と考察の機会を作りたい。「大都市の社会変動の背後に情報化や脱工業化といった経済構造の変化が関係しているのか」、「政府の政策がどの程度住民の要求に対応できているのか」、などについても考察したい。
A 第三世界のみならず、世界の大都市にみられる貧民街(ブラジルではファヴェーラと称される)の問題は、いまや世界的な重要課題であるといえる。とくに現代ブラジルにおいては、巨大空間統合の象徴として巨大都市の整備が進められたが、同時に、地域格差と社会格差の縮図ともいえる都市貧民街の出現が、大きな問題を提示してきている。この政治、経済、社会、教育など多方面からの考察が必要な問題を、歴史学、社会学、経済学、人類学、異文化論など、人文、社会科学のさまざまな分野を専門とする複数の研究者が、学際的な作業を強く意識して、ブラジルの都市問題に取り組むことで、複雑な問題への独創的かつユニークな成果が期待できる。とくに、この研究に先立ち、2003年6月の日本ラテンアメリカ学会第24回定期大会で、このテーマについてパネルの報告を行い、さらに9月には、国際シンポジウムであるラテンアメリカ・カリブ海研究国際連盟(FIEALC)第11回大会でポルトガル語によるパネル報告をし、ブラジル人研究者から、現地調査などを踏まえた日本人の視点からの研究に、国際協力の観点からも、関心を持たれた。とくに、日本は都市の環境問題、平等な教育システムなどを解決してきた実績があり、ブラジルの都市行政に対して、有意な提言が可能ともなるであろう。個別に従来研究を進めてきた4名の研究者と2名の研究協力者が、共同研究を行うことで、新しい発見や結論が導かれることが期待される。参加者すべてがポルトガル語の運用能力に長けたメンバーであるので、インターネットを利用して、直接、容易に現地情報を得ることができるのも、今回の担当者の優れた点である。
B ブラジルにおいては、ブラジル国内の地域統合や地政学の立場からの都市問題研究は行われていたが、今日では、中央集権から地方分権への展開を受けて、貧困問題や社会格差の問題の研究が急速に進められている。とくに、現代ブラジルの民主化の進展、とくに2003年の労働者党(PT)ルーラ大統領誕生という政治変動が、こうした研究の後押しをしているといえる。日本において、学会での報告を踏まえ、都市問題の関心を持っている研究者が、共同研究の担当者として集えたことで、ブラジルの都市問題研究への進展と、新たなる問題定義が期待できるであろう。本研究で取りくむテーマは、1980年代後半に筑波大学の研究グループ(研究代表:山田睦男)による集団研究の成果(文部省科学研究費助成研究)があり、また90年代前半に一般向けの啓蒙書としてラテン・アメリカ全体の都市についての研究成果が民間出版社から刊行されている(『ラテンアメリカ 都市と社会』新評論、1991年、および『ラテンアメリカの巨大都市』二宮書店、1994年)。その後約10年になるが、ブラジルについてのまとまった共同研究の成果は、まだ出されていない。日本においては、私たちのこの共同研究が、ブラジルの都市についてもっとも新しい取組みと考えられる。
平成16年度研究計画・方法
初年度(平成16年度)は、情報収集と研究課題の同定に力点を置く。京都外国語大学において、現代ブラジル政治史における都市政策を研究してきた研究代表者の住田が、資料整理、連絡係を務め、2ヵ月に1度程度、つまり年間に4〜5回、京都もしくは横浜に集まり、具体的な研究の打合わせならびに成果の中間報告会を開く。具体的には、現代ブラジルにおける都市問題と政治の役割を考察し、ブラジルの都市システムの変化と地方の社会構造を明らかにするために、各担当者がこれまで、サンパウロやリオ、ブラジリアなどの現地調査などで蓄積してきた業績を踏まえて、情報交換を積み重ね、国内外の研究の到達点を明らかにするとともに、残された研究課題が何であるかを明確にする。その上で焦点を当てるべき課題を選び出し、共同研究の努力を集中させる。とりわけ選び出されたテーマについての情報収集と情報の共有を行う。新首都ブラジリアについては、フィールドワークの調査に基づいて、研究協力者が、「連邦区における社会格差と政策」の問題について情報を提供する。新たに関東および関西の研究機関や図書館などを利用することも進める。ブラジルのサンパウロ大学やフルミネンセ連邦大学、ブラジリア大学、カンピーナス大学などの教授たちとインターネットを利用して情報交換を行うが、インターネットに伴なう経費は、研究代表者および研究分担者が各所属する機関の機器を利用することによって、節約される。研究を進める際の主たる経費は、研究調査および研究打合せのための国内旅費である。国内の研究協力者に対して、研究会に出席のため、旅費を支給する。(以下、省略)
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