話題のブラジル映画   研究室

CORAÇÕES SUJOS  → YouTube  『汚れた心』
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■■第二次大戦後、日米の勝敗をめぐって、ブラジルの日系移民社会で起こった 悲劇、「勝ち組」「負け組」の臣道聯盟事件 を取りあげた、ブラジルのジャーナリストFernando Moraisの作品 CORAÇÕES SUJOSの映画化。
第15回プンタデルエステ国際映画祭で伊原剛志が主演男優賞を獲得!日本での公開決定!

監督の父は労働者党政権のアモリン大臣。 Vicente Amorim  Retirantes no Alvorada


CENTRAL DO BRASIL  「セントラル・ステーション」  (Central Station ) → YouTube   (異国の地 Terra Estrangeira) → YouTube

■■ 日本で公開されたブラジル映画の中からおススメ映画をクリスマスに1本だけ選ぶとすれば、この作品でしょう。 1998年のベルリン国際映画祭でグランプリの金熊賞 を獲得し、翌1999年にはアカデミー賞の外国映画部門と主演女優賞にノ ミネートされた名作です。この映画は、ブラジル人の「日常的な笑いと涙」を楽しめますので、クリスマス向き。 ☆☆☆ジョズエという男の子は最後には、父の故郷で兄弟に 迎えられます。笑い、つまり結末はハッピー。主役のフェルナンダ・モンテネグロ演ずるドーラは、大都会リオでは人を騙して暮らし ていましたが、最後は優しい女に戻り、これもハッピーエンドエンドです。そして観客の涙を誘うメロドラマの展開です。音楽が素 晴らしく、風景も美しい。音楽では、ジャケス・モレレンバウムとアントニオ・ピントの音楽編集の技が観客を魅了させます。美しい 風景は、ブラジルの誰もが懐かしく思う北東部セルタンの乾いた大地と紺碧の空です。リオで生まれ育った男の子が、同じくリオで 家族愛から見放されて孤独な生活を送っていた女から、母親として、また、ちょっぴり恋人としての愛情を受ける、というメロドラ マの設定になっています。観客の涙は、両者の思いやりを強く感じる時、その目に溢れることになります。音楽がこの涙に協力します。 特にラストシーンが終わった後、サンバ歌手カルトーラの「ぼくを行かせてくれ/行かなくては」という穏やかな歌声が聞こえてくる 構成も心憎いですね。

映画のヴァルテル・サーレス監督は、1995年にダニエラ・トーマスとの共同監督の『異国の地(Terra Estrangeira)』を制作しています。 要するに「Central Station」は、 異国を意識したうえで、ブラジル人のアイデンティティの根幹はどこにあるのか、との問いかけでも あります。その意味で、2008年に鑑賞できた
ジョアキン・ペドロ・デ・アンドラーデ監督の 『 マクナイーマ 』に通じるとこ ろもありますね。この他、過去、日本で公開された3つの名作に繋がっていることからも、監督のこのまじめな問いかけへの解答を探 す面白さがあります。それは、ネルソン・ぺレイラ・ドス・サントス監督の『乾いた人生』(1963年)、グラウベル・ローシャ監督の 『太陽の地の神と悪魔(黒い神と白い 悪魔)』 (1964年)、エクトール・バベンコ監督の『 ピショット 』(1980年)です。北東部のセルタンが舞台の『乾いた人生』と『太陽 の地の神と悪魔』は、ロケ地の風景が非常に似ているので、観客はその「シネマ・ノーヴォ」の名作との繋がりから、「ブラジルの 中枢」は北東部のセルタンにあるとの答えを確認できるのです。そして、『ピショット』では、大都会を舞台に、ハッピーではない 大人や子供の人生模様が展開し、ちょうど、『セントラル・ステーション』と対極の立場を見せています。都会で大人たちに騙され る男の子ピショットを描いた『ピショット』で男の子は、暴力と違法行為が日常化した出口のない環境の中で殺人を犯し、売春婦 スエリには母親としての甘えを求めるが拒絶され、ひとりぼっちの救いのない結末を迎えます。興味深いのは、この売春婦は、『セン トラル・ステーション』でドーラの友人イレーネ役を務めるマリリア・ベーラです。もうひとつ、キャストに一致が見られます。 それは、『セントラル・ステーション』のトラック運転手役のオトン・バストスは、グラウベル・ローシャ監督の『太陽の地の神と 悪魔』で用心棒に殺される匪賊のカンガセイロです。ブラジルの中枢であると同時に、ブラジル映画の中枢をも楽しめること請け 合いです。

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ORFEU NEGRO  「黒いオルフェ」  Manhã de carnaval → YouTube 

モンテヴェルディ『オルフェオ』(7/12) → YouTube

■■ カーニバル時のリオのファヴェーラを舞台にした、フランス人マルセル・カミュ監督による、ブラジルとフランスの 合作映画です。1959年にカンヌ国際映画祭でグランプリ、アカデミー賞で外国映画賞を獲得し、 国際的に高い評価 を得ています。しかし、私の友人であるリオの映画関係者たちの評価はあまり高くはありません。 ネルソン・ペレイラ・ドス・サントス監督の映画『リオ40度』のビデオ作品を鑑賞した後、この『黒い オルフェ』(1959年)のポルトガル語版を久しぶりにDVDで見ました。興味深いのは、未だ、本格的なファヴェーラはなかった バビロニアの丘をロケ地(写真)としていることです。丘の南西はコパカバーナ海岸、東はパン・デ・アスーカル、 北西にはコルコバードの丘、その手前の眼下にはヨットの浮かんだフラメンゴ海岸を臨めます。それだけに、作りものの 嘘っぽさも感じられますが、公開当時、世界中の映画館で観客は、素敵なリオの観光地の風景を味わいながら映画を楽し めたことでしょう。
 現在のカーニバル会場とは違って、 リオブランコ通りで行なわれたカーニバルのパレードには、主人公たちのバビロニアチームの直前が有名なポルテーラでした。 字幕のないポルトガル語で鑑賞しましたが、おしゃべりの言葉にはきついスラングも訛りもなく、とてもシンプルです。 分かりやすい言葉と、ボサノバの心地よい音楽を聴きながら、ポルトガル語初級会話の学習もできる作品ですね。 風景には市電の通るラパや南と北を結ぶトンネル、市立劇場前のシネランジアなどが登場しますし、黒人宗教や リオとニテロイを結ぶ渡し船など、観光の目玉のオンパレードといった感じです。 外国人には面白いかもしれませんが、カリオカにはちょっと「やり過ぎ」といった印象を持たせるかもしれません。
 なお写真(左)は、1885年に著名な写真家Marc Ferrezが撮影したものです。もう1つの写真(右 筆者撮影) はマラカナンから眺めたリオ北地区の風景です。丘の麓にファヴェーラが広がっています。
 
バビロニアの丘  リオ北地区の丘


「黒いオルフェ」のDVD入手! 字幕は日本語。
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ORFEU  「オルフェ」  2007年リオの カーニバル

■■リオのカーニバル、今年2007年のパレードは、2月18日と19日。世界最高の艶やかなファンタジーに 向けてリオの街があわただしく準備を整える中、僅かに胸のときめきを覚えながら、カルロス(カカ)・デ ィエーゲス監督の『オルフェ』(1999年)を見ました。貧者の共同体、つまりファベーラで生まれ育った若者が、共同体の内や外で 有名になるためには、映画の主人公オルフェのように、歌やスポーツで秀でた才能を発揮するか、あるいは麻薬密売人のボスとして 警察に目をつけられながらも、ルシーニョのように、皆から恐れられ、一目置かれた存在になるか、このいずれかでしょう。 幼友達である、オルフェとルシーニョという、ファベーラのふたりの英雄が繰り広げる、愛と憎しみの死闘。恋人を殺された オルフェがルシーニョを殺し、オルフェは、彼を熱愛し嫉妬した女に殺され、その血の惨劇の傍のテレビが、 カーニバルのパレードで華やかに歌い踊る幸せなオルフェの姿を放送する。。。リオの今のファベーラを描くにはこれしかない と思わせる、極上の作品です。オペラ『オルフェオ』の世界に重ねて鑑賞すると、楽しみはさらにアップするでしょう! しかし、映像の世界に夢を求め、ゆったりとボサノバを楽しみたいのであれば、『黒いオルフェ』 (1959年)のほうがおススメ!

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MUTUM: Adaptado da obra "Campo Geral" de João Guimarães Rosa  「ムトゥン〜今を生きる」  (Mutum) → YouTube  

■■ブラジル内陸部ミナスジェライスの豊かな牧場の自然を堪能できる、素晴らしい作品です。 キーワードはセルタンと呼ぶ奥地、少年のまなざし、家族愛、酪農文化などでしょうか。ブラジル映画祭2010では観ることができなかった のですが、2011年5月の連休を利用して、ブラジル人の友人に貰ったばかりのDVD(2007年)でゆっくり鑑賞しました。 過去にも、「セルタンの夜」や「第三の岸辺」で、ギマランエス・ローザの作品を利用して、ミナスジェライスの 人や自然を描いた映画を楽しんだことがあります。「セルトンの夜」は、女優デボラ・ブロッシの魅力やトニー・ハモスの 演技、ミルトン・ナシメントの歌声が印象に残っています。「第三の岸辺」は2010年春のネルソン・ペレイラ・ドス・サントス 監督入洛のおりに、監督の解説を参考にしながら観ています。 今回の「ムトゥン」は映画出演のこどもたちを、ちょうど「シティ・オブ・ゴッド」のように、公開オーディションで募集して 彼らに演じさせていますので、臨場感あふれる風景同様に、地元のこどもたちの表情も映画のリアリティを高めています。 まず千人を受けつけ、その中から25人を選び、最後に数名に絞っていったそうです。視覚、聴覚、そして心のひだを全開にして、 新進気鋭のリオ生まれの女性監督サンドラ・コグッチのリアリズムの 世界に没頭しました。 ベルリン映画祭に招待されて「なぜ、汚くて貧しい田舎に住むのか」と問われたとき、「動物や自然、牧童の生活が好きだから」 と答え、今後も故郷で牧童として生活したい、と主役のこどもが述べたそうです。彼らの素朴なしぐさは、日本人のわたしにも、 もう戻れない過ぎ去った日々への郷愁を感じさせます。雷雨、木々を揺らす風、虫や鳥の鳴き声、そして 牛や犬の吠え声なども、国や時代を超えて、わたしたちをなごませてくれます。ブラジル人には牧畜、わたしたち には稲作の文化でしょうか。

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PORTUGUÊS: A LÍNGUA DO BRASIL 「ポルトガル語―ブラジルのことば」

■■ 映画人としてはじめてブラジル文学アカデミー会員に選ばれたネルソン・ペレイラ・ドス・サントス監督が、 ブラジルの知を代表するアカデミーの会員たちに「ポルトガル語」についてインタビューをした記録映画です。 文法学者や詩人、作家、民族学者たちの自信に満ちたおしゃべりを楽しめます。 Marcos Viníus Vilaça、Alberto da Costa e Silva、Evanildo Bechara、 Ana Maria Machado、Lôdo Ivo、Moacyr Scliar、Afonso Arinos, filho、 Arnaldo Niskier、Ivan Junqueira、Domício Proença Filho、 Cícero Sandroni、Sérgio Paulo Rouanet、 José Sarney、Antonio Carlos Secchin、João Ubaldo Ribeiro、 Ariano Suassuna、Nélida Piñonらの皆さんが熱く語っています。DVD制作は2008年。 ラストシーンは、 2007年 リオのカーニバルのマンゲイラチームのテーマ曲を歌う様子です。ポルトガル語のテーマ曲を紹介しましょう。

"Minha pátria é minha língua, Mangueira meu grande amor. Meu samba vai ao Lácio e colhe a última flor"

Quem sou eu
Tenho a mais bela maneira de expressar
Sou Mangueira... Uma poesia singular
Fui ao L&aeacute;cio e nos meus versos canto a última flor
Que espalhou por vários continentes
Um manancial de amor
Caravelas ao mar partiram
Por destino encontraram o Brasil...
Nos trazendo a maior riqueza
A nossa língua portuguesa
Se misturou com o tupi, "tupinambrasileirou"
Mais tarde o canto do negro ecoou
Assim a língua se modificou

Eu vou dos versos de Camões
Às folhas secas caidas de Mangueira
É chama eterna, dom da criação
Que fala ao pulsar do coração

Cantando eu vou
Do Oiapoque ao Chuí ouvir
A minha pátria é minha língua
Idolatrada obra-prima te faço imortal
Salve... Poetas e compositores
Salve também os escritores
Que enriqueceram a tua história
Ó meu Brasil
Dos filhos deste solo és mãe gentil
Hoje a herança portuguesa nos conduz

Na Estação da Luz

Vem no vira da Mangueira vem sambar
Meu idioma tem o dom de transformar
Faz do Palácio do Samba uma casa portuguesa
É uma casa portuguesa com certeza

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TROPA DE ELITE  エリート・スクワッド  Trailer Oficial → YouTube

※2008年2月ベルリン国際映画祭で 金熊賞を獲得! 

■■応援しているチームが逆転さよならホームランで勝ってくれ たような痛快な気分になれる映画です。打ち負かす相手は、弱い者いじめの麻薬の売人。ホームランをかっ飛 ばしてくれたのは、ちょうど幕末の新撰組のように、エリートたちからは馬鹿にされている、ハングリー精神 丸出しの軍警察特殊部隊の若者たち。超まじめなブラジルの若者を描いています。音楽も素晴らしい!

2007年10月にブラジルで劇場公開。 ドキュメンタリー映画『バス174』のジョゼ・パディーリャ(José Padilha)監督の作品です。しかし 今回のものは、あくまでもフィクション。 映画の舞台のリオは、「麗しの都市」と称えられた国際観光都市ですが、富者の地区と貧者の 地区が混在するブラジルの古都。ファヴェーラと呼ばれる低所得者層共同体の数が、リオのみで 700以上に 達しています。この住民のルーツは、古くは解放された黒人奴隷、新しくは北東部奥地からのデカセギ者。 素朴な彼らの生活空間がなぜ危険地帯となっているかと言えば、武装した凶悪な麻薬の売人たちが生活の拠 点にしているからです。 さらに、その麻薬の売人の重要な顧客は、貧しい共同体の住人ではなく、その外の裕福な人たち。 ともあれ、共同体の麻薬売人たちの生活を描き、ファヴェーラの住人の生活には直接、触れていない 『シティ・オブ・ゴッド』と、共同体住民の普段の生活に焦点をあて、麻薬売人の生活はベールに包んだ 『シダーデ・ドス・オーメンス』、さらに共同体住人の立場を丁寧に示しながら貧富の格差を告発した 『バス174』の3つの作品に対置させて、この
『TROPA DE ELITE』 を見ると、ブラジル社会の光と影の現実が少し分かったような気がします。

興味深いのは、この映画の登場人物の多くが白人であること。しかし、ラストシーンで北東部出身の 麻薬売人バイアーノを殺し、幼友達である仲間ネトの仇を討つのは、貧民街の貧しい家族出身の 黒人マティアス。この黒人はリオの有名大学法学部の優秀な学生。人種差別と階級格差の激しい不平等社会で、黒人であり 貧者であるという二重のハンディを負った彼が、白人のクラスメイトに囲まれた教室で 「リオ南地区の金持ちには貧民街の実態は分からないだろう。僕の友人には真面目な警官も いる」と主張する場面は、説得力がありますね。 映画の主役はローマ法王のリオ訪問を前 に治安の維持を任された BOPE (Batalhão de Operações Policiais Especiais)というリオ州軍警察特殊部隊の ナシメント大尉。司法省取締局の捜査官とシカゴギャングとの闘いを描いた『アンタッチャブル』や辣腕刑事が活躍する 『ダーティハリー』の「現代ブラジル版」のような印象も持ちました。ともかく、観客に対する娯楽性も織り 込んだフィクション。それは、目には目を、歯には歯の、究極の勧善懲悪の物語。。。それもBOPEが善で、 麻薬の売人が悪。銃撃戦では、悪のほうがどんどん弾にあたって死ぬが、BOPEのほうは大丈夫という、 ちょっとマンガチックな描き方にもなっています。
 ※当然、BOPE(リオ州軍警察特殊部隊)を英雄として扱いすぎているの、との批判もあります。


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TROPA DE ELITE 2  「エリート・スクワッド ブラジル特殊部隊BOPE


※2011年2月ベルリン国際映画祭のパノラマ部門で 公開され、喝采を博したそうです。 2010年10月8日からブラジルで劇場公開、空前の観客動員数を記録!

■■偶然、同時テロから10年を迎え、全米各地で追悼式典が開かれている 2011年9月11日に、ブラジルで購入したDVDで鑑賞しました。 1作目同様、2016年に夏季オリンピックが開催される予定のリオが舞台です。 しかし、正義感に燃えた若い白人特殊部隊BOPE(リオ州軍警察特殊部隊)隊員 の姿を単純に正当化していた前作と違って、コミュニティー(貧民街、リオではファヴェラという呼称 は敬遠され、丘を意味するモーロやコミュニティー、つまりコムニダーデが好まれます)に住む凶悪な 麻薬犯を日常的に銃殺する軍警察や選挙のために彼らを利用する政治家たちも 懲らしめるべき悪として描いています。 貧民街の貧しい家族出身の黒人BOPE隊員マティアスが 軍警察に殺されますが、 麻薬犯を装った警察官が、警察署を襲って銃を奪い、これを貧民街の仕業と 虚偽の報告をして、貧民街の掃討作戦に参加したマティアスが、悪徳軍警察 に殺害されるというもの。掃討作戦は選挙を控えた知事や州議会議員が宣伝のために 仕組んだもの。この仕組みに気づいた軍警察中佐の主人公ナシメントはこの作戦を 「イラク作戦」と呼びます。大量破壊兵器があると誤解して開始したイラク戦争になぞらえた 批判でしょう。

離婚したナシメントの別れた妻との間の息子に示す 父子愛もポイントです。 カトリックの影響で近年に至るまで民法で離婚が認められていなかった ブラジル社会では、正式の結婚をしないで家族を持つ習慣がふつうにみら れたようですが、別れた妻と、その新しい夫を交えてひんぱんに付き合う 姿勢には、異文化を感じます。 1作目のとき誕生した息子は10歳になっています。 殺人を日常の仕事としている父への厳しい目をうまく取りあげています。 最愛の息子は報道が伝える軍警察批判を受けいれて、父の職業を拒否しますが、やがて 軍警察のトラブルに巻き込まれて銃撃を受け、生命の危険にさらされます。 その生死の結末がラストシーンとなっています。危機を脱して目を開け、一命を取りとめる。。。

警察と政治家の癒着の秘密を暴くための取材中に不運にも殺された女性記者 に対する証拠隠滅のための場面は実にリアル。。。 ネルソン・ペレイラ・ドス・サントス監督が彼の作品『ブラジリア18%』で遺体が行方不明になる物語 について「ブラジルでは遺体が永遠に消える場合がある」と説明してくれたおしゃべりを思い出しました。 警察を警察が懲らしめ、政治家を議会調査委員会(CPI)が裁き、 報道機関がこれを世に明かす、という図式をたくみに描写しています。 リオが舞台の映画ですが、 政治が犯罪を利用する腐敗の仕組みを嘆くナシメントの語りとともに、 首都ブラジリアの国会議事堂と国旗掲揚ポールが映し出されます。 善くするには時間もかかり犠牲を強いると。。。 「シティ・オブ・ゴッド」の最後に、悪の主役が交代する場面を見せていますが、 この映画でも、悪い警察官が殺され、新しく別の警察官が悪のリーターとして登場します。 正義の味方ナシメントへの期待が観客の心の中で高まるという仕掛けですね。監督は ÔNIBUS 174 のジョゼ・パディーリャ(José Padilha)。

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VIDAS SECAS 「乾いた人生」 (Vidas Secas) → YouTube

■■ 2010年3月、ネルソン・ペレイラ・ドス・サントス監督の『乾いた人生』(1963年)を大学所蔵のビデオで ひさしぶりに丁寧に鑑賞しました。 文学作品の映画化ですが、台詞はあまりありません。すばらしい映像と音によって、原作者 グラシリアーノ・ラモスの世界を味わうことができます。乾いた、白っぽい、セルタンの大地に 生きる倹しい一家の物語です。主なキャストは、 主役の牧童ファビアーノ(Átila Iório)、妻シニャ・ヴィトーリア ( Maria Ribeiro)、 悪徳地主 ( Jofre Soares )、 そして、2人の兄弟(Genivaldo Lima, Gilvan Lima)です。

「新しい映画」  キューバ革命を経験したラテンアメリカの映画界は、政治と結びつくことにより、フランスのヌーヴェル・ バーグやイタリアのネオリベラリズムに呼応する新たな展開を示すことになった。それは国境を越える 新しいラテンアメリカ映画の誕生であった。ブラジルでも、60年代、社会・経済的な発展途上の現実や 独創的な文化の欠如という新植民地主義を憂えた若い映画人たちが、「新しい映画」を起こした。 それは、ハリウッドによる市場の寡占状態に対抗する、低予算、奥地や街角のロケ、素人の出演者など いまだ「発展途上」の手段による創作活動であった。ブラジルの「新しい映画」は三つの時期に分けられる。 第一期は、ブラジリアが生まれた1960年から軍部によるクーデターの64年までである。国家プロジェクトに よる開発優先主義が生んだ豊かな社会の一方で、飢えや暴力などに苦しむ貧しい社会の現実が問題と なり始めた時代であった。この時期の代表的作品は、グラシリアーノ・ラモスの小説を映画化した ネルソン・ペレイラ・ドス・サントス監督の『乾いた人生』(1963年)......などである。 (住田「ブラジルの映画」、富野・住田共編著『ブラジル学を学ぶ人のために』世界思想社、2002年8月、160-161頁より)

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MANDACARU VERMELHO 「赤いハシラサボテン」

■■ ネルソン・ペレイラ・ドス・サントス監督が主役で登場する『赤いハシラサボテン』(1961年)を大学所蔵のビデオで 2010年3月に見ました。『乾いた人生』の撮影を予定していたものの、ロケ地に予想以上の雨が降り、カアチンガが 緑の風景になってしまったため、ウエスタン(western)ならぬノルデスタン(nordestern)たる本作品を作ったのだそうです。 ストーリーは、女農場主が面倒を見ている、婚約者のいる美しい孤児と、ネルソン演じる農場に住む若者が恋に落ち、 駆落ちするというもの。ネルソン監督の若かりし頃の 映像 を楽しめます。

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RIO 40 GRAUS 「リオ40度」

■■ 2010年春、ネルソン・ペレイラ・ドス・サントス監督の『リオ40度』(1955年)を本学所蔵の ビデオで鑑賞しました。これは同監督最初の長編映画です。それまでリオは、瀟洒な町並の国際観光都市 として描かれる傾向にありましたが、ファヴェーラで生活する黒人の子どもたちの日常生活を取りあげ たことで、1960年代に起こる「新しい映画」に誕生の息吹をもたらしたのです。
 面倒な理屈はともかく、この映画の魅力は、カーニバルの華である素敵なサンバチーム、ポルテーラ の歌声、踊りの楽しさですね。 (Rio 40 graus) → YouTube 

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TERCEIRA MARGEM DO RIO 「第三の岸辺」

■■ F1ドライバーのアイルトン・セナが没した1994年に、その死を悼むかのように、容貌がセナに似た俳優 イラ・サン・パウロ演じる「第三の岸辺」が劇場公開されました。内陸部ミナスジェライス出身の作家ジョ アン・ギマランエス・ローザ(João Guimarães Rosa、1908〜1967年)の文学作品を利用 して、日本で言えば「お彼岸」を暗示させる、ブラジル民衆の死と生の係わりを描いています。 ミナスジェライスにはゴールドラッシュで栄えた18世紀に、鉱山労働のため大量の黒人奴隷が導入されまし た。そのため、肌の色や民衆の宗教心などに、アフリカの影響が残っています。映画の舞台はミナスジェ ライスのさらに奥地のブラジリアの衛星都市ですが、リオのサンバチームが登場するなど、 異種混淆の世界を連想させます。黒人歌手 ミルトン・ナシメント の曲が素敵です。

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ネルソン・ペレイラ監督が2010年 5月15日(土)から23日(日)まで奥様と京都に滞在。2011年8月、筆者はリオで再会。

                      ← 写真(筆者撮影)
  「映画になったブラジル文学」  映画上映 → 京都 東京  監督自宅の窓からの 風景



GUERRA DE CANUDOS  「カヌードス戦争」(1997年) 
  (Guerra de Canudos) → YouTube 1  2  3  4  5  6  7  8  9  10  11  12  13  14  15  16  17  18 

■■2011年5月、3時間近くに及ぶ長編映画を、久しぶりにゆっくりとDVDで鑑賞しました。19世紀末の ブラジル北東部内陸部の庶民の生活をいきいきと描いています。 アジアでは日清戦争が終わったころです。

活字を追って原作を読み始めたのですが、映像の助けを借りると、百聞は一見に如かずの例えどおり、 「カヌードス戦争」の真相にたやすく迫ることができます。 ブラジル史を学ぶためには、とても参考になる大作です。

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MACUNAÍMA  「マクナイーマ」  マクナイーマ → YouTube  

■■ 2011年2月20日の日曜日、 京都 で上映されたマクナイーマを観ました。これまで何度も、ビデオやDVDで鑑賞していますが、映画館ははじめてです。 大きな美しい画面と迫力ある音響、ジョアキン・ペドロ・デ・アンドラーデ監督の世界を堪能しました。最初に公開された 1969年は、ちょうど悪名高い軍政令5号布告(1968年12月)の直後。厳しい軍部の検閲をかわすためにも文学作品を利用した 徹底したメタファーが必要とされたのでしょう。観客としては、製作者の命をかけた隠喩表現の凄さをを楽しめます。ブラ ジル映画界を代表する男優グランデ・オテーロとパウロ・ジョゼの演技が光っています。現在のブラジル映画界の重鎮ミル トン・ゴンサルヴェスの若き姿も面白い!何度観ても、満足できます。1988年の民主憲法によって作品が検閲から解放され る直前、監督は肺癌で亡くなりました。今、わたしたちはノーカットの作品を鑑賞できます。

ルラは、2002年の選挙演説の中で、「私は敵を作りたくないから、善悪を明示するような議論はおこないたくな い」と述べていた。近寄ってくれば、誰にでも抱擁をして、親愛の情を見せ、優柔不断だと批判されても、特に 仲間はずれを作ろうとしない態度である。今、ヴァルガス時代を含めて20世紀の政治史を鳥瞰し、「ブラジリダーデ」 の文化的性格に重ねてポピュリズムを考えるとき、近 代主義者の マーリオ・デ・アンドラデ (生1893-没1945年)の描いた『マクナイーマ』 の世界が記憶の底に張りついて消えようとしな い。ブラジル文化の形成過程を、人種混交によって説明する言説 を越えて、カニバリズムを隠喩に用いて、人肉を喰い、血肉とする ごとくに異種混交を果たすブラジル文化のあり方を描いていることに対してである。それは、「ブラジル文化への痛烈な風刺」 でもあ るが、同時に、そのような異種混交文化への、強い共感を、アンドラデが示していたともいえよう。映画『マクナイーマ』 (1968年)と小説『マクナイーマ』(1928年)を改めて鑑賞することで、筆者はその思いを強くした。 (住田「民衆文化と政治」富野『グローバル化時代のブラジルの実像と未来』 (南山大学ラテンアメリカ研究センター研究シリーズ 2) 行路社、2008年4月、第10章より)

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LULA - O FILHO DO BRASIL  「ルラ、ブラジルの息子」

オスカー を競う来年のアカデミー賞の外国映画部門にブラジル代表としてエントリーすることが決定!

■■ 2010年9月21日(火)に京都市内の京都駅「駅ビルシネマ」で見ました。 極貧の中から、母親の愛情に包まれて成長し、やがてブラジルの大統領に選ばれた人物の魅力の 背景がよく理解できます。1995年のブラジル映画「O QUATRILHO」と同じファビオ・バレット監督 の作品です。ルラの母親役のグローリア・ピレスはこの映画「O QUATRILHO」にも出ていますが、彼女と 「ルラ、ブラジルの息子」でルラの最初の妻を演じている女優は、本当の親子です。

ルラで始まったABCパウリスタ地区の労働運動が今、ブラジルという国家の国際舞台における 政治的、経済的な役割の高まりの中で、新しい展開を迎えています。ストライキと賃上げ要求だ けの運動の時代は終わり、労使の交渉はより効率的な方法を求められています。従来の法制の中 に「ブラジル・コスト」と呼びうる非効率性が見られるのであれば、十分に検討し、これを改 善することも必要でしょう。さらに整備が求められているのは、都会のファヴェーラの住人た ちや農村の土地なし農民のような貧困層に対する権利の保障です。 これらすべてに挑戦したのが、ルラだったのです。2010年10月、決選投票となった大統領選挙で、ルラの後継者 である赤いシンボルカラーの労働者党(PT)ディルマ・ルセフが勝ち、ブラジル史上はじめて女性の大統領が 誕生しました。

▲「ルラ、ブラジルの息子」を理解するために、2002年のルラの選挙運動の記録映画 『 Entreatos(幕間)』が参考になります。


SOBREVIVENTES - FILHOS DA GUERRA DE CANUDOS  「生存者―カヌードス戦争の子ら」(1997年)   

(SOBREVIVENTES) → YouTube

■■2004年に公開された、パウロ・フォンテネレ監督のドキュメンタリー作品です。 インタビューに基づく映像の記録には説得力があります。 ブラジルの友人にDVDを借りて見ましたが、奥地文化のエネルギーを体感できる76分間となりました。


OS ANOS JK: UMA TRAJETÓRIA POLÍTICA  「JKの歳月―ある政治の軌跡」  Peixe Vivo → YouTube  

■■ ジョン・F.ケネディーの時代に活躍し、新首都ブラジリアの建設を実現した 大統領として知られるジュセリーノ・クビシェッキを描いたドキュメンタリーです。1964年の 軍事クーデターにより公民権をはく奪されて亡命。1967年に帰国しますが、軍事政権下の ブラジルに活躍する場はなく、ボサノヴァの大統領として国民に慕われたその生涯を1976年8月に 交通事故によって閉じます。DVDで鑑賞。

「Os anos JK: uma trajetória política」のDVD入手!  字幕はポルトガル語、英語、スペイン語、フランス語など。


グラウベル・ロッシャ監督の世界を楽しむ
■■ブラジルでグローボTVのドラマ「すばらしきコルデル( Cordel Encantado )」が2011年4月11日からスタート。 『太陽の地の神と悪魔』(1964年)と『アントニオ・ダス・モル テス(聖戦士に対する悪しき竜)』(1969年)は、ブラジルの北東部地方の民衆詩人たちの作品コルデルを モチーフにしています。桜の季節のいま、改めて鬼才ロッシャの作品を鑑賞しながら、素朴なブラジル民衆のこころの 世界を遊んでみましょう。

2008年8月〜9月のブラジル滞在中に筆者は、 イズマエル・シャビエル教授 ら「グラウベル・ロッシャ研究者」数名にお会い する機会に恵まれ、さらにDVDも入手できました。2009年8月にはリオで90歳になるグラウベル・ロッシャ のお母様にお会いしました。

グラウベル・ロッシャ監督の世界  グラウベル・ロッシャ監督の 『太陽の地の神と悪魔』(1964年)と『狂乱の大地』(1967年)の始まり のシーンが印象的である。(中略)『太陽の地の神と悪魔』の続編とされる『アントニオ・ダス・モル テス(聖戦士に対する悪しき竜)』(1969年)は、カラー作品であり、北東部奥地の絵画的な風景や 色彩豊かな人びとの衣裳、さらにフォークローレなどを堪能できる内容になっているが、軍政の検閲 をかわすために、『狂乱の大地』に比べて、極めて婉曲な表現になっている。しかし...... (住田「ブラジルの映画」、 富野・住田共編著『ブラジル学を学ぶ人のために』世界思想社、2002年8月、167-168頁より)

作品をDVDで鑑賞!
DEUS E O DIABO NA TERRA DO SOL  「太陽の地の神と悪魔(黒い神と白い悪魔)」(1964年) YouTube

■■2007年3月、サンパウロ大学コミュニケーション芸術学部から招聘教員として来日していたブラジル人 のアヴァンシニ先生が、帰国の際、この作品のDVDを譲ってくれました。すでに、大学所蔵のビデオで数十回見ていますが、 ビデオテープが劣化しているため、画像が乱れていました。改めて、ヴィラ・ロボス(Villa-Lobos, Heitor) の映画音楽をバックに、 鮮明な映像の グラウベル・ローシャ 監督作品を鑑賞し、感激しています。「忙中閑」の楽しみが増えました。 さらに何度も見ることに。。。

「Deus e o Diabo na Terra do Sol」のDVD入手! 字幕は、英語、フランス語、スペイン語。


TERRA EM TRANSE   「狂乱の大地」(1967年)  (Terra em Transe) → YouTube 

■■『狂乱の大地』は、『太陽の地の神と悪魔』同様、グラウベル・ロッシャ監督の白黒作品です。『太陽の地の神と悪魔』の タイトルバックは乾燥した北東部地方の大地の風景ですが、『狂乱の大地』では空から眺めた海の風景です。 映像は、太陽を反射した海から、やがてとある大陸の海岸線へと導かれていきます。採用されている音楽は、 黒人宗教カンドンブレの儀式の歌と太鼓の演奏です。今、作品を見て興味深いのは、検閲の強化された軍政下の 制作であったので、狂った架空の国がブラジルではないことを理解させるのに工夫を凝らしていることです。その上、 フランスのカンヌ映画祭で受賞したため、DVDで紹介されている後日譚も参考になります。私にとっては、 友人のジョゼ・マリーニョさんが若い民衆のひとりとして出演していることです。 口を塞がれる(YouTubeの映像参照)のネクタイをした人物です。

2009年8月にリオのウルカの友人宅で マリーニョさんご夫妻やシャビエル教授ご夫妻らといっしょに食事をしました。

ともあれ、民衆のための政治と軍部 による権威主義の政治との対立の構図への寓意がこめられているこの作品には、監督の反骨精神が感じとれます。 黄金郷という名の架空の国で、ポピュリズムの政府が軍の圧力によって崩壊の危機にある場面から映画が始まり、 統治者に武器をもって闘うことをせまる詩人の、過去への回想という形式で物語が展開します。回想は、「発見」 のミサにまで遡るブラジルの歴史へと重なります。監督が詩人に託したメッセージは、「ブラジルはいつも、流血を 強いる支配者、資本家、聖職者らが民衆を犠牲にして統治を行ってきたが、悲惨な現実はいっこ うに解決しない。したがって、革命のため、民衆が武器を手に闘うしかないが、結果は、惨めな敗北となる」、とい うものです。映画の最初に流れた黒人宗教カンドンブレの儀式の歌と太鼓の演奏が、最後の場面 で再び聞こえてきますが、それは「狂乱の大地はいつまでも同じだ」という暗示になっているようです。ちなみに 監督は、軍事政権の終焉を見ることなく没しています。
 白黒の映像のひとつひとつがとてもきれいです!

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O DRAGÃO DA MALDADE CONTRA O SANTO GUERREIRO  
「アントニオ・ダス・モル テス(聖戦士に対する悪しき竜)」(1969年) 
CINEMA FALADOで聴くサンパウロのジャーナリストLuciano Ramosの 解説

■■サンパウロのサンバ「 Volta por cima」がストーリーの展開を助けています。この曲のあと、ひ弱な教員が銃を手に、 地主に雇われた用心棒(ジャグンソ)たちへの大攻勢をしかけるのです。

白黒作品の『狂乱の大地』や『太陽の地の神と悪魔』と違って『アントニオ・ダス・モルテス(聖戦士に対 する悪しき竜)』(1969年)は、グラウベル・ロッシャ監督のカラー作品です。そのため、北東部奥地の絵画的な風景や 色彩豊かな人びとの衣裳、さらにフォルクローレの唄などを堪能できる内容になっています。とくに、軍政の検閲をかわすために、 寓意がこめられた婉曲な表現となっています。結果として、この曖昧さゆえに、ブラジル社会の抱える多元 性や移動性を描いているといえます。地主に雇われた用心棒(ジャグンソ)が匪賊(カンガセイロ)に変身し得るし、 その逆もあるのです。伝統的な支配者である地主が民衆に勝利することもあるし、土地を持たない民衆が地 主に勝利することもあります。映画の最後で勝利するのは、奴隷のような立場の黒人の聖戦士であり、 成敗されたのは悪しき竜たる地主ですが、竜は「軍政」を連想させます。

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O MISTÉRIO DO SAMBA  「長老たちのサンバ」  YouTube 

■■2011年のリオのカーニバルの行進は、3月6日(日)と 7日(月)。 ポルテーラは2日目です。このポルテーラ の長老たちの人間味あふれるおしゃべりとサンバの温もりが凝縮された映画「ミステリー・オブ・サンバ〜眠 れる音源を求めて」の主題歌「Coração em Desalinho(乱れる恋心)」を、 始まったばかりのグローボTVの ドラマ 「Insensato Coração(痴人の恋心)」 でも マリア・ヒタが歌っています。  YouTube 
 2009年秋の連休日曜日(10月11日)、ブラジルでは聖母マリア・アパレシーダの 前日、大阪の 「シネ・ヌーヴォ」(西区九条1-20-24)で、ブラジルの友人たちと ブラジル映画祭2009の作品となっているこの映画を鑑賞しました。 見た後しばらく、感動の余韻が残っていました。大好きなリオの、大好きな カーニバルのサンバの世界をとことん味わうことができました。最近はよくDVDで映画を鑑賞しますが、 映画館は最高ですね!仲間といっしょに、ため息や共感の咳払いを感じながら楽しみました。 ちなみにサンバの長老ピシンギーニャの貴重な映像(1954年)は こちらへ。

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Os Famosos e os Duendes da Morte
「名前のない少年、脚のない少女」 2011年3月から日本で劇場公開!
(Os Famosos e os Duendes da Morte) → YouTube  

■■ 2010年に「ブラジル映画祭 2010」で 公開された作品。 監督エズミール・フィーリョ(Esmir Filho)はサンパウロ大学出身の新進気鋭の映画人。おしゃべりもおもしろい! →   YouTube  


ABRIL DESPEDAÇADO (Behind the Sun) 「ビハインド・ザ・サン」

■■ 2005年2月11日(金)に京都市内の映画館で見てからDVDを手に入れ、ブラジルの北東部が舞台の ヴァルテル・ サーレス監督のこの映画を繰りかえし楽しんでいます。 月夜の風景が多いからでしょうか。神秘的な気分にさせてくれる、悲しく、美しく、また感動的な作品です。 ただし、映画が描いている世界は、「ブラジル」ではなく、 『聖書』に現われるようなイスラムやアラブ の世界を連想させますね。原案がアルバニア人 作家 のものだからでしょう。 グラウベル・ローシャの作品でも、 「目には目を、歯には歯を」と匪賊が語る場面がありますが、 敵が味方に、味方が敵にと、カーニバル の夜のように複雑に「混交」を進めるのが「ブラジル」社会です。もちろん、 「新世界」たるブラジルは「旧世界」を映すい わば鏡ですから、当然、イスラエルとパレスチナの争いを思わせるような出来事もあるのでしょう。しかしこの映画の場合、 「フィクション」、「おとぎ話」などがキーワードでは。。。ともあれ、トーニョ役のロドリゴ・サントロはもちろん、サーカ ス団の専属団員の経験のあるクララ役のフラヴィア・マルコ・アントーニオがとても魅力的です。 この作品が映画初出演という子供役のレヴィ・ラモス・ラセルダもいいですね。繰りかえし見ながら 思うのですが、パクーという名をもらったこの子供の運命は、ブラジル史における黒人奴隷の 子孫たちの運命に重なって見えるのですが、いかがでしょうか。両親や兄たちとは、顔つきが明らかに違 っているので、「養子」のはず。同じ家族の一員でありながら、積極的に兄の犠牲となったその姿勢が、 同じブラジル人でありながら、水も電気も満足に利用できない貧困層の共同体に住み、最低賃金以下の 仕事に従事している大量の肌の色の黒い人たちの日常に似ているような。。。

北東部が舞台の作品は、 『野生の男』という題で、1950年代に日本で劇場公開されたリマ・バレット監督の『匪賊(カンガセイロ)』 (1952年)や「新しい映画」の開始を告げたネルソン・ペレイラ・ドス・サントス監督の『乾いた人生』(1963年)、 グラウベル・ローシャ 監督の『太陽の地の神と悪魔』(1964年)、この続編とされる『アントニオ・ダス・モルテス (聖戦士に対する悪しき竜)』(1969年)などが有名です。

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ÔNIBUS 174  「バス174」 

■■2005年4月に、ブラジル人から借りたビデオで見ました。2000年6月に、リオ市のセントラル駅と南地区ガーヴェアを結ぶ174系統バスが、植物園の近くに差しかかった とき、 実際に起こった事件を取りあげた、すばらしい記録映画(2002年)です。 初挑戦のジョゼ・パディーリャ監督が、現場で撮影したニュース映像と関係者へのインタビューなどを組み合わせて、 臨場感に満ちた作品に仕立てています。異種混淆社会のブラジルの人たちの、人間味溢れる優しい気持ちを、映画を見る 人に丁寧に示しています。バスの行き先が、あの映画「セントラルステーション」のポルトガル語表記の「CENTRAL」と なっていて、フェルナンダ・モンテネグロ主演の映画が思い出されました。あまりに感動して、2時間余り の作品を続けて2度見ました。監督の罠にはまったのか、2度目の鑑賞では、人質を殺すつもりではなかったのに、警 官に殺されたしまった、貧民街出身の黒人である犯人の境遇を思い、うかつにも?目頭が熱くなりました。犯人でさえ、 「神の子」として、互いにかばいあうブラジル人 の隣人愛は、半端じゃないですね。2005年6月、東京で 公開

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ÚLTIMA PARADA 174  「ラスト・ストップ174」  (ÚLTIMA PARADA 174) → YouTube

■■ジョゼ・パディーリャ(José Padilha)監督のドキュメンタリー映画 『バス174』の姉妹版ともいえる、ブルノ・バヘット(Bruno Barreto)監督の『ÚLTIMA PARADA 174』 (2008年)を2009年8月リオ滞在中に友人のトゥニコ教授にDVDをプレゼントしてもらい、繰りかえしパソコンで見ています
  『クアトロ・ディアス』では国際観光都市リオを代表するコルコバードのキリスト像が映画の中で15回登場します が、この作品でもコルコバードのキリスト像を数回見せて、そのキリストの足元で悲劇が起ったことを強調して います。映画は実際のドキュメンタリー映像や実話に、いくつかの創作を加えて作り直しています。したがって 観客は、現実とフィクションの組合せの醍醐味を味わえるでしょう。その意味で、この作品は、 『クアトロ・ディアス』の手法を駆使しているといえます。 登場人物には、『エリート部隊』のラストシーンで北東部出身の麻薬売人バイアーノを殺し、幼友達である仲間の仇 を討った、貧民街出身のリオの有名大学法学部の優秀な学生を演じた黒人の役者André Ramiroが、この映画でも、 犯人を説得するリオ州軍警察特殊部隊員を演じています。『シティ・オブ・ゴッド』に登場したDouglas Silvaも ストリートチルドレン 役で出演しています。
 事件をおこす直前に主役の青年が、乳飲み子であるとき引き離された母親に会うシーンには、涙腺が緩んでし まいます。泥水の中に咲くハスの花が美しいように、この作品は、危険で不潔な中に生きる人々の心や日常の風景の 美しさを描いています。感動しました。
 ※しかし、『シティ・オブ・ゴッド』同様、非情な殺人行為の表現などに対して、リオでも賛否両論が闘わされて います。私のブラジルの友人数名は、見たい映画ではない、醜い作品だ、と酷評。

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HBのCARANDIRU 「カランジル」

■■犯罪者を管理する側の大失敗を、醒めた視点で描くことができるのは、エクトール・バベンコ監督がアルゼンチン生まれだから か、と思えるほど、出口の見えないブラジル社会の恥部を告発した映像の連続に、外国人である私はいたたまれなくなってきます。 しかし、社会から「悪人」の烙印を押された犯罪者たちにも、仲間や家族を思う優しさに溢れている、といったヒューマニズムの視 点からの描写には、幾分、救われた思いがします。それに、映像のひとつひとつが、絵画の視点からも、実に素晴らしく出来ていま す。その感動は、パリやスペインの美術館で、ピカソやゴヤの残酷な作品の前に立ったときの気分にも似ています。

HB(エクトール・バベンコ監督)の世界  リオを舞台と した銀行強盗団の生活を描いた『ルーシオ・フラーヴィオ、傷だらけの生涯( Lúcio Flávio, o Passageiro da Agonia )』(1977年)を紹介しておきたい。 平然と殺人を 犯す凶悪な犯罪者の日常を描いている点では、リマ・バレット監督の『匪賊(カンガセイロ)』(1952年)に似ているが、決定的 な違いは、リマ・バレットの作品が、犯罪者を遠くから眺めるような扱いになっているのに比べて、エクトール・バベンコは、 犯罪者への丁寧な感情移入の道筋を付けていることであろう。 観客は、破滅への歩みを続けざるを得ない、 レジナルド・ファリア( Reginaldo Faria ) 演じ る主人公に徐々に同情し、やがて彼の敵となる警官たちを憎むようになっていく。 それは、妻や子、仕事の仲間、地域の住人など への、強盗団の首領であるフラーヴィオの細やかな人間味溢れる対応に共感を覚えるからであろう。『リオ北部地区』でサンバの作 曲家を演じたグランデ・オテーロが、イエマンジャを信仰し、フラーヴィオを気遣うファベーラの住人を演じている。 また、 臨場感溢れるカメラ・ワークも、エクトール・バベンコ映画の魅力のひとつであろう。映画を見ながら、観客は、主人公のフラー ヴィオが遭遇する危険な場面に実際に居るかのような錯覚に陥るのである。 (住田「ブラジルの映画」富野・住田共編著、前掲書、168-169頁より)

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O ANO EM QUE MEUS PAIS SAÍRAM DE FÉRIAS  「両親が休暇を取った年(1970、忘れない夏)」 
(O ano em que meus pais...) → YouTube  (Cao Hamburger) → YouTube

■■2010年4月3日、復活祭前日の土曜日、ブラジルの友人にプレゼントして もらったDVDで鑑賞しました。カオ・アンブルゲル監督の2006年製作のすばらしい作品です。映画『クアトロ・ディアス』 は、1969年の9月4日(木)から7日(日)までの4日間を描いていますが、その 翌年の1970年の軍事政権下の悲しい出来事が物語の背景となっています。『クアトロ・ディアス』はリオが舞台です が、『両親が休暇を取った年』の舞台は大都会サンパウロの中のユダヤ系やイタリア系の多く住むボン・レチ ーロ地区(Bairro do Bom Retiro)。主人公のユダヤ人である祖父を演じているのは、名優パウロ・ アウトラン( Paulo Autran)ですね。子供たちの微妙な心を動きを楽しめますが、監督によれば この映画は子供向けではなく、一般の大人向けであるそうです。子供たちの異性への興味の 芽生えは新鮮です。日本ブラジル移民100周年の2008年に東京で開催された「サンパウロ市映画祭」で 『1970、忘れない夏』というタイトルで上映されています。

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QUATRO DIAS 「クアトロ・ディアス」   O que é isso, companheiro

■■1969年9月4日(木)から7日(日)までの4日間(クアトロ・ディアス)を描いた、実話に基づ く原作『 O que é isso, companheiro 』の映画化。監督はブルノ・バヘット(Bruno Barreto)。1969年の2年前の1967年に は第三次中東戦争が勃発しイスラエルが圧勝、1969年の 7月には米国人が歴史上初めて月面に降り立っています。このように世界で米国の存在が強大であったころの出来事を 映画は描いています。互いを同志と呼び合っている若者の部屋の壁には、チェ・ゲバラの写真や映画『太陽の地の神と悪魔』 のポスターが貼ってあり、サンパウロから来た練達の同志の機関銃の入ったバッグには経済学者セルソ・フルタード著『ブラジル経済 の形成と発展』が入っていました。チェ・ゲバラやセスソ・フルタード、グラウベル・ロッシャの考えが信奉されていたようですね。 1969年から40年目にあたる2009年の憲法記念日の日曜日、DVDで作品をゆっくり鑑賞しました。 もし、皆さんが20世紀60年代の学生運動を知っていれば、この作品によって青春時代へのプレイバック を楽しめるでしょう。当時、誰もが口ずさんだ「朝日のあたる家(House of the Rising Sun)」 のメロディーが映画の中で2度流れています。

面倒な時代背景はさておき、改めて、素敵なリオの風景を楽しみました。 この国際観光都市リオを代表するコルコバードのキリスト像が映画の中で15回登場します。このキ リスト像は、南地区から眺めるとキリストは右を向いています。キリストが左を向いていれば、北からの風景です。 正面であれば、太陽が昇る東からの姿です。誘拐された大使が隠れ家のブラインドの隙間から眺めるキリスト像は、 斜め左を向いていました。もしリオの地理に明るければ、キリスト像の姿によって物語の場所が分かり、映画鑑 賞の醍醐味は倍増することでしょう。美しい風景と素晴らしい俳優たちの演技を堪能しながら、ふと、思いました。 この映画、ブラジルの知的エリートの苦悩を描いてい るのではないかと。皆白人で、学歴は大学以上。暮らしには困らないが、ベトナム戦争などの世界情勢を憂う上流・中流階級の子弟 たちの、ちょっと贅沢な悩める姿を。実際、こうした映画の後、スラムの現実を鋭く描く作品が続々と登場することになります。


1999年8月14日(土)に大阪の映画館で見ました。 ちょうどこの年、ヴァルテル・サーレス監督の『セントラル・ステーション』がアカデミー賞の外国映画部門と主演女優賞に ノミネートされました。2005年1月に「クアトロ・ディアス」のDVDの日本語版を手にいれて、繰り返し鑑賞しています。この映画は、 とにかく、キャストが素敵ですね。「セントラル・ステーション」の主役フェルナンダ・モンティネグロが「クアトロ・ディア ス」では事件を目撃した婦人役、ジョズエと意気投合したトラックの運転手のオトン・バストスが軍警察の事件担当取締官、 ジョズエの兄のマテウス・ナシュテルゲーレが冷酷な革命の闘士の役など。 ヴァルテル・サーレスとダニエラ・トーマスの共同監督の『異国の地』の フェルナンダ・トーレス が革命グループのリーダー役。このフェルナンダ親子であるブラジルを代表する大女優ふたりに加えて、原作者のフェルナンド・ガ ベイラを演じるペドロ・カルドーゾやマルカン役のルイス・フェルナンド・ギマランイス、後に『ズズ・アンジェル』でも老練な革命 家を務めるネルソン・ダンタスなどの演技も素晴らしい!白人が目立つ映画ですが、黒人の名優ミルトン・ゴンサルヴェス も光っていますね。

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「CIDADE DOS HOMENS」 2002年版のDVD入手!
「CIDADE DOS HOMENS」 2003年版のDVD入手!
「CIDADE DOS HOMENS」 2005年版のDVD入手!

CIDADE DOS HOMENS  「シティ・オブ・メン」  

■■『シティ・オブ・メン』は、 『シティ・オブ・ゴッド』と同じスタッフと同じキャストが、 場所もリオのファヴェーラを取りあげた姉妹作品。しかし、 フェルナンド・メイレーレス監督によると、 『シティ・オブ・ゴッド』は麻薬の売人の生活を描いていて、ファヴェーラの住人の 生活には直接、触れていないが、 逆に、『シティ・オブ・メン』は、地域住民の普段の生活を描き、麻薬の売人の生活はベールに 包んだ、とのこと。 つまり、前者は映画館で楽しむ衝撃的な作品、後者は茶の間で楽しむ、ほのぼのとしたテレビドラマ。 後者の主役は、前者で恐るべきリトル・ダイス役を演じたドウグラス・シルヴァと、同じく『シティ・オブ・ゴッド』 で仲間を撃つこと を命じられ実行した子役のダルラン・クーニャが、『シティ・オブ・メン』では茶目っ気の ある明るい子ども役。 2002年 版と続篇の2003年版をGLOBOテレビが放送。2005年の正月にIPCテレビが2004年版 を放送。少年たちは青年になってきました。続いて、 2005年 版も製作され、2002年版から2005版までの4本のDVDをブラジルで購入できます。
  2007年 版も登場。2007年版はそれまでのテレビドラマ・シリーズとは違って、1回で完結する映画作品となっています。 監督もパウロ・モレッリ。フェルナンド・メイレーレスは製作の担当です。 毎回、シリーズとして独立した話題で放送されてきたテレビドラマと違って、今回の映画2007年版の 『シティ・オブ・メン』は、すでに述べたように、ひとつの完結した作品です。テーマは、異種混淆 社会のブラジルでよく問題となる「父親」の存在です。監督も今回はパウロ・モレッリで、これまで 監督をつとめたフェルナンド・メイレーレスは監督ではなく、製作の担当です。幸いにも日本で『シ ティ・オブ・メン』のDVDが発売され、私はこれを入手して、繰り返し鑑賞しています。
 ブラジルの旧都リオの治安の問題は、貧富の格差同様、黒人奴隷解放の時代にさかのぼる、古くて新 しいテーマです。リオの友人宅に招かれると、今でも食事を作るのは、貧民街のファヴーラから通っ てくるお手伝いさんたちです。まさに、もちつもたれつの関係が古い過去から現在につながっている のです。この社会の中で、違法な商取引と暴力で台頭してきたのが、ファヴェーラを拠点に活動する グループです。明るい活動では、カーニバルが知られていますが、暗いマイナスの部分が、国際的な 組織にリンクした麻薬取引の連中です。ファヴェーラで生活する若者が、英雄として有名になる道は、 兇暴な組織のリーダーになるか、カーニバルの素敵なサンビスタになるしかない、という悲しい現実 もあります。解決策は、そのような若者に新しい未来への道筋を示してあげることと、凶悪な不法ビ ジネスを抹殺することです。
 ルラ政権の下で活発になり始めた、貧民街ファヴァーラにおける子供たちのスポーツや芸能を学ぶ支 援活動などが、リオのオリンピック開催への可能性を高めたと理解されています。こうしたポジティ ブな芸能活動によって完成した映画『シティ・オブ・メン』によって、皆さんのファヴァーラへのイ メージもきっと変わることでしょう。

「CIDADE DOS HOMENS」 2007年版のDVD入手!

DVD こんにち私たちは、 インターネットやDVDなどのデジタル情報によって、ブラジルの映像文化をいとも簡単に書斎のパソコンで 利用できるように なった。
 しかし、映画や演劇は、本来、劇場で楽しむべきものであろう。同じフロアーの観客の笑い声 やため息を感じながら、画面や舞台の役者の演技を鑑賞することこそが大切であろう。テレビドラマも、お茶の 間で、皆がそろって、あれこれ感想 を述べながら見ることで、面白さも増すはずである。
 とはいえ、ちょうど、書斎や図書館で本を読ん で、知識を見につけるように、映画やテレビドラマなどの映像資料を個人で気ままに鑑賞できるのも格別である。特に、筆者は、 DVDの登場にある種の感動すら覚えている。画像が美しく、さらには、いくつかの言語のキャプションを表示でき、映画のあ る場面から他の場面へたやすく移動できるのである。
 また、映画やテレビドラマが描くブラジルは、人々の夢や願望を誇張して見せる仮 想の世界であろう。しかし同時に、 ブラジルの現実を映した世界でもある。ロードショー公開は数年に一度ぐらいであるが、 インターネットやDVD、ビデオであれば、毎日、自由に鑑賞できる。この便利さをもっと活用させたい。(住田「映像文化で知 るブラジル世界」天理大学アメリカス学会編『アメリカス学の現在』行路社、2003年12月、257頁より)


OLGA 「オルガ」 モンジャルディン 監督の 「オルガ」サイトは こちら へ。素敵なダイジェスト版を楽しめます。

■■2004年8月21日(木)にリオ州ニテロイ市のイカラ イ映画館で、封切られたばかりの映画 「オルガ」を見ました。原作者は フェルナンド・モライス、 監督はテレビドラマの「クローン」などでヒットを続けてきた ジャイメ・モンジャルディン。オルガ役は、同監督のドラマ 「7人の女たちの館」で、重要な語り手役を演じたカミーラ・モルガド。 魅力あふれる彼女との出会いが「オルガ」制作に繋がったそうです。
 オルガは、ヴァルガスの独裁政権下にその政府 によってナチスのドイツへ送られ、ガス室で死んだ女性の名。共産主義者プレステスと恋に落ち、ナチスの収容所で、出産。 プレステスがイタリア系ブラジル人であったため、フェルナンダ・モンチネグロ演じるイタリア人の母親が生まれた子をドイツ で引き取る。映画は、共産主義者オルガを、とてもロマンチックに、美しく描写。グローボのテレビドラマを映画館で見ている ような感じ。。。多くの観客が涙を流し、ラストシーンの後、目を赤く腫らしていました。ブラジルの映画館ではよくあること ですが、映画の終わりに一斉に拍手が。。。
 極寒の収容所を含め、すべて熱帯のリオで撮影したことも話題になりました。 本物のようにふわふわ落ちて肌につくとそっと溶ける雪は石鹸製だとか。。。

 ジャイメ・モンジャルディン監督は、 グローボ・テレビの「NOVELA DAS 8」つまり、8時台のテレビドラマ「クローン」や「我らが大地」などで高視聴率を得てきた超人 気監督です。2005年に、 テレビドラマ「アメリカ 」がスタート (ブラジルでは3月14日、日本では3月15日)し、オルガ役のカミーラ・モルガドも出演しました。

ブラジルのテレビドラマ 過去のTVドラマ作品を紹介!


EXPEDITO EM BUSCA DE OUTROS NORTES 「エスペディト 他の北部を求めて」

■■アイダ・マルケス(フルミネンセ連邦大学教授)と ベト・ノヴァエス(リオデジャネイロ連邦大学教授)が共同して監督を務めている、ブラジル農民運動を 描いた2006年の ドキュメンタリー作品 を2010年6月にDVDで観ました。舞台はブラジル北部のパラ州です。 「土地なき民を、民なき土地へ」のスローガンに誘われて、1973年の軍政下に、「北の理想の地」を求めて南から 移り住んだ人々の、過酷な運命の記録です。その地は、実際は農地改革とはほど遠い、大地主ばかりが 優遇された地域だったのです。それから約15年たって、土地なし農民運動に参加したエスペディト がサンパウロにおける労働組合の集会に1990年に参加し、その直後に北部のパラで殺害される、という悲劇 が起こります。庶民の文学、コルデルの詩人でもあった農民エスペディトの詩を、歌手のシコ・ブアルケ・ デ・オランダが朗読しています。 ブラジル南東部のエスピリトサント州に住むエスペディトの家族のおしゃべりも素敵です。 人々の素朴な語りを聞きながら、国家が目指す「進歩」の蔭に生きる庶民にとって、社会の「正義」とは何か、 を静かに考えてみたくなりました。

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CIDADE DE DEUS  「シティ・オブ・ゴッド」

■■2007年4月29日昭和の日、10月8日体育の日、 フェルナンド・メイレーレス(Fernando Meirelles)監督のこの作品をDVDで丁寧に見ました。 ところで、ポルトガルのノーベル文学賞作家の作品『白の闇』をメイレーレス監督が 映画化、『ブラインドネス』という題名で 2008年第61回カンヌ国際映画祭でオープニング上映されました。さて『シティ・オブ・ゴッド』では、 主人公の子ども時代の1960年代の場面では、カルトーラのサンバの曲がそのころへの郷愁を つのらせます。続く1970年代では、銃を操り、弾丸で殺戮を繰りかえす大人になった彼らの激しい戦いの場面の連続。同時に 銃ではなく、カメラを手に写真を撮るブスカペが、観客にとって救いとなります。最後の1980年代では、拳銃で戦った男 たちが滅び、悪の主役がさらに小さな子どもたちに交代します。同時に、写真家ブスカペへの期待が。。。ところが、監督の意図 は、観客が悪の主人公たちにも感情移入することかもしれません。それは、否定しえない現実だから。過去この作品は、 2002年9月2日(火)にリオ州ニテロイ市のイカライ映画館で見ました。その時、たいへん素晴らしい作品だと感動したこと が思い出されます。殺される側の流血の表現は極力見せないように工夫していますし、男女の愛の描写にも配慮が なされています。もっとも、エクトール・バベンコの『ピショット』を超える子供たちの非情な殺人行為の表現には、 ブラジルでも、賛否両論が闘わされていました。しかし当時のカルドーゾ大統領は、子どもたちもこの作品を見るように勧めてい ました。京都でも私は、2003年7月27日(日)に映画館で見ました。その後DVDで鑑賞し続けています。

■■『シティー ・オブ・ゴッド』が第76回アカデミー賞の4部門「監督賞」 「脚色賞」 「撮影賞」「編集賞」 にノミネート。しかし。。。

嗚呼、残念!日本時間の2004年3月1日に 賞の結果発表。 『シティー・オブ・ゴッド』は入賞できず。 監督賞は「ロード・オブ・ザ・リング」のピーター・ジャクソン、撮影賞は 「マスター・アンド・コマンダー」、 脚色賞と編集賞は 「ロード・オブ・ザ・リング」。悔しいですね。

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ZUZU ANGEL 「ズズ・エンジェル」

■■2007年8月にブラジルを訪問した折り、 友人からDVDを貰っていたが、学会や授業の準備に追われてそのままにしていた。紅葉の11月末、大学のい ろんな行事も終わったので、丁寧に鑑賞した。『ラマルカ』や『クアトロ・ディアス』、『カヌードス戦争』、 『ルーシオ・フラーヴィオ、傷だらけの生涯』などを思い出させる作品だ。1974-75年間、ちょうど私はリオ で1年間暮らした。そのころの記憶と映画の場面が鮮明に重なって、「やはりそうだったのか」という思いが こみ上げてくる。当時を生きたブラジル人が、あの軍事政権の真相をはっきりと覚えている限り、再びそうした 忌まわしい時代が訪れることはないであろう。シコの音楽がいい。リオの風景も素晴らしい。 ズズ役のパトリシアも素敵だ。今ブラジルのリオと日本の時差は11時間だが、私は3ヵ月遅れの時差で 友人のプレゼントの真値を知ることになった。ラマルカもルーシオ・フラーヴィオも死んだ。そして今、 私の映像体験にズズの死が加わった。

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MADAME SATÃ  「マダム・サタン」 

■■2009年、雨の5月5日、DVDでゆっくり鑑賞しました。非識字者、怠け者、兇暴、男娼、黒人。たえず悪臭が 漂ってくるような路地裏の危険地帯で生活する、そのようなヴァガブンドを描いた作品であるにもかかわらず、妙に、 爽やかな印象を受けます。おそらく、「貧乏、黒人、非識字」という、社会的にとびきりハンディのある境遇に置かれている にもかかわらず、逞しくチャレンジした「マダム・サタン」の生きざまの面白さに共鳴できるからでしょう。また何といって も、主役のラーザロ・ラモスの演技のうまさを堪能できます。 今感じる、物語のキーワードは、「まじめ」あるいは「懸命」でしょうか。時代背景も面白く、殺人事件で逮捕 されるのがヴァルガス時代の1932年。刑期を終えて釈放されるのが、ヴァルガスのブラジルが軍国日本に断交、そしてファシ ズムのイタリアとドイツに宣戦布告する1942年。「マダム・サタン」が1932年の場面で、遥かかなたの中国を話題に出しますが、 第二次世界大戦さ中の、上海やリオの妖艶な夜の街かどの一致と不一致、といった連想も、それなりに刺激的ですね。 危険であっても、観光地として注目されているリオのラパですが、差別されながら「まじめ」に生きたブラジル人が いたことを思い、とても癒されました。

2006年5月に『マダム・サタン』のDVDを自宅で見ました。むしょうにアンデスを感じたくて、直前に『運命を分けたザイル』 を見たのですが、期せずして、どちらにも、魅力ある男たちの「愛」を意識することになりました。2本とも舞台は南米。 『マダム・サタン』はリオの ラパ(Lapa)、『運命を分けたザイル』はペルーのシウラ・グランデ峰。 「マダム・サタン」の場合は、男といっても、同性愛者。所謂、ゲイ。主役の ラーザロ・ラモス の黒い肌の艶やかさを、美しいと思うか、グロテスクと感じるか。ともかく、サンバを育てた、それも世界恐慌に晒された 当時の、はるか昔のボヘミアンたちの話として、男が化粧し、肌を誇る異様な雰囲気を、それなりに楽しめます。そして、 本気になってはいけないであろう放縦な環境に、ぐいぐいと引きずり込まれていくような、怖さと悦びが、 映像から伝わってきます。

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「アシャードス・エ・ペルディードス」 (Achados e Perdidos) → YouTube  Lost and Found 

■■2009年1月のグローボTVのトーク番組で、主役のファグンデスが、「観客には受けなかったようだが、気に入った 作品だ」と語っていました。私はブラジル人の友人から借りたDVDで2007年冬に一度、そして2008年夏にもう一度見ました。 悲しい映画です。舞台はファベーラではありません。 しかし、 エクトール・バベンコの作品「ピショト(ピショッチ)」 のような出口のない悲劇を描いています。それもそのはず、 「誰がピッショチを殺したか」 のジョゼ・ジョフィリ(José Joffily)監督の作品です。リオのコパカバーナを舞台に、「悲しき」ブラジル社会がその はらわたを見せながら、人が激しく生き、殺し合い、そして死ぬ。。。はじまりは、農民運動のリーダーの家族を、 「犯罪者の一味」との仕組まれたニセ情報で、幼い子供を含めて皆殺しにしてしまう惨殺の「事故」。。。それは軍部独裁政権の ころ、ひとりの警察署長に起こった出来事!やがて30年たって、民主的な社会となりますが。。。主役のファグンデスと若い娼婦 フロール役のジュリアナとの絡みは、谷崎潤一郎の『痴人の愛』を思い起こさせます。とんでもない非日常的な出来事が、どこ にでもありそうな平凡な日々の一断片として演じられます。映画とは、そうしたものなのでしょうね。熟年セクシー男優ナンバ ーワン(ブラジル女性へのアンケートによる)のアントニオ・ファグンデスの魅力を満喫できる作品です。


THE MOTORCYCLE DIARIES  「モーターサイクル・ダイアリーズ」

■■2005年3月15日(火)に大津市内 の映画館「滋賀会館シネマホール」でヴァルテル・サーレス(Walter Salles)監督映画「モーターサイクル・ダイアリーズ」を見ました。登場人 物が、それぞれ、アルゼンチンやチリ、ペルーのスペイン語を話す、という、よく出来た「アメリカ+イギリス映画」です。 ブラジルは植民地時代に、本国ポルトガルがスペインに併合され、スペイン語の影響が強化された歴史を経験していますが、 こんにちのブラジルは、周辺諸国からの大量の移民の受入れや、国家レベルの経済協力の進展もあって、ブラジル国民のスペ イン語圏への関心がひじょうに高まっています。キューバのカストロ政権との友好関係を進める ルーラ政権の誕生もその気分 を支えているでのしょう。映画を見て、ブラジル人であるサーレス監督に、反米+反権力、そして、親ラテンアメリカといった 姿勢を感じましたが、いかがでしょうか。

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LISBELA E O PRISIONEIRO 「リズベラと囚人」

■■この映画のキーワードは「大衆」、つまりポプラール?!大衆演劇や大衆音楽の魅力たっ ぷりの大衆向け喜劇映画です!
 2004年8月に、多くの友人が勧めるので、サンパウロ市内でDVDを購入しました。半年 以上過ぎた2005年の桜の季節に丁寧に鑑賞しました。素晴らしい作品です。カエターノ・ヴェローゾ(Caetano Veloso)が 「ひとりで生きてゆけと? おまえは、おまえを忘れることを教えてくれなかった。ひたすらおまえを愛することを教えてくれただけ。。。」と切なく歌うテーマ曲 Você não me Ensinou a te Esquecer もいいですね。
 やくざな色男レレウが、 遊びではなく、本気で、無垢な美少女リズベラを愛する。しかし、いろんな困難が。。。リズベラの父親は警察署長、すでに親の 認めた婚約者は大都会リオ帰りのきざな男。それでも、最後にはレレウとリズベラが、その恋を実らせるという、ブラジルの大衆 演劇ファンが好みそうな物語。怖い殺し屋の官能的な妻がレレウに惚れて、レレウは殺し屋に追われる羽目にも。。。
ブラジルでは、娯楽映画と大衆演劇とテレビドラマが、キャストやテーマなど互いに繋がって、ひとつに なっているんだなぁ、という ことを実感!映画ファンのリズベラが、映画の世界と現実の世界を混同する様子を映画の 世界でみせる仕掛けも絶妙です。リオの「映画キチ」の友人たちに会って、ボヘミアンな気分でおしゃべりがしたくなりました。

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※2005年5月1日、メーデーの日曜日、リズベラ役の デボラ・ファラベラが出演している A DONA DA HISTÓRIA(2004年)を学生 から借りたビデオで見ました。面白い作品です。


FILHAS DO VENTO  「風の娘たち」 

■■2007年10月16日に京都で「人種民主主義の神話への挑戦 ―ブラジル国公立大学入試の人種別割当 て制度」についての講演を聴き、改めてブラジル人から借りたDVDのこの作品を丁寧に見ました。 ミナスの自然の風景も、多く登場する黒い肌の人も美しい!黒人監督がブラジル映画史上でもっとも多く 黒人俳優を出場させ、日常のすばらしい家族愛を描いた作品(2004年)です。ミナスとリオのコントラストも 素敵です。言葉 もミナスの訛りとカリオカの発音を丁寧に表現しています。あたかも、ミナスとリオを旅しているかのような気分にさせてく れます。1954年ミナス生まれのジョエル・ジト・アラウージョ監督は、サンパウロ大学コミュ ニケーション芸術学部で学位を得た後、2001年よりアメリカのテキサス大学で客員教授を勤めています。

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CANTA MARIA  「歌え、マリア」 

■■2008年9月、ブラジル人の友人に借りたDVDでゆっくり鑑賞し ました。今年、没後70周年を迎えた匪賊ランピアンが物語に登場し、1930年代の北東部奥地が舞台となって いますが、映画は、マリア役のヴァネサ・ジアーコモ(Vanessa Giácomo)とテーマ曲を歌うダニエラ・ メルクリ( Daniela Mercury )の魅力を堪能できる娯楽作品となっています。グラウベル・ロッシャ監督の作品とは違っ て、フランシスコ・ラマーリョ・ジュニオール(Francisco Ramalho Jr.)監督のこの映画には特に 隠喩などは感じられません。素直に恋愛ストーリーとして楽しむことができるでしょう。ちょうど「ブラジ ル映画祭2008」でも10月に上映されますね。ブラジルの映画人は、農村では北東部奥地、都会では貧民街のファ ヴェーラを描くのを好むようですが、外国人に限らず、ブラジル人でもリオやサンパウロの住民の多くがそれほど 北東部の奥地の生活に慣れ親しんでいるわけではありません。つまり、北東部奥地を実際に訪れたことが なくても、想像を逞しくして鑑賞すればよいのです。もっとも、リオなどのブラジル都会住民のルーツのひとつが その地方にあるため、強烈な熱帯の太陽光線が照りかえる鮮明な風景や独特な生活習慣に多くの人が懐かしさを覚 えるようです。映画は2006年の制作ですが、2008年1月、ヴァネサ・ジアーコモは、夫である俳優のダニエル・デ・オリヴェイラ (Daniel de Oliveira)との間に男児を出産しています。


O PAGADOR DE PROMESSAS  「サンタ・バルバラの誓い」(1962年) 

■■グローボTV国際放送の映画番組で2007年2月25日(日)に見ました。ブラジルの夏時間が終わった直後の番組ですか ら、ブラジルでは深夜の放送です。舞台となったサルヴァドールの教会を訪れたこともありますし、ビデオで過去に見たこと がありますが、改めて丁寧に鑑賞しました。素晴らしい作品です。キリスト教と黒人宗教のシンクレティズムのカンドンブレや 多くの学校でスポーツとして認知されているカポエイラ、さらにサンバなど、アフロブラジル文化のアイデンティティという視 点からもしっかり作られています。農夫の行為を拒絶したDionísio Azevedo演ずる司祭のことが、後で頭から離れません でした。 今ではキリスト教もシンクレティズムであると人類学者によって解釈されます。農夫を悪魔と非難した司祭の姿勢は本当に正しいのか。。。 それにしても、カポエイラの演技がすごい!その他、"Deus e o diabo na terra do sol"(1964年)では匪賊を演じた、この映画の 若いレポーター役のOthon Bastosもいい!軍事独裁前夜の1962年の状況は、政治上の検閲が無いという点では、民主的なルーラ 政権の今に似ているかもしれません。


2 FILHOS DE FRANCISCO 「フランシスコの2人の息子」 

■■2005年8月26日(金)夜にリオ州ニテロイ市のショッピング・ベイ・マーケットの映画館で 見ました。ごく自然に「涙、笑い、感動」を味わえる大衆映画。貧しい家族出身のカントリー歌手の成功物語は、ルーラ大統領の 経歴を連想させます。映画の後、会場からはたいへんな拍手が起こりました。グローボTVの宣伝映画のような作品で すが、私も拍手を送ります。子どもたちの歌声と表情が素敵です。

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EU, TU, ELES  「私の小さな楽園」 

■■2000年にサンパウロで見ました。今、ビデオもDVDも、持っています。北東部の風景がとてもきれいですね。画面のひとつ ひとつが完璧です。まるで、後期印象派の絵画を見ているような気分を味わえます。ジルベルト・ジルの音楽も素晴らしい!
 しかし、ひとつ、気になるのは、感情移入する人物が、うまく見つからないこと。おそらく、ブラジルの人は、登場人物の 家族になったような気持ちで楽しむのでしょう。でも、日常生活の雰囲気が、すっかり異なっている日本の人には、とっても分かり難 い作品です。だから、「別世界」のことをのぞいてみよう、という気楽な気分で鑑賞してはいかがでしょうか。ブラジルが大好き なわたしは、すでに数十回見ましたが、何度見ても、楽しめます。


家父長社会と人種混交  2000年に、アンドルシャ・ヴァディンギトン監督の『エウ・トゥ・エリス』(2000年)が、東京国際映画祭の正式招待作品として 2000年10月に日本で上映された。筆者はこれを2000年8月にサンパウロの映画館で見た。夫婦役の夫が名優リマ・ドゥアルテ、 妻が人気タレントのレジーナ・カゼーであり、彼らの演技は見事である。ジルベルト・ジルの音楽も美しい。これまで、実に 多くのブラジル映画が舞台にしてきた北東部奥地の風景も、最高級の機材を駆使して実に美しく撮影されている。特に、 朝夕の太陽光線の扱いが実に素晴らしい。カンヌ映画祭でのグランブリを多くのブラジル 人が期待していたが、実現はしなかっ た。キーワードは北東部奥地における「家父長社会」や「人種混交」であろう。ひとりの女性が小さな家に同居する夫以外の 男たちの子を次々に産み、最後には、ひとりも自分の子を作れなかった夫が、中には肌の黒い子もいる3人の子供たちの出生届 をする、という物語である。サンパウロの映画館では観客の笑い声が絶えなかったが、日本人には難解なテーマである。 (住田「映像文化で知るブラジル世界」天理大学アメリカス学会編、前掲書、256頁より)

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GAIJIN 2 「ガイジン 2」  チズカ・ヤマザキ監督の作品です。
※ ジャイメ・モンジャルディン監督の2005年のテレビドラマ「アメリカ」にも出演し ている、ドイツ系移民役のマリアナ・シメネスが素敵です。

■■2005年9月3日(土)午後17時50分からリオ州ニテロイ市の プラザショッピングの映画館で、グラマド映画祭に入賞し、ブラジル国内で封切られたばかりの 「ガイジン 2」を見ました。これは約25年前の作品「ガイジン」よりも、ブラジル社会との関わりが増 しているものの、グローボ新聞やジョルナル・ド・ブラジル新聞の映画評は5段階中最低の1。新聞評 が影響しているのかどうか、映画館の座席は週末のゴールデンタイムなのに10人以下の寂しい状況でした。 当然、映画の後の拍手はゼロ。グローボ新聞はシナリオが悪いと評しています。日本移民のことを知ら ないブラジル人には難解ですし、未だ評価の分かれているブラジル事情を単純にステレオタイプ化して いることなどが不評の理由かもしれません。わたしも登場人物への感情移入が困難でした。人種混淆社会 に慣れているブラジル人には、日系人の家族の顔は皆同じに見えてしまい、誰か誰なのかちんぶんかん ぶんになったのかも。。。
▼ブラジル日本人移民100周年の2008年6月21日(土)の深夜、IPCテレビでゆっ くり鑑賞しました。ヴァルガス革命の少し前のころから現在に至る、ブラジル移民の家族の3世代にわたる 物語を描いた力作なのに、なぜ、ブラジル人の評価が最低なのか、その答えを探しながら見ました。ひとつ 感じたのは、時代考証などがきちんを為されていないと思えること。そのため、ブラジル人には、ヴァルガス 時代やその後の展開で、なぜ頻繁にイグアスの滝やパンタナルが表現されているのかにわざとらしさを感じて しまうでしょうし、日本人には、どうしても、戦前、戦後の日本の農村や都会の風景に嘘っぽさが感じられる、 ということでしょうか。「力作」に対して、どうもごめんなさい! それにしても、なぜ、移民を含め日系人社会を扱った映画やド ラマは、ブラジルでは、ほとんど作られないのでしょうか。不思議ですし、残念です。「ガイジン 2」 も2008年の移民100周年行事の露払いとか。。。

民主化の反映  ......ブラジル人を「ガイジン」と呼ぶ、サンパウロに渡 った日本人移民を扱ったチズカ・ヤマザキ監督の『ガイジン、自由への道』(1979年)やサンパウロの 労働運動を取りあげ、女優フェルナンダ・モンテネグロが好演している、レオン・イルツマン監督のベネ チア映画祭受賞作品『彼らは喪服を着ない』(1981年)もこの時期の作品である。 (住田「ブラジルの映画」、富野・住田共編著『ブラジル学を学ぶ人のために』世界思想社、2002年8月、163-164頁より)

もうひとつの移民物語 NHK札幌放送局 放送80周年記念ドラマ  「ハルとナツ」 2005年10月2日から5夜連続で放送。

NHK総合テレビで2006年3月27日(月)〜 31日(金)に再放送!


■■NHKBS世界のドキュメンタリー<シリーズ ブラジル>で、 「悪魔が踊る街〜リオ 終わらぬ麻薬取り引き〜(Dancing With The Devil - GRAPHIC IMAGES - Brazilian Gangs Doc) 」と題する2010年 イギリス ジョン・ブレア・フィルム会社(Jon Blair Film Company)制作 の作品を放送。
2010年12月20日(月) 午後11:00〜11:50
  YouTubeでアクセスできます。

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▲NHKBS世界のドキュメンタリー<シリーズ ブラジル>で、 跳べ!世界へ 〜リオの“リトル・ダンサー”〜を放送。
12月21日 (火) 午後11:00〜11:50 リオ・デジャネイロの貧困地区「ファベーラ」に暮らす2人の若 者が、バレエの才能を見いだされ、貧しい暮らしに耐えながら、 成功を夢見て挑戦する姿を追う。
2010年12月21日(火) 午後11:00〜11:50
  YouTubeでTrailerにアクセスできます。

Trailer


Deus é Brasileiro   「ゴッド・イズ・ブラジリアン」 

■■ふだん、教会のミサ に出席したり、聖書に親しむ機会が無いからでしょうか。わたしには退屈な作品でした。監督は、『オルフェ』のカルロス (カカ)・ディエーゲス、主役はテレビドラマの人気俳優アントニオ・ファグンデス。私は、2002年8月末に、偶然ですが、 サンフランシスコ川河口のロケ地を、撮影後に訪問。日本の鳥取砂丘を思わせる砂浜が広がっていました。

 
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アントニオ・ファグンデ スとテレビドラマ  最近では、ジョルジェ・アマードの小説を脚色し、 テレビドラマの顔ともいえるアントニオ・ファグンデスが出演した『奇跡の港』が、2001年2月5日の第一章から 2001年9月29日の第204章まで続き、最終回を迎えた。高視聴率を記録して、2001年2月に第209章で終了した 『家族の絆』の次の作品であった。ファグンデスは、土地なし農民運動を扱ったドラマ『牧畜王』やイタリア系 移民社会を取りあげた作品『我らが大地』、家族の大切さを描いた作品『愛ゆえに』などで、たびたび重要な役 を演じている。くり返し同じ役者が登場することで視聴者に安心感を与え、さらに涙や笑いを誘ってドラマの人 気を高めるのであろう。(中略)
 2002年6月17日に始まったドラマ『希望』が、2003年2月15日に最終の 209章を放送して幕を閉じた。これは、ヴァルガス革命のころ、ヨーロッパにおいて展開したユダヤ人迫害やイタ リアのファシズム、さらには労働運動、女性の権利拡張、精神病患者の人権問題などが、ブラジル社会にどのよ うな影響を与えたのかを取りあげた意欲的な作品であった。また、イタリア人ピアニストのトニ役がレイナル ド・ジアネシーニ、そのイタリアの恋人の祖母役がフェルナンダ・モンテネグロ、父親役がアントニオ・ファ グンデスと、配役は豪華な顔ぶれであった。しかし、労働運動をめぐる主要な人間関係を、悪徳な資本家階級 であるユダヤ人対善良な労働者階級であるイタリア移民、という構図で描いたため、物語の展開に混乱が感じ られ、視聴率も伸びなかった。(拙稿「映像文化で知るブラジル世界」天理大学アメリカス学会編、前掲書、 244-245頁より)

pdf→映像と文化 2010 ネルソン・ペレイラ・ドス・サントス監督が語る   リオ40度   乾いた人生  監獄の記憶  第三の岸辺 
講演 2009 「ファヴァーラ映画」ともう一つのトランスナショナル 
アンドラーデ映画作品修復作業 映像と文化 2008 
マクナーマ&シネマ・ノーヴォ特集 2010
pdf→日本移民100周年 映像と文化 2008
pdf→京都で現代ブラジル映画講演 2006!
pdf→映画で知るブラジル「映像と文化 2005」

ブラジル映画祭 2013

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